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コミュニーケーションをうまくするためには、聞くことが大事、というわけで、今週はジュリアン・トレジャーの5 Ways to Listen Better(よりよく聞くための5つの方法)というTEDのプレゼンを紹介します。
邦題は「聞き上手になる5つの方法」です。
「聞き上手になる5つの方法」TEDの説明
In our louder and louder world, says sound expert Julian Treasure, “We are losing our listening.” In this short, fascinating talk, Treasure shares five ways to re-tune your ears for conscious listening — to other people and the world around you.
日々うるさくなっているこの世界で「私たちは聞く力を失っています」と音のエキスパート、ジュリアン・トレジャーは言います。
この短い、おもしろいプレゼンで、トレジャーは、他人の声や自分の周囲の音を意識的に聞くために、耳を再チューニングする5つの方法をシェアします。
聞き上手、と言うと、「相手が自分のことを話しやすい状況を作るのがうまい人」というニュアンスがありますが、トレジャーさんは、必ずしもそういう話はしていません。
彼によれば、聞く力とは特定の音から情報を得る力です。
これができれば、相手の言うことをしっかりキャッチできるし、それが相手を理解することにつながります。つまり聞き上手になるのです。
動画は7分50秒。日本語字幕あり。英語や字幕なしがよい方はプレーヤーで設定してください。要所要所で効果的に音を使っているので、プレゼンを実際に見ることをおすすめします。
☆トランスクリプトはこちら⇒Julian Treasure: 5 ways to listen better | TED Talk | TED.com
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
私たちは聞くスキルをなくしつつある
私たちは聞く力を失っています。コミュニケーションにおいて、60%は聞く行為を行っていますが、うまくできていないのです。
聞いたことの25%しか保持できません。
「聞くこと」とは、「音から意味を取ること」と定義しましょう。
これは認知することです。情報を抽出するのです。
音を認識する3つのプロセス
何かを聞く時、こんなテクニックを使っています。
1.パターンの認知(pattern recognition)
音と信号を聞き分ける
カクテルパーティで自分の名前を呼ばれたとき、自分だとわかる。名前がパターンであり、これを雑音(信号)とは違う情報として認識。
2.違いの聞き分け(differencing)
人は違いを聞くので、同じ音が続くと雑音として無視する(聞くのをやめる)。
3.フィルタリング
自分の持っているフィルターを使って無意識に注意を向ける情報を選別する。
フィルターの種類の例
文化
言語
価値
信念
態度
期待
意図(目的)
こうしたフィルターが人の現実を作っている。
4.空間と時間を把握
音を聞くことで自分がどんな空間にいるのかわかるし、時間の流れもわかる。
私たちが聞くスキルを失ってしまった理由
以下の理由から、人は注意深く聞くことができなくなりました。
1.記録する技術の発達
文字⇒録音⇒映像と、情報を記録する技術が開発されたので、耳でしっかり聞く必要がなくなった。
2.周囲がうるさい(ノイズの多い世の中)
視覚的にも聴覚的にもノイズが多いので、聞こうとするだけで疲れてしまう。
多くの人はヘッドホンをすることでこのノイズから逃れようとしている。それが何万もの小さな音の泡を作っている。
結果、誰も他人の言うことを聞いていない。
3.みんな短気になっている
人はまとまった話を聞きたくはない。音のかけらをを聞きたいだけ。
会話は一方的な個人的な放送(スマホに表示されるテキストなど)にとってかわった。
4.音にたいして鈍感になった
人の注意をひくために、メディアが大騒ぎするので、人は、静かなものへの興味や感度を失った。
聞かないことは多いなる問題です。なぜなら、注意深く聞くことから理解が始まるからです。相手のことを注意深く聞かないから世界で暴力や残酷なことが起きています。
とても恐ろしい世界なのです。
そこで、今から、注意深く聞く5つの練習を紹介します。
聞くスキルをつける5つの練習
1.1日3分間静かな時間を持つ
静かな場所で、静けさを認識できるように耳をリセットする。
2.ザ・ミキサー(聞き分ける)
