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簡単な瞑想で、こころのバランスをとる方法を教えてくれるTEDのプレゼンを紹介します。
タイトルは、Meditation – The Single most important skill needed today (瞑想、今日必要とされるもっとも重要なたったひとつのスキル)。
講演者は、精神科医のシャム・バット(Shyam Bhat)さんです。
瞑想 – もっとも重要なスキル
Despite all our technological and scientific advancements, we have never been more miserable as a species. Yet the solution to this lies inside us.
In this insightful talk, Dr. Shyam Bhat shares how meditation can help overcome all problems plaguing the human race in this age of constant hustle and bustle.
技術や科学が進歩したのに、私たちは、種として、これほどみじめだった時期はありません。解決法は、私たち自身のなかにあります。
洞察の深いトークで、シャム・バット博士は、めまぐるしいこの時代において、いかに瞑想が、人類を悩ましている問題を克服する助けになるか、説明します。
収録は2017年の12月。長さは16分です。まだ字幕はありません。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
治療に瞑想を取り入れている
精神科医として過去15年、私は、うつ、不安症、ストレス、PTSD、高血圧、頭痛、湿疹、喘息、その他の病気の治療に瞑想を取り入れてきました。
これから14分ほど、瞑想に対する私の考え、つまり、なぜ、瞑想が今日、私たちが学ぶべきもっとも重要なスキルであるのか説明します。いかに瞑想が脳の助けになるかお話ししますね。
さらに、少しだけで瞑想の練習もしてみましょう。
技術は進歩したのに、人は不幸だ
地球上で、人類はもっとも進化した脳をもっており、そのおかげで、技術が進歩しました。
進化の目玉は私たちの脳です。脳のおかげで、物を作り、技術を生み出し、この惑星を形作ることができます。
最小の原子を見つけて研究し、宇宙にも行きます。
ところが、統計を見てみると、こんなに技術や科学が進歩したのに、種として、いまほど惨めであったことはありません。
最近のアメリカの研究では、アメリカ人の13%が、抗うつ薬を服用しています。しかもこれはトランプが大統領になる前の話です。
インドも同じです。インドでは、毎年、15万人から18万人が自殺しています。その多くは15歳から29歳です。
インド(corporate India, 正式にインドだと認識されている地域だと思います)に住む人のうち40%が、ストレス、うつ、不安症に悩まされています。
ちょっと社会を見てみれば、路上での暴力、殺人、凶悪犯罪、離婚、孤立、孤独などが起きているのがわかります。
なぜこうなるのでしょう?
脳を使って、こんなに社会は進化したのに、なぜこんなに苦しんでいるのでしょう?
脳のユニークな構造
私たちの開発や進歩の源(みなもと)である脳が、同時に、痛みと苦痛をもたらしているのではないでしょうか?
脳を調べてみると、ずいぶんユニークだとわかります。
前頭葉という部分があり、ここはもっとも進化している部位で、ほかの種よりも進んでいます。
前頭葉があるから、人は、お互いにコミュニケーションをとり、アイデアを生み、それは振動となって、脳全体を行き渡ります。
アイデアを聞き、それを解釈します。
脳にはおどろくべき機能が備わっています。
脳があるから、自然環境の気まぐれにまどわされず、立ち止まって、未来について考えることができます。
脳は、バーチャルリアリティーの機械です。
複数の現実について考え、人生でどうすべきか決めることができます。それが、ほかの種よりうまくやってこれた理由です。
人はフードチェーンのトップにいますが、最強だからでも、最速だからでもありません。すばらしい脳を持っているからです。
脳がもっとも興味のあること
しかし、この脳のせいで、いま、みなさんはここにいても、心はどこかに行っています。
私の話を聞いている人もいるでしょうが、多くは、「YouTubeにはもっとましな動画がある」と考えているでしょう。
こうした比較は、終わることがありません。
脳はいつもこう言っています。
「ここで何が起きている? それはどんなふう? 私は誰? 私の物語は何で、いま私に起きていることは何? それは私の物語に合うもの? それとも、私はもっと別のことが起きてほしいと思っている?」
自分の生活をほかと比べることができる脳の機能が、人に不満をもたらします。
すばらしい仕事を得ても、しばらくすると、もうそんなに素晴らしいとは思いません。もっといいものが欲しくなります。
昇進、結婚などなど。
脳のおもしろいところは、自分の幸せや充足には興味を持っていないところです。
脳が興味を持っているのは、サバイバルと、自分のことを重要だと思うことだけです。
前頭葉があるから、人は、自分は、生まれて、この世界に限られた時間だけいて、その後、死ぬとわかっています。
