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最終更新日: 2020.02.3

完璧主義が人をしりごみさせる理由(TED)

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完璧主義の問題点を伝えるTEDトークを紹介します。

タイトルは Perfectionism holds us back. Here’s why (完璧主義は私たちが前に進むのを押しとどめる。これがその理由です)。

講演者は Charly Haversat (チャーリー・ハヴァサット)さんです。

完璧主義とは、完璧であろうとしたり、完璧に見せようとするために必死になることです。それは、よりよい状態をめざして努力することとは違います。

よりよい状態は、実現可能ですが、完璧な状態は実現不可能です。



完璧主義が人をしりごみさせる、TEDの説明

If you can’t do it perfectly, why do it at all? Recovering perfectionist Charly Haversat challenges our obsession with perfection in our personal lives, workplaces and beyond. Can we fight the crippling fear of failure and the unwillingness to compromise that it creates?

「それを完璧にできないなら、そもそもなぜやるの?」

元完璧主義者のチャーリー・ハヴァサットは、個人生活や職場、ほかの分野でも、私たちが完璧主義にこだわっている現状に疑問を投げかけます。

私たちは、ひどく失敗を恐れることや、失敗がひきおこす状態に折り合うのがいやな気持ちと戦うことができるでしょうか?

収録は2015年の11月。動画の長さは8分30秒です。字幕はありません。動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

完璧にこだわる私たち

ほかの保護者と同じように、私は子どもたちがスポーツをするのを何時間も見ました。

10歳の子どもたちがサッカーをしているのを見ていたときのことです。

ある親が、こう私に言いました。

「こんな試合をやるなんて全く時間の無駄よね。この子たちのうちの誰かがプロの選手になるわけじゃないし」。

この言葉をきいて、私はぞっとしました。

私たちは、子どもたちがするサッカーに、ワールドカップクラスのパフォーマンスを期待し、そうしたパフォーマンスができないなら、最初からプレイをしてはいけない、というメッセージを子どもたちに送っているのです。

これは、私たちがいかに完璧であることにこだわっているか、よくわかる例です。

人は完璧であること、または「ニルヴァーナの詭弁」に毒されています。





『完璧』は『よい状態』の敵

「ニルヴァーナの詭弁」という考え方は新しいものではありません。18世紀にヴォルテールが、「『完璧』は『よい状態』の敵である」と言っています。

これは、「もし、これを完璧にできないなら、そもそもやらないわ」という状態です。

完璧主義を克服した人間である私は、「ほどほどよいこと(good enough)」をめざしています。

「みな、完璧なんて幻想だと思っているから、それについて話すことなんてないわよ」という人もいるかもしれません。

ですが、現実はその逆ではないでしょうか?

私たちは、完璧はありうるし、そうできる、と考えています。

完璧な状態を最終ゴールにしているため、そのあいだにある状態を受け入れる能力を失いつつあります。

完璧を求めるのをやめたきっかけ

私が完璧主義をやめたのは、昔、マディソン・スクエア・ガーデンで起きたことがきっかけです。

私はプロの陸上競技選手でした。ある年、室内で走るチャンピオンシップの選手に選ばれました。

お客さんはたくさん入っていたし、テレビ中継もされました。

長距離走の選手として、私は絶好調でしたが、そのレースでは最下位でした。

その後、数日間、自分の走りについてくよくよ考えていたら、コーチが、「チャーリー、きみはこのレースに出る8人に選ばれたんだよ。それで充分じゃないか?」と言ったのです。

これは私の個人的な体験ですが、私以外の人にも起きていることでしょう。

完璧にこだわる文化

私たちの文化は、とても完璧であることにこだわっています。

「フォトショップ」という言葉は日に何百回もツイートされるし、おなかをひっこめたり、歯を白くしたりするのに、私たちは大金を使っています。

こういうのは浅はかなゴールですが、「ニルヴァーナの詭弁」について、よく考えてみると、社会の重要な部分に、悪影響を与えていることがわかります。

先ほど話したレースのすぐ後に、ボブ・ゴールドマンという研究者が、生え抜きの運動選手を対象に調査をしました。

選手たちに「それを飲めば必ず金メダルが取れるが、5年以内に死んでしまう薬物があったら、飲むか?」と聞いたのです。

この質問に対して、50%以上の選手が、「イエス」と答えました。

結果にショックを受けたゴールドマンは、データに間違いがないか確認するため、その後10年にわたって、同じ調査を、さらに5回しましたが、結果はいつも同じでした。

もし、本当に完璧が幻想だと思っているのなら、50%以上の選手が、1つの完璧なパフォーマンスの代償として、死んでもかまわない、と考えている事態をどうやって説明できるでしょうか?

