ニットのスカーフ

TEDの動画

相手の視点をもつことは、共感することより重要です(TED)

コミュニケーション能力をアップしたい人の参考になるTEDトークを紹介します。

タイトルは、Why Perspective Beats Empathy to Change Minds (気持ちを変えるには、共感より視点が重要)。

法廷弁護士のHeather Hansen(ヘザー・ハンセン)さんのプレゼンです。



相手の視点をもつ・TEDの説明

In this intriguing talk, Hansen makes the case for choosing perspective over empathy. She offers that they’re very different things, and the ability to see the world from others’ perspectives is the key to making a real impact at work and at home.

この興味深いトークで、ハンセンは共感より視点が重要だと言います。

ハンセンは、共感と視点は全く違うものであり、他人の視点で世界を見ることこそ、世界や家庭を変える鍵だと説明します。

収録は2023年の1月。長さは10分。まだ新しい講演なので字幕はありません。抄訳を参考にしてください。

☆TEDの記事のまとめ⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

ヘザーさんは、法廷弁護士なので、説得力がありますね。





ホームレスへの支援

数年前、地元の女子校で教えている友人と話をしました。

彼女の生徒は、社会事業として、ホームレスの人々のためにマフラーを編むことにしたんです。

まず毛糸を買いに行き、とてもきれいな毛糸を選び、編み物を習い、50本の美しいマフラーを編み上げました。

生徒たちは、わくわくしながらそのマフラーをシェルターに持って行きました。受付にいる男性に、何時間もかけた結果が入っているバッグを手渡したのです。

男性は中を見て、「わあ、すごい、とてもきれいなマフラーですね」と言いました。

しかし、女生徒たちが立ち去ると、彼は私の友人に、「マフラーはとても素敵だけど、ホームレスの人が使うとは思わないよ」と言ったのです。

どうしてだと思いますか?

そのときはその理由がわかりませんでしたが、今はわかります。この話は、共感より視点のほうが重要だと理解する助けになりました。

共感が重要視されるけど

世間では、共感が重要だと言われます。

共感を持ちましょう、それは必要不可欠なことと言われることもあります。

でも、共感について私たちは本当には理解していないと思います。

共感の研究によれば、共感にはさまざまな定義があります。

「エモーショナル・インテリジェンス」の著者で、共感についてハーバード・ビジネス・レビューにも寄稿しているダニエル・ゴールドマンは、共感には、2つのタイプがあると言っています。

1つは、認知の共感で、相手の立場になって物事を見ること。

もう1つは感情の共感で、相手が感じていることを感じることです。

私たちは、感情の共感にフォーカスする傾向があるんです。

相手が感じていることを感じようとします。

でも、世界を変えたいなら、相手が見ているものを見ること、つまり視点が、もっとも重要なのです。

共感だけでは助けられない

スカーフの話に戻れば、みんな、スカーフは温かくて心地よく、柔らかいものだとイメージするでしょう。

でもホームレスの人の立場に経てば、その考えは変わります。

私は20年を超える法廷弁護士の経験から、視点と共感の違いを学びました。

私の専門は、医者の弁護です。患者から訴えられると、医者は、恐怖、恥、怒りを感じます。

もし私がクライアントである医師の気持ちを感じていたら、私は裁判において、彼らを助けることはできませんでした。

むしろ逆の結果になったでしょう。

若い外科医の弁護をしたことがあります。彼女は私の若いころを思わせました。

やる気があって野心的、そして思い込みがすぎるところがあります。

リサーチによれば、誰かの中に自分を見ると、つまり、その人が自分と似ていると感じると、より共感を感じます。

実際、私もそうでした。

共感より視点が重要

訴えられて悩んでいる彼女を見て、私も同じ気持ちになりました。

冒頭陳述を始める前の週末、彼女は上司からの電話で、「もしこの裁判で負けたら、仕事をやめなければならない」と言われました。

彼女は、医師のキャリアを通じて、この仕事につくことを切望していました。この仕事を得るために、1人で家族から離れ、ずいぶん遠い場所に引っ越しました。

このような事情を彼女から聞いていた時、私は、彼女の恐怖、怒り、不満をまざまざと感じて、唇がだんだん腫れ、鼻につくまでになったんです。

自分自身のストレスホルモンに対して、アレルギー症状を起こし、その晩、病院の救急にかかり、共感を解毒させるために、抗ヒスタミン剤を点滴で打つはめになりました。

私の共感は、彼女を、そして未来のクライアントを弁護する役には立ちません。

裁判に勝ちたいなら、感情的になりすぎず、相手の視点に立つことを学ぶ必要がありました。

この裁判を彼女の立場から見ることができれば、彼女の心配について話をし、彼女のものの見方を変えて、そんなに恐怖を感じないように導くことができます。

この裁判を陪審員の立場で見れば、彼らの意見を変える仕事の準備が整います。

裁判所では、共感より視点が重要なのです。

医療の場でも

医療の場においても同様です。

もし医師が、患者の感じている痛み、恐怖、混乱、不安を同じように感じていたら、患者のためにはなりません。

しかし、患者の立場になれば、何を説明すればいいのか、どうやったら患者の力になれるのかわかります。

その結果、患者がより健康になる選択をする手助けができるのです。

燃え尽き症候群になるのを防げるでしょうし、他者の立場に立って物事を見られれば、より思いやりも持てるでしょう。

企業でも

企業の世界でも、共感より視点が重要です。

ビジネス心理学の研究によれば、効果的なダイバーシティトレーニング(多様性を大事にするマネージメント法など)の方法は、相手の視点に立って物事について書かせることです。

