ページに広告が含まれる場合があります。
シンプルライフの参考になりそうなTEDのプレゼンを紹介しています。今回は、2013年のTEDxマンハッタンから、ピーター・レナーさんの食品ロス(食品の廃棄)に関するプレゼンです。
食べ物の無駄を減らすためのレシピ
ピーターさんは、アメリカの弁護士であり、環境保護運動家。現在、Natural Resources Defense Council(NRDC ナチュラルリソースディフェンスカウンシル 自然資源防衛協議会)の理事(エグゼクティブディレクター)です。
プレゼンのタイトルは A recipe for cutting food waste 「食品ロスを減らすためのレシピ」
アメリカの食品ロスの現況と、どうやったらそれを減らすことができるのか、すでに始まっている削減のための取り組みや、私たちにできそうなことを教えてくれます。
わりと淡々としゃべっているのですが、弁護士だから、話をするのはうまいです。説得力があります。
TEDxプログラムは独立したイベントなので、日本語字幕がないものが多いです。今回のプレゼンも英語のみなので、詳しめに訳して動画のあとにつけました。
※TEDをご存知ない方はこちらで説明しています⇒もう自己啓発本を読む必要なし~成功するため8つの秘密とは?(TED)
☆食品ロスを減らすためのレシピ
大量の食品ロス
NRDCはさまざまな食品にかかわる問題は扱っていますが、きょうはフードロス(食べ物の無駄)についてお話しします。
昔21,000フィート(6400メートル)の山にのぼったとき、30日分の食料をリュックにつめました。荷物はできるだけ軽いほうがいいですから、登る前にすべての食物の重量をきっちり測りました。
山登り中、食べ物は全く無駄にしませんでしたね。鍋なんて洗う必要がないくれいきれいにさらったものです。
これはマーガリンの包み紙をなめてる私の写真です。
しかし、ふだんの生活に戻ったら、こんなことはしなくなりました。ちょっと傷んだリンゴを捨てたり、レストランでパンを残したり、冷蔵庫の中身をカビらしたり。
誰でもこんなふうに少しは食べものを無駄にしてるとは思っていましたが、そんなに真剣に考えたことはありませんでした。
ですがNRDCのフードプログラムのレポートを見てショックを受けたんです。
アメリカで収穫される40%の食べものが食べられずに無駄になっているのです。ほとんど半分です。平均的なアメリカ人一家は年間2000ドル(2015年11月5日の換算で243,902円)、食べない食品に使っています。
食品のロスはどこにでもあります。農場、輸送中、スーパー、レストラン、みんなの家。
その結果、アメリカで使われる水の25%が、食べない食物の栽培に使われ、捕獲した魚のうち5分の1は船が戻る前に捨てられます。
ランドフィル(ゴミ捨て場)にあるゴミのうち5分の1が食べ物です。動物の飼料になることもなく、捨てられてしまうのです。
全く、気違いじみています。
まるで、人のいないビルでエアコンを稼働しているようなものです。
この点について考えなければなりません。
以前エネルギーが無駄になっていることが問題になりました。燃費の悪い車(gas-guzzler)とか、断熱のよくないビルとか、エネルギーを効率的に使わない家電とか。
でも、こういう問題の解決策がたくさん出ました。LEDの電球があるし、ハイブリッドカーがあるし、グリーンビルディング(省エネ、耐震性などを考慮したビル)が登場しました。
こうした解決策を見つけたやり方を、食べ物のロスを減らすのに使うことはできないでしょうか?
省エネは、政府がよりよいプログラムを作り、効率よくエネルギーを使う製品の開発を奨励したからうまく行きました。
その結果メーカーは、少ないエネルギーで、よりたくさん動かせるもの(do more with less)を設計したのです。
今の冷蔵庫は大きくて機能もよくなりましたが、30年前の冷蔵庫よりエネルギーは使いません。昔の冷蔵庫の4分の1の電力しか使わないんですよ。
今は、エ省エネ家電がたくさんあります。
それというのも、エネルギーの無駄について、みんなが目覚めたからです。メーカーが、エネルギーを使いすぎていると気づいたからです。
人々が政府にもっと省エネを考えるように働きかけたのです。そしてメーカーがそういう製品を作ることになりました。
食品ロスを防ぐために、同じことができると思うのです。
農場でのフードロスをふせぐには?
毎年60億ポンド(272万トン)の食物が収穫されていません。時には育った食べ物の30%が収穫されないと言います。
サイズや形がちょっと規格外だったり、色が悪かったりして、市場に出しても売れないから廃棄されるのです。ある桃の生産者に聞きましたが、10個のうち8個は売れないけれど、ほとんど違いがないとのこと。
こういう売れない果物をどうにかできないでしょうか?