完璧主義の社会的影響

「ニルヴァーナの詭弁」は、ほかの分野にも影響を与えています。失敗することを恐れる文化を作り出しています。

最近あったフォルクスワーゲンのスキャンダルほど、この事態をよく表しているものはないでしょう。

フォルクスワーゲンの幹部や技術者は、完璧な車にこだわるあまり、排出ガスを測定できなくするソフトウエアを車に設置したのです。

完璧を追求するあまり、不正な手段を用いた結果、フォルクスワーゲンは、何10億ドルも失い、たくさんの人のキャリアを台無しにしました。

フォルクスワーゲンが、「ほどほどよい」状態をめざしていれば、こうした代償を支払うことはありませんでした。

政治の世界の完璧主義

完璧主義にこだわる悪影響がもっとも顕著なのは、とりかえしのつかないシステムでそういう考え方をするときです。

公共政策には歩み寄りが必要です。妥協するためには、完璧にこだわるのをやめる必要があります。

アメリカ合衆国は、「ほどほどよい」をめざす国として作られました。憲法の最初の行に、「私たち、アメリカ合衆国の国民は、よりよい連合(union)を作るために」と書いてあります。

私たちは、完璧(perfect)な状態をめざすのではなく、よりよい(better)状態をめざすために建国したのです。

ですが、過去、50年~60年のあいだに、この国の民主主義は大きくゆれています。

政治は、自分たちの理想とする完璧な状態にこだわっている小さなグループの人質となりつつあります。

これは「ニルヴァーナの詭弁」がもっとも危険な事態を引き起こす状態です。

こうしたグループは、勝つことにこだわっていて、自分たちの行動の影響については、おかまいなしです。

2013年に、アメリカ政府が15日~16日間閉鎖しました。鍵を握る法案について妥協したくなかった人々がいたからです。

この閉鎖により、税金のうち240億ドルが失われました。

これはアメリアの例ですが、新聞を見れば似たようなことは、世界中で起きています。日本、英国、ニュージーランド、オーストラリア、スカンジナビアの国々で。

ほどほどによい状態をめざすべき

ではどうしたらいいのでしょうか?

私が「ほどほどによい状態」をめざせるようになるまで25年かかりました。私はすごく負けず嫌いなので、時間がかかったのです。

去年の11月、私は公職に立候補し、最下位でした。

実現しなかったことにこだわる代わりに、私は、自分が立候補したことで、とても重要な公職の問題について話をする機会が増えたと考えています。

子供のサッカーの話にもどりましょう。

もし、私たちが、やりたい子にはサッカーをやらせ、スポーツや勉強、社会的なことで、人と比較したり、プレッシャーをあたえたりするのをやめれば、大きく前進できます。

子どもたちに、「まあまあよい状態」をめざすことを許してあげれば、将来、歩み寄ることのできるCEOや政治家に成長するでしょう。

失敗をおそれる文化から、革新をめざして前に進む文化になれば、企業も大きく変わるでしょう。

300年前にヴォルテールの言った言葉は正しかったのです。

いまでも、『完璧』は『よい状態』の敵であることを認め、考え方や行動を変えるべきです。

気候の変化や世界的な流行病、経済格差から、民主主義の将来といった大きな問題も、「まあまあいい状態」をめざす意思決定をすることで、よい方向に向います。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

incremental  増加の、追加の

subpar  伝統的基準で測れない

irreparable  修復できない

flounder  もがく、のたうちまわる

run for public office  公職選挙に立候補する

Nirvana fallacy ニルヴァーナの詭弁

ニルヴァーナ、は涅槃(ねはん)、解脱(げだつ)、転じて、至福、極楽、完全な状態のことです。

ニルヴァーナの詭弁は、完璧な状態(理想の状態)と、現実的な解決策を比較することや、両者を比較して、現実的な解決策を評価しないことです。perfect solution fallacy(完璧な解決策の詭弁)とも呼ばれます。

