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小さな片付けすら始められず、いつまでたっても片付かない。
なぜ、そうなってしまうのか? この理由をお伝えします。
片付け本のアドバイスには、たいてい、「小さく始めましょう」と、書いてあります。
私も同じアドバイスをしています。
「まずは引き出し1つだけ」「1日1個だけものを捨てる」といったアドバイスです。
小さく始めるのは負担が少なく、やりやすいのでとてもおすすめです。
ところが実際には、こうした小さな一歩すら踏み出せないまま、数週間、そして、数ヶ月、何も片付けないまま過ぎてしまうことはよくあります。
それはべつに、その人の性格や意志に問題があるからではありません。
人は、もともと小さく始めることが苦手だ、私はそう考えています。
その背景には、人間の思考や感情の仕組みがあります。
この記事では、小さく始められない理由を5つ紹介します。
理由を知れば、自分を責めずに、前に進められるはずです。
1. 成果を急ぎたくなる「完了欲求」
私たちは、何をするときにも、目に見える成果を求めたくなります。
人は、「終わった」「やりきった」と感じられると、強い満足感を得ます。
けれど、あまりに小さな行動だと、目に見える効果がないので、やりきった感覚を得られません。
引き出しの中を整理しても、部屋全体は変わりません。床に散らかっている紙を1枚拾ってもそうです。
すると、「こんなことして意味があるのかな」と、やる気が削がれてしまうのです。
実際、「毎日せっせと捨てているけれど、何も変わりません。いったいいつになったら終わるんでしょう?」という焦りと疲れがにじんだお便りを何通もいただきました。
多くの人は、少しずつ進めることに意味を見いだせず、「いっそ何もしない方がまし」と感じてしまいます。
また、完了欲求が強い人は、最初からゴールを大きく設定しがち。
「全部やるぞ」と意気込んで始めて、作業に疲れてやめてしまうこともよくあります。
2. 他人と比べて、やる気をなくす
1日1個だけ捨てることにしても、他人の片付いた部屋を見た瞬間に、その気持ちが揺らぐことがあります。
SNSには、ゴミ袋を山ほど積んだ「捨てました!」写真や、ミニマリストの美しい部屋、劇的なビフォー・アフターがあふれています。そうした完成形を目にすると、つい「自分も早くここまで行かなくては」と焦ってしまうのです。
これは、見ず知らずの他人の部屋が、自分の規準になってしまう状態です。
人は規準を決めて判断しますが、この規準の妥当性についてはあまり深く考えません。ほとんど直感で規準を決めます。
その結果、せっかく断捨離を開始したのに、「この程度で何になるの?」「もっとたくさん捨てなきゃ」と考えてしまいます。
今、捨て活に関する情報は、テキスト、画像、動画を問わず、たくさんありますよね。
「コツコツ捨てる」というあなたの決心をぐらつかせるものは、いくらでもあると言えるでしょう。
私がどれだけ、「小さい行動から始めましょう」と書いても、すぐに忘れて、一気に捨てようとするまずいやり方に走るのは無理はないかもしれません。
特に、片付けを始めた当初はモチベーションが高いので、「もっとたくさん捨てられる」と思って、長時間、捨て活をしてしまうものです。
しかし、断捨離は長距離マラソン。一気に捨てようとするより、小さな片付けを継続するほうがうまくいきます。
3. 脳が小さな行動を意味がないと感じてしまう
小さな行動を「意味がない」と感じるのは、脳のごく自然な性質です。
人間の脳は、即効性のある変化や報酬を好む傾向があります。
たとえば、ダイエットなら「1週間で3kg減」、片付けなら「1日で部屋が見違える」といった成果が得られれば、脳は「それは意味のあることだ」と判断します。
一方、机の上にある紙を1枚捨てたところで、見た目は何も変わりません。すると、脳はその行動を「やる価値のないもの」とみなします。
さらに、人間の脳には「現状維持バイアス」と呼ばれる傾向もあります。これは、変化よりも慣れた状態を好み、元に戻ろうとする働きです。
そのため、小さな変化であっても、無意識に抵抗が生まれ、「今のままでいいか」と感じやすくなります。
こうした脳の特性は、意思や性格とは関係なく誰にでもあります。
つまり、片付けが続かないのは、あなたがだらしないわけでも弱いわけでもありません。
脳が、小さくて地味なことには報酬を感じにくく、派手でわかりやすい結果に反応しやすいようにできているだけです。
どれだけ頭で「これをやった方がいい」と思っていても、脳が「それ、意味ないよ」と判断してしまえば、残念ながら、行動にはつながりません。
4. 完璧主義という思考のクセ
「どうせやるなら、きちんとやりたい」
まじめな人ほど、こう思います。いわゆる完璧主義です。そしてこの思考が、小さく始めることを妨げることがあります。
たとえば、引き出しを1つをきれいにするのは、中途半端だと感じ、「どうせなら棚ごと全部やったほうがいい」と考えてしまう。
物置の棚のはしっこを片付けるだけでは飽き足らず、物置全体を片付けたくなる。
こういうことはよくあると思います。
しかし、こうした大がかりな作業をするには、時間も体力も気力も必要です。結果として何も始められないか、始めたとしても、途中で挫折します。
また、「やり方が間違っていたらどうしよう」「後で後悔するかもしれない」と考えすぎて、捨て活を開始しない人もいます。
完璧を目指すあまり、最初の行動そのものができないので、大きくも小さくも始められません。
完璧主義は、一見すると高い理想に向かって邁進するよい傾向ですが、実際には「間違えたくない」「失敗したくない」という不安の裏返し。
断捨離においては、「完璧にやろう」という思考は、何もできない状態を長引かせるだけです。
汚部屋の片付けを完璧主義が邪魔する7つのパターンとその対処法。
5. わざわざやるほどのことじゃないと思ってしまう
断捨離をしようと思っても、「ほんの少しだけやるくらいなら、やらなくても同じじゃないか」と感じることがあります。
たとえば、机の上の紙切れを1枚だけ捨てる。棚から1着だけ服を抜く。
これらは、時間にして1分もかからない作業です。
でもその手軽さゆえに、「それなら、あえて今やるほどのことでもない」と思ってしまうのです。
この「何も、今、わざわざやることはない」という感覚も、小さく始めることを邪魔します。
そして、「別に今やらなくてもあとでやればいい」と行動を先延ばしします。
本来は、そんなに努力しなくてもできるからこそ、小さな行動は続けやすいのですが、簡単であるがゆえに、その行動に価値を見いだしにくいのです。
捨てることを先延ばしするくせを分析しよう~ガラクタを増やすライフスタイルをやめる(その5)
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今回は小さく始めることが難しい理由を5つ紹介しました。
どれも、片付けを始めようとするたびに、多くの人がぶつかる壁だと思います。
小さく始めることを邪魔しているものに気づけば、「片付けを始められない」とか、「継続できない」という状態から抜け出せると思います。
次回は、小さな行動ができない理由を踏まえた上で、実際に、小さく捨てることを習慣にする方法を紹介します。
気合いややる気に頼らず、気づいたら動いていた――そんな状態をつくる仕組みづくりを一緒に考えてみましょう。
自分に合ったペースで、無理なく片付けを継続したい方は、ぜひ次回も読んでみてください。