スマホやYouTubeがクセになってしまう行動様式を知り、悪習慣を改める(TED)

TEDの動画

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新学期になって、悪しき習慣をたち、新しい習慣を身につけたい、と考えている人も多いと思います。

そんな人の参考になる、習慣づけに関するTEDのプレゼンを紹介します。

タイトルは What Makes Some Technology So Habit-Forming? (なぜ、あるの種テクノロジーを使うことが、すっかり習慣になってしまうのか?) プレゼンターはニール・イヤール(Nir Eyal)さんです。

日本語に訳しにくいタイトルですが、ほとんどの人が習慣になってしまうサービスや商品にはどんな秘密があるのだろう? という内容です。

ニールさんはビデオゲームを販売したり、広告を作ったりする業界に長くいて、人がはまってしまう商品の秘密を研究してきました。いまは、本を書き、大学で、消費者心理学を教えています。

この講演は、商品を企画、開発している人むけですが、習慣ができる仕組み(フック)の説明は、ふつうの人にも参考になります。

人をとりこにする技術やサービスの秘密

About 40% of what you do, day in and day out, is done purely out of habit. Nir Eyal decodes how technology companies – the masters of “habit-forming” products – design the tech products we can’t put down. But it isn’t all negative manipulation, he says. It can and should be used for good.

私たちが毎日行っている40%のことは、純粋に習慣になっていることです。

ニール・イアルは、習慣づけの達人である、テクノロジーの企業が、いかに人がはまってしまう商品を開発するのか語ります。

彼らのやり方は、人をあやつるネガティブなこと、だけとは言えません。それはよいことにも使えます。

収録は2015年、長さは13分20秒。字幕はありません。動画のあとに抄訳を書きます。

ニールさんの英語はとても聞き取りやすく、話し方もゆっくりです。

☆TEDの説明はこちらです⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

行動の40%は単なる習慣

製品が人の行動をどんなふうに変えるのか、みんなよく知っています。

特に、個人で使うテクノロジー、たとえばiPhone、Eメール、ツイター、スナップチャット、ワッツアップなど。

このような製品は、日常生活を変えます。何度もチェックするはめになりますね。どうやってこんな状態にしているのでしょうか?

この手のサービスは習慣づけの達人なのです。

日々の私たちの行動において意識的なものは少なく、その40%は習慣によるものです。

習慣にしてしまう商品を作っている企業のデザイン・パターンをお伝えしますね。これは、広告業界やゲーム業界にいたときに私が学んだことであり、いま、スタンフォード大学のデザインスクールで教えていることでもあります。

習慣づけのデザインパターン、フックとは?

そのデザインパターンは、フック(hook)と呼ばれるものです。

フックとは、ユーザーの問題を、習慣になるほど何度も、その企業の商品に結びつけるようにデザインされた体験です。

トリガー

フックは、トリガー(きっかけ)から始まります。

トリガーは、私たちに、次に何をなすべきか伝える、ちょっとした情報です。「これをプレイして」とか「ここをクリックして」といったようなもの。

外的トリガーは、そこらじゅうにありますが、長期的な習慣づけをするには、内的トリガー(インターナルトリガー)が物を言う、ということに、人はなかなか気づきません。

内的トリガーは、次に何をするのか、私たちに命じるものですが、その情報は記憶として、ユーザーの頭の中にあります。

私たちが、特定の場所にいたり、特定の行動をしたり、特定の感情になることが、次にすることを決めてしまうのです。

もっともよくある内的トリガーは、ネガティブな感情です。

さみしい、退屈だ、途方にくれた、不満だ、といった気持ちになると、何も考えず、無意識に習慣になっていることを行います。

最近のリサーチによれば、うつ病の人のほうが、メールをチェックする頻度が高いのです。どうしてでしょうか?

