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最終更新日: 2019.10.28

ソーシャルメディアはやめなさい:カル・ニューポート(TED)

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ソーシャルメディア(SNS)をやっていなくても、問題はない。むしろより充実した人生になるというTEDのプレゼンを紹介します。

タイトルは、Quit social media(ソーシャルメディアはやめなさい)。プレゼンターはコンピュータ科学者のカル・ニューポート(Cal Newport)さんです。



ソーシャルメディアはやめなさい、TEDの說明

‘Deep work’ will make you better at what you do. You will achieve more in less time. And feel the sense of true fulfillment that comes from the mastery of a skill.

… His most recent book, Deep Work, argues that focus is the new I.Q. in the modern workplace and that the ability to concentrate without distraction is becoming increasingly valuable.

ディープワーク(深い仕事)をすれば、いまやっていることをよりうまくできます。少ない時間で、より多くのことを成し遂げられますし、スキルをマスターしたことからくる、真の充実感を感じます。

最新刊、ディープワークで、彼(カル・ニューポート)は、フォーカスは現代の職場における新しいIQだと言います。気を散らさず集中する能力は、これからますます大切になっていくのです。

動画の長さは13分50秒。日本語字幕もあります。プレゼンのあとに抄訳を書きます。

☆トランスクリプトはこちら⇒Cal Newport: Why you should quit social media | TED Talk

☆TEDの說明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に





SNSは使いません

私はミレニアル世代のコンピュータ科学者で、TEDのステージに立っていますが、SNSに登録したことは一度もありません。

偶然からそうなったとも言えます。大学2年のとき、初めてSNSを知りました。Facebookができたときです。

ドットコム不況の直後で、私は自分のビジネスをやめざるを得なかったのですが、そのとき、ハーバード大学のマークという学生がFacebookという商品を作り、人々の話題になっていました。

私は嫉妬して、「こんなのは使わないぞ」と思ったのです。

その後、誰もが、Facebookに夢中になっているのを見て、客観的に見ても、これはちょっと危険ではないかと感じました。以来、SNSに登録したことはありません。

きょうは2つのメッセージをお伝えします。1つは、私はSNSを使っていないけれど、問題はないということ。友達はいるし、世界で何が起きているかもわかっています。

コンピュータ科学者として世界中の人とコラボレーションしています。おもしろいアイデアを見つけることもできるし、エンターテイメントに困ることもありません。

問題ないどころか、SNSを使っていないことが、むしろ自分のためになっています。より幸せで、豊かな生活をできています。

だから、私の2つ目のゴールは、皆さんにも、同じように考えてもらい、SNSをやらないほうが、人生はよくなると説得することです。

将来的に、SNSを使う人が減ってくれたらいいと考えています。

皆に、SNSをやめることをすすめると、3つの典型的な反対意見が返ってきます。それぞれについて、より客観的な現状をお伝えします。

SNSをしない人は世捨て人か?

最初の反対意見はこれです。

「カル、ソーシャルメディアは21世紀の基本的な技術の1つだよ。SNSを拒否することは、技術革新に反対することで、馬に乗って会社に行ったり、ダイヤル式の電話を使うようなものだよ。そんなラジカルなスタンスは取れないな」。

こうした意見はナンセンスです。SNSは基本的な技術ではありません。基本的な技術を使ってはいますが、エンターテイメントの1つです。

ジャロン・ラニアー(コンピュータ科学者、「ヴァーチャルリアリティの父」と呼ばれています)の言葉を借りれば、SNSの会社は、数分間の人の意識や個人情報と引き換えに、ごほうびを提供しているのです。

集めた個人情報は、商品化して売ることができます。

だから、SNSを使わないことは、社会的スタンスの問題ではなく、ひとつの娯楽を拒否するだけなのです。

新聞は嫌いだから、雑誌でニュースを読むよ、とか、ネットワークテレビじゃなくてケーブルテレビを見るよ、と言うのと同じです。

それは、政治的、または社会的スタンスには関係ありません。

SNSのごほうびとして、スロットマシーンの写真を使いましたが、たまたまではありません。

よく考えてみると、単なる娯楽の1つではなく、あまり好ましくない娯楽です。

大きなSNSの企業は、ユーザーがSNSに依存するように、ラスベガスのカジノで使っている方法などを研究する、アテンションエンジニア(関心をひく技術者)を雇っています。

ユーザーの関心やデータから得る利益を最大化するために、できるだけ依存させようとしているのです。

つまり、SNSはなくてはならないものではなく、娯楽の1つ、それもあまり健全ではない娯楽の1つです。

成功するためにSNSは不可欠か?