アメリカのWikipediaにあった例⇒「これらの飲酒運転防止のためのキャンペーンをしても無駄だ。何をしたって人は、お酒を飲むのだから」。

この場合、キャンペーンをする目的は、飲酒運転を減らすことですが、その対策と、完璧な状態(誰もお酒を飲まない状態)を比較して、そのキャンペーンは無駄だ、というのがニルヴァーナの詭弁です。

Nirvana fallacy – Wikipedia

断捨離の例をあげると、「1日15分の片付けなんてやっても無駄。だって、私は山のように物を持っているんですもの(と言って何もしない)」。

この人は、今すぐ、100%不用品がなくなるという完璧(ありえない状況)をめざすあまり、物を減らすための現実的な行動に出ようとしません。

フォルクスワーゲンのスキャンダル:2015年、フォルクスワーゲンが、排出ガス検査に合格するように設計された不正なソフトウエアを1千万台以上もの自動車に設置したできごと。

アメリカ政府の閉鎖:2013年10月にアメリカ連邦政府機関が閉鎖されたこと。翌年の暫定予算が前日までに成立しなかったので起きました。オバマケアに関する法案をつぶしたかった共和党と民主党の対立が原因です。

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ほどほどでよい

最初にも書きましたが、完璧主義というのは、よりよい状態をめざして前向きに、現実的に進むことではなく、ありえない理想の状態をめざすことです。

完璧主義すぎると部屋が片付きません⇒完璧主義すぎるといつまでたっても部屋が片付かない理由

今は、SNSがあるため、見かけ上の完璧を求めて、無理をする人がいて、そのために、無駄な買い物が増える人がいるかと思えば、逆に、「完璧なミニマリストの部屋」を求めて、物の数に異様にこだわって苦しい思いする人がいます。

そのような読者の質問に何度も答えているので、昔からブログを読んでいる方はよくご存知でしょう。

これまで、ブログや本で、片付け方や、モーニングページを書くことなどをおすすめするたびに、

「正しいやり方を教えろ」、「このやり方で合っていますか」「(まだ何もやらないうちから)うまくできそうにありません」といった質問やリクエストをいただきました。

まあ、そのほとんどは、ちょっとした疑問や好奇心によるものだったのかもしれません。

ですが、「やるからには100%の効果を期待したい」「ちょっとぐらい効果があることなんてやりたくない」「間違ったことは、絶対やりたくない」「失敗したくない」という気持ちがあり、それが、行動を止めていたとしたら、残念なことです。

「絶対もとを取りたい、だから高かったものは使っていなくても捨てない」という考え方も、完璧主義によるものと言えます。

実は私も、完璧主義的傾向があったので、以前は、こういう人って多いよね、ぐらいに軽く思っていました。

しかし、読者の皆さんのお便りを拝見しているうちに、チャーリーさんの言うように、いまは、完璧主義にかなり毒された世の中ではなかろうか、と考えるにいたりました。

問題は、自分でそのことに気づいていない場合です。

自分でハードルをあげて、自分を追い詰めたり、睡眠時間を削ったり、何をしても満足できなかったりして、心身ともに消耗しているのに、その原因が自分にあることに気づきません。

さらに、他人に同じような完璧度を期待し、強制します。その相手が自分の子供だと、不幸な人間を作ってしまいます。

また、他人の仕事ぶりは信頼できないので、全部自分でやろうとします(他人に仕事を任せられない)。

自分がミニマルライフをめざしていて、家族がそのように動かないと、ものすごくストレスをためるのも、完璧主義のせいではないでしょうか?

「ほどほどでよい」「少しずつ前進すればよい」「自分なりに前にすすめばよい」「全体的によくなっていればよい」と考えれば、もっと楽になるし、気軽にいろいろなことに挑戦できるでしょう。





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