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買い物依存、ギャンブル依存、スマホ依存。この社会にはさまざまな依存症がありますが、原因はみな同じである、というTED-EDの動画を紹介します。
買い物中毒に悩む人からのメールが多いので、紹介することにしました。
薬物依存に関する説明ですが、アルコール、タバコ、ゲームなどほかの依存でも考え方は同じです。
5分41秒のアニメーションで日本語字幕もあります。動画のあとに抄訳を書きます。
What causes addiction? なにが依存を起こすのか?
☆2019/03/15追記:なぜか、元の動画が削除されてしまったので、リンクもはずします。
TED-EDのサイトでも探しましたが、見つからりません。
一応、元のリンクはこちらです⇒https://www.youtube.com/embed/ao8L-0nSYzg
動画はありませんが、訳したものはそのまま残しておきます。
薬物中毒の原因は薬物か?
なぜヘロイン中毒になってしまうのでしょう?
馬鹿げた質問に思えるかもしれません。ヘロインに依存する理由はヘロイン。20日間、ヘロインを使えば、21日目には身体がそれなしではいられなくなる。それが依存です。
しかし実際は違います。私たちの依存症に関する認識のほとんどは間違っています。
お尻の骨を骨折したら、病院で長期間に渡ってジアモルフィンを処方されます。ジアモルフィンはヘロインです。しかも、道端で打っているものより純度が高いです。
病院でジアモルフィンを使っている人はたくさんいます。それならば、そのうちの何人かは依存症になりそうなものです。
しかしそうなりません。
なぜでしょうか?
マウスの実験
現在の依存症の理論は、20世紀のはじめから始まったリサーチがもとになっています。
とてもシンプルな実験です。
マウスを一匹、ケージに入れ、2種類の飲み物を与えます。ひとつは、ふつうの水、もう1つは薬物の入った水。
たいていいつも、マウスは薬物入りの水を好み、死んでしまうまで飲み続けます。
しかし、1970年代、ブルース・アレクサンダーという心理学者がこの実験のおかしな点に気づきました。
マウスは1匹だけケージに入っているのです。薬物入りの水を飲むぐらいしかやることがありません。
「もし違う環境で実験をしたらどうなるのだろう?」
そう考えた彼は「ラット・パーク(マウスの遊園地)」を作りました。ここはマウスたちにとっての楽園です。
おもちゃや遊び道具がたくさんあり、友達や恋人もいます。マウスのほしがるものはみんなあります。
ここに薬物入りの水とふつうの水を用意しました。
ラットパークでは、マウスはめったに薬物入りの水を飲みません。この水ばかり飲むマウスはおらず、飲みすぎて死んでしまうマウスもません。
ベトナム戦争の兵士たち
「それはマウスだから」
そう思うかもしれませんね。では人間の例をお話しします。同じ時期、人体実験もあったのです。ベトナム戦争です。
ベトナム戦争で戦っていたアメリカの兵士の20%がヘロインをたくさん使っていました。アメリカにいる人たちは、「戦争が終わった後、薬物依存の人が街にあふれる」と心配していました。
しかし現実は違いました。
離脱症状になる人も、リハビリが必要な人もいなかったのです。95%の人が、帰国後、薬を使うのをやめました。
薬物依存に対する古い考え方を信じている人にとっては、ありえないことです。しかし、アレクサンダー博士の理論を信じているのなら、理解できますね。
行きたくもないのに、外国のジャングルに放り込まれ殺し合いをしていたら、ヘロインを使いたくもなるでしょう。しかし、居心地のいい自宅に戻り、友達や家族と楽しく暮らすなら、それはラット・パークにいるマウスと同じです。
依存症の原因は薬物ではなく、ケージ(環境)なのです。
人はつながりを求める生き物
私たちは依存症に対する考え方を改めるべきです。
人間はもともとつながりたいと思っています。幸せで健康なとき、周囲の人とつながります。
けれども、トラウマや孤独を感じていたり、人生に打ちのめされていたら、何か別のものとつながって安心しようとするのです。
それは、スマホを1日中チェックすることかもしれません。ビデオゲームやギャンブル、薬物への依存かもしれません。
何かとつながること。これは人間が自然にすることなのです。
不健康なつながりを断ち切るには、健康的なつながりを持つことです。一緒にいると楽しい人たちとつながるのです。
つながれる社会を作ろう
