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脳の仕組みにあった勉強の仕方を教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、3 Steps to Memorize Everything. FAST. (どんなことでも覚える方法、それも速く)。
ヘンリー・ヒルデブラント(Henry Hildebrandt)さんのトークです。
彼は、神経科学に基づいた学習法を教える学習コーチで、学習プラットフォーム StudyAcademyの創設者です。
勉強の仕方を教えるトークなので、学生向けですが、何かを学ぼうとしているすべての人に役立つ内容です。
どんなことでも記憶できる
収録は2025年3月、動画の長さは12分30秒。動画のあとに抄訳を書きます。
◆TEDトークの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
とても情熱的なトークです。
勉強ができなかった私
化学の授業中のことです。
私は先生を見つめながら、顔をこわばらせていました。
後ろからクスクスと笑う声が聞こえます。
耳鳴りがしていましたが、先生の言葉ははっきり聞こえました。
「ヘンリー、このままだと試験に落ちるわよ。そんな調子でどうやって医大に行くの?」
恐怖と怒りが一気にこみ上げました。
「自分は頭が悪いのだろうか?」
何週間も必死に勉強したのに、結果が出ない。親をがっかりさせてしまう。
問題は学び方にあった
でも必死の努力が報われないとしたら、問題は私自身ではなく、学び方のほうにあるのかもしれない。
そう考えて、私は答えを見つけるのではなく、理解しようとしました。
何週間も研究論文を読みあさり、夜通し調べました。
そしてある朝、シャワーを浴びているときに、頭の中に1つの言葉が浮かびました。私の人生を変えた言葉です。
- 脳は現代の教育のために作られたものではない。生き延びるために作られたのだ。The brain is not built for modern education. It is built for survival.
私のせいではありませんでした。
この会場にいる皆さんも、成績が伸びないのは、怠けているせいでも、愚かなせいでもありません。
誰も脳の仕組みに合った方法を教えてくれなかっただけなのです。
では、脳は本来どうやって学ぶようにできているのでしょうか。
その答えは、人類が何千年もかけて生き延びてきた方法に隠されていました。
きょうは、皆さんが真似できるよう、脳の仕組みにあった学び方を説明します。
脳はどんなふうに進化してきたか?
まず、3万5千年前の草原に立っているところを想像してください。
日が沈みかけ、顔に風が当たっています。
突然、草むらから「ガサッ」という音がした瞬間、心拍数が上がり、筋肉がこわばり、五感が研ぎ澄まされます。
生死を分ける数分間を前に、脳は瞬時に判断します。
経験が生存に関わるものなら、脳はその神経回路を強化し、次に同じことが起きたとき、より速く反応できるようにします。
これこそが、脳の仕組みです。
脳は教科書を丸暗記するために進化したのではなく、生き残るために学んできました。
今の教育では、知識を積み重ねることを重要視します。
事実を分類し、整然と並べ、そこから何かを推測しようとします。
記憶はストレージシステムとして扱われているんです。
このやり方がうまくいった時代もありました。たとえば産業革命のときなど。このときの教育の目標は、効率よく働く人間をできるだけたくさん作り出すことでした。
脳は流れる川のようなもの
脳にとって知識は積み上げるものではなく、流れる川のようなものです。
情報はただ保管されるのではなく、他の知識とつながり、流れ、形を変えていきます。
私たちは脳の流れに逆らわず、それに乗る方法を身につける必要があります。
私は、脳の自然な働きをまねたシンプルな学び方を見つけました。祖先がサバイバルするために使ってきた方法です。
それは、リバーメソッド(川の法則)。
次の3つの原則だけで構成されています。
①リコール(Recall 思い出す) ②コネクト(Connect 結びつける) ③トランスフォーム(Transform変換する)
ステップ1:リコール
知らない街でスマホの地図が使えなくなったことがありますか?
そのときの道筋を、今でも覚えているのではないでしょうか。
迷っている状況にいると、脳が能動的に情報を探し始めるからです。
この探すプロセスが、学習の第一歩です。
何かを学ぶときは、最初から教科書を読むのではなく、まず自分でテストしてみましょう。
直感に反する方法ですが、最初に苦労して思い出そうとすると、よりしっかり学べることがリサーチからわかっています。
「これについて私は何を知っているだろう?」とテストしてください。
すると、脳は、「これは重要なんだ」と判断し、答えを探し続けます。
探る行為が、記憶のスイッチを入れます。
ステップ 2:コネクト
脳は倉庫ではなく、ネットワークです。
新しい情報は、既存の知識とつながって初めて残ります。
雨が、乾いた地面に落ちるとすぐ蒸発するように、単独の知識はすぐに消えます。
でも、流れる川に落ちれば水流が強くなります。
同じように、新しい情報を自分の経験や感情、未来に起こりそうな結果と結びつけることが大切です。
たとえば、「この知識は私の人生にどう役立つか?」「誰かを助ける可能性はあるか?」と考えてみましょう。
事実を感情に変えると、記憶が定着します。
ステップ3:トランスフォーム
思い出して、結びつけた情報を、自分の言葉や形に変えます。
私たちの祖先は、狩りがうまくいった方法を、ただ覚えるだけでなく、儀式や物語にして共有しました。
学んだことを絵にする、図で表す、誰かに説明する。知識を1本の線ではなく、ネットワークとして広げます。これがトランスフォームすることです。
その知識を外にある情報から、自分の一部へ変えましょう。
3つのステップを繰り返す
この3ステップは、独立した作業ではなく、絶えず循環させて、「流れ」にします。
・リコール:流れを生む(考える、思い出す、テストする)
・コネクト:流れを強くする(感情・経験と結びつける)
・トランスフォーム:川底を形づくる(知識を再構成する)
たくさんの知識を10分で効率的に定着させます。
最初の2分でリコール、次の3分でコネクト、最後の5分でトランスフォームです。
ここで絵やチャートを描きます。絵が下手でも問題ありません。
重要なのは、情報を線の形ではなく、ネットワーク、つまり流れるものとして描くことです。
自分をしばるのは自分だけ
無力感にさいなまれていた昔の自分に言いたいことがあります。
ヘンリー、君の脳は壊れてなんかいない。問題は、君をダメだと思わせたシステムのほうだ。
きみの心は、想像できないほど強い。
才能や遺伝は関係ない。
唯一の限界は、「自分には限界がある」と信じてしまうことだけだ。
だから、誰にもきみの光を消させてはいけない。
誰にも「きみにはできない」と言わせてはいけない。
前に進み続けろ。
先生が間違っていることを証明しろ。
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覚えられないのは、方法の問題
このトークは、努力しても覚えられないとき、自分が悪いわけではないと教えてくれます。
脳の仕組みに合っていない学び方をしているだけかもしれないのです。
ヒルデブラントさんは、脳が本来持つ自然な流れに沿って学ぶことを勧めています。
1.リコール:まだ学んでいない段階で、問いを立てて答えを探します。つまり、脳を能動的に動かします。
2.コネクト:これから学ぶ新しい情報をすでに知っている情報や感情と関連づけます。
3.トランスフォーム:学んだことを再構成し、自分の言葉でチャートにします。
私たちはつい、知識を詰め込もうとがんばりますが、理解することが重要です。
それは流れる川のようなもの。効率や成果より、自分の脳が理解していくプロセスを意識すると、もっとラクに学べます。
私も早速、この方法を意識して学ぶことにします。
努力や根性より、仕組みに注目することは、勉強だけでなく、人生のあらゆる学びに通じる普遍的なメッセージです。












































