退屈を感じる人

TEDの動画

退屈はひらめきのもと:ハンス・ウィルヘルム(TED)

退屈するからこそ、インスピレーションがわく、と伝えるTEDの動画を紹介します。

退屈するのが怖くて、スケジュールをいっぱいにしたり、スマホを見すぎるたりする人におすすめです。

タイトルは、Boredom – A Source of Inspiration(退屈:インスピレーションの源)、プレゼンターは、絵本作家でイラストレーターの、 Hans Wilhelm(ハンス・ウィルヘルム)さんです。

放題は『退屈はひらめきのもと』



退屈はインスピレーションのもと、TEDの説明

We are surrounded by people and devices who regularly serve as distractions. Rarely do we have time to be bored. How could boredom serve as a source of imagination? How can we create opportunities to be bored? Hans Wilhelm uses his own art work to illustrate the possibilities for using boredom as a source of inspiration!

私たちは、常に、気を散らす人々やデバイスに囲まれています。

退屈する暇などめったにありません。

退屈は、どうやってイマジネーションの源(みなもと)となるのでしょうか?

どうやったら、私たちは、退屈になる機会を作ることができるのでしょうか?

ハンス・ウィルヘルムは、自分自身のアートワークを使って、退屈をひらめきのもとになると説明します。

収録は2015年の4月18日。動画の長さは11分。日本語字幕もあります。短いし、ハンスさんの絵もいっぱい出てくるので、できれば実際に動画を見てください。

いつものように、動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に





絵を描き始めたきっかけ

きょうは、退屈がどんなふうに、私の人生や仕事で、インスピレーションを与えてくれたのかお話しします。

メリアム・ウエブスター(辞書)の「退屈」の定義は、「興味が欠乏しており、うんざりして落ち着かない状態」です。

興味に関しては、ちょっと古くさい説明だと思います。今なら、「気を散らすものの欠乏」も付け加えるべきでしょう。

今、私たちは退屈すると、まずスマホを取り出して、メールチェックしたりしますから。

だから、気をまぎらすものがないときも、退屈すると思います。

ドイツで育った私は、気をまぎらすものがなく、退屈な状態のエキスパートでした。

ブレーメンにはろくに、気をまぎらすものがなかったし、雨ばかりで、外では遊べませんでした。

だから私はすっかり退屈していました。しかも、両親がテレビを置きたがらなかったので、テレビもありません。

それで、とことん退屈していましたが、おばが印刷会社勤務で、紙をたっぷり私にくれました。

私は、自分で物語を描きはじめ、すごく楽しいので、生涯、こうしていこうと決めました。

大きくなったら神さまになろうと思ったのです。神さまは、世界や宇宙のすべてを作りましたからね。

子どものころの夢を思い出す

しかし、進路を決める段になって、私は、ビジネススクールに行き、ビジネスマンになりました。

アフリカに引っ越し、そこにあるオフィスで何年も働き、次にアメリカに来ました。アメリカが気に入ったので、ここに住むことにし、グリーンカードを取得して、海辺のコテージを借りました。

このとき、神さまになるという子供の頃の夢を思い出したのです。

そして、子どもむけの本を描き始めました。最初の2冊の本はすぐに出版社が買い取ってくれました。

しかし、その後は、待ちの時間でした。作家が、新しい本のアイデアを出版社に持ち込んだあとは、何週間、何ヶ月と待たなければなりません。

私は退屈でした。テレビがなかったので、退屈は倍になりました。

ユーリ・ガガーリンのエピソード

そんなとき、ユーリ・ガガーリンの話を思い出しました。ガガーリンは、宇宙で、地球のまわりを回った人です。

ガガーリンが小さなカプセルに入っていたとき、コツ、コツ、コツ、とカプセルを叩く音に気づきました。

計器をしらべても、何の音かわからず、ずっと音が続いたため、ガガーリンはひじょうにこの音が気になり、気が変になりそうでした。

しかし、彼は、「抵抗するからいつまでも続く(What we resist persists)という言葉を思い出し、この音と仲良くすることにしました。

目をとじて、音に耳を傾けたのです。そうするうちに、この音は、ロシアの有名な歌と同じリズムだと気づき、ガガーリンはハミングを始め、歌い、口笛を吹き、そのうち、この音は、旅のよい相棒となったのです。