これはすごく重要なポイントです。
そんな認識のある動物はいません。ほかの動物にあるのは、いまこの瞬間だけです。
いま、ここに犬がいたら、私の話を聞くか、立ち去るかのどちらかです。
聞いているふりなんてしません。そういうことができるのは人間だけです。
扁桃体が守ろうとするもの
脳の奥には、扁桃体という部位があります。ここは、何百年もかかって進化してきたもので、ほかの哺乳類にもあり、生存をつかさどっています。
扁桃体が萎縮し、死んでしまう病気があります。扁桃体がなくなると、人は、まったく恐怖を感じません。
恐怖を感じないのはいいことのように思えますが、とんでもない事態になります。
この病気にかかった女性は、夜、危険な場所に平気で行きます。一度、ある男が、この女性にむけて、銃をむけ強盗をしようとしましたが、彼女は相手を見ていただけでした。
ここで恐れるべきだとわかっていても、まったく恐怖を感じないのです。怖くなったのは相手の男のほうでしょう。
恐怖は私たちを生きながらえさせるので重要です。恐怖は「脅威があるから、身を守れ」と教えてくれます。
もし、動物が脅威にさらされると、戦うか逃げます。動物は、自分の身(肉体)に対する脅威だけに反応します。
ところが、人間の扁桃体が守ろうとするのは、肉体に及ぶ脅威だけではありません。幸いなことに、私たちのほとんどは、肉体的には安全です。
人間の扁桃体は、自分のアイデンティティを守っています。それは精神的な自分です。
だから、上司が変な目で自分を見ると、扁桃体が反応します。脅威を察知し、恐れて、動揺します。
人は信念の世界で生きている
私たちは、現実ではなく、信念の世界で生きています。いま、みなさんは、私の言葉を聞き、姿を見ているだけでなく、頭の中のほかの世界にもいます。
その頭の中の世界を、人は、自分の肉体以上に守ろうとしています。
人は、信念から、殺したり、死んだりできる種です。単なる考えのせいで、死にます。
その信念が重要だから、そのために、殺すことができます。私たちが求めているのは、自分の信念を守ることです。
私は、頭の中に、あるイメージを作り、計画どおりに物事がすすまないと、不愉快になります。頭の中で作ったイメージに執着しているからです。
人生は、川のようなものです。いつも、瞬間、瞬間が川の水のように流れています。
人生は、あなたの物語も、私の物語も気にすることなく、ただ、できごとが起きていくだけです。
けれども、人には物語があるから、川をせきとめたり、流れをとじこめたりしようとします。
それはまるで川にむかって、「だめ、流れないで。私のために止まってよ。私の思うように出来事が起こしてちょうだい」と言うようなものです。
人は、いまこの瞬間を生きていない
だから、いいことが起きると人は幸せですが、それに執着しようとします。
失うのを恐れます。
悪いことが起きると、そこから逃げようとします。つまり、人は決して、いま、この瞬間にある人生を、そのまま体験しはしないのです。
私たちが体験しているのは、自分の願い、夢、希望、恐怖です。
自分の信念に基づいて、いつも、過去や未来に行きます。
気違いじみた生き方ですが、みなこうやって生きています。
しかも、人の脳が生み出したこの現代社会は、事態を悪くしています。
フェイスブックで、幸せそうにほほえんでいる人が、数日後、自殺をします。
自分が感じていることすらわからない
ときに、人は、自分がどう感じているかさえ気づきません。外側にあるものにばかり意識を向けているからです。
みなさんに、「お元気ですか(how are you?)」と答えたら、毎回、「元気です(fine)」という答えが返ってきます。
誰も、その質問の本当答えを知りたいとは思っていません。
自分が感じていることに意識を向けることだってめったにないのです。
瞑想とは?
では、瞑想とはなんでしょうか?
瞑想は、複雑な構造をもつ脳を、コントロールする1つの方法です。
学校では教わりません。学校では、情報を頭に詰め込むだけです。
情報を脳に詰め込むだけで、脳の使い方は教えてくれません。
脳は、まるで、鋭いナイフです。それで切ったり、切り裂いたりできます。実際、自分のこころはそういうことをします。
しかし、私たちは、そのナイフの使い方を知りません。脳は、制御すべき道具だということすら知りません。
私がナイフを持っていて、それを制御する方法を知らなかったら、ときには、自分自身を刺すでしょう。
自分で自分を傷つけ、「ああ、なんてことだ。人生は、とってもつらいものだ」と言うのです。
自分のこころ(=脳)が、苦痛をもたらしていることに気づかずに。
こうしたこころの仕組み、つまり鋭いナイフをうまく制御するのに、瞑想は役立ちます。
こころを使う方法を学ばないと、こころに自分が使われてしまいます。
瞑想のメリット
瞑想は、脳を制御する正しい方法で、それを裏付ける証拠もたくさんあります。
瞑想をすると、前頭葉のバランスをとることができ、扁桃体の活動をおさえ、左脳と右脳のバランスもとります。
また、免疫系がアップし、血圧も下がります。
がん細胞を出す遺伝子の働きをおさえるという研究結果すらあります。つまり、瞑想は、がんの予防にもなりうるのです。
何よりも、瞑想は、自分自身に対する洞察を深めてくれます。
自分は誰であるのか、自分は何を求めているのか、どうやって自分の欲望を管理するか。
