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欲しいものを手に入れることができないのは、手に入れられると思っていないから、というTEDトークを紹介します。
タイトルは、Why you don’t get what you want; it’s not what you expect (なぜ、欲しいものを手に入れないのか。それは予期しているものではないからだ)
心理学者のJennice Vilhauer(ジェニス・ヴィルハウアー)さんのスピーチです。
欲しいものを手にできない理由:TEDの説明
Psychologist Dr. Jennice Vilhauer explains the psychological and clinical reasons why *we* are at the heart of *why* we’re not living the life that we want in this fascinating talk and what we can do about it.
心理学者のジェニス・ヴィルハウアー博士が、この素晴らしいスピーチで、私たちが願っている人生を生きない心理学的、臨床的な理由と、それに対する解決法を話します。
収録は2015年の11月、動画の長さは13分。英語の字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
シンプルでわかりやすいプレゼンです。
求めているものと予期しているもの
宝くじに当たりたい人、手をあげてください。先月、実際に宝くじを買った人は、そのまま手をあげていてください。
宝くじを買わない理由なんて、心理学者に説明してもらわなくてもわかります。当たると思っていないからです。
宝くじに当たる確率を考えてみれば、それは、分別のある決断です。
しかし、この件から、重要なことがわかります。人は、自分の予想をもとに行動しています。求めているからという理由ではなく。
人が求めているものと、予期しているものは全く違います。
求めているものを手に入れられない理由
期待(起こると思っていること)は、自分が求めているものが手に入るかどうかにかかわる信念です。
心理学者として、私は、人がどうやって未来を作るか研究していますが、研究からわかったことがあります。
自分が求めているものとは違うことを予期するから、欲しいものがたくさんあるのに、なかなか手に入らないのです。
あと5~10ポンド体重を落とす、夢の仕事や恋愛をする、こうしたものを求め、違いを起こそうとしているのに、そうできないのは、この理由からです。
予期+行動イコール自分の人生経験の創造ですから。
ほとんどの人が、日々、望むものを求めて生活していると思っていますが、実際は予想に基づいて生活しています。
ろくでもない男性と出会い続けるエイミー
最近、エイミーというクライアントと仕事をしました。
エイミーは、美人で仕事で成功していましたが、内気で、自虐的なところがありました。彼女は、いつも、間違った男性を選んでいました。
ようやく、不幸な結婚から抜け出したエイミーは、新しい出会いを求めて、オンラインで相手を探すことにしました。
しかし、次々とろくでもない男性と出会ったのです。
写真とは全然違っている人、財布を忘れて来る人、デートに現れない人もいました。
ある日、エイミーが、私のオフィスに来て、泣き出しました。「人生で最悪のデートだった」と言うのです。
せっかく素敵な人と出会ったのに
「どんな人だったの?」
「素敵な人だったの。私が求めていたものすべてを兼ね備えていた人。でも完全に失敗したわ。
どうせまたろくでもないデートで、時間の無駄になると思ったから、ヨガのクラスのあとに彼と会うことにしたの。
シャワーもあびず、汗臭いジムの服装で、化粧もせずに出かけたの。そしたら、そこにいたのは、身だしなみのいい、すごく素敵な人だったのよ。背が高くてハンサムで、笑顔が素敵で。
とても恥ずかしくて、私は自意識過剰になって、目を合わせることができなかった。
座って、床を見て、神経質に笑っていたのよ。とうとう、私は、パーキングメーターにコインを追加しなければならないから、と言ってさよならも言わずにその場から去ってしまったの」。
エイミーは、「また、よくないデートになる」という予測に基づいて行動したのです。
素敵な人と出会いたい、という、自分の希望ではなく。
こうしたことはよくあります。
それが起きることを期待しない私たち
12年間、この仕事をしていますが、よく耳にするのは、「人生を変えたいけれど、本当にそうできるとは思えない」という言葉です。
結婚、健康、キャリア、人生そのものまであきらめてしまう人を見てきました。
こういう人たちは、自分で求めているものを、「手に入れることなんてできない」と思っていて、試してみることすらしないのです。
今、あなたの人生で欲しいものがあるはずですが、それを手に入れられるかどうかわからないので、がまんしてしまいます。
欲しいものに向かわないのは、試合を放棄するようなものです。
宝くじを買っても当たるとは限りませんが、買わなければ、絶対当たりません。
なぜ私たちはこんな行動をするのでしょうか?