私はコスタリカにコーヒー農園を持っています。市場はきれいに形がそろったコーヒー豆を求めるのです。収穫したコーヒー豆のうち5%の豆は割れていたり、ヒビが入っていたり穴があいています。
こういう豆は捨てずに、地元のマーケットで安い値段で売っています。正直に言いますが、輸出するコーヒーと地元のマーケットに出してるコーヒーの違いなんて私にはわかりません。
もう1つ、解決策があります。形の悪いフルーツでジュースやジャムを作ることです。
イギリスにはRubies in the Rubble(ルビーズインザラブル)というプログラムがあります。ファーマーズマーケットの隣で、売れ残った果物を使ってグルメなチャツネーを作るのです。
こういうプログラムをいろいろなところで、何度もやることはできないでしょうか?
カリフォルニアでは、Farm to Family (ファームツーファミリー)というプログラムをやっています。毎年、12,500万ポンド(,5669トン)の食べ物を、貧しい家庭に配給しています。1億世帯分です。
他の州も同じことができますよね。
スーパーマーケットでの食品ロスを減らす
スーパーでは平均10%の食品が無駄になっています。毎年500億ドル(6900億円)分の食品を無駄にしているのです。
元、Stop and Shop(ストップアンドショップ スーパーの名前)のCEO、ホセ・アルヴァレズ(Jose Alvarez)は、食品のディスプレイ方法を変えるだけで、節約でき、消費者の満足度もあがり、食品のロスも減らせることに気づきました。
消費者はたっぷりと陳列されている食品を好みます。そこでSストップアンドショップの従業員は数日かけて、食品をたかだかと盛り上げていました。
しかしこうすると、食品がいつも新鮮というわけには行きません。アルヴァレズは魚の切り身を10個並べる変わりに4個並べることにしました。
アボカドは40個陳列せず20個にしました。下のほうをちょっと盛り上げて、たくさんあるように見せたのです。
数カ月後に、消費者の満足度はあがり、食品のロスは減り、ストップアンドショップは、年間1億ドル(121億円)節約できました。
どうしても、スーパーでは食品が痛みますが、そのまま捨ててしまうことはないですよ。地元の農場の友だちは、スーパーに行って、廃棄されるはずの食品を、自分の家畜のエサにするために、もらえない、と頼みました。
しかし、スーパー側は「上層部のポリシーのせいでそれはできない」と言ったそうです。私たちはこのポリシーを変えることができると思うのです。
スーパーの食品の「賞味期限」で混乱することはありませんか?60%のアメリカ人が、この賞味期限のラベルがわかりにくいので、賞味期限が切れる前に捨ててしまう、という統計があります。
賞味期限の付け方に、規格やガイドラインがないので、メーカーが好きなように表示しているのです。
イギリスでは、政府がラベルの規格を決めるべきだという声があがり、まちまちのラベルはなくなり、わかりやすくなりました。
ちょっとした変更のおかげで、消費者の混乱は減り、食品のロスも減ったのです。こうした解決策はそこまで複雑ではありませんが、大きな違いを生み出すのです。
学校のカフェテリア、その他での食品ロスを減らす試み
学校のカフェテリアで、食べ物を好きだなけ皿に取り、食べきれずに捨てることがあります。
Sodexo(ソデクソ)という食品サービス会社がトレイのないカフェテリアを考案し、300の学校で提供しました。これだけで食品のロスが30%減ったのです。
NRDCは60のメージャーリーグのスポーツチームと共同で、調理されたのに余ってしまった食べ物を箱に入れ、その地域の貧しい家庭に配給しています。
最近、ブルームバーグ市長がFood Waste Composting Program(フードウエイストコンポスティングプログラム)を始めました。
ゴミを減らすためにリデュース、リユース、リサイクルをします。それと同じように、まず食べ物が余らないようにし、次に人に提供し、それでも余ったら動物に、それでも余ったらコンポストにできます。
そのままランドフィルに送ってしまうのは本当に愚かなことです。
一般消費者が食品ロスを減らすためにできること
さて、最後に、食品を無駄に捨てている最前線に移ります。私たち消費者です。
平均的アメリカ人は1人あたり、毎月25ポンド(11キロ)の食品を捨てています。これは私が山に登った時、リュックに入れていた1ヶ月分の食料と同じぐらいの分量です。
4人家族だと、月、170ドル(約2万円)分です。これは一世代前のアメリカ人が無駄にしていた食品より50%多いんです。
肥満問題は、このフードロスと関係あります。食品のポーション(盛り)が増えているんです。ふつうのクッキーは以前より4倍の大きさになりました。
お皿も、35%大きくなっています。「ジョイ・オブ・クッキング」(アメリカの有名なレシピ本)で、昔は10人前のレシピだったものが、今は7人前用になっています。
私たちは肥満になるか、食べ物を無駄にするかどちらかを選ばないといけないのでしょうか?
