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ほほえむことがもたらすメリットを教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、The hidden power of smiling (ほほえみの隠されたパワー)。講演者は、笑顔の威力に詳しい起業家のRon Gutman(ロン・ガットマン)さんです。
邦題は『笑みの隠れた力』
笑みのパワー:TEDの説明
Ron Gutman reviews a raft of studies about smiling, and reveals some surprising results. Did you know your smile can be a predictor of how long you’ll live — and that a simple smile has a measurable effect on your overall well-being? Prepare to flex a few facial muscles as you learn more about this evolutionarily contagious behavior.
ロン・ガットマンが、ほほえみに関するたくさんの研究を振り返り、驚くべき結果を紹介します。
ほほえみから、寿命の長さを予測できると知っていましたか? そして、単なるほほえみが、自分の幸せに影響があり、それが計測できることも。
顔の筋肉を収縮させながら、進化しつつ、他人にうつってしまうこの行動について学びましょう。
収録は2011年の3月。長さは7分10秒。日本語の字幕もあります。字幕のあとに抄訳を書きます。
☆トランスクリプトはこちら⇒Ron Gutman: The hidden power of smiling | TED Talk
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ユーモラスなプレゼンですね。
スーパーパワーがほしかった
子供のころ、スーパーヒーローになりたいと思っていました。世界を救い、みなを幸せにしたいと思ったのです。
しかし、この夢を実現させるには、スーパーパワーが必要です。
、惑星クリプトンから銀河系の外にある物を探す空想の旅に出ましたが、たいして成果はありませんでした。
そこで、大人になってからは、本物の科学の旅に出て、もっと役に立つ真実を学ぶことにしました。
カリフォルニアバークレー校の30年の研究
旅の開始はカリフォルニアです。
カリフォルニアバークレー校の、30年にわたる研究です。
この研究では、古いイヤーブック(卒業アルバム)にのっている生徒たちの笑顔の度合いから、その後の人生の成功と幸福を測定しました。
その人たちの結婚生活がどれほど充実し、長続きするか、写真の笑顔から、予測することができました。
どれほど幸福であるか、どれほど他人にインスピレーションを与えるかも。
べつのイヤーブックで、オバマ大統領の写真を見つけました。
彼のスーパーパワーは、彼の笑顔の中にあったのです。
ベースボールカードの研究
2010年に、ウェイン州立大学が行った、1950年代以前のメジャーリーグの野球選手のカードの研究でも、「なるほど!」と思うことがありました。
選手の笑顔の度合いから、彼らの寿命を予測できるとわかったのです。
写真の中で笑っていない選手は、平均72.9年生きましたが、まぶしいほど笑顔を見せている選手は、平均80年生きました。
胎内でも笑っている
実は私たちは、笑いながら生まれてきます。
3D超音波技術により、胎内にいる赤ちゃんも笑っているように見えることがわかりました。
生まれてからも、笑顔は続きます。最初は。たいてい寝ているときです。
目の見えない赤ちゃんでも、人の声を聞くと笑顔になります。
笑顔は皆に共通する表情
ほほえむことは、人間の、きわめて基本的な、生物学的に誰にでもある表情です。
表情に関する研究の世界的な権威であるポール・エクマンは、パプア・ニューギニアでの研究で、西洋文化から完全に切り離され、異常なカニバリズム(人肉を食べること)の儀式で知られるフォア族も、私たちと同じ状況で笑顔になることを発見しました。
つまり、パプア・ニューギニアからハリウッド、そして北京のモダンアートに至るまで、喜びや満足を表現するために、人はよく笑っているのです。
子供は日に400回笑顔になる
1日に20回以上笑っている人は、私たちの3分の1以上ですが、5回未満しか笑わない人は、14%もいません。
一番、スーパーパワーをもっているのは子供たちで、1日に400回も笑顔になります。
よく笑う子供たちのそばにいると、自分も笑顔になることを不思議に思ったことはありませんか?
