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秋から暮れにかけて買い物シーズンですね。
人間は誰でも買い物が好きで、ショッピングをすると気分がよくなります(一時的に)。
これはドーパミンの分泌のせいである、というのが通説です。買い物とドーパミンの関係を知れば、衝動買いや無駄遣いで後悔することが減ります。
この記事では、ドーパミンがどんなふうに買い物に影響を与えるのか、その影響を阻止するにはどうしたらいいのか、わかりやすく説明します。
ドーパミンとは?
まず、ドーパミンとは何か、簡単に説明します。
ドーパミンは脳内の神経伝達物質で、心身の健康の鍵を握っています。
ドーパミンは人に喜びの気持ち(快の気持ち、満足感)をもたらします。これがないと、やる気を出したり、学んだり、記憶したり、運動したりといったことが、できなくなります。人の行動の源(みなもと)とも言えましょう。
パーキンソン病の人は、ドーパミンのレベルがとても低いので、体をうまく動かすことができません。
通常、脳が「よし、これはよいことだ。またやりなさい、どんどんやりなさい」と判断したとき、ドーパミンが出ます。どんどんやってほしいので、ドーパミンが出ると、人は快感を感じるのです。
ドーパミンは報酬系の回路とも呼ばれています。
何かを常習したり、何かに依存しているときもドーパミンが活性化されています。
ただ、ドーパミンが分泌されると、快感を感じますが、それで満たされるわけではありません。人を幸せな満たされた気分にするのはエンドルフィンという別の物質です。
ドーパミンはどこまでも人を駆り立てます。
というのも、きょう、ドーパミンが50ぐらい出て楽しい気持ちになっても、次は、50では満足できなくなるのです。ドーパミンをどんどん出していると、次第に行動がエスカレートします。
パーキンソン病の治療のために、人為的にドーパミンの量を増やしすぎると、副作用として、どんどんお酒を飲んでしまったり、ギャンブルにはまったり、といった困ったことが起きます。
甘いもの(砂糖)を食べると、ドーパミンが出るのは、以前説明しています⇒砂糖への依存性はこうして起きる。甘いものをやめるために1番大切なこととは?
なぜ買い物が報酬系を活性化するのか?
実は、買い物そのものよりも、その前の「期待感」に対して、ドーパミンがたくさん出ますが、これは次の項目で説明するとして、先に、なぜショッピングが報酬系を活性化させるのか書きます。
ショッピングすると楽しい気分になるのは、それが目新しいものを手に入れる行為だからです。
脳は、新しいこと、わくわくするようなこと、チャレンジングなことが好きなのです。
結局、脳は、自分を守り、種を保存することを第一の目的として進化してきました。
人が、きのうまではなかった場所に、珍しい木の実がなっていたり、見たこともない動物を発見すると、脳は「これは、食べられるんじゃないか?」という期待感をもたらし、「よし、ゲットしろ」と指令するのでしょう。
まあ、ことはこんなに単純ではないと思いますが。
赤ちゃんも、目新しいことは、何にでも興味を持ちますよね。
自分はまだ持っていない、新しい何かを手にいれることは、脳が大好きな行為なのです。
最新流行の服、初めて見るガジェット、これまでにはなかった未知の商品、まだ友だちは誰も持っていない商品、新しいラインのコスメ、まだ食べたことのない物、自分の知らない地域の名産品、外国の商品などなど、目新しい物に対しては、脳が「いいね!」と反応します。
ドーパミンは期待感に対して出る
買い物してるときも、一応ドーパミンは出ていますが、どちらかというと、何かを買うその前の、わくわくしているときに、よりドーパミンが活性化されます。
ドーパミンは期待感に対して分泌されるのです。
クリスマス、お正月、運動会、結婚式、その他のイベントも、当日よりも、待っているときのほうが楽しいですよね。
カナダに来て、わりとすぐのクリスマスに友だち家族に招かれたことがあります。大きなツリーの下に、たくさんプレゼントの箱が並んでいました。
みんな、包装紙をやぶって、中をあけるまでは興奮していましたが、いったん開けたあとは、もうそこまでうれしそうではなかったです。
まあ、子供は、中に入っていたおもちゃで遊び始めたりしましたが、大人だと、「ああ、このセーター全然趣味じゃないわ」と笑顔がひきつっていた人もいました。
これはクリスマスのごちそうも同じで、楽しいのは食べる前と最初の一口か二口あたりまで。この黄金タイムを過ぎてしまうと、飲み過ぎ食べ過ぎで気分が悪くなるだけです。
なぜ、待っているときに、よりドーパミンが出るのか?