退屈から生まれた物語

「ガガーリンが、宇宙でできたことを、私が地球上でできないわけはない」と私は思い、退屈を、全身で感じることにしました。

座って、退屈に愛情を注いだのです。

すると退屈が消え、それは単なる記憶になり、新しい世界が開きました。ボリスという子熊の世界です。

子熊はとても退屈で、やたらとおせっかいな妹と住んでいて、というようにストーリーを思いつき、そうやってできたのが、”Totally bored Boris”(退屈しきったボリス)です。

孤独から生まれた物語

1週間後、また退屈になりましたが、このときはもっと重要なことに気づきました。

退屈は最初にお話ししたように、うんざりして落ち着かない状態ですが、これは単なる状態です。

この状態の下には、考えたくないさまざまな感情があります。ネガティブなもの、とらえがたいもの、直面したくない何か。

このとき、私は、孤独を感じていました。

アフリカに住んでいたときは、たくさん友人や同僚がいたのに、私は突然、人から離れる仕事を選んだのです。とても孤独でした。

寂しかったので、座って、この気持ちを全身で感じました。そして、愛情をふりそそいだら、孤独が消えました。

チェスナットという孤独な小さなリスの世界が広がり、孤独になんかなりっこないカワウソも思いつき、それが、“Never lonely again”(もう決して寂しくならない)という本になりました。

喪失感から生まれた物語

1週間後、また違う気持ちになりました。退屈だけどちょっと違います。それは喪失感でした。

何度も一緒に海岸を散歩した友達が結婚して引っ越したので、喪失感を感じていたのです。

このときも、座って、そういう気持ちになることを自分に許し、そして、その気持ちを愛しました。

その瞬間、強かった喪失感は消え、ブライアンとウォーレンの話を思いつきました。

ウォーレンは白いアヒルで、ブライアンは友達の野生のマガモです。2人は、楽しい冒険をします。

ある日、ウォーレンが、ブライアンに、「あのね、ぼく、冬の間は、家族と南に行くから」と言うときまで。

友情の危機が訪れますが、2人はすばらしい体験をします。このストーリーを思いついたのも、私が、自分の気持ちをしっかり観察したからです。

ネガティブな気持ちは愛を求めている

この世界では、2つの行動しかありません。1つは、愛情とエネルギーを与え、送ること、もう1つは、愛情とエネルギーを求め、心を開き、それを受け取ること。

私たちの、なんだかよくわからないネガティブな感情も、子どもたちがそうであるように、愛されたいという気持ちの表れなのです。

いったんそれを愛することができれば、その気持は落ち着きます。

少なくとも、私はそうです。

その後またしばらくして、私は、ちょっとばかり退屈な気分になり、「これはどうしたことか?」と考えてみたら、何か、プロジェクトをしなければならないあ、という気持ちだとわかりました。

何ができるかわかりませんでしたが、座って、その気持ちを感じて、そう感じることを許したら、またひらめきがわいてジョセフィンの話を思いつきました。

ジョセフィンは、小さなペンギンで、バレエを学ばなければなりませんが、やりたくないし、バレエができるとも思っていません。

けれども、もちろん、最後には、たくさん楽しんだあと、ジョセフィンはバレエができるようになっただけでなく、ほかの動物にもバレエを教えるのです。このときも、うまくいったわけです。

ブッククラブを生み出したもの

その後、しばらくの間、こうした物語を12作描きましたが、すべて、退屈なとき、ひらめいたものです。

これらの物語をランダムハウスに持っていったら、出版社の人は気に入って、すべて買い取ってくれ、「ハンス・ウィルヘルムのブッククラブを始めないか」と言ってくれました。

