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50代、60代という年頃の人で、「シンプルライフとか、よくわからないけど、物がすごくたまってきてしまった、少しは捨てたほうがいいのかな」、となんとなく思っている方におすすめの本をご紹介します。その本の名は、『若返り片付け術』。
本の内容に入る前に、高齢者の片付けについてちょっと書かせてください。
高齢者の断捨離
老前整理、生前整理、遺品整理という言葉が聞かれるようになって久しいです。これ3つともやることは同じです。つまり大事な物を選んで、残りの不要なものを断捨離すること。ただ、いつ捨てるかによって名前が違います。
老前整理
まだ老いる前に物を捨てること。いつが「老いる前」なのか、人によって意見が別れるところでしょうが、自分で自分の物を片付ける体力と心の余裕と財力があるうちでしょうか。
しかし、20代、30代というのは、「自分が将来年をとる」、ということをあまり実感として捉えることはできないでしょうから、やはり、筆子のような50代とか、60歳を過ぎてから片付けるのが老前整理なのかな、と思います。
なぜ、老いる前に捨てておくのかというと、不用品がいっぱいあると、単純に老人には暮しにくいからです。
生前整理
物も捨てますが、さらに財産となるものを、何がどこにあるのか、自分が死んだあと、誰にあげるのか、そういうことをちゃんとしておくこと。遺族が遺産相続でもめないように、という配慮からします。
遺品整理
本人が死んだあと、その人の持ち物を遺族が整理すること。故人が物持ちであった場合、とっても大変になります。
老後は、お金は必要ですが、物に関しては、そんなにたくさんいりません。ですが、現在老後の人や、筆子のように老後がもうすぐという年代の人は、たくさん物を持っているにもかかわらず、「物を捨てられない人」が多い気がします。
今年82歳の私の母は、さばさばした性格なのに、筆子が物を捨てようとすると、すぐに「もったいない」と言います。
全然もったいなくありません。使ってないものを置いておくほうがもったいないです。賃貸だったら、不用品置いてるスペースに家賃払ってるわけだし、持ち家だったら、固定資産税払ってることになります。
物を捨てて、小さい暮しにしたら、家賃も固定資産税も相当節約できますから、「物を捨てない」ほうが、もったいないのです。
もちろん、その物の管理に使うエネルギーや時間ももったいないです。この点について、筆子は何度も母に説明しましたが、なかなかわかってくれません。
ではここから本の説明に入ります。
高齢者向けお片づけ指南本、「若返り片付け術」宮城美智子著
あまり片付け本は読まない筆子ですが、「若返り片付け術」は、Kindle本の日替わりセールで399円だったので買ってみました。
筆子はすでにミニマリストなので、片付ける理由や意義、そして片付け方に関しては、さして目新しいことはありませんでした。
ですが、断捨離初心者とか、自分の持ち物を捨てることなんて夢にも思ってないけど、「なんだか最近物が増えて、暮しにくいな」と思っている方には、参考になる本だと思います。
片付けの体験から生まれた本
著者の宮木美智子さんは、1947年生まれ。私の母より一回り若いぐらい。この方は、バブル時代にアート引越センターのエプロンサービスの部長という職についていました。
エプロンサービスとは、家にある物の片付けを手伝ってくれるサービスです。引越し前後の荷物の片付けと収納をサポートするために生まれました。
現在は、家の中の不要品の処理や整理整頓だけでなく、日常の掃除もしてくれます。
くわしくは⇒暮しのお手伝いアートエプロンサービス|引越し料金・費用の見積もりはアート引越センター
エプロンサービスという名前は、主婦目線で片付けをしたり、収納しようというコンセプトからつけられました。ホームページで写真を見ると、ピンクのエプロンにピンクの三角巾をつけた女性が部屋を片付けています。
このエプロンをつけてる人たちは、「収納レディー」という名前です。宮城さんは、収納レディーの育成も担当。
引っ越しは3月、4月に集中する季節ビジネスです。そこで、著者は、エプロンサービスを通年で提供する商売に拡大しました。当時、片付けや、整理整頓をする会社は、日本にはなかったそうです。言うなれば、宮木さんは、「片付けをするプロ」の先駆者なのです。
この本は、宮本さんが、実際に自分でさまざまな家に入り、不要品であふれている部屋を片付け、整理整頓した現場体験からできた片づけ本です。
近藤麻理恵(こんまり)さんも、クライアントの家に行くそうですが、本人は片付けていないと思います。しかし宮城さんは、エプロンをつけて自ら、片付けていました。
片付けをすると若返るのか?
本には、「物をためこむとふける」、と書かれています。これは、他の断捨離本にはあまり書いてないことですね。
「いつか使うかも」のいつかのために、押入れにいらない物を詰めこんでいるのは、いつ来るともわからない未来に生きていること。そして、過去の思い出の品に執着しているのは、過去に生きていること。
こうした物の管理に、時間や気力、体力を使うのは、現在の自分の生活を楽しんでいないからふけてしまう、という論理です。
そこで今使うものだけ残し、不要品を捨てれば今の生活を楽しめるし、それが「若返る」ことになるのです。
若返る=人生を楽しんでいる、いきいきと暮らしている、という意味です。物を捨てると、老いてはいても、人生を満喫できるのです。
本の内容は、こちらの新聞記事を読めば、だいたいわかります⇒高齢者宅の片付け方は 「いつか使うは使わない」念頭に – 西日本新聞
この本はこんな人に向いています
断捨離や、片づけ本に親しんでいる人には、「捨てる」ことについて、特に目新しい内容はありません。
「片付けることが、人生のクオリティをあげる」という考え方にまだピンと来ていない人むけです。
年配の方の片付けの話が多いので高齢者向けと言えましょう。文章はあまり多くなく、写真が豊富です。
たとえば、著者が実際に片付けや整理整頓に入った、2件の家のビフォー、アフターの写真があります。あるおばあさんのマンションの居間の壁には、趣味の俳句を書いた紙がたくさん並んでいます(これはビフォー)。
まるで居酒屋のメニューのように。
これを見て、筆子ドキッとしました。筆子の母も同じことをやっています。母が壁にびっしり貼っているのは、趣味の絵手紙です。
この1人暮しのおばあさんは、筆子の母よりもっと物持ちです。ところがある日、エプロンサービスの人が来たら、数時間後にすべてがきれいに片付きました。費用は5万円。これだけ片付いて5万円なら安いです。母の家にも派遣したいぐらいです。
アフターの写真を見ると、ミニマリスト筆子の目からすれば「まだまだ物がいっぱいある」のですが、このおばあさんにしてみれば、革命的だったに違いありません。
著者の宮城さんは、収納アドバイザーでもあるので、全部捨てるわけにはいかないのでしょう。何もかも捨ててしまうと、収納する必要がなくなってしまいますから。
ほかに、「片付けのコツ」、コートなどの衣料品のかさばらないたたみ方、著者自身のコンパクトな部屋の写真などものっています。
雑誌の特集記事をベースに構成しているようで、さまざまな内容が少しずつ盛り込まれているものの、1つ1つのトピックを、さほど深く追求していません。
正直、内容は物足りないです。ですが、母に読ませたいところはいっぱいありました。
「ためると老ける」という主張、文章が少なく写真が多い点、実例でおばあさんの部屋が出てくるところ、亡くなったあとの物の処分に60万円かかったエピソードなど、高齢で、断捨離初心者の母に最適です。
少しは物を片付けてほしい高齢者にこの本をプレゼントするのもいいですね。喜ばれるかどうかは、相手次第ですが。