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習慣づけの参考になるTEDの動画を紹介します。
タイトルは、How to Make Learning as Addictive as Social Media いかに学びを、ソーシャルメディアのように中毒性のあるものにするか?
起業家でコンピュータの専門家でもあるLuis Von Ahn(ルイス・フォン・アーン)さんのプレゼンです。
彼には、reCAPTCHAの開発などいろいろな業績がありますが、Duolingo(デュオリンゴ)の共同創設者でありCEOとしても有名です。
Duolingoは、語学をやっている人なら、自分が使っていなくても、必ず聞いたことがあるぐらいユーザーの多い語学アプリ。緑色のフクロウのキャラクターを見たことがある人も多いでしょう。
学びをくせにする:TEDの説明
When technologist Luis von Ahn was building the popular language-learning platform Duolingo, he faced a big problem: Could an app designed to teach you something ever compete with addictive platforms like Instagram and TikTok? He explains how Duolingo harnesses the psychological techniques of social media and mobile games to get you excited to learn — all while spreading access to education across the world.
技術者のルイス・フォン・アーンが、人気の語学プラットフォーム、Duolingoを開発したとき、彼は大きな問題に直面していました。
人に何かを学ばせるアプリが、インスタグラムやTikTokなどの中毒性のあるプラットフォームと戦えるだろうか?
ソーシャルメディアやスマホゲームが使っている心理的テクニックを使って、いかにDuolingoがわくわく学べるようになっているか、それも世界中に教育の機会を与えながら行っているのか、彼は説明します。
収録は2023年の4月。動画の長さは13分(実際の講演は12分)。英語の字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ユーモアのあるプレゼンです。
貧しい人は貧しいまま
私はグアテマラ出身です。グアテマラはメキシコのすぐ南。アメリカがメキシコからの不法移民を嫌うように、メキシコもグアテマラからの不法移民を嫌います。
グアテマラは小さくてとても貧しい国です。
多くの人は、教育が社会的格差をなくすと言いますが、私は逆に、教育が格差を広げると考えていました。
金持ちはとてもよい教育を買うことができ、その結果、金持ちでい続けます。しかし、読み書きを学ぶことができないほど貧しい人は、ずっとお金を稼げません。
これは、貧しい国ではとくに顕著です。
私は貧しい家で育ちましたが、金持ちが受けられるような教育を受けることができました。私は一人っ子だし、シングルマザーだった母が、自分のリソースのすべてを私の教育に使ったからです。
だから私はアメリカの大学に進学し、コンピュータ科学で博士号を取得しました。
こうしたことが原因で、10年前、誰もが平等に教育を受ける機会を与えたいと思いました。これがきょうのトークのテーマです。
すべての人に教育の機会を与えたい
当時私はカーネギーメロン大学で、コンピュータ科学の教授をしていましたが、学生の1人だったSeverin(セヴラン)と一緒に、教育に関するプロジェクトをしたいと考えました。
教育といっても漠然としています。何を最初に教えるべきか?
