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「何かを得るために、何かを手放す」。
トレードオフの考え方を使うと、片づけの判断がぐっとラクになります。
片づけをしていて一番悩ましいのは、捨てるかどうか迷うことではないでしょうか。
「もう使わないかもしれない。でも、いつか必要になるかもしれない」
ものを手に取ったまま、何分も固まってしまった経験は、きっとあなたにもあるはず。
迷っているとき、2つの不快感が生じています。捨てない今の不快感と捨てたあとの不快感です。
2つの不快感を並べて、「どちらがまだマシか」と考えると、迷いがぐっと減ります。
迷いを起こす2つの不快感
捨てるか残すか迷っているとき、頭の中で、2つの不快感が戦っています。
1つ目はものを持ちすぎているせいで生まれている居心地の悪さです。
ものが多いと、収納がいっぱいになり、部屋が散らかり、掃除も面倒になります。
探し物が増えたり、「片づけなきゃ」というプレッシャーを感じたりすることもあるでしょう。
2つ目は手放したあとを心配して生まれる不安です。
捨てたあとに必要になったらどうしよう、後悔したらどうしよう、こんな不安です。
2つの不快感は、どちらも本物の感情です。
だから、「気にしなければいい」と言われても、なかなかそうはいきません。
でも、大事なことがあります。
両方の不快感を完全になくすことはできません。
ものを持てば持つほど、持ちすぎによる嫌な気分は大きくなります。
かといって捨てれば、手放したあとを心配する気持ちが出てきます。
何かを選ぶとき、必ずトレードオフ(何かを得るために、あきらめるものを決めること)が発生します。
片づけもまったく同じです。
どちらの不快感がまだマシか判断するのが現実的です。
持ちすぎの不快感とは?
まず、ものが多い状態がどんな不快感を生むか、見てみましょう。
ふだん慣れてしまっていて気づきにくいのですが、ものが多い生活には、じわじわと続くストレスがたくさんあります。
たとえば、収納がパンパンで出し入れしにくい状態。
引き出しを開けるたびに中身が引っかかったり、クローゼットから服を取り出すのに苦労します。
こうした小さな不便を1日に何度も感じます。
視覚的なノイズも見逃せません。
テーブルの上に書類や雑貨が散らかっていると、それだけで頭が疲れます。
目に入る情報が多いと、脳は休まりません。
私が見つけた視覚的ノイズ~取り外してみたらほこりだらけだった。
掃除や管理に時間を取られることも不快感を生みます。
ものが多いと、掃除のたびにどかして拭いて戻す、という作業が増えます。
休みの日に整理整頓に追われて、結局リラックスできなかった、ということもあるでしょう。
そして、「片づけなきゃ」と思いながら手をつけられない状態が続くと、罪悪感やプレッシャーが慢性化します。
これがいちばん厄介かもしれません。
ものがあるだけで気持ちの負担が続くのです。
私自身、若い頃は、ものが多くて収納に苦労していました。
当時は「まあ、こんなものだろう」と思っていましたが、減らしてから振り返ると、毎日のように感じていた圧迫感やイライラは、ものの多さから来ていたとはっきりわかりました。
慣れてしまうと、不快な状態にいることに気づきにくいです。
手放したあとの不快感とは?
捨てたあとの不快感も、いろいろあります。
たとえば、使うときになくて焦るかもしれない、大切な思い出のものをなくしたと思うかもしれない、「やっぱり取っておけばよかった」と後悔するかもしれないという気持ちです。
特に、「後悔するかもしれない」という気持ちは強力です。
捨てることに不安を感じるのは、ごく自然な反応です。
ただ、ひとつ知っておいてほしいことがあります。
これらの不安は、起きるかもしれない未来を想像して感じています。
今この瞬間に起きていることではなく、「もしかしたら将来こうなるかも」という想像上の心配です。
人は、失うことに対して実際より大きな痛みを感じるようにできています。
これは、心理学で「損失回避」と呼ばれる傾向です。
つまり、「捨てたら困るかも」という不安は、現実以上にふくらんでいる可能性があるのです。
実際には、捨てたあとの不快感はそんなには起こりません。
私はこれまでたくさんのものを手放してきましたが、「あれを捨てなければよかった」と心から後悔したことはありません。
捨てた直後は少しソワソワすることもありますが、数日もすれば忘れてしまいます。
「なくても全然困らなかった」と気づくことのほうが圧倒的に多かったです。
もちろん、ごくまれに「あれがあったら便利だったな」と思ったことはあります。
だいぶ前のことですが、文房具をほとんど捨てました。その後、塗り絵を始めたとき、「あれがあったら今使えたかも」と思ったことはあります。
でも、そのときはそのとき。本当に必要なら買い直せばいいし、別のもので代用できることもあります。