予測に基づいて行動する
脳は、予測の原理で動いています。いつも、何かが起こる前に、起こりそうだと思うことを予測しながら、私たちは生きています。
公園を歩いていて、後ろから犬の吠える声が聞こえたから、振り返ってみた。そのとき、大きな足があったらすごく驚きますよね。
ある出来事が起こると予測すると、私たちは、すぐに、起こりそうだと思うことに備えて行動したり、感じたりします。
「ちょっと話があるんだけど」と言われたら、特定の感情を持ちますよね。
まだ起きていないことに備えることは、その結果を作り出すことに加担することです。
言い換えれば、自分で予言して、自分で成就するのです。
エイミーは、デートの前に、不安な気持ちで行動していました。求めているものではなく、予期していたことに基づいて行動したので、そのとおりのよくないデートになってしまったのです。
未来が変わると思えない
私たちは、過去のできごとから、自動的に未来を予想してしまいますが、これが、予測のせいで、身動きが取れなくなる理由の1つです。
一度失敗すると、また失敗するかもしれないと考えるのです。
過去のことを考えているときに活性化される脳の部分と同じ部分が、未来のことを考えているときに活性化されます。
でも、過去のできごとをもとに予測しているからといって、過去のできごとが、足かせになっているとは限りません。
エイミーを押しとどめていたのは、過去のできごとではなく、彼女が、「未来が、過去よりも、よくなりうる」と信じていなかったことです。
この信念がなければ、よりよいものは作りだせません。たとえ、目の前にチャンスがあったとしても。
ある状況に対して、何を予期しているか認識できれば、その認識が、自動的な思考をくつがえし、違う結果を作り出そうと、計画します。
エイミーが、いいデートになるように、できることをしていたら、結果は違っていたかもしれません。
欲しいものを期待できると幸福でいられる
欲しいものを手に入れる能力に対する期待は、幸福感にとても大きな影響を与えます。
脳の部分の大半が、報酬を期待することに使われています。報酬とは、簡単に言えば、人生を生きるに値するものにしてくれるもの、つまり、自分が求めているすべてです。
「1つの夢は、1000の現実より強力だ(A single dream is more powerful than a thousand realities)」。こう、J.R.トールキンは言いました。
「ごほうびが得られる」と期待しているときは、幸福や喜びなどポジティブな気持ちになります。
一方、「求めているものを得られはしない」と考えていると、悲しみ、失望、うつうつとした気分になるのです。
予期しているものと、望んでいるもののギャップが大きければ大きいほど、苦痛を感じます。
欲しいものと予期しているものが違うとき
では、欲しいものが、予期しているものと違うとき、どうすればいいのでしょうか?
この状況で、気分よくいる方法は2つしかありません。
1.それは努力しがいのないものだと自分に言い聞かせて、欲しいものをあきらめる。
2.予期しているものを変えて、自分の求めているものと同じにする。
そうすれば、一貫した行動を取ることができます。
予測を変えるには?
予期しているものを変える3つの簡単なステップを紹介します。
まず、近い将来、起きることを想像してください。
あなたが達成しようとしているゴール、仕事のプレゼン、家族とすごす休日のイベントなど。
ステップ1:「予期していることが、自分をどんな気持ちにさせるか?」と自問する
何かポジティブなことが起こると予想していれば、とてもいい気分で、そこで止めることができます。
ポジティブな気分を変える必要はありません。
しかし、求めていないことを予期していたら、ネガティブな感情(心配、恐怖、ゆううつ、圧倒されるような気分など)を抱いているはずです。
こんな気分になるのは、その状況に対して、ネガティブな予測をしているサインです。
ステップ2:「代わりにどんなことが起きてほしかったか?」と自問する
この質問は、あなたが、その状況で本当に望んでいることを明らかにします。
たいていの場合、あなたが望んでいることは、予期していないことそのものです。
宝くじに当たりたいと思っていても、当たることは期待していないのと同じです。
ステップ3:「起きてほしいと思っていることを実現させるには、何をすべきか?」と自問する
未来のできごとに対し、ネガティブな予測をしているのは、うまくいかない可能性や、うまくいくはずがない理由にフォーカスしているからです。
このとき、「どうやったらうまくいくか」という思考やアイデアが出てきません。
欲しいものを手に入れるためのプランがあれば、状況に対する予想が変わり始めます。
可能性が見えてきます。ここで変化が起きます。