これは、脳が新し物好きだからです。プレゼントの中を開ければ、それはもう未知の物ではないのです。すでに古い物に近くなっています。
かくして、人は次の新しい物を求めます。
買い物依存の人も、楽しいのは買うところまでだと思います。
買う前はわくわくしていても(というより切羽詰まった気持ちかもしれませんが)、買う物を手にして、レジに並んでいるそのときは、すでに気持ちが萎えているかもしれません。
買ったその瞬間は、「ああ、また買ってしまった」とか、「支払いどうするべ?」といったネガティブな感情のほうが強いんじゃないでしょうか?
報酬系は予測できないものに対してより活性化される
脳は未知のもの、わくわくするものが好きなので、意外性のあることが好きです。
予測できることより、予測できないことのほうが、わくわくしますよね?
人は、2パーセントの利率で毎年確実に増えていく預金口座にお金を入れることより、宝くじを買うほうが好きなのです。年末ジャンボの宝くじで当たる確率は1000万分の1だと言います。
あまりに確率が低すぎてピンと来ません。それなのに、多くの人が宝くじを買っています。当たるのはとてつもなく意外なことだからです。
パチンコなどのギャンブルが人気なのも結果を予測できないからでしょう。
意外性のあるほうが楽しいので、福袋や頒布会も好まれます。
福袋は何が入っているのかわからないから、冷静に考えると、ものすごく損です。しかし、中身がわからないからこそ、ドーパミンが出て、毎年買ってしまうのです。
私も以前は福袋が大好きでした⇒もう買うのやめたら?福袋の失敗のダメージは想像以上に大きい
フェリシモの頒布会が好きだったのも、「予測できないこと」に対して、報酬系が活性化されていたのでしょう。
雑誌に付録をつけると売れるのも、中身を予測するのが難しいからだと思います。
脳は、わからないこと、予測できないことが好きなのです。
男性がいったん手に入れた女性に対してすぐに興味を失い、次々と新しい女性を追いかけるのも、ドーパミンの分泌に対して、忠実な行動をしているからかもしれません。
ドーパミンは出れば出るほど、行動がエスカレートするので、浮気性な人は、何か決定的なことがないかぎり、行動は変わらないような気がします。
なお、脳内で分泌されている物質はほかにもあるので、人によってドーパミンの奴隷になる度合いはさまざまです。
ドーパミンはストレス反応も引き起こす
ドーパミンは人を楽しい気分にさせるだけではありません。ストレスホルモンの分泌も促します。
ドーパミンが出てわくわくしているときは、行動に駆り立てられているときです。行動しなければいけないので、身体は、「戦うか逃げるか反応」(fight or flight response)をします。
「戦うか逃げるか反応」の説明はこちら⇒運動をしないとどんなことになるのか。運動不足の6つの弊害
心拍数があがって、筋肉に血がどどどっと流れ込みます。買い物しているときは、人は闘争的なのです。セールの会場で獲物(目玉商品)のセーターをつかみあう女性を考えてみればわかることですね。
ブラックフライデーに小売店に群がる人々なんて、狩りをしている人さながらです⇒ブラックフライデーとは?大勢のアメリカ人が命がけで買い物をする日の由来
セールであんなに本気になるのは、別の心理的な要素もあります。人は損をするのが嫌いなので、「このお得商品をどうしてもゲットしたい」と思ってしまうのです。よくよく考えると、買わないほうが得なのですが。
人は損をするのが嫌いな話⇒物を捨てられないのは恐怖のせい~損失回避と、授かり効果の心理をさぐる
セール品は買わないほうがお得な話⇒安売り好きに伝えたい、セールで物を買うとお金が貯まらない4つの理由。
ドーパミンのワナにはまらない秘訣
ショッピングのことを考えたり、実際にしているときは、以上のように脳内の報酬系が活性化されています。この事実を知っておくと、何も知らないときよりも、衝動買いが減ります。