実際、私も色鉛筆やマーカーを買い揃えました。
手放したあとの不快な気分は、今自分の頭の中で大きく感じていますが、実際に捨ててみると、思ったよりずっと小さいことが多いのです。
「どちらがまだマシか」で判断する
ここまで読んで、2つの不快感の性質が少し見えてきたのではないでしょうか。
整理すると、こうなります。
持ちすぎによる不快感は、今この瞬間に起きている慢性的なストレスです。
毎日じわじわと続き、慣れてしまっていて自覚しにくいかもしれません。
手放したあとの不快感は、まだ起きていない将来への不安です。
想像の中では大きく感じますが、実際に起きることは少なく、起きても対処できます。
この2つを天秤にかけて、「自分にとってどちらがまだマシか」で判断するのが、トレードオフの思考です。
たとえば、気に入って買った靴を予備として5年間しまったままだとします。
1足目がまだ使えるから2足目に切り替えるタイミングがわからない。
こんなときの、持ちすぎによる不快感と、手放したあとの不快感を比べてみましょう。
予備の靴が収納スペースを圧迫していて、ほかのものの出し入れがしにくくなっているなら、持ちすぎのストレスのほうが大きいかもしれません。
逆に、収納に余裕があって、予備があることで困っていないなら、無理に捨てる必要はないでしょう。
正解はひとつではありません。
同じアイテムでも、人によって、また状況によって、答えは変わります。
ただ、片づけに悩んでいる人の場合、たいてい持ちすぎによる負担が大きくなっています。
捨てたら困るかもという不安に引っ張られて、慢性的なストレスを見過ごしているのではないでしょうか?
迷ったときは、もう少し正直に、持ちすぎによって生じている感情に目を向けてみてください。
今この瞬間、自分がどれだけ快適に暮らせているか。この点に意識を向けると、答えが出やすくなります。
トレードオフ思考で片づけるステップ
ここから、トレードオフの考え方を実際の片づけに使うステップをお伝えします。
迷っているものを1つ手に取って、次のように進めてください。
1)これを持ち続けた場合、どんな不快感があるか書き出す。
場所を取る、管理が面倒、見るたびに気が重い、など。
2)これを手放したとき、どんな不快感があるか書き出す。
また買うかもしれない、後悔するかもしれない、思い出がなくなる、など。
3)並べて比較し、マシなほうを選ぶ。それが答えです。
頭の中だけで考えず、紙に書き出しましょう。
書き出すと、もやもやした不安が言葉になって、客観的に比較しやすいです。
さらに、「今の自分」を基準にしてください。
5年前の自分や10年前の自分、もしくは5年後の自分ではなく、今の生活、今の気持ち、今の収納状況で判断します。
ライフスタイルは変わります。
以前は必要だったものが、今はもう役目を終えていることはよくあります。
紹介したステップは、高価なものや思い出の品など、判断が難しいアイテムにも使えます。
2つの不快な感情を並べて比べるというシンプルなやり方をすると、冷静に考えることができます。
すべてのものに対して毎回このステップを踏む必要はありません。
明らかに不要なものはさっと捨てて、ものすごく迷うものだけこの方法を使ってください。
マシな不快感を選ぶことは、暮らしを選ぶこと
片づけとは、何を持つかを決めること。
何を持つかを決めることは、どんな暮らしをしていくか決めることです。
どちらの不快感ならまだマシかと判断するのは、望む暮らしを選ぶのと同じことです。
ものが少ないほうが気楽でのびのびできる人もいれば、備えがしっかりあるほうが安心して暮らせる人もいます。
どちらが正しいということはありません。
ただ、なんとなく持ち続けるのと、自分で考えて持つと決めるのは、まったく違います。
同じものを持っていても、自分で選んだものに囲まれた暮らしは、すっきりとした気持ちのいいものです。
迷ったときは、ぜひこの問いを思い出してください。
「持ちすぎの不快感と、手放したあとの不快感、どちらがまだマシだろう?」
この自問を繰り返しているうちに、自分にとっての心地いい暮らしの輪郭が、見えてくるでしょう。
断捨離は全部捨てることじゃない:自分に合った適量を見つける方法
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片づけで迷ったとき、不快な感情を比べて選ぶ方法を紹介しました。
ものを持ちすぎるストレスと、手放したあとの不安。
どちらも避けたいけれど、両方を完全になくすことはできません。
自分にとってどちらが軽いか考えて選びましょう。
このとき、正しい判断をしようと力まないでください。
「まあ、こっちのほうがマシかな」ぐらいの気持ちで選んでください。
それだけで、片づけの手が止まる時間がぐっと減りますよ。














