依存症は、「つながることができない危機」の1つの結果にすぎません。現代はつながりの少ない社会です。
1950年からアメリカ人の持つ親しい友達の数は、少しずつ減少しています。同時の家の広さは大きくなっています。
人々は、友だちよりも大きな家を、つながることより物を選んでいるのです。
麻薬との戦いは、ほぼ1世紀になりますが、状況はどんどん悪くなっています。依存している人たちをサポートする代わりに、私たちは、こうした人たちを社会から疎外しようとしています。
彼らが仕事を得て安定した生活をするのを難しくしています。
薬を使っているのを見つけたら、刑務所に入れます。つまりケージです。助けが必要な人を、事態が悪くなる状況に追いやっているのです。
すると依存症の人は、立ち直れない自分を嫌いになってしまいます。
長いあいだ、私たちは、個人が依存症を克服することを話題にしてきました。しかし今は、社会全体の回復を考えるべきです。
孤独なケージではなく、ラットパークのような社会を作るべきです。不自然な暮らし方を変え、再び、お互いを見つけるのです。
依存症の反対はしらふ(sobriety)ではなく、つながることなのです。
////抄訳ここまで////
人とつながるより、物を持つことが大事な現代人
依存症の理論はたくさんあり、どれか1つだけが正解とは言えないし、どれか1つだけがすべてのケースにあてはまるとも言えません。
今回紹介したアレクサンダー先生の理論も、現実には使えない場面も多々あるでしょう。
しかし、アメリカや日本にいる多くの人が、自分だけのスペース(家)をたくさん確保して、その場所を多くの物で埋めることを大事だと考えているのは確かです。
昔は、一人ひとりが、そんなに物を持っていなかったので、よく物の貸し借りをしていました。
テレビが登場したばかりの頃は、街頭でほかの人と見たり、近所の定食屋でほかのお客さんと見たり、近所のテレビのある家に見に行ったりしました。
電話もそうですね。電話のある家に借りに行ってました。
しかし、今は物が豊富に安く出回っているので、みんなが自分だけの物を持っています。中には同じものをいくつも持っていたり、個人で持つ必要がないようなものまで持っている人もいます。
私たちは自分だけのスペースや物にこだわるあまり、他の人とつながることを忘れてしまったのです。
だから、買い物依存とか、ゲーム依存、スマホ依存など、薬物依存ほど反社会的ではないけれど、決して望ましくない状態に陥ってしまう人が増えたのではないでしょうか?
「SNSでつながる」といいますが、現実にはSNSのせいで孤独になっている人が少なくありません⇒SNS依存に注意。FOMO(フォーモー:取り残される不安)を捨てる方法
ラットパークにいるラットや、そこそこ幸せな生活をしている人々は、わざわざ薬物入りの水を飲みません。
必要ないからです。
そんなものに手をだしたら、今の楽しい生活が台無しになってしまうことも知っています。周囲の人と楽しく暮らし、心が満たされていたら、別の何かと変なつながりを持つこともないのです。
しかし、「大きな家に住んで、物を買い集めたい」という気持ち、つまり物質的な物を重要視する気持ちが強すぎると、もっと大事な、愛情や分け与える気持ちが損なわれてしまいます。
「物より心のほうが大事」とみんな口にするものの、やっていることは違います。
物を集めるより、他人とふれあうことのほうが、ずっと大事なことを思い出すべきです。
依存症に関する過去記事もどうぞ
買い物依存⇒どうしても買い物が止まらない。買い物依存症を自分で治す方法
インターネットにおける買い物依存の記事⇒買い物依存症を治す11の方法(ネット通販編)
ネット依存⇒パソコンとスマホ依存を防止する5つの方法
甘いものへの依存⇒砂糖への依存性はこうして起きる。甘いものをやめるために1番大切なこととは?
カフェインへの依存⇒コーヒー中毒になっていませんか?カフェインの依存性をわかりやすく解説
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「ミニマリストは、他人の物を借りて生きようとするから社会の寄生虫だ」という意見を聞くことがあります。しかし、人はもともと助け合って生きていますから、借りるのはそんなに悪いことじゃないです。
一人で生きている人はいないので、借りるばっかりの人もいません。どんな人も相互に依存しています。
「自分の物だけにこだわる気持ち」をちょっと捨ててみると、もっと周囲の人と円満に暮らすことができ、好ましくないものとつながることも減っていくことでしょう。