数学? セヴランも私も数学は大好きですが、数学はやめておきました。では、コンピュータ科学? 結局、北米の人には意外でしょうが、最初に教えるべきベストの科目は外国語だと思いました。
外国語は収入に結びつく
理由はいくつもあります。
まず、学びたがっている人がたくさんいるということ。学校と学校外を合わせると、世界で20億人もの人が、外国語を学んでいます。
その大半学んでいるのが英語です。80%の人です。
なぜなら、英語は本当に人生を変えるから。世界のほとんどの場所で、英語を知っていれば、稼げる可能性が大きくあがります。
外国語、特に英語を学べば、直接お金を稼ぐことができるというのが、外国語から始めた理由でもあります。
これは他の科目とは大きく違うところです。数学の知識は、直接収入には結びつきません。
ふつう、数学を学んで、それから物理を学んで土木技師になってようやくお金を稼げます。
でも言語なら、もしあなたがウエイターで、英語を学べば、ホテルで働いてお金を稼げますよね。
そんなわけで、外国語を教えることにしました。
誰にでも使えるように
多くの人に何かを教える唯一の方法は携帯電話、特にスマホを使う必要があると確信していました。
世界中に学校を建てるのはお金がかかりすぎます。その一方で、世界の人々の大半がスマホを持っていますし、その数はどんどん増えています。
そこで、スマホを使って誰もが外国語を学べる仕組みを作ることにし、Duolingoと名付けました。
金持ちでも貧乏でも、誰でも使えるように、Duolingoはフリーミアム(基本的な機能は無料のサービス)にしました。
お金を払わなくても好きなだけ学べます。ただ、無料で使うと、レッスンのあとに広告を見なければなりません。広告がいやなら、課金して広告を消すこともできます。
実は、Duolingoの収益の大半は、広告を消すために課金しているユーザーから入ってきます。有料ユーザーは、アメリカやカナダなどの裕福な国の恵まれた人たちです。
無料ユーザーはたいていブラジル、ベトナム、グアテマラなどの貧しい国の人です。
金持ちが、全員の教育を支えるためにお金を払っているわけですから、Duolingoは、ささやかな富の分配システムであると言え、この点を私は気に入っています。
スマホを使って、たくさんの人にリーチして、金持ちに、すべてのお金を払わせる。すばらしいですね。
教育アプリの魅力をアップさせるには?
ただ、スマホで教育を届けようとすると、大きな問題に遭遇します。スマホには、人類がこれまでに開発したなかでも、もっとも中毒性の高い薬品が仕込まれているからです。
TikTok、インスタグラム、スマホゲームです。
スマホで教育を届けるのは、ものすごくおいしいデザートの横で、ブロッコリを食べろと言うようなものなんです。
人々に本当に教育を届けたいなら、誰でもできるようにするだけでなく、実際にちゃんと学べるようにしなければなりません。
Duolingoでは、それを可能にしました。
ブロッコリをデザートのようにしたんです。
私達が行ったのは、TikTok、インスタグラム、スマホゲームなどのアプリが使っているのと同じ心理的テクニックを使い、人々を学びに夢中にさせることでした。
そのテクニックのいくつかを紹介します。
連続日数を見せる
とても威力があるのが、連続日数(streak)の表示です。それは単に、そのサービスを続けて使った日数を見せる仕組みです。
この数字を見せるだけで、人は毎日戻ってきます。
戻って使わないと、続けた日数の数字がゼロになってしまうからです。みな、連続日数の記録を失いたくないのです。
これは効果がありますよ。
連続日数を見せることは、批判されることもあります。ティーンエイジャーが、Snapchatに依存する理由だと言われますね。
しかし、教育アプリの場合、連続日数は、人々を毎日勉強させます。
Duolingoでは、365日以上続けているユーザーが、3百万人以上います。平均でもっとも長い連続日数を達成している国は日本、もっとも短いのはラテンアメリカです。
通知機能
続けさせるのに効果的なもう1つの仕組みは通知機能です。
通知機能はある意味、スパムになりやすく、うっとうしいものですよね。でも、教育アプリのユーザーは、使用をリマインドしてほしいと思っています。
Duolingoではとても洗練されたAIシステムを使っていて、通知を受け取る時間帯やメッセージの内容を自分で選ぶことができます。
実際は、通知を受け取る最適な時間を選ぶアルゴリズムはとてもシンプルなんです。
最適な通知タイムは、アプリを最後に使った24時間後です。きのう3時に使ったのなら、たぶんきょうの3時も使う時間があります。
