Tシャツを着て、考えている女性

TEDの動画

最終更新日: 2024.10.12

あなたのTシャツは肌に毒になっていませんか?~衣料品に含まれる有毒なもの(TED)

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私たちが普段何気なく着ている洋服に、健康や環境に悪影響を与える化学物質が含まれていることをご存じでしょうか?

Is your T-shirt poisoning your skin? (あなたのTシャツは肌を毒していませんか?)というTEDトークでは、ファッション業界が使っているプラスチック製品や有害な化学物質について、人があまり意識を向けない事実が語られています。

講演者は、サステイナブルなファッションを提供するビジネスをしている、Priyanka Ladha(プリヤンカ・ラーダ)さん。

このトークを通じて、ファッションが私たちの健康や環境に与える影響を考え、今後は、エコフレンドリーな選択をするきっかけになればと思います。



危険なTシャツ:TEDの説明

Is your wardrobe hiding a toxic secret? Discover how everyday clothing, from polyester t-shirts, bpa laced underwear’s to water-resistant jackets, could be exposing you to harmful chemicals and microplastics. Learn the shocking truth about what your skin absorbs from your clothes and how to protect yourself from fashion’s hidden health hazards.

あなたの服に毒性が隠れていませんか?

日々着ている服、ポリエステルのTシャツからBPAが含まれたレースがついた下着、防水性のあるジャケットが、有害な化学物質やマイクロプラスチックにあなたをさらしているかもしれません。

衣類から肌がどんな物質を吸収しているのか、その衝撃の真実を知り、ファッションに潜む健康リスクから自分を守る方法を学びましょう。

収録は2024年の7月、動画の長さは10分38秒。動画のあとに抄訳を書きます。

かなりショッキングな内容ですね。





化学薬品に頼っているファッション産業

ここにあるプラスチックのボトルを溶かして、がん、生殖機能、呼吸器の疾患、皮膚病などの問題を引き起こすと科学的に証明されている化学物質を混ぜ合わせ、煮沸したものに触りたい人はいませんよね。

でも、多くの人は、そういうものに触るだけでなく、着ていると言ったら、どう思いますか?

ファッション業界の有毒な世界にようこそ。

父がテキスタイルデザイナーで起業家なので、私は5歳のときから、テキスタイルや職人たちに囲まれて育ちました。

大人になり私はサステイナブルファッションのテック企業を3つ立ち上げましたが、3つ目はスタンフォードで作りました。

生涯を通じて、私は「どうやったらファッションを再びサステイナブルにできるか?」ということを考え続けてきました。

いかに、有害な化学薬品に頼らないファッションを作り上げることができるか?

現在、ファッション業界は、世界の工業用化学薬品の25%を使っています。

どうやったらこの状況を根本的に変えることができるか?

最初のステップはこの問題に気づくことです。このトークで、ファッション業界が、化学物質をいかに巧妙に、私たちが知らない間に加えているか紹介します。

ポイントは、生地、染料、加工処理です。

ポリエステルの問題

服の70%が、ポリエステル、つまりプラスチックからできています。

ペットボトルに使われているのと同じプラスチックです。

安価で、簡単でどこにでもあるので使われます。

ポリエステル製の衣料は、常にマイクロプラスチックを放出しています。私たちはマイクロプラスチックを吸い込み、汗にまざったものを吸収し、心臓発作などの問題を引き起こします。

マイクロプラスチックと共に体内に入る染料や薬剤も問題です。

分散染料の問題

ポリエステルには、天然素材を染めるのに使う通常の化学物質でできた染料を使うことができません。

そこで分散染料を使っています。分散染料は粗い布地と同じ分子構造を持っていて、本質的にプラスチックです。

分散染料は水に溶けないので、分子の中に吸収されます。ポリエステルの服を着るとき、実際にはこうした有害なケミカルを着ているのです。

現在、世界に4000以上の分散染料があり、すべてに毒性があるわけではありません。

しかし、多くが、単体で毒性を持ちます。これらの染料を何層にも重ねて使用すると大きな問題になります。

さらにファッション業界は、鉛、水銀、カドミウムなども使っています。

2022年、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)が、子供服を調査し、バービーのついたスカートや子供用のレインコートに、鉛の許容量の20%も超える量が含まれていることを発見しました。

子どもは、服を着るだけでなく、しゃぶりもします。子どもに鉛や水銀を与えていいのでしょうか?