うつを患っている人は、心理学者の言葉で言うと、ネガティブ・ヴァレンス(negative valence)という状態にあります。

ほかの人より、気持ちが落ち込むことが多く、ネガティブ・ヴァレンス状態から脱するために、メールをチェックするのです。

とはいえ、多かれ少なかれふつうの人も、これはやっていますよね。

人恋しいときは、フェイスブックをチェックします。何か、わからないことがあると、自分の頭を使う前に、Googleで調べます。

退屈なときは、YouTubeやreddit (レディット、ソーシャルニュースサイト)を見たり、株の値段やスポーツの試合の結果、ニュースをチェックします。

退屈という内的トリガーに対して、たくさんの解決法が用意されているわけです。

アクション

トリガーの次に来るのがアクションです。アクションはリウオード(報酬)があるという期待のもとに行われるもっとも簡単な行動です。

それはほんとうに簡単な行動です。

ピンタレストでスクロールして写真を見たり、Googleでさっと調べたり、YouTubeでプレイボタンを押したり。

スタンフォード大学のリサーチャー、BJ・フォッグによれば、こんな行動様式になります。

b=m+a+t

充分なm(モチベーション motivation)、a(能力、ability)、t(トリガー、trigger) の3つが揃えば、b(behaviour 行動)が起きます。

この3つの要素をグラフにするとこうなります。

B.J.フォッグの習慣のモデル

Y軸はモチベーション、X軸が能力です。

とても簡単なことは、一番右で、難しいことは左です。赤い線を超えた状態で、トリガーがあれば、行動が起きます。

これは、オンラインだろうとオフラインだろうといつも同じです。

この3つの要素がそろわないと、どんな行動も起きません。

現在、習慣づけにたけた商品を開発している会社は、能力のカーブを可能な限り、右に持っていこうとしています。

その行動が簡単であれば簡単であるほど、より人はやってしまう、ということを知っているからです。

リウォード(報酬)

リウォードの話をしようとするなら、脳の話をしなければなりません。特に側坐核です。

側坐核は、「報酬があるんだ」と期待しているときに、もっとも活発になります。求めていたものをとうとう手に入れたその瞬間は、側坐核はあまり活動しません。

脳が欲望を刺激して(側坐核を活性化して)、行動を促します。人工的に、この欲望を刺激する方法があります。

どうやって、欲望を刺激するのか、その方法を知っている人はいますか?

実は、いま、私がそうしています。

未知のことは、魅力があります。私はいま、ポーズを置きました。質問をしたのに、その後何も言いませんでしたね。

いったいどうしたのかな、と考えた人もいるでしょう。

少しばかり未知の状態があると、人はそこに焦点をあて、引き込まれます。

自分がはまっている商品、なかなかやめられないサービスについて考えてみてください。

きっと、以下の3つのタイプの変化のある報酬(variable rewards)のうち、1つかそれ以上を備えていると思います。

仲間、ハンティング、自己の3つです。

■仲間リウォード(TRIBE)

仲間リウォードは、変化(流動性)を感じる喜びです。これはほかの人の行動からもたらされます。

たとえば、ネットのソーシャルメディア。

フェイスブックには、どんな写真やコメントがあるのだろう、いくつ「いいね」がついたかな、ほかの人はどんなことをしているのかな、といった気持ちです。

■ハンティングリウォード(hunt)

ハンティングの報酬の話をすると、人はたいていスロットマシーンやギャンブルを思い浮かべます。

何を手に入れられるか、ということですね。

実はネットにもまったく同じものがあるのです。フィードです(feed 情報が次々と提供されること)。

ツイターのタイムラインを思い浮かべてください。

最初に見えるつぶやきはそんなにおもしろくないかもしれません。2つめもおもしろくない。でも、3つめ、4つめはおもしろいんじゃないか、と思います。

おもしろいものを探して、スクロールし続けるのです。

このスクロールという行為をする心理は、報酬を期待して、スロットマシーンのレバー引き続ける心理と同じなのです。

■セルフリウォード(self)