たとえば、LGBTQの人や、人種的マイノリティーの視点から、ある1日がどのように進むか書かせます。その人達が、どんな障害や困難に出会うかを、考えさせるのです。

このワークをしたあと、参加者の相手に対する態度が改善され、この効果は8ヶ月続きました。

この結果は相互参照的でもありました。つまり、LGBTQの人々に対して、ポジティブであるなら、人種的マイノリティーに対しても、ポジティブな態度でした。

企業においても、視点が、投資家とのコミュニケーションに役立つし、相手に考え方を変えてもらうこともできるのです。

相手の視線をもつには?

あなたは、誰の視点を変えたいですか?

クライアント、パートナー、友人、家族の視点を変えたいかもしれませんね。

誰かの見方を変えたいときは、まず、その人たちを理解しなければなりません。

長年医療事故を起こした医師を弁護してきましたが、陪審員の中に医師がいたことは1度もありません。

自分のクライアント以外に、法廷の中に医師がいたことがなかったのです。

判事を含めて、法廷の中にいる人はすべて患者でした。皆、患者の立場で物事を見るのです。

私の仕事は、その見方を変えることです。そうする唯一の方法は、患者、そして陪審員の見方を理解することでした。

それができれば、その見方に、証拠や逸話を響かせることができます。

マフラーがだめだった理由

マフラーの話に戻りましょう。

女生徒たちは、ホームレスの人々の寒さを感じました。しかし、ホームレスの人の視点で見ていなかったので、彼らにとって、スカーフが凶器になるかもしれないことに気づけませんでした。

路上で寝ているとき、スカーフをしていると、それで首を締められる恐れがあるのです。

スカーフよりソックスのほうがよかったわけです。

相手に聞いてみる

他人の立場に立って物を見ることは可能です。少し練習や努力が必要なだけです。

一番簡単でよい方法は相手に聞くことです。

世界をどう見ているのか聞いてください。そして相手の答えを、好奇心をもちながら聞きましょう。

これが、他人の立場に立つ始まりです。

その後、その視点に立って、行動を起こせます。その行動は、単なる共感によるものより、ずっと効果的です。

最近、友人に聞いたのですが、生徒たちは今年も社会事業をすることにしました。

今回は、まったく違うやり方です。

助けたいと思っている人の立場に立って、物事を見る努力をしたからです。

女性シェルターへの支援

今年は女性のシェルターのために何かをすることにしました。

シェルターにいる女性たちは、恐怖や不満、怒り、混乱を感じているとわかっていましたが、今回はそういう感情になろうとはしませんでした。

代わりに、女性たちの立場で物事を見ようとしました。その結果、ソックスと下着を贈ることにしたのです。

しかし、生徒たちはもう1歩、先に進みました。

事前に、シェルターのリーダーと話をし、ソックスと下着はいい案だと聞いていたのです。

女生徒たちは、またスカーフを編み、それを売ったお金でソックスと下着を買いました。

シェルターの女性たちは、この贈り物をとても喜びました。

凶器になりうるスカーフは、大きな善の源(みなもと)にもなるのです。

すべては、あなたの物の見方にかかっています。

//// 抄訳ここまで ////

ダニエル・ゴールドマンの著書です。

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比較的最近書いたものを集めましたが、もっとあります。

客観的になるべし

共感することは悪いことではないです。

しかし、それはあくまで自分目線。自分が相手と似た感情になることで、いい気分になっているというか、自己満足にひたりがちです。

同情するなら金をくれ、という言葉がありますが、同情だけでは相手を助けることはできません。

状況を改善するためには、相手と同じようにどっぷり感情にひたっているだけではだめで、その状況をもう1つ上の段階から見ることが必要です。

1つ上から見ないと、相手目線にはなれません。

そして、相手の目線で見ることが、人間関係の構築や、人を説得したいときに役立ちます。

人間は、いつも自分のことばかり考えてしまうため、相手の立場に立つことができる人は、少数派だと思います。

ふつうにしていると、たぶんずっと自分目線なので、ハンセンさんの言うように、まずは相手が何を求めているのか、聞いてみるといいですね。

「相手はこう思っているに違いない」と決め込んで、聞くことすらしないケースがたくさんあります。

家族が私の断捨離を邪魔している、よけいな物を買ってくる、物をためこみすぎている、と思うときも、多くはコミュニケーション不足だと思います。

「いや、私はちゃんと自分の意見を言っている」と思っても、それが伝わっていなかったら、コミュニケーションは成立していないのです。

シンプルライフの障害は家族だと感じている人は、私といっしょに、相手の立場に立つ練習をしましょう。





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