悪しき処理剤:BPA、PFAS

2021年、カリフォルニアの環境保護センターが、ソックス、スポーツブラ、医療全般にBPAが過剰に含まれているという警告を100以上の衣料ブランドに出しました。

BPAは、内分泌かく乱物質で、体内のホルモンと似た分子構造をしており、体内に入るとホルモン分泌の混乱を起こします。

BPAはほんの少し入っただけで問題を起こします。オリンピックで使うプールに一滴落とすだけで、十分なかく乱が起きます。

BPAと一緒に、PFASも体内に入ります。

防水、汚れがつかない、消臭、シワがつきにくいといった特徴のあるジャケットを着るたびに、毒性のあるPFASが体内に入ります。

PFASが、空気を介して、また汗をかいたときマイクロプラスチックとして体内に入ると、さまざまな問題が生じます。

たとえば、甲状腺の病気、皮膚のトラブル、呼吸器系の異常、がん(結腸がんや乳がんなど)。

規制は追いつかない

皆さんは、こうした行為がなぜ規制されないのか不思議に思うかもしれません。

連邦政府には3つの規制しかなく、子供服に対するものだけです。

大人の衣類については何の規制もないのです。規制がなければ、業界が健全な行動に向かうインセンティブもありません。だから、この問題を巧妙に回避し続けています。

この周期表の右端にハロゲンという元素のグループがあります。

周期表

1930年代、ファッション産業で塩素を使いはじめ、リサーチや数々の裁判のあと、塩素の使用が禁止されるまで何十年もかかりました。

塩素が禁止されたとき、すでにファッション産業は、べつのハロゲン化合物である臭素を使うようにしていました。

臭素が禁止されそうになると、フッ素に切り替え、これが現在、製造過程で使われています。

今できる解決策

以上の話を聞いて、パニックになるかもしれません。でも、いくつか解決策があります。

1.機能性衣料に気をつける

防臭、防水など「防(anti-)と機能がうたわれている製品は、PFASでコーティングされていることが多いので、日常での使用を避けることをおすすめします。

2.天然繊維を選ぶ

自然繊維も選択肢にいれましょう。綿、ウール、絹、麻を選んでください。

天然繊維も100%安全ではありませんが合成繊維より毒性が少ないです。

3.天然繊維の下着を身につける

合成繊維で作られた下着をオーガニックな自然繊維のものに変えることをおすすめします。

ポリエステルやスパンデックスで作られた下着を使うと、有害物質を体に取り込む可能性があがります。

下着は毎日使うもので、汗をかきやすく、体内に近い場所にふれるからです。

地球、作り手、着る人にやさしいファッションを

次に、規制当局にお願いしたいことがあります。

化学物質の安全基準をもうけるとき、それぞれを単独で考えないでください。

1つの生地に何百、何千もの化学物質が使われているので、ひとつの化学物質がべつの物質と合わさったときどんな作用を起こすか考えるべきです。

まず、もっとリサーチを進めてください。さらに、カリフォルニア州が行っている方法を参考にしてほしいです。

カリフォルニアでは、「プロポジション65」という法律を作り、多くの衣料品メーカーに、その製品に発がん性物質が含まれている可能性があることを示すラベルをつけるよう指導しています。