セルフリウォードは、何かが変わることによってよい気分になることですが、それは他人からもたらされるのではありません。

情報や物理的な物を得ることから来るものでもありません。

それは、何かがより上手になったり、明快になったり、コントロールできた、と思ったときに感じる喜びです。

キャンディクラッシュやアングリーバードなどのオンラインゲームは、他のプレイヤーと競うわけではないし、物理的な物を獲得するわけでもありません。

ですが、次のレベルに到達するのが楽しくて、ついつい集中してやってしまいます。

ゲームをしない人は、自分には関係がない、と言うかもしれませんね。

けれども、そういう人も似たようなゲームを毎日しています。

未読のメッセージをチェックしたり、to-doリストの項目を1つずつクリアしたり、といったことです。

インベストメント

フックの最後のステップは、インベストメントフェーズです。

このフェーズでは、ユーザーが、製品に対して、ちょっとしたことをして、次のステップにすすむ可能性をあげます。

たとえば、価値あるものを保存します。

価値あるものを保存することは、かなり重要です。日々使っている物理的な物、たとえば椅子や衣類は、使えば使うほど劣化して、価値が下がっていきます。

ですが、習慣づけにたけた製品は、この逆で、ユーザーが使えば使うほど価値があがります。

Googleドライブやファイナンシャルサービスのサイトに、どんどんデータを保存したり、たくさんフォロワーを集めたり、eBayで、よい評価の数をたくさん獲得したり。

このようなものが蓄積されればされるほど、そのサービスは自分にとってよい製品になります。自分でたくさんの価値を蓄積したサービスは、手放しにくいものになるのです。

このことは、きびしい現実を教えてくれます。

私たちが使っている製品やサービスにおいては、最良の商品が、もっともユーザーをたくさん集める商品だとは言えないのです。

市場を独占するような商品は、習慣づけがうまく、その点がユーザーを引き込むのです。

フックの、トリガー⇒行動⇒報酬⇒インベストメントというサイクルを通して、顧客の好みや嗜好が形作られ、習慣になります。

習慣ができる行動様式をよい目的に使おう

こうしたサービスがどうやって習慣づけをするかわかりました。では、この情報を、どんなふうに利用すればいいのでしょうか?

多くの人は、こうした製品は誠実さがなく、これらを作っている企業の戦略は、人を操るものである、と思うかもしれません。

私たちは、自分にとって有益なサービスと、害になるサービスを見分けるべきである、と考えています。

これらの商品やサービスから何を学べるのか?

問題なのは、ごく少数の企業だけが、習慣づけにたけている、ということではありません。

本当の問題は、あまりに多くの製品やサービスが、消費者が、職場や学校で毎日使う気になるように作られていない、ということです。

最新の政府のサービスや、日々の生活に必要な企業のサービスを考えてみてください。

フェイスブックやiPhoneがやっているように、私たちをしゃぶりつくしてはいませんよね。むしろ最悪です。

このようなサービスが消費者にとって魅力的なものになれば、よりよい商品になります。

こういうサービスを作っている人達は、消費者に魅力的な製品デザインを知らないのです。

ですが、魅力的な商品もあります。いくつかの企業と仕事をして、フックをよい方に使うことに成功しました。

特にうれしいのは、人を助けるためにフックを使っている会社があることです。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)をわずらっている退役軍人、障害をもつ子供の親、うつ病の人たちが使えるアプリで、フックを使っています。

このアプリを使えば、いつでも無料でカウンセラーとつながれます。

フックはごくシンプルなものです。

トリガーは気分の落ち込み、アクションはアプリを開くこと。すると、カウンセラーとつながるという仲間リウォードを得られます。

インベストメントは、自分自身がカウンセラーリスナーになるのを学ぶことです。

このアプリを通じて、1週間に、13万セッション、180カ国で、140ヶ国語を用いて行われています。

この習慣づけは、人とつながるだけでなく、ほかの人を助けることによって、自分自身もよくなることに役立っています。

このように、習慣づけをする技術を使って、人々がより幸せで健康な生活をしたり、よりつながれる、生産的な暮らしを送ったりできると考えています。

よい結果をもたらすことに、習慣を使えばいいのです。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

valence 優位性、誘発性

対象が人をひきつけたり、回避させたりする性質。これに応じて、人は、魅力や嫌悪という感情を持ちます。

nucleus accumbens 側坐核

itch かゆみ、欲望

supercharge あふれるほど満たす

variability 変わりやすさ、流動性 つまり、変化です。

B.J.フォッグのプレゼンはこちらで紹介しています⇒大々的に変えようとしないこと。小さな習慣から始めよう(TED)

