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先延ばしをやめたい人の参考になるTEDの動画を紹介しています。
今回は、ティム・アーバン(Tim Urban)さんのInside the mind of a master procrastinator(先延ばしの達人の心の中)。邦題は「先延ばし魔の頭の中はどうなっているか」。
「先延ばし魔の頭の中はどうなっているか」のTEDの説明
Tim Urban knows that procrastination doesn’t make sense, but he’s never been able to shake his habit of waiting until the last minute to get things done.
In this hilarious and insightful talk, Urban takes us on a journey through YouTube binges, Wikipedia rabbit holes and bouts of staring out the window — and encourages us to think harder about what we’re really procrastinating on, before we run out of time.
ティム・アーバンは先延ばしは理にかなっていないとわかっていましたが、締め切りギリギリにならないと始められない習慣が治りませんでした。
この面白くも、洞察に満ちたプレゼンで、アーバンは、YouTubeの動画を延々と見たり、ウィキペディアをだらだらと読み、窓の外をぼーっと見ないではいられない旅路の果てに、私たちが本当に先延ばしにしていることはなんなのか、じっくり考えることを勧めています。
時間切れになる前に。
プレゼンの中でも話していますが、ティム・アーバンさんの仕事は、「ブロガー」です。書くのが得意な人ですが、ひじょうにパワフルかつ笑えるプレゼンを展開しています。
時間は14分。収録は、今年(2016年)の2月です。日本語字幕が出ます。字幕なしや英語がいい方はプレイヤーで調節してください。動画のあとに要約を書きます。
☆スクリプトはこちら⇒Tim Urban: Inside the mind of a master procrastinator | TED Talk | TED.com
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
学生のときから先延ばししていた私です
大学生のとき、政治学を専攻していました。だからたくさん論文を書かなければなりませんでした。
ふつうの学生は、論文を書く時、徐々に始め、だんだん書く量が増えて、ちゃんと期日までに終わります。
私もそうしたくて、計画をたてるもののいつもギリギリに仕上げていました。しかし、1年かかって90ページの論文を書かなければいけないとき、さすがにこれではまずいと思いました。
最初は少し、中盤はもうちょっと、最後にしっかり書くという階段みたいな計画をたてました。
ところがやはりうまくいかず結局締め切り直前に2日間徹夜して、72時間で90ページの論文を仕上げました。
すると大学から電話があって…。
「これまでの最高の論文です」
と言われたわけではなく…。まあ、ものすごくできの悪い論文でした。
先延ばしする人の脳とそうじゃない人の脳の違い
現在、私は、ライター兼ブロガーです。数年前に「先延ばし(procrastination)」について書くことにしました。
周囲の物事を後回しにしない人の脳と、いつも先延ばしをする自分の脳に違いがあるという仮説をたて、MRIで脳の中を見てもらいましたので、その結果を本日お見せします。
みなさん、脳の専門家じゃないので、わかりにくいかもしれませんが、違いがあるかどうか見てください。
両方の脳に、「理性的な意思決定者(Rational Decision-Maker)」がいますが、先延ばしする人の脳内には、目先の喜びを優先するサル( Instant Gratification Monkey)がいます。
先延ばしする人の脳内の、意思決定者が「よし、仕事をしよう」と思っても、サルが「ノー」と言うのです。
そんなことよりウィキペディアで何か読もうと。それから冷蔵庫の中をチェックしたり、YouTubeでビデオを見たり。そのうち仕事をする時間がなくなります。
「闇の遊園地」は本当は楽しくない
目先の楽しみを優先するサルは、「今」しか見ていません。過去の記憶もなければ、未来のこともわからない。今この瞬間の「簡単で楽しいこと」しか考えていません。
サルならそれでいいのです。
人間は別の種で、よく眠り、栄養をとり、次世代につなげていかなければなりません。まあ、原始時代だったらこれでよかったのですが、今は、私たちは高度な文明の中で生きています。
だから、人の脳には、理性的な意思決定者がいます。全体を俯瞰して見ることができる人です。長期的なプランを立てます。
意思決定者とサルの考えていることが同じときもあります。
食事するとき、寝るとき、休憩をとっているときは、「簡単で楽しいこと」をしてもいいのですが、ほかのときは、難しくて、あまり楽しくないことをやるほうが理にかなっています。
ここで葛藤が起こり、先延ばしする人は、「闇の遊園地(Dark Playground)」に行ってしまいます。
闇の遊園地は、先延ばしをする人が遊ぶ場所です。遊んでいますが、「今は遊ぶべき時ではない」と心の底でわかっています。
罪悪感、恐怖、不安を持ちながら遊ぶ場所が闇の遊園地です。遊園地にいるものの、本当は難しいことをする青いゾーンにいなければならないのです。
締め切り間際になるとパニックモンスターが登場する
先延ばしをする人には守護天使がついていて、先延ばしする人の様子をチェックしています。その名も「パニックモンスター」。
