ページに広告が含まれることがあります。
ゴールめざしてがんばりすぎて燃え尽きぎみ、目標を達成しても、どこか虚しい。そんな人に、意味のある人生とは何かを考えさせてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、How to Live a Meaningful Life(意味のある人生を送る方法)。スピーカーは社会心理学者で、スタンフォード大学教授のブライアン・S・ローリー(Brian S. Lowery)さんです。
個人の成功や達成だけを追い求めていても、人生に意味は感じられない。本当の意味は、ほかの人の物語に参加することから生まれるという内容です。
いかに意味のある人生を生きるか
このトークは「成功と意味は別物」という当たり前のようで難しいテーマを、具体的な体験と研究の言葉で整理してくれます。
収録は2024年4月、長さは14分。日本語字幕あり。動画のあとに、要点を私の言葉でまとめます。
◆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ローリーさんは、見るからに誠実そうな方です。日本語字幕があるし、発話はゆっくりなので、英語の勉強素材にもおすすめです。
成功しても満たされない
このトークの核は、「達成の先に意味が待っている」と思い込みすぎると、達成しても満たされない、という指摘です。
目標を叶えた瞬間は確かにうれしいし、気分も上がります。ところが、その高揚感は薄れやすい。すると「次は何を達成すればいいの?」と心にぽっかり穴があき、虚しさが顔を出します。
ローリーさん自身も、教授として大きな節目(テニュア)を通過したあとに、「これで終わり? これがすべて?」という感覚を経験したそうです。彼は、そこで初めて、成功が人生の意味を保証してくれるわけではないと気づきました。
人生の意味をつくる3つの要素
人生の意味は、ふわっとした気分ではなく、いくつかの要素に分解して考えられます。
ローリーさんはリサーチから、人生の意味を支える要素を3つ挙げます(英語の用語は動画で確認できます)。
- 一貫性(coherence):世界が理解でき、ある程度予測できるという感覚
- 目的(purpose):将来に向けて、自分の行動の方向が定まっている感覚
- 意義(significance):自分の存在が「今この瞬間」以上の広がりを持つという感覚
この3つがそろうほど、人は「生きている意味」を感じやすくなります。問題は、個人の成功が、このうちの一部(特に一貫性と目的)を強く満たしてくれるところにあります。
成功が「意味」に見えてしまう理由
成功を追いかけると気持ちがラクになるのは、成功がわかりやすい報酬をくれるからです。
ローリーさんは、私たちが「意味」を「成功」で代用してしまう理由を、次のように説明します。
- 数値化しやすいから:合否、年収、肩書き、フォロワー数など、結果がすぐ見える
- 気分がよくなるから:達成の快感があり、短期的な高揚感が得られる
つまり、成功は「わかる」「追うことができる」「気持ちいい」という三拍子がそろっています。そのせいで、気づかないうちに、深い意味を探す代わりに、達成を積み上げる方向へ偏ってしまうのです。
ここで大事なのは、成功そのものが悪いわけではない、という点です。
成功はすばらしい。けれど、成功だけでは、3つ目の「意義(significance)」が見つかりにくい。だから、達成しても虚しさが残ることがあるのです。
意味を増やす2つの実践
人生の意味を増やすには、成功を捨てるのではなく、「意義」の要素を意識的に足すことが近道です。
ローリーさんがすすめる方向性は、ざっくり言うと次の2つです。
1. 他者の物語に参加する
意味が生まれやすいのは、自分の人生の主役として輝くことより、誰かの人生を前に進める側に回ることです。
ここで出てくる比喩が印象的です。彼は、「主役のエネルギー」があふれている人は多いが、意味がほしいなら「脇役のエネルギー」を使ってみようと提案します。
脇役というと地味に聞こえますが、誰かの成長や挑戦がうまくいくように、裏側から支えることです。人の人生をよくすることに関われた実感は、達成の快感とは違うタイプの満足感をもたらします。
ローリーさん自身も、博士課程の学生を指導するなかで、この感覚を経験したそうです。
自分もテニュアを心配していた時期に、学生の成功を心にかけていた。その経験が、達成とは違う種類の満足感をもたらしたと語っています。
2. 「意味=幸せ」とは限らないと知る
もう1つ大事なのは、意味を追うとき、いつも気分がいいとは限らない、という現実を受け入れることです。
他者に関わるのは時間もエネルギーも使います。
ときには面倒だし、報われた感じがしない日もあります。それでも、意味はそういうところから育ちやすい。短期的な快楽では測れない価値があります。
たとえば、子育てに多くの時間を費やす親は、人生により多くの意味を感じるけれど、必ずしもより多くの幸せを感じるわけではない、という研究もあるそうです。意味と幸せは、同じではないのです。
意味は循環する
ローリーさんは、人生の意味は「与える」と「受け取る」の循環で生まれると言います。
誰かがあなたを自分の物語に招き入れてくれたとき、あなたは意味を受け取ります。逆に、あなたが誰かの人生に関わるとき、その人に意味を与えることになります。
この循環を意識すると、「自分が意味を感じられるかどうか」だけでなく、「誰かに意味を与えられているかどうか」という視点が生まれます。
自分の人生に意味があると感じられるなら、それは誰かがあなたを物語に招き入れてくれたから。そう考えると、感謝の気持ちが自然と湧いてきます。
そして、あなたが誰かを自分の人生に参加させるとき、その人に意味を生み出す機会を贈っていることになります。
意味を求める人間の深い欲求は、与えることと感謝することの循環で、私たちをつなげているのです。
人生の意味に関するほかのプレゼン
同じテーマが気になる方は、以下の記事もごらんください。
幸せになるだけが人生じゃない。生きる意味が見つかる4つの柱(TED)
なぜ人は自分が本当に求めている物を追求しないのか?(TED)
死を前にして何を思うか? ある救急救命士による臨終の告白(TED)
人生と執筆から学んだ12の真実:アン・ラモットが語る、生きる力(TED)
シンプルライフのその先にあるもの
このトークでいちばん印象に残ったのは、「主役のエネルギー」ではなく「脇役のエネルギー」が人生の意味につながる、という部分でした。
多くの人は、自分の人生をよくするためにシンプルライフを目指します。不要なものを捨て、やりたいことに時間を使おうとします。私も長年そうしてきました。
でも、その先にあるものは何だろう? と考えることがあります。
シンプルに暮らすことで手に入れた時間と気持ちの余裕を、誰かの人生をよくすることに使えるかもしれない。そう考えると、シンプルライフは自分を整えるだけで終わらず、誰かの人生に参加する方向へ広がります。
自己実現をがんばるとき、どうしても全エネルギーが自分に向いてしまいます。その結果、うまくいってもどこかで虚しくなるかもしれません。
一方、誰かの挑戦を後ろから支える、ほんの小さな脇役になる道もあります。そういう行動は派手ではないけれど、意義(significance)を増やします。だから心が満たされやすいのだと思います。
たとえば、家族の話を聞く、友人の挑戦を応援する、職場で後輩をサポートする。そういった小さな関わりも、誰かの物語に参加することです。
シンプルライフで生まれた余裕を、こうした関わりに使えたら、自分の人生だけでなく、誰かの人生も少しよくなるかもしれません。
シンプルに暮らして生まれたエネルギーや時間を、誰かのために使う。それが、意味のある人生につながると感じました。
—
シンプルライフに役立つTEDトークの記事、今回から全文の抄訳ではなく、私の要約を紹介することにしました。
著作権侵害をしないための配慮です。
これからもよろしくお願いします。














































