ページに広告が含まれる場合があります。
すぐにカッとなって行動し、あとで後悔してしまう人におすすめのTED EDの動画を紹介します。
タイトルは、Rethinking thinking (考えていることを再び考えること)。語り手はTrevor Maber(トレヴァー・メイバー)さんです。
人の意思決定が推測や思い込みに左右されることを表す「推論のはしご」というモデルについて教えてくれるアニメーションです。
考え直す:TEDの説明
Every day, we meet people and process our interactions–making inferences and developing beliefs about the world around us. In this lesson, Trevor Maber introduces us to the idea of a ladder of inference and a process for rethinking the way we interact.
毎日私たちは人に会い、やりとりをします。自分のまわりの世界について推論を立て、信念を作り上げます。
このレッスンでは、トレヴァー・メイバーが推論のはしごというコンセプトと、他人とやり取りする方法を考え直すプロセスについて紹介します。
5分33秒。日本語字幕がありますが、動画のあとに抄訳を書きます。
☆トランスクリプションはこちら⇒Trevor Maber: Rethinking thinking | TED Talk
☆TEDの記事の説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
アニメーションなのでわかりやすいですね。
推論のはしご
脳の中に、人が「無意識」と呼んでいるとても小さなはしごがあると想像してください。
それは「推論のはしご」で、ハーバード大学の教授、クリス・アージリスが提唱したモデルが元になっています。
人が他人とかかわるたびに、その経験がはしごの一番下の段に入り、またたくまにはしごをあがって一番上まで行きます。
知らないうちに、私たちはこのプロセスを1日に何千回も繰り返しているのです。
はしごのそれぞれの段について見ていきましょう。
意思決定のプロセス
一番下の段は、その経験の生のデータと自分が観察したことが入ります。
そのできごとを録画したビデオを見る感じです。
2段めでは、経験の詳細や特別な情報がフィルタリングされます。
自分の好み、傾向、その他、自分が重要だと信じていることをもとに選別されるのです。
3つめの段で、選別した情報に意味づけをします。
ここではじめて、人は、その情報について解釈を始めます。それが何を語っているのか、考えるのです。
4段目では、とても重要なことが起きます。
前の段で作り上げた意味をもとに、ある種の決めつけをし、事実と物語の区別があいまいになり始めます。
5段目では、決めつけたことをもとに、結論を引き出します。
このとき、感情的な反応もできあがります。
6段目では、周囲の世界に関する信念を調整します。その経験にかかわった人に対する信念も含みます。
最後の段である7段目で、調整された信念をもとに行動を起こします。
実例を見てみましょう。
駐車場で割り込まれた場合
駐車場で割り込みされたことはありませんか?
停める場所を見つけて、方向指示器を出し、いざ、車をすべりこませようとしたその瞬間、他の車がその場所に停めてしまいました。
すると、すべてのデータや観察したことがはしごの1段目に入ります。
2段めのはしごに入ると、天気がいい、鳥がさえずっている、好きな店に半額セールの札がかかっているといったことは、すべて頭から消え去ります。
ハンドルを握っている感覚、血圧が上昇する感じ、ブレーキがきしむ音、即座に目をそらした相手の車のドライバーの顔。こんなセンセーションを感じる中で、情報が選別されます。
3段目に行きましょう。あなたは、若い頃から、両親に、並んで順番を待つことがいかに大切か教えられてきました。
自分は先着順のルールをずっと守ってきたのに、突然、ある人が、あなたの場所を盗んだのです。
4段目では、自分の思い込みと物語が始まります。
「こいつ、とんでもない奴だ。親は何も教えなかったのか? 方向指示器を出していたのが見えなかったのか? いつも注意なんてしてないんだな。いったいなんで、誰よりも一番自分が大事だと思っているんだろう?」
その考えはすぐに5段目に行き、相手が無情で思いやりがない人間だから、誰かがわからせてやらなければならないと結論づけます。
怒り、イライラ、復讐心、正当化。
6段目で、今回の経験をもとに信念を調整します。
「ゆずるのはこれが最後だ。今度誰かが割り込んだら、ただじゃおかない」
そして最後の段に来て、行動を起こします。
相手の車の後ろにつけ、クラクションを鳴らし、窓を降ろして、選んだ言葉を叫ぶ。
このとき、相手がやってきてあやまる様子を想像してください。
買い物の最中に、陣痛が始まった妻が、「生まれそうだから、すぐに来て病院に連れてって」と電話をしてきたので、とても急いでいたんです、と相手は言います。
これを聞いて、私たちは驚き、相手に深くあやまり、入り口に走っていく相手の幸運を祈るのです。
いったい何が、私たちの態度を変えたのか?
なぜ、これがそんなに重要なのか?
はしごを意識する
駐車場の例では、私たちの信念が、他の人のはしごのせいで変わりました。
「子供が生まれそうだ。早く行かなきゃ。あ、あそこが空いている。あ、割り込みをしてしまった。すぐにあやまったほうがいいな。さもないと、最低の人間に思われる」
でも、自分から、信念を変えることができるとしたらどうでしょう?
実はできるんです。
私たちには人間に特有の自由意志がありますから。
次にあなたが、あるできごとに反応しているのに気づいたら、はしごに意識を向けてください。
自分の信念がどこから来たのか、自問しましょう。
どんなデータと観察がそういう思い込みをもたらしたのか、そしてそれはなぜか?
あなたの推測は、適正で事実に基づいているのか?
違う推測をすれば違う感情になるのではないか? その結果、べつの、もっといい結論と行動が生まれるのではないか?
皆、それぞれ自分のはしごをもっています。そのはしごに注意を向けてください。そして、他の人もそうできるよう手助けしましょう。
//// 抄訳ここまで ////
思い込みに関するほかのプレゼン
プロセスを検証
この動画によれば、推論のはしごは、7段階に分かれています。
1.データ(観察したこと)を取得
2.情報の選別
3.情報に意味づけ開始
4.推測(決めつけ)する。事実より物語優先
5.結論を引き出す
6.結論に基づいて信念を調整(信念が強化される)
7.信念に基づいて行動
こんなふうに私たちは限られた状況(自分の観察のみ)をもとに、物事を結論づけ行動しがちです。その行動はいつも推測や思い込みに左右されています。
まあ、これは人間なら仕方のないことです。
しかし、思いこみのまま一直線に行動すると、かえって自分のためにならないことがよくありますよね。
そういう失敗が多い人は、はしごがあることを意識しながら、自分の行動を振り返る癖をつけるといいでしょう。
そうすれば、すぐに頭に血が上ることもなく、ストレスも少なく、心臓にもいい生活ができますから。
無駄に疲れず、周囲の人とも友好関係を保てます。
割り込みされたときなど、とっさの場合に、結論づけと行動を変えることはむずかしいと思います。
ですが、時間の余裕がたっぷりあるのに、推測によって、まずい行動をえんえんと続けているときは、自分次第で、行動を変えることができます。
はしごをイメージすると、どこで思い込みに影響を受けているか発見しやすいです。
はしごの絵を描いて、自分の意思決定のプロセスを調べてください。
*****
はしごの図を描くのは、対人関係にかかわらない意思決定を検討するのにも使えそうですね。
何かを買いたくて、すでに買うことを決めたぞ!と思ったときも、念のため、はしごの図を描いてみてはどうでしょうか?
買わないという行動を選ぶことができるかもしれません。