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誰もがうっかりはまり込む暗い考え方・間違った思考のパターンを10個紹介しています。
認知療法の専門家、デビッド・D・バーンズ(David D. Burns)先生の本に書かれている、認知のゆがみ10項目(10 cognitive distortions)というものです。
最終回の今回は、
8.すべき思考
9.レッテル貼り
10.個人化
どうやったら思考のクセを改善できるか?
この4つを説明します。
8.すべき思考 Shoulds Statements
「~すべきである」「~しなければならない」と考えることです。
これは誰もがする考え方ですね。
たとえば、汚部屋の人が、近藤麻理恵さんの本を読んだとします⇒近藤麻理恵の「人生がときめく片づけの魔法」の英語版の感想~ベストセラーの秘密は東洋の神秘にある?
その後、こんまり方式で片付けようと思ったものの、「全出ししなさいと書いてあるから、全出ししなければならない。でも、床には本やら何やらが散らばっているから、こんなところに服を全部出すと、ますます散らかる。ああ、私はいったいどうしたらいいの」ともんもんと悩む。
悩むだけで何もできないまま日がすぎる。
こんな感じです。
「~べき思考」にとらわれていると、ストレスが増えます。自己嫌悪や罪悪感、恥の気持ちにさいなまれるでしょう。
「40歳になる前にマイホームを持つべきである」と思っていると、30代後半ぐらいになって貸家に暮らしていれば、「まだ借家暮らしだ。なんとかしなければ」と焦るでしょう。
「女性は20代で結婚すべきだ」と思っていると(いまどきそんな人はいないと思いますが)、結婚していない自分がとてもみじめに思えます。
「赤ちゃんは1歳半ごろにはしゃべり始めるものだ」と思っていると、自分の2歳の息子がろくにしゃべらないとき、ものすごいストレスを感じます。
「~すべきである」という考え方は、自分だけでなく他人(親、家族、親戚、同僚、友達、たまたま街ですれちがった人、SNSで交流のある人など)にも及びます。
「こんなときはこうすべきだ」という考えで頭がガチガチになっていると、自分の期待どおりに動かなかった相手に対して、怒りや苦々しい気持ちをいだきます。
がっかりしたり、場合によっては、裏切られた、なんて思うこともあるでしょう。
「こんなときは、~すべきだ」という考え方は、かなり人の行動を支配しています。
多くの人が、「きょうは会社に行って働くべきだ」と思うから会社に行き、「取引先に営業に行くべきだ」と思うから、クライアントのところへ足を運びます。
ですから、うっかりすると、「すべき思考」で多大なストレスをかかえてしまいます。
「もっとやせなきゃ」「もっと稼がなきゃ」「もっときれいにならなきゃ」「ちゃんといい成績とらなくちゃ」「片付けなきゃだめだ」「もっと捨てないと」と自分をしばっている人、たくさんいます。
すべき思考のワナはこちらにも書いています⇒「ガラクタ捨てれば自分が見える」から学んだ心の断捨離~ミニマリストへの道(25) 2.「should」という言葉は使わず、「could」を使う、という箇所です。
9.レッテル貼り Labelling
自分にペタっとラベルを貼ってしまうこと、つまり決めつけることです。
ラベリングは認知のゆがみ、1番の「オール・オア・ナッシング的考え方」や、2番の「極端な一般化」がさらに極端になったものです。
職場で何か失敗をしたとします。
現実は、「きょう職場でこんな失敗をして、上司のAさん、同僚のBさん、顧客のCさん、事務のDさん、人事のEさん、パートのFさんに迷惑をかけた」というだけです。
ところが、「俺って、こんな仕事もちゃんとできないだめ人間だ」と、自分で自分に「人間失格」と決めつければ、それがラベリングです。
よくあるラベルは、「負け犬(英語だとloser ルーザー)」「負け組」「最低」「最悪」「できそこない」「世間知らず」「だめ亭主」「主婦失格」「母親失格」「劣等生」「安物」「傷物」「ニセモノ」「規格外」「ビリ」「バカ」「ボケナス」。
ほかにもたくさんありますね。
このブログの読者に多いのは、「片付けられない女」「汚部屋の住人」でしょうか。
りんごにはりんご、みかんにはみかんとラベリングしないと、生活しにくいから、ラベリングしたほうがいい場面もたくさんあります。話をわかりやすくするためにラベリングするとこともあります。
私も自分で自分に「どんぶり勘定する主婦」というラベルを貼っています。
ですが、自分で自分に、「生きる値打ちのない人間」というネガティブなラベルをべったり貼るべきではないです。たとえ他人にそう言われたとしても。
こういうラベリングをすると、やはり怒りや嫌悪感、不安、心配が増えます。セルフエスティームも下がります。
セルフエスティームとは? ⇒セルフエスティーム(自分を愛する気持ち)が高い人の12の特徴
自己肯定感とも言います⇒自己肯定感が低いせいでガラクタをためこんでしまう5つのパターン。
できごと(失敗など)イコール自分ではありません。
何か間違いをしてしまったとき、そこにあるのは、自分という人間だけで、「負け犬」とか「まぬけ」なんかは存在しないのです。
ラベンリングも自分だけでなく、他人に及びます。何か不愉快な行動をされたとき、相手に「礼儀知らず」とか「ボケナス」というラベルを貼って固定化すべきではないです。
自分が不快に感じたのは、そのときのその行動に対してであり、相手そのものではないからです。
他人に対して、こういうラベルを貼っても、自分は救われません。
10.個人化 Personalisation
100パーセント、自分がコントロールできない状況で何かよくないことが起きたとき、すべては自分の責任だ、と考えてしまうことです。
たとえば、子供が引きこもったとします。「ああ、私の育て方が悪かった。すべては私のせいなんだ」と思って、どんより暗くなるのが個人化です。
この考え方の問題は、ストレスが増えるだけでなく、ここで思考停止してしまうことです。
問題の要因はすべて自分だと決め込むと、本当の要因をつきとめようとしたり、状況を調べて改善する機会が失われてしまうのです。
しかも、個人化しがちな人は、たいていラベリングもします。「私は最低の母親だ」というように。ラベリングの弊害は、9番に書いたばかりです。
個人化する人は、自分にはコントロールできることと、できないことがある、ということがよくわかっていません。
個人化が逆に作用するときもあります。責任転嫁です。何もかも、他人か状況のせいだ、とすることです。
結婚生活がうまくいってないのは、すべて夫のせいだ、と考えるのは責任転嫁です。どちらかが100パーセント、一方的に悪いなんてありえません。本人たちには、コントロールできない外的な要因もあるのですから。
個人化すると、自己嫌悪、心配や不安、絶望感が生まれ、責任転嫁すると無力感や怒り、憎しみが生まれます。いずれにしても、ネガティブな感情で心が重くなります。
認知のゆがみを改善するには?