実際、私もドーパミンのことを考えるようになってからは、無駄遣いが減りました。
ただ、ドーパミンが出るのはほとんど生理的な反応なので、なかなか自分の思い通りにはいきません。以下の対策をほどこすと、無駄な買い物が減ると思います。
売り場で初めて見たものは決して買わず、翌日出直す
衝動買いする物は、売り場で初めて見た物だと思います。未知の商品だから魅力的なのです。
そこで、「初めて見た物は買わない」というルールを作るといいでしょう。いったん家に帰って考え直したり、翌日、また店に行って買うのです。一度見たことのある商品はもう「新しい物」ではないので、初見のときほど魅力的ではありません。
ふだんから買い物リストを用意しておき、リストにある物だけを買う
リストに書いた段階で、だいぶ「未知数」な部分が減っています。
クレジットカードを使わない
どんなに冷静な人でも、人間である以上、新しい物を見るとドーパミンが出ます。現金かデビットカードを使って、買い物する金額に物理的な制限をかけておいたほうがいいです。
クレカそのものに、買い物をしすぎてしまうワナがあります⇒クレジットカードを使うとお金を使いすぎてしまう5つの理由
ネットショップではなくリアル店舗で買う
ネットショップでは、商品を見ることができません。「予測のできなさ加減」がアップしてしまい、ドーパミンが活性化されます。
アマゾン、楽天市場、いずれも危険ゾーンです。メルカリなどのフリマアプリも同じです。
なじみの店で買い物をする
旅先のお土産物屋さんで、よけいなものをたくさん買ってしまうのは、そこが自分にとって新しい場所だから。
知らないところでは、財布のひもをしめましょう。
カタログはすべて停止
カタログ販売を利用している人は、カタログを見ないようにします。
カタログには未知の商品がたくさん並んでいるため、見れば見るほどほしくなります。これは私も経験していることです。
過去に、アメリカのランズエンド(Lands’ End)で2回、買い物をしたら、カタログを送ってくるようになりました。キャンパスノートぐらいの大きさで、100ページほどの薄っぺらいカタログです。
先日、それを見ていたら、「おお、このジャケット、あたたかそうでいいわね」と思う自分がいました。ドーパミンが分泌されたのです。ランズ・エンドの場合、「30%引き」という文字が入っていたりするので、それもドーパミン活性化に寄与しています。
洋服を買いすぎる人は、ファッション雑誌も見ないほうがいいです。
ウインドウショッピングにとどめる
ウインドウショッピングだけなら、楽しい気持ちで終わって、買わずにすむ、という人がいます。
以前、インスタを見ているとどんどん欲しくなってしまう、という質問に答えたことがあります⇒節約したいならSNS(特にインスタグラム)は見ないほうがいい6つの理由。
この記事に対して、「私はピンタレストに、いいなと思う写真を集めて、それを眺めて満足しています」というお便りをいただいたことがあります。こちらで紹介しています⇒とてもシンプルな自信のつけ方を教えてもらいました。 「Pinterest(ピンタレスト)の利用で賢く買い物しています」のところです。
この方法がうまくいく人は、ウインドウショッピングを試してください。うっかり買ってしまわないように、交通費以外は持って出ないようにしましょう。
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今回は、買い物で気分があがる大元の理由であるドーパミンについてお伝えしました。
アメリカンにはショッパーズ・ハイ(Shopper’s high)という言葉があります。買い物でハイになる、ということです。
買い物をすればするほど、その行動が強化されてしまうので、貯金をしたい人、依存気味の人は気をつけてください。