ほとんどの時間、パニックモンスターは寝てますが、締め切り間際になり、恐ろしい結末が予測されると、やおら起き上がります。
パニックモンスターはサルが恐れる唯一の存在です。
私も最近パニックモンスターのお世話になりました。半年前にTEDの人が、「TEDトークに出ませんか」と言ってきたからです。
もちろん、承諾しました。「私は、TEDでプレゼンしたことあるんです」、と人に言うのを夢見てましたから。
だけど、例のごとくサルが出てきて、Google Earthでインドの様子を見たりしてるうちに、時間がたってしまいました。
TEDトーク1ヶ月前になり、私の顔がスピーカーとしてTEDのサイトにのったとき、パニックモンスターが暴れだしました。サルは逃げ、ようやく、理性的な意思決定者と私でプレゼンの用意を始めることができました。
先延ばしする人の頭の中には、このサル、意思決定者、パニックモンスターがいて、最後には何とかなるのです。
この話を自分のブログに書いたところ、とても大きな反響がありました。大勢の人が先延ばしグセに悩んでいました。
私の記事は、軽い感じだったのに、もらったメールはみんな深刻でした。そこで私は考えました。「パニックモンスターがいてうまくいくはずなのに、なんでみんな、こんなに暗いんだ?」と。
締め切りがないものを先延ばしする恐ろしさ
わかったことは、先延ばしには2つの種類があるということです。
1.締め切りがあるものを先延ばしすること。
2.締め切りがないものを先延ばしすること。
これまで、お話してきたことは、締め切りがある場合の先延ばしです。しかし、人は締め切りがないものも後回しにします。
何かやりたいと思っていることには、締め切りがありません。やらない限り何も起きません。仕事だけでなく、家族に会う、運動する、健康に注意するなど、重要なことには締め切りがないんです。
先延ばしする人が、パニックモンスターのおかげで、動けるのだとしたら、問題ですね。締め切りがない限りパニックモンスターは登場しないのだから。
締め切りのない先延ばしは、長期間に渡るし、わかりにくいし、話題にものぼりません。静かで個人的な先延ばしです。
だから、多くの人が私にメールを送ってきたのです。彼らが問題にしていたのは、短期的な締め切りのある先延ばしではなく、長期的で締め切りがないものです。
先延ばししているから、自分は、自分の人生の見物人になっています。先延ばししている人が不満なのは、自分の夢を達成できないことではなく、夢に向かってスタートを切ることすらできないことなのです。
誰もがみな先延ばしをしている
みんなのメールを読み、わかったことは、先延ばしをしない人などいないということです。
締め切りをきっちり守れる人でも、締め切りがないときは、サルがちゃんとそばにいるのです。
これは「ライフカレンダー」です。一つ一つのマス目が90年間の生涯の1週間を表しています。
もうだいぶ使ってしまっているし、もともとそんなにたくさんはありません。このカレンダーをじっくり見てほしいんです。
そして、自分が何を先延ばししているのか考えてください。みんな人生の中で何かを先延ばししています。
目先の喜びを追い求めているサルから離れなければなりません。カレンダーのマス目はそんなにないし、今すぐ先延ばしをやめるべきなのです。
—–抄訳ここまで —–
自分が先延ばしをしていることに気づくことが最初のステップ
よく、「ずっと片付けたいと思っていたけど、なかなか始められなかった」というメールをもらいます。
これなども、締め切りのないことを先延ばししている例です。
断捨離を始めることはそんなに難しくないです。たとえば、会社をやめて起業する、泥沼の関係を精算する、などということに比べれば、リスクは全くありません。
ただ、モノを捨てるだけでいいのですから。
しかし、脳内にはあのサルがいます。
ちょっとでも面倒そうなこと、難しそうなことはやりたくないので、多くの人は、断捨離を後回しにするのです。
節約も同じですね。
人は、すごく重大なことも、ごく簡単なことも、同じように、先延ばししてしまうようです。
ですが、アーバンさんが言うように、私たちの脳にはもちろん「理性的な意思決定者」もいます。闇の遊園地で遊んでいるとき、気持ちが落ち着かないのは、この決定者がいるからですね。
楽しいはずのことをしているのに、なんだか気持ちがざわざわしているときは、闇の遊園地にいるのです。
こうした事実は、自分の考えていること、やっていることを客観的に見ることで気づけると思います。
人生の残り時間も、あのようにカレンダーにして見える化するとわかりやすいです。
「今の生活がなんとなく楽しくない、不満だ」と感じるなら、いつも闇の遊園地に逃げているのかもしれません。それに気づくことができれば、誰でも、遊園地から出られます。
☆先延ばししない方法はこちら⇒今すぐやる人になる6つの方法。先延ばしグセを手放して今度こそ汚部屋を脱出
ティム・アーバンのブログ、Wait But Whyについて
ティム・アーバンさんのブログは、Wait But Whyというタイトルで、大変な人気ブログです⇒Wait But Why
人工知能や、フェルミのパラドックス(宇宙には他の文明があるはずなのに、人はその文明に出会えないパラドックス)、SNSなどいろいろな話題を取り上げています。
このTEDトークの体験についての記事もあります。
彼は、いろいろ分析するのが好きみたいで、記事がいちいち長いです。私は、自分のブログの記事は長すぎるだろうか、とふと感じることがありますが、「そんなことは全然ない」とWait But Whyを見るたびに思います。
うまヘタな絵も、彼のブログの魅力の一つです。
Wait But Whyにはショップもあって、パニックモンスターや目先の喜びだけを求めているサルのぬいぐるみ、キャラクターのついたTシャツ(大人用、子供用、赤ちゃん用)、バッグ、マグなどを購入できます。
ライフカレンダーのポスターもあります。
キャラクターとしては、このサルが一番かわいいですね。それでは、次回のTEDの記事をお楽しみに。