あらためて、10個の認知のゆがみを書いておきます。
1.オール・オア・ナッシング
2.極端な一般化
3.フィルタリング(心のフィルター)
4.マイナス化
5.結論への飛躍
6.拡大解釈または過小評価
7.感情的決めつけ
8.すべき思考
9.レッテル貼り
10.個人化
こうした望ましくない思考のワナにはまらないためにはどうしたらいいのでしょうか?
行動認知療法の本や、カウンセリングを受けると、いろいろなワークを学ぶことができますが、ここでは、誰でもできる簡単な方法を紹介します。
1.認知のゆがみの存在を認識する
どんな人も、思い込みのせいで、極端な考え方をして、自己嫌悪におちいったり、他人にうらみをつらみを感じることがあります。
自分もゆがんだ考え方をすることがある、と気づくのが最初の一歩です。
2.自分の思考のクセを見つける
どんな人にも考え方のクセがあるので、自分の傾向を見つけてください。
やたら白黒つけたがる(オール・オア・ナッシング、完璧主義)、すぐに自分や相手にレッテルを貼る、たった一つのできごとがすべてを決めると考えておろおろしがち、なんでも責任転嫁する、など。
ネガティブになりがちな人は、自分にはどんな思考のクセがあって、それによって、どんなことが起きてきたのか考えてみるといいですよ。
証拠を検証する
バーンズ先生のプレゼンに出てきましたが⇒いやな気分よ、さようなら(認知行動療法入門):TED、自分がそう思う根拠を一つひとつ書き出してみます。
「私は片付けられない女だから、もう一生片付けることができない」と思ったら、その根拠を書いてみるのです。
それぞれの根拠を客観的に検証すると、違う結論が導かれます。
考えと現実を分ける
単なる自分の考えや意見(思い込み)と、現実のできごとをしっかり分けてみます。
現実:1歳6ヶ月の息子がしゃべらない
意見:息子は言葉が遅い・心身の機能の発達が遅れている・自閉症なんじゃない?・学校で勉強についていけないかも ・夫に何か言われそう、etc。
自分が何を心配しているのか、具体的に書き出してみるだけでも、気持ちの整理ができます。というのも、悩んでいる人は、意外と何が問題なのか、よくわかっていない(言語化できない)ことが多いからです。
ただ、なんとなく不安になっているだけなのです。
認知行動療法に関する記事
関連記事もお読みください。
今すぐ捨てたい根拠のない思い込み:10の認知のゆがみ、その1
ネガティブな人が陥りやすい思考のワナ:10の認知のゆがみ、その2
認知行動療法(CBT)を使って片付けられない思考を手放す方法。
心配性は自分で克服できる。恐怖と向き合うことを学ぶ(TED)
デビッド・D・バーンズの本はこちら。
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自分がストレスを感じているときは、たいてい10の認知のゆがみのどれか(あるいは複数)のせいです。
私に多いのは、「すべき思考」です。
ずっと、語学を趣味としてきましたが、英語の下手さ加減やら、読みの遅いこと、聞き取れないことにストレスを感じることが何度もありました。
その理由を考えてみると、べつに語学の才能がないとか、勉強が足りないとか、記憶力がなさすぎるとか、そういうことではなく、単に、無意識に、いつも母語の日本語と英語を比べているからなのです。
日本語のように、英語も使えるべきだ、と思ってしまっているのですね。
ですが、英語は外国語なので、そんなふうに考えるのは無茶なのです。
生まれたときは、一言もしゃべらなかった娘が、2~3年たつうちに、私よりずっと英語をうまくしゃべるようになったのを見て、「母語を身につけるってこういうことか」と思い知りました。
自分の母語と外国語を比べて落ち込むひまがあったら、単語の一つも覚えよう、と思った次第です。