うまく欲望を管理して、ストレスばかりの人生を送らないですむようにします。
必要なときは、過去や未来のことを考えられますが、瞑想をすると、立ち止まって、いま起きていることに気づき、静寂を見つけるちからが得られます。
いったん、静寂とつながることができれば、どこへ行ってもそうできるようになります。まるで台風の目の中にいるように。
瞑想の技術はたくさんありますが、3分間でする瞑想を紹介しますね。
呼吸のいいところ
この瞑想では、呼吸に目を向けます。
呼吸は、無意識と、顕在意識の両方でできる唯一の機能です。
血圧、心拍数、消化を司っている脳の部分が、呼吸も司っています。
だから、意識しなくても、呼吸はできます。
同時に、呼吸は感情にも結びついています。ストレスを感じると、胸がしめつけられるし、リラックスしているときは、おおらかに呼吸します。
怒りを感じているときは、呼吸は鋭く浅くなります。
つまり、呼吸は、脳の無意識の部分に結びついています。気分や自分であるという感覚、感情を決めている脳の一部に。
呼吸は、脳の無意識の部分とつながる機会を与えてくれるのです。
ここでする練習は、意識的になる脳の部分を使って、呼吸を見ます。
顕在的な脳を使って、こころの無意識の部分を観察するのです。すごいですね。
3分の瞑想のやり方
まず深呼吸してください。鼻から吸って口から吐きます。
ため息をするような音を出しながら息を吐いてください。
さて、いつもの呼吸のリズムに戻します。鼻から吸ってください。
静かに目を閉じます。そして、周囲の音に意識を向けます。
いろいろな音がしています。音そのものと、その音の解釈があります。
解釈はせず、音そのものに意識を向けてください。音の質感に。
私の声を聞くときも、意味は気にしません。ただ、音だけに意識を向けます。
次に、呼吸に意識を向けます。呼吸をするたびに、体がどんなふうに動くか、感じてください。
意識的な呼吸はしません。自然に呼吸します。
息を吸うと、おなかが上にあがります。
息を吐くとおなかが下がり、リラックスします。おなかの動きに意識を向けます。体の動きを感じてください。
また、音に意識を向けます。そして、ゆっくり目をあけます。
前よりリラックスできているといいのですが。この瞑想を生活の一部にしてください。
そうすれば、こころや脳を自由に使えます。そして、幸せで平和な人生を送れるのです。
//// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
crown jewel 王室に伝わる宝物⇒重要部門、主力部門、会社のもっとも望ましい資産
whims and fancies 気まぐれ、酔狂
amygdala 扁桃体
atrophied 萎縮した
Sham Batさんの本です。
失恋からの立ち直り方を書いたもので、食事や瞑想のガイドがあります。
こころを整えるためのほかのプレゼン
『必要なのは10分間の瞑想だけ』~物より心が大切です(TED)
幸せは自分の心の中にある、幸せをアウトソーシングしてはいけない(TED)
静かにたたずむことが幸せにつながる~ピコ・アイヤー(TED)
暮らしにマインドフルネスを取り入れてより自由になる(TED)
落ち着いて、注意を向けて、ありがとうと言う、その方法(TED)
ケリー・マクゴニガルに学ぶストレスと友だちになる方法(TED)
感情のなすがままでいる必要はない。あなたの脳がその感情を作っているのだから(TED)
苦痛は自分が作っている
この世界は、自分が脳の中で作っているので、脳がバランスよく機能するよう、制御していくことが重要であり、そのために、瞑想はとても役立つ、という内容のプレゼンを紹介しました。
脳が興味のあること、つまり、脳にとっての最優先事項は、生物としてサバイバルすることと、自分を重要な存在だと感じることである、というのはとても興味深いですね。
だから人間は、美学、哲学、自分の信念などを貫くために、自殺することができるんですね。
サバイバルすることよりも、そちらのほうが大事になってしまうのでしょう。
そして、自分の尊厳を傷つけられた、と思うと相手を攻撃するのです。
脳が最優先で求めていることは、必ずしも、その人の幸せには結びつかないので、自分が考えていることを、客観的に見て、調整する必要があります。
新型コロナウイルスの感染防止のために、ステイホームした結果、経済が悪化して、自殺者が増えると言われています。
お金がなくて、食べ物が買えず、餓死するとか、電気代を払えなくて電気を止められ、冬場に凍死する、というケースもあるかもしれませんが、
そういうふうに肉体的にダメージを受けるまえに、人は、頭の中で、絶望して死を選びます。
自殺を選ぶときは、すでにうつ病になっていると思いますが、本格的な病気になる前に、瞑想をして、思考のバランスをとるべきです。
まだ起きていない先のことを心配してメールをくださる方が少なからずいます。
これを捨てると、あとでいるとき困る、とか、このまま私はずっと1人だと思うと悲しい、とか。
そういう人にはモーニングページと⇒ネガティブ思考改善にモーニングページがいい~今月の30日間チャレンジ、今回紹介した、3分間の簡単な瞑想を生活に取り入れることをおすすめします。
どちらもコストも時間もたいしてかかりません。やってみてあわなかったらやめればいいし。
悩みは自分が頭の中で作っているだけです。
ストレス解消や、不安をまぎらわすのための買い物が多い人も、瞑想をしてみてください。