ニールさんは、Hookedというタイトルの本を出しており、翻訳もあります。邦題は「Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール」

Amazonへ⇒Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す心理学×デザインの新ルール

Kindle版もあります。

習慣づけに関係のあるほかのプレゼン

悪い習慣を断ち切る簡単な方法(TED)マインドフルネストレーニングのすすめ。

習慣のループを知れば、どんな習慣も変えることができる(TED)

マット・カッツに学ぶ30日間で人生を変える方法~30日間チャレンジのススメ(TED)

なぜ運動するのを面倒に感じるのか?あるいは断捨離を始められないのか?(TED)

汚部屋になる人は汚部屋ができる生活習慣の持ち主

ニールさんのプレゼンはとても興味深いですね。

自分の生活を振り返ってみても、フックのサイクルがあると感じます。

先週紹介した、制限があるからクリエイティブになるプレゼンと同様に、人によっていろいろな学びが得られますが、ここでは汚部屋改善について書きます。

先日、断捨離のあと、スッキリした部屋をキープする方法を書きましたが⇒物を減らしたあと、スッキリ生活を維持するには何をするべきなのか。

結局、汚部屋になってしまう生活習慣を改め、部屋がきれいになる習慣を取り入れるだけなのです。

そのために、自分の部屋がぐしゃぐしゃになるフックを書き出してみるといいかもしれません。

たとえば、

トリガー⇒通販カタログを見る/給料をもらう/お買い物大好きブログを見る/100均に行く/退屈だ/つまらない

アクション⇒買い物する/懸賞に応募する/付録目当てで雑誌を買う/送料無料にするためにいらない物まで買う

報酬の例は、

仲間リウォード:フェイスブックやブログに買ったものをのせたら、「素敵ですね」「かわいい」というコメントが入ったり、いいねがつく。新しい服を着て会社に行ったら、同僚に「わ~、かわいい。どこで買ったの」とほめられる。

ハンティングリウォード:前からほしいと思っていたものを買った喜び。コレクションが1つずつそろっていく喜び。

セルフリウォード:人より安く買った、自分は買い物上手なんだという満足感。お気に入りのものだけを揃えた部屋に近づいているという気持ち。いい物を持ったから自分の価値があがったという気持ち。

インベストメントは、数を増やして価値を高めていくこと(モア・イズ・ベター)。

何かを集めるとなかなか捨てられないのは、そこに自分が投じた価値を感じているからですね。もったいなさが倍加します。

たとえば、こんなケースです⇒集めすぎたマスキングテープを捨てる3つの考え方。やめる勇気を持て。

ニールさんが言っていたように、習慣を作る製品デザインや、ループそれ自体は、ニュートラルなものです。

問題は、どんな習慣がつくられ、その習慣が自分の人生にどんな影響を与えているのか、ということ。ここをしっかり見極めないと、無意識にどんどん不幸になっていきます。

いったん習慣になると、外的に強制的にやめさせられる機会(家族の都合で引っ越しするとか、地震にあって、大量の物がこわれるなど)がない限り、同じループが続きます。

汚部屋を作ってしまったのは自分の習慣のせい。この習慣をちょっと変えさえすれば、スッキリとした環境を手に入れることができます。

*****
人が、はまってしまう製品を作っている企業は、やることをできるだけ簡単にしている、というのが恐ろしいですね。

サルや猫でもできそうなことにしてしまうのです。

まあ、ユーザーの側から見れば、便利でありがたいことではあります。政府のサイトなんてとてもわかりにくいし、使いにくいですからね。

ですが、簡単なことや便利なことばかり追求していると、むずかしいいことやちょっと面倒なことを考えられない脳になっていくと思います。

実際、スマホから実に衝動的な質問をもらうことがあります。自分で考える力があるのに、考える習慣は失われ、思考に必要な脳の部位はシャットダウンしていくのです。

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カナダ在住の60代。ミニマリストです。

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