通知はスパムになってはいけません。Duolingoでもスパムは送りません。7日間、アプリの使用がないと、通知は止まります。
通知を止めるまえに、そのことを知らせるようにしています。「この通知はうまくいってないようですね。送るのをやめますよ」と。
すると、人々は戻ってきます。パッシブアグレッシブ(受動的攻撃性)です。
この通知を読むと、Duolingoのキャラクターである緑色のフクロウが、自分のkとをあきらめたような気がするので、みな、戻ってくるのです。
このキャラクターは、ときにはパッシブアグレッシブだし、ときにはうるさいので、ネット上のミーム(ネット上で拡散される面白いコンテンツ)でよくからかわれています。
意味あることを継続したいなら
こんなふうに、私たちは、TikTokやインスタグラム、ゲームなど、多くの人が夢中になるアプリと同じテクニックを使っているわけです。
そして、これはとても重要なポイントです。
教育アプリを、TikTokみたいにおもしろくすることはできませんし、猫やセレブのコンテンツに対抗するなんて無理です。
でも、そういうアプリやコンテンツと競争する必要はないんです。
何かを学ぶとき、人はそこから意味を見出しますよね。
一方、インスタグラムはどうでしょう? インスタを2時間見たあと、たいてい、時間を無駄にしたと感じるだけです。
だから、教育アプリのエンゲージメント(通常、ユーザーがそのアプリを使う時間、ここではそのアプリにたいする愛着心や忠誠心、つながり)が、TikTokの8割から9割でもかまわないんです。
といのも、残りの10~20%はそのユーザーのうちにあるやる気によってまかなわれますから。
何か意味のあることを人々にさせるためには、ソーシャルメーディアのアプリが使っているテクニックを使えばいいんです。
SNSのアプリに比べて吸引力がなくても、何百万というユーザーを獲得できます。
たとえば 全米の高校全体で外国語を学んでいる人数より、アメリカでDuolingoを使っている人のほうが多いし、ほかの国でもそうです。
私が望むのは、Duolingoでできていることをほかの科目でも実現することです。数学や物理を、スマホで、何百万という人に学んでもらいたい。
お金がある人にもない人にも、スマホで学べる高品質の教育を届けたいのです。でも、このトークの最後で伝えたい一番重要なことは次のことです。
きょうの語学レッスンをちゃんとやってくださいね。
//// 抄訳ここまで ////
*補足
Duolingoはスマホのアプリですが、PCでも学習できます。
Duolingo⇒Duolingo – 世界No.1の外国語学習法
習慣づけに関するほかのプレゼン
スマホやYouTubeがクセになってしまう行動様式を知り、悪習慣を改める(TED)
習慣のループを知れば、どんな習慣も変えることができる(TED)
ほかにもたくさんあるので、ブログ内で検索して探してください。
ついついやってしまうことから学ぶ
今週、買い物グセを改めるために、買い物のハードルを上げる記事を書きました⇒買い物のハードルをあげた~ミニマリストへの道(2023秋編-4)
これは何かをやめたいケースですが、何かを続けたいときは、買い物など、やるべきではないと思っているのに思わずやってしまうことを参考にするとよい、というのが今回のトークの主旨です。
Duolingoのコンテンツは教育という、人々が積極的にはやらないものではあるけれど、SNSなど、ほかのついついやってしまうアプリが使っているテクニックを使って、人々をうまく継続させているわけです。
トークに出てきた、連続日数の表示や通知は、アプリでなくても、応用できる方法です。
たとえば、片付けを継続させたいなら、手帳やカレンダーに連続日数を書けばいいし、通知も、アナログなら付箋、デジタルなら各種通知機能を利用して、自分で自分に思い出させればいいわけです。
勉強や片付けが続かない人は、ぜひ、この2つの「続けさせる仕組み」を、組み込んでください。
ほどなく、それをやるのがくせになります。
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私はDuolingoを利用したことがなく、創設者の理念も、今回のトークではじめて知りました。
有料ユーザーが、無料教育の普及に貢献できるのはいいですね。
私は、広告を見たくないので、継続して使うアプリはみな課金しています。
これまでは、いつもサービスを使っているし、運営にお金がかかるし、開発者や運営者にお礼もしたいし、何より、このサービスを続けてほしいから、と考えていました。
でも、私の課金が、ほかの人にチャンスを与えることに少しでも役立っているなら、何よりだと思います。