とても光栄なことなので、承諾しました。

こうやって、後に、 Merritales(メリーテイルズ)と呼ばれるブッククラブが始まりました。

これは、もうずいぶん前の話です。30年以上前、つまり、前世紀の話です。

このときから、私は、200以上の本を描きましたが、そのうちたくさんの本は、退屈から生み出されたものです。

退屈したくてジャマイカへ

しかし、その後、私の生活は変わりました。みなさんと同じように。テレビも手に入れました。

パソコン、アイパッド、アイフォンも持っています。今は、チェックアウトするときや、歯医者の待合室にいるときなど、少しでも退屈したら、気をまぎらす物を使います。

猫の動画とか見たりして。

私たちがスマホを使えないのは、シャワーをあびているときぐらいですが、そのうちアップルがシャワー中も使えるアイフォンを開発して、シャワーしながら、テキストなんかをやりとりできるようになるでしょう。

私たちは、全員で、人生で唯一のぜいたくを手放そうとしています。つまり時間を。

また退屈したいと思ったので、忙しいイーストコーストから、ジャマイカに引っ越しました。

ジャマイカの小さなホテルにはテレビも、ラジオもワイファイもありませんから、完全に退屈になれます。

これが私のスタジオです。壁は海とヤシの木で、屋根は空です。

海岸

ここなら、心からくつろげ、いたずら書きをして、新しいアイデアを思いつくことができます。

ひらめきを得るステップ

このやり方が、みなさんにもうまくいくかどうかはわかりませんが、もし試してみるというなら、こんなステップになります。

1.その感情を全身で感じる

考えないで、感じます。それがどこにあり、どんなふうになっているのか。

2.その感情に愛のシャワーを思いきり注ぐ

3.インスピレーションがわくのを待つ

もっと詩的に言うならば、「ミューズに接吻されるのを待つ」です。

//// 抄訳ここまで ////

アートやクリエイティビティに関するほかのプレゼン

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よりよく生きる技術としてのクリエイティビティ(TED)

ハンス・ウィルヘルムさんの絵本。かわいくてあたたかい絵ですね。

退屈する時間を大事にしたい

前回、忙しさに関するプレゼンを紹介しましたが⇒忙しい毎日をバランスの取れた日々にする方法(TED)

やたらと、スケジュールを埋める人は、退屈することを恐れているのかもしれない、と思い、今回は、退屈に関する動画を紹介しました。

退屈するのは、とてもぜいたくなことで、ここから、さまざまなインスピレーションがわくのです。

どんなものにも、余白や遊びの部分が必要ですが、スケジュールにもそうした空白が必要というわけです。

スマホ、タブレット、SNS、その他、人のすきま時間を奪おうとしのぎを削り合っているツールやサービスで満ちあふれている現代は、退屈するのはなかなか難しいと思います。

いま、自宅待機の人も多いので、退屈するかと思いきや、「皆が退屈しないように」「家で充実した時間を過ごせるように」と、ありとあらゆる無料コンテンツが公開されています。

貧乏性の人は、「見なければ/聞かなければ/読まなければ、もったいない」と思って、消費にやっきになりそうです。

ふだんでも、大量にコンテンツやサービスがあるせいで、結局は、何かに、集中できず、脳が疲れています。

先の不安や心配で、心が疲れやすい今は、そのようなコンテンツにやみくもに時間を捧げるのではなく、自分の気持ちに向き合ったほうがよいでしょう。

不安、心配、退屈な気持ちも、静かに受け入れることで、うまく活用できるのですから。

****

毎朝、スロージョギングをしていますが、ふだんなら、早朝に、散歩なんてしないであろう人たちを見かけることがあります。

何人かの人が、スマホを片手で持って話しながら歩いています。

「散歩するときぐらい、スマホで話すのやめたら?」と思うのは私だけでしょうか。

スマホでいつも誰かとつながっていると、きっちり1人になるのが怖くなるかもしれませんが、たまには1人にならないと、ストレスがたまります。

あなたも、退屈な時間を大事にしてください。





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