2つ目の反対意見は、これです。

「カル、SNSをやめるわけにはいかないよ。だって、21世紀の社会で成功するためには不可欠なものだからね。SNSで注目を浴びていないと、人に自分のことを知ってもらえない。

私のことを見つけてもらえないから、チャンスもなく、市場から消えてしまう」。

これもナンセンスです。

私は、Deep Work(邦題:大事なことに集中する)という本で、競争の激しい21世紀の経済において、市場価値があるのは、珍しくて、価値のある商品を作り出す能力であると、数々のエビデンスをそえて主張しました。

そのような商品を作れば、市場は評価します。誰にでもできて、たいして価値をうまない商品は求められていません。

ソーシャルメディアを使うことは、簡単にできて、たいした価値を産まない活動の典型です。スマホを持っていれば6歳児でもできます。

市場が評価するのは、本当のスキルを用いて、深く集中して生み出す仕事であり、それは珍しく、価値があるのです。

洗練されたアルゴリズムを書く、判決を変えるような法律概要を書く、読者が最後まで飽きずに読む長い文章を書く、あいまいなデータや統計から、ビジネス戦略を180度変えてしまう洞察をする。

このような、集中を要する、珍しくて価値のある仕事をすれば、人々はあなたを見つけます。

インスタグラムのフォロワー数に関係なく、プロとして仕事で成功するのです。

SNSは無害だし、楽しいって?

3つ目の反論はこれです。ある意味、もっとも重要な反論です。

「カル、たぶんきみの言うとおりだよ。なくてはならない技術じゃないし、仕事の成功にもつながらないかもしれない。

でも、別に害はないからね。楽しいもんね。始終使っているわけじゃないし、僕は新しもの好きだから、試すのが楽しいんだよね。それのどこが悪いの?」

これもナンセンスです。

SNSには実害があることが、いくつものリサーチで証明されています。SNSをやるかどうか決めるとき、以下のような事実も考え合わせるべきです。

1)SNSを使いすぎると集中できなくなる

SNSを提供する側は、ユーザーが起きているあいだ、関心や意識をできるだけこまぎれにするように設計しています。

1日中、何度もSNSをチェックし、注意力を分散していると、集中する能力が永遠に損なわれてしまうという研究がいくつもあります。

現在の市場で必要とされているものを作り出す集中する能力がなくなってしまうのです。

つまり、ソーシャルメディアは無害ではないのです。経済的に自分を支える能力に悪影響があります。

もっと若い世代のことを考えると、とても心配になります。SNSに囲まれていますから。

2)SNSを使えば使うほど孤立感を感じ孤独になる

これもたくさんのリサーチからわかっていることです。

友達のポジティブな生活ぶりを追っていると、だんだん自分は不適格だという気になり、うつになる率があがります。

私たちの脳の仕組みは、起きているあいだ、細切れに報酬を求める活動をすることとは、マッチしません。

カジノで数時間スロットマシーンで遊ぶのと、朝起きてから寝るまでスロットマシーンを持ち歩いて1日中スロットを引くのは大きな違いがあります。

そうすることは、脳をショートさせ、認知に影響を与えることもわかってきています。たとえば、不安症を呼びます。

大学のキャンパスではすでにこの状況が現れています。大学のメンタルヘルスの専門家は、誰もがスマホを持ち、SNSを使うようになってから、不安症や類似の障害が爆発的に増えたと言っています。

このように、SNSの使用は実害がありますから、「無害だからやる」というのではなく、明らかな恩恵がなければ使うべきではないのです。

ソーシャルメディアのない生活

「でも、SNSを使わないことを考えると、ちょっと怖くない?」と皆言います。

実際にやめた人たちを見てわかったのですが、やめて、2、3週間はつらく感じるようです。デトックス期間です、

最初の2週間は、居心地悪さを感じ、不安です。しかしその時期を過ぎてしまえば、気持ちが落ち着き、生活はよりよくなります。

SNSを使わないと起きることを2つお伝えします。

1)とても生産性があがる

私はリサーチセンターの教授で、本を5冊書いていますが、平日、午後5時過ぎには、めったに仕事をしません。

自分のアテンションを大事にして、気を散らさないように努めれば、集中することができ、仕事がはかどるのです。

2)平穏になる

生活はとても穏やかになります。

私は日が昇ると新聞を読み、ラジオで野球放送を聞き、子どもたちが寝たあとは、レザーチェアに座って本を読んでいます。

古風に聞こえるかもしれませんが、元気になれる穏やかな余暇の過ごし方です。仕事中も、気が散ることはなく、不安にさいなまれることもありません。

ソーシャルメディアのない人生はそこまで悪くありませんよ。

これまで話したことを考えてみれば、全員とはいいませんが、ソーシャルメディアを使わないほうが、恩恵を得られる人は、たくさんいると思います。

まとめ

・ソーシャルメディアはなくてはならないものではない

・ソーシャルメディアを使わなくても仕事は得られる

・ソーシャルメディアには実害がある

・ソーシャルメディアのない生活にはメリットがある

・ソーシャルメディアを使わないほうが豊かな生活になるんじゃないか? 