その計画に向けて取る行動が、予測を変えていきます。
トンネルの先に光を見る
「そんなにうまくいくはずがない」と思っている方も多いでしょう。
正直に言うと、数年前の私も、こんな単純なプロセスが、人々の人生に違いをもたらすとは、思っていなかったかもしれません。
しかし、とても落ち込んでいる患者と仕事をしたときに考えが変わりました。
半年ほど治療し、2人でいろいろなことを試しましたが、何をしても、ほとんど効果がみられませんでした。
ある日、私が、彼に、「トンネルの先の光はどこ?」と聞いたのです。彼は、きょとんとしていました。
この日以来、患者全員に、この質問をするようにしました。すると多くの患者がやはり、きょとんとした顔で私を見たのです。
彼らは、自分の人生が、変わることなんて、夢にも思っていなかったのです。そんなことが可能だと信じていなかったからです。
予期していることが起こる
私は、仕事のやり方を変え、患者が、予測を変える助けをすることに注力しました。彼らが、トンネルの終わりに光を見出すことができるように。
5年間のリサーチの結果、予測を変えれば、人生が大きく変わることがわかっています。
実際にびっくりするような変化を目撃しました。
先ほどお話しした患者は、1年もたたないうちに、先の見えない仕事をやめ、自分の会社を立ち上げて成功しました。
求めているものをモチベーションにすれば、変化は可能です。
ヘンリー・フォードが言ったように、「できると思っても、できないと思っても、あなたは正しい(Whether you think you can or think you can’t, you are right)」のです。
過去のできごとは、あなたがどんな人で、どこへ行くのかを決めません。未来に対する予測が、もっともあなたを制限してしまうのです。
最後にいいニュースがあります。
あなたは選ぶことができます。
望むものに基づいて行動することを選ぶことが。
そうすれば、過去から一歩抜け出して、本当に生きたいと思う人生を創造するチャンスが手に入ります。
//// 抄訳ここまで ////
ヴァルハウアーさんの著書です。
可能性に関するほかのプレゼン
自分の能力を自分で見限ることの恐ろしさ、できると信じることの素晴らしさ(TED)
言い訳を作り出してしまう私たち:あなたに夢の仕事ができない理由(TED)
ネガティブなセルフトークを変えて、前向きに行動しよう(TED)
成功と失敗、そして創り続ける力:エリザベス・ギルバート(TED)
予測を変える
今回のプレゼンは、ちょっと引き寄せの法則に似ていますね。
人は予測しているものを手に入れるから、その内容を、自分が求めているものに合致されば、欲しいものが手に入る、という内容です。
確かに、人間は、自分が見たいものを見るし、そうなると思っていると、そういう目に遭うところがあります。
世の中には、自分の力の及ばないことがたくさんあるので、100%、そうなりはしません。しかし、人は、無意識のうちに自分が探しているものを見つけるのです。
詳しくはこちら⇒無礼な人や気が利かない人にいちいちイライラしない3つの方法。
だから、これから起こることに対して、ネガティブな考え方はしないほうがいいです。
不用品を捨てているとき、「捨てると、あとで必要になるかもしれない」「あとで後悔するかもしれない」「2度と手に入らなくて困るかもしれない」「捨てるとばちがあたるかもしれない」などと思わないほうがいいのです。
「これは、今の生活に不用だから捨てる。あとで必要になったら、そのときなんとかすればいい。私には、そうできる能力がある」と思って捨ててください。
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人に対しても自分が予期していることが起きますね。
このブログをよく読んでいる人はご存知でしょうが、私は夫に対しては、あまりいいことは予期していません。
「どうせまた、ギリギリに行動するんだ」とか、「どうせまた、セールでいらん物を買ってくるんだ」と思っており、そのとおりのことが起きています。
逆に娘に対しては、いいことを予測しています。
「あの子はしっかりしてるから、自分で何でもやるだろう」「困ったことがあっても、自力で解決できる子だから、お金なんて一銭も残さなくていいね」と確信しているので、これまでのところ、そのとおりに進んでいます。
だから、最近は、夫に対して、「まあ、いい加減、学習して、もういらん安物は買わないだろうね。ハロウィンの前に買ってくるお菓子だって、去年は3箱だったのに、今年は1箱だったしね」などと思うよう、努力しています。
自分の予測(確信、思い込み)を変えると、本当に未来が変わるんじゃないでしょうか?
少なくとも、先のことを悲観しないほうがいいですよ。