そんなことありません。
イギリスでは、Love Food Hate Waste (ラブフードヘイトウエイスト)というプログラムを始めました。ごく常識的なコツを消費者に指導しています。
●買い物リストを作って必要な分だけを買う
●食べ物が余ったら冷凍する
●ラベルに書いてある賞味期限を守る必要はなし。匂いをかいでチェック。
●レストランではドギーバッグをもらい、1食分浮かせる
こういうごくシンプルなことをした結果、イギリスの消費者は食品のロスを5分の1減らしました。
簡単な解決策に加えて、技術を使ったらどうでしょうか?スーパーにいる時、中身を教えてくれる冷蔵庫とか、中にある食べ物が悪くなりそうなときレシピと一緒に教えてくれる冷蔵庫とか。
実はこういう冷蔵庫、すでに存在するのです。「スマートフリッジ」という名前です。いろいろな機能があります。
もし私たちが、もっと食品のロスに注目したら、こうした技術も生まれてくるのではないでしょうか。
食品ロスの問題点を知って私たち自身が行動を開始する
どうして食品ロスが問題なのでしょうか?すでに話したように、40%の食べ物が無駄になっています。
もしこんなことがおきなければ、どれだけの資源が節約できることか?
空気や水質の汚染だって減りますし、気候にも害が及ばないし、有害物質の排出も減ります。
それに、もし食品のロスを減らすことができたら、食べ物がなくて困っている5,000万人のアメリカ人の食事をすべてカバーすることができるのです。現在のフードロスを3分の1だけ減らしさえすれば。
だからこの問題に取り組むべきなのです。
私はいくつかの解決策を提示しましたし、他のスピーカーも話しました。問題はどうやってもっとスケールを大きくするかです。
2つの方法があります。
1.もっと話題にすること
オバマ大統領は、国の目標はエネルギーの無駄を減らすことだと言いました。2030年までに50%減らします。
イギリスはすでに、食品のロスを2020年までに50%減らすと発表しています。
アメリカの州や市も、食品ロスの削減目標数値を発表すべきではないでしょうか?
2.廃棄分を測ること
NRDCのレポートでは、これまで誰も調べなかった食品ロスの重量や金額を算出しました。
皆、どれだけ食品が無駄になっているのか知らないのです。
量を調べて明らかにしなければ、減らすことはできません。そこでどれだけ食品のロスが出ているのか、測るようにしていきましょう。そうすればもっと注目を集めることができます。
実現できれば、それは私たちに返ってきます。消費者としての私たちだけでなく、主張者としての私たちに。
私たち自身が、政府や、食品会社や、食品業界に携わるすべての人を動かし、もっと食品のロスについて知ってもらうようにすべきなのです。
きょうから、私たち自身で始めましょう。
・・・・ 抄訳ここまで ・・・・
規格外の食べ物の廃棄
日本のフードロスは年間500~800万トンだそうです。
ちょっと形がまずいと市場で売れないというのは問題です。たぶんこれは日本のほうがひどいのではないでしょうか?
初めてカナダのスーパーに行ったとき、野菜や果物の形がすごくまちまちで、不格好だと思いました。
きれいなのもありましたが、りんごなど明らかにどこかにぶつけて傷んでいたり、穴があいていました。「あまり買いたくない」という気持ちになったものです。
それまで日本のスーパーできれいな野菜や果物を見慣れていたからこう思ったわけです。しかし、これでもまだスクリーニングした結果、きれいなのが並んでいるのです。
考えてみれば、同じようにきれいな作物ばかりできるほうが不自然ですよね。こういうことは、一度自分で家庭菜園などして育ててみればわかることです。
形が今ひとつなだけで、せっかくできた作物を廃棄するのは本当にもったいないです。
きれいなものじゃないと売れないからそうなるのですが、消費者が意識を大きく変革して、形が悪くても買えばいいんですよね。
難しいことではありますが、慣れの問題だと思います。味はたいして変わらないのですから。
☆食べ物を無駄にしない方法はこちらで紹介⇒食べ物を無駄にしないためにできる10の方法。
結局、作りすぎ、買いすぎが無駄を招く
アメリカのスーパーマーケットのショッピングカートのサイズが大きくなったことは知っていましたが、クッキーや皿の大きさまで拡大したのは知りませんでした。
カートが大きくなったのは、消費者にもっと食品を買わせるためです。詳しくはこちら⇒節約したいなら知っておきたいスーパーマーケットの買わせる戦略10個
クッキーや皿が大きくなったのも、売上をあげるためでしょうか?
食品ロスも、「なんでも多いことがいいことだ」という価値観が背景にあると思います。「できるだけたくさん食べて栄養をとると幸せな人生になる」といったような。
しかし現実はジャンクフードの食べ過ぎで生活習慣病になっています。
世の中全体が、プラスするやり方から、マイナスするやり方に変わるべき時が来ていると思います。