スエーデンのウプサラ大学の最近の研究によれば、ほほえんでいる人を見ているときに、しかめつらになるのはとてもむずかしいのです。
笑顔は、進化的に見て、人に伝染し、私たちがふだん使っている顔の筋肉の動きを止めるからです。
自分で笑うと笑っている人の気持ちがわかる
他人の笑顔を真似して、自分の身体で体験することは、笑顔が本物か偽物か理解する助けになります、笑顔を見せている人の心の状態もわかるのです。
フランスのクレルモン=フェラン大学で最近行われた擬態の研究で、被験者の口に鉛筆をくわえさせ、笑顔を作れない状態で、人の笑顔が本物か偽物か判断してもらいました。
鉛筆をくわえていないときは、被験者は、うまく判断できましたが、くわえているときは、自分が見た笑顔を作ることができず、うまく判断できませんでした。
笑顔になると脳が活性化される
『種の起源』で進化論を展開したチャールズ・ダーウィンは、『表情フィードバックの反応仮説(facial feedback response theory)』も書いています。
ダーウィンは、笑顔は気分がいいkとの結果であるだけでなく、笑顔を作ることそのものが、人の気分を上向きにさえると書いています。
ダーウィンは、フランスの神経学者、ギヨーム・デュシェンヌの研究を引用しています。
デュシェンヌは、顔の筋肉に電気ショックを与えて、笑顔を誘発したそうです。
これに関連するドイツの研究では、ボトックスを顔に注射して、笑顔の筋肉を抑制する前と後の脳の動きをfMRI画像で測定しました。
その結果はダーウィンの説を裏付けています。
表情のフィードバック(笑顔になること)が、脳の感情を処理する部分を変えます。ほほえむと、気分がよくなるのです。
笑顔になると、脳の報酬系が活性化させます。
笑顔になると楽しくなる
快楽を誘発すると言われているチョコレートですら及びません。
イギリスの研究によれば、1回の笑顔で、2000個のチョコレートバーに相当する脳への刺激が得られるそうです。
同じ研究から、1回の笑顔は、最大で16000ポンド(およそ240万円)を、現金で受取るのと同じ刺激を与えるとわかりました。
1回笑うだけで、2万5千ドルなんてすごいですね。
ほほえむと健康になれる
チョコレートをたくさん食べるのとは違い、よく笑うことは、実際に人を健康にします。
ほほえむと、コルチゾール、アドレナリン、ドーパミンといったストレスホルモンのレベルが下がり、気分がよくなるホルモン、たとえばエンドルフィンのレベルがあがり、血圧もさがります。
さらに、笑顔になると、他人の目によく写ります。ペンシルバニア州立大学の最近の研究からわかったことです。
ほほえむと、好感度があがり、親切な人に見えるだけでなく、より有能に見えるんです。
ですから、
好印象で有能に見られたい
ストレスを減らしたい、
結婚生活をもっと充実させたい
カロリーを取らずに、おいしいチョコレートを山ほど食べた気分になりたい
何年も着ていない古いジャケットのポケットから、2万5千ドル見つけた気分になりたい
自分や周囲の人が、健康で長生きできるスーパーパワーを使いたい
こんなときはいつも、笑顔でいましょう。
//// 抄訳ここまで ////
ロン・ガットマンさんの本です。
気分を変える方法を教えてくれるほかのプレゼン
幸せになれる動きとは? 姿勢や動作が気持ちに与える影響(TED)
2分で人生を変える方法「ボディランゲージが人を作る」(TED)
成功すると幸せになるのではなく、幸せだから成功する~ショーン・エイカー(TED)
正しい呼吸の仕方~多くの人が間違った呼吸法をしています(TED)
楽しくなくても笑ってみる
上でリンクしていますが、姿勢や動作が、自分の気持ちに影響を与えるという研究はたくさんあります。
人は悲しいから背中を丸めるのではなく、背中を丸めるから悲しくなる、うれしいから笑顔になるのではなく、笑顔になるからうれしくなる、という説です。
足が疲れたと思うのも、まず足の筋肉に何らかの身体的反応があり、それを察知した脳が、疲れたと感じるという説もあります。
楽しい、悲しい、疲れた、痛いという感情はすべて脳の中で起こっていますから、脳ではない身体の動きや、外的な力(薬物とか)が、脳の状態に影響を与えれば、感情は変わります。
覚醒剤を使用すると、身体が疲れ果てていても、その疲れを脳が認識しないため、結果的に廃人になります。
大事な人が死んだとき、笑顔になっても、悲しいままですから(そもそも、笑顔になんてなれないでしょう)、身体の動きが、どこまで気持ちを変えるかは、わかりません。
ですが、ふつうの生活をしているときは、朝、ちょっとうつうつとしても、笑顔を作るといいと思います。
笑顔になるのに、時間も労力もお金も不要ですから。
私も朝は、笑顔で始めることにしています。
「片付けや断捨離がかったるい」と思うときも、とりあえず笑顔になってみてはどうでしょうか?
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これまでの人生で私がもっとも楽しかった時期は、小学生ぐらいまでだったのですが、あの頃は、よく笑っていたから、楽しかったのかな、なんてこのプレゼンを見て思いました。
中学生になってからは、急に心配なことが増えて、それこそ心配事が絶えなかった記憶があります。
もっと笑っておけば、あんなに心配せずにすんだかもしれません。