最後に私が愛してやまないファッション業界の皆さんにいいたいことがあります。

皆さん、私たちにはもっとましなことができます。

地球に住む6人に1人が、ファッション関係の仕事をしています。

それは、2.5兆ドル規模の経済で、世界のGDPの4.3%を占めます。

もし私たちが、もっと消費者にやさしい製品の開発をしようと心をひとつにすれば、そういう製品を作ることができます。

難しくありません。食品産業や化粧品産業の例に習えばいいのです。これらの業界では毒性の少ない製品の開発を始めています。

パラペンや硫酸塩を含まない商品です。

ファッションを本来あるべきアートの一部にしましょう。

それは自己表現のひとつです。

ファッションを化学薬品の巣窟にするのはやめましょう。地球、作り手、着る人すべてにやさしいファッションを作りましょう。

//// 抄訳ここまで ////

語彙の補足説明

dispersed dye:分散染料、ポリエステルなどの合成繊維に使用される水に溶けにくい染料。ほとんど溶けない染料を界面活性剤の働きで水中に分散させ、わずかに溶けだした染料分子を繊維に染着させます。

BPA:BPA(ビスフェノールA)、プラスチックや樹脂製品の強度や耐久性を高めるために使われる物質。身近なところでは、プラスチック製品全般(容器、ボトル)、缶詰の内側のコーティング、レシート、子どものおもちゃなどに使われます。

BPAは内分泌かく乱物質なので、最近は、「BPAフリー」の製品が増えています。

過去記事で詳しく書いています⇒環境ホルモンに気をつけよう。BPAが健康に及ぼす影響とは?

PFAS(Per-and Polyfluoroalkyl Substances、ペルおよびポリフルオロアルキル化合物)。撥水性、防汚性、防シワ性などを向上させるために衣類や繊維製品の処理に使われる化学物質のグループ。

分解されにくく、長期間環境や人体に残留するので、永久化学物質とも呼ばれています。

長期間にわたって体内や環境に蓄積し、甲状腺疾患、ガン、免疫機能の低下、発育障害など、さまざまな健康リスクにつながると考えられています。

こちらは、衣料品に含まれる化学物質、特に分散染料の問題を取り上げた1分半のニュースクリップです。

内容を簡単に書くと、

制服や普段着として着用する衣料品に使われている化学物質に対するよくある反応は、皮膚の発疹。

とくに新しく洗っていない服には高濃度の分散染料が使われているので、人によっては反応します。

ポリエステル製品に使われている「クイノリン」は発がん性が懸念されています。

ほかにも、防汚剤、染色固定剤、シワ防止剤も健康リスクがあります。

綿などの天然繊維は化学処理が少ないものの、化学物質の添加については開示義務がないので、新しい服を買ったら、まず洗うことが最善の防止策です。

服は安ければいいというわけじゃない

私たちが普段身につけている服に、たくさんの化学物質が使われていると意識している人はそんなに多くないと思います。

しかし、現実に有害な化学物質が、特に規制もなく使われています。

過去に、ファストファッションを紹介をしましたが、合成繊維や毒性の強い染料を使うのは、コストを抑えるためです。

「真の代償」The True Costはファストファッションの真実を暴く映画 ~これでもあなたは安い服を買い続けますか?

身近にある衣料品は、単なるファッションではなく、健康や環境に直接影響を与えます。

安価で手に入るポリエステル製品は一見便利で楽しいアイテムに思えますが、その背後には、私たちの体に有害なマイクロプラスチックや毒性のある染料、ホルモンバランスを崩す化学物質が潜んでいます。

環境にも深刻なダメージを与えるこれらの製品の使用について、一度、考えるべきではないでしょうか?

誰でも安い服のほうが好きですが、安さを追求すると思わぬ代償を支払うことになります。

服を選ぶときは、値段だけでなく、体や環境にやさしいかどうかも考えてください。

安価な服を次々に買い替えるのではなく、本当に必要なものを慎重に選び、大切に長く使うこと。シンプルライフにつながるこうした行動が、私たちの健康や地球を守る第一歩だと思います。





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