//// 抄訳ここまで ////

SNSやスマホに関するほかのプレゼン

なぜスマホとの関係を見直すべきなのか?(TED)

スマホは人の思考をどんなふうに変えるか(TED)

スマホを使っても気が散らない技術を生み出そう(TED)

スマホやYouTubeがクセになってしまう行動様式を知り、悪習慣を改める(TED)

「デジタルの今」をいかに生きるべきか?(TED)

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単語の意味など

dot-com bust  ドットコム不況 ドットコムバブルのあとの現象。

defuse the hype   誇大広告を静める、この場合は、より客観的な事実を伝える

luddism   機械化/技術革新反対運動

first adopter  アーリーアダプター、 新しもの好き、流行に敏感に反応する人

short-circuit   ショートする、漏電する

canary in a coal mine  警告 ☆昔、炭鉱でカナリアを飼って、毒ガスを検知させたことより

restorative  (健康、体力を)回復させる

カル・ニューポートさんの本です。

『デジタル・ミニマリスト』という本もあります。

ジャロン・ラニアーさんの本です

実害を感じているならやめるべき

私は、全員にSNSをやめることをすすめたりはしません。

遠くにいる人と、時間や場所のハードルを越えて簡単につながることができるのは、便利ですし楽しいですからね。

SNSを使って、有益な情報を得ている人も多いでしょう。

ただ、SNSのせいで、生活の質が落ちることもあります。

私は数年間、Facebookをやっていましたし、いまでも、ブログの更新を告知するために、Twitterのアカウントを2つ持っています。

私が感じるSNSのデメリットは

・時間を取られる

・見たくないものを見て、不快になる

・人の投稿を見るのがめんどう

・投稿するのが面倒

・仕事に集中できない

SNSをやっていると、仕事が1つ増える感じなのです。まあ、私の場合は、ブログの更新の告知なので、仕事と言えるかもしれません。

ですが、楽しみでやっているはずの人も、人の投稿をチェックしたり、毎日、写真をアップしたり、『いいね』を押したりするのが、だんだん仕事みたいになってくるんじゃないでしょうか?

最初は楽しかったことが、義務感でやる作業に変わるのです。

しかも、カルが言っていたように、いまは、アテンションエンジニアリングというのがあり、どうやってユーザーのすきま時間や、注意・関心(アテンション)を自社のプロダクトに向けるべきか、優秀な人たちが日夜考えています。

ネット上にひしめきあっているサービスが、人の注意・関心を奪い合っているのです。

そのため、私たちの注意力はどんどん散漫になります。

すると、物事をじっくり考えることをしなくなるのです。「たいくつだな~」と思う暇もなく、バッグからスマホを引っ張りだして見てしまいますから。

ほかにも、物事を批判的に考えられなくなる、創造力が損なわれる、何ごとにおいても依存性が強くなることが指摘されています。

一言で言うと思考力が低下するのです。

物と同じで、脳も使わないと、衰えていきます。

以下のような状態にある人は、SNSとの付き合い方を見直してはどうでしょうか?

・部屋がぐしゃぐしゃだけど、忙しくて片付けられない

・いつも、イライラしている

・心配や不安が多い

・人の目が気になる、人から承認されないと不安⇒強すぎる承認欲求(人にほめられたい気持ち)を手放す方法。

・人の持っている物がすぐに欲しくなる

・他人の生活がうらやましい、ねたましい

・仕事にも家事にも集中できない

・さしたる用もないのに、ことあるごとにスマホを見ている

SNSの使用を控えると、最初は違和感があるかもしれませんが、その後は、スッキリ、のんびりした生活が待っています。

******

スマホやSNSの使いすぎに警鐘を鳴らすのは、IT関係の仕事に携わっている人が多いですね。

内情がわかっているから、危機感を感じるのでしょう。

バルクバーンでアルバイトしている私の娘も、これは絶対バルクバーンで買いたくない、と言っている商品があります。





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