うるさい場所で、それぞれの音を聞き分けてみる。
3.音を味わう
生活音を味わって楽しむ。
4.立場(リスニングポジション)を変えて聞く←最重要
無意識にもっているフィルターを変えるために、違う立場で音を聞く
たとえば、
能動的・受動的
引き算・足し算
批判的・共感的
5.RASA
コミュニケーションをするとき、以下のことを意識する。
Receive 相手に注意をむけ
Appreciate 相槌を打ちながら
Summarize まとめて
Ask 最後に質問する
RASAはサンスクリット語で、ジュース、エッセンスという意味。
***
音をなりわいとしている私のような情熱を持て、とは言いません。ですが、どんな人でも、充実した人生を生きるためには、注意深く聞くことが必要です。
そうすれば、この世界とつながりをもち、お互いに理解しあい、精神的にもつながれるのです。
学校でリスニングのスキルを教えないのが不思議です。しっかり聞くことができれば、世界はもっとよくなるのに。
TEDのコミュニティなら、そうした世界を作るために一歩を踏み出せますね。お互いに聞く耳をもち、つながりあって、理解しあえる、平和な世界をめざしましょう。
—- 抄訳ここまで —-
音に関するTEDのプレゼンと関連記事
音が人に与える4つの大きな影響:ジュリアン・トレジャー(TED)
リスニングポジションを変えるススメ
家族のせいで断捨離がうまくいかないときの対策として、コミュニケーションの力をつけることをおすすめしています。
私も練習中です。練習しないとうまくなりません。
コミュニケーションをできるだけうまくするために、先週は、話し方のスキルを向上できそうな動画を紹介しました⇒他人とうまく会話する10の方法:セレステ・ヘッドリー(TED)。
このプレゼンでセレステが、「とにかく相手の言うことをよく聞きなさない」と言っていたので、今回は、よく聞くにはどうしたらいいのか、という視点でプレゼンを選びました。
5つの練習おもしろいですね。
コミュニケーションという点からみると、リスニングポジションを変えることや、RASAを心がけると変わってくると思います。
とくに、心理的に敵対している相手には、最初から批判的な態度で話し合いにのぞんでしまうので、フィルターを取るのが有効でしょう。
簡単ではないかもしれませんが、自分はフィルタリングしてるんだ、と意識することで違ってきます。
大事な音だけを聞くススメ
5つの練習の中では、1番の静かなところで過ごすのもいいと思います。
以前も書きましたが、音はすごくストレスになっています。よけいなストレスは軽減しておいたほうが、他人とうまく会話できます。
「私は音があったほうが落ち着く、仕事がはかどる」といって、家にいるときはずっとテレビやラジオをつけている人がいます。
昔、知人が、家でパソコンをしているときは、ずっと横でテレビをつけておく、と言っていたのでびっくりしました。
不思議ですね。そんなのうるさいだけじゃないですか。
専門家によれば、周囲の音は仕事のパフォーマンスをさげるそうです。
自分は無意識でも、脳はすべての音を適切に処理しようとしています。意味のある音は、その意味を理解しようとしているだろうし、意味のない音は、雑音として処理しているでしょう。
仕事中のテレビの音は、「大事ではない」と認識されて、聞くのをやめていると思います。それなのに、なぜわざわざつけておくのでしょうか?
その瞬間に大事でないものはバサッと排除して、大事なものだけに集中したほうがよいです。
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最近はストレスがたまっている人が多いのか、ネット上には人を傷つける言葉がたくさん並んでいます。こうした言葉を書きつける人は、最初から、対話しようとか、相手の声を聞こうなんて気持ちはありません。
とにかく自分の言いたいことを言いたい、と思っているのです。
私もさまざまなメールをいただきます。大半がふつうのメールですが、中には一方的に自分の言いたいことだけを書いて、それを読んだ人の気持ちなんておかまいなし、というものもあります。
こういう文章はぜひモーニングページに書いてほしいです⇒ネガティブ思考改善にモーニングページがいい~今月の30日間チャレンジ
人間相手(特に家族でもなんでもない会ったこともない人)にメールするときは、相手の気持ちを尊重するクセをつけてはどうでしょうか。
自分が言いたいことを独善的なトーンで書いても相手に伝わらないどころか、逆に反発されます。メールを送ることで達成したいゴールを達成できません。
独善的なメールを書くとき、気持ちは自分の欲求を満たしたい、という一点のみに向けられています。
そのフォーカスを、多少は相手に向けられるようになると、その分自分の意図も伝わるでしょう。