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ネガティブな考え方をしてしまう人を元気づけてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、My philosophy for a happy life(幸せな人生のための私の哲学)
講演者は、アメリカのティーンネイジャー、Sam Berns(サム・バーンズ)さん。
邦題は、「僕の幸せな人生の秘訣」。
彼は、プロジェリアと呼ばれる、ひじょうに珍しい難病にかかっています。
プロジェリアは、若いうちからどんどん老化がすすむ遺伝性の病気です。
難病にかかっている彼ですが、自分は幸せだと話します。
幸せな人生のための哲学・TEDの説明
Born with a rare genetic disorder called progeria, Sam Berns knew he’d be facing more obstacles in life than most. This didn’t stop him from taking charge of his own happiness. In this moving and inspirational talk, Berns lays out the three principles of the personal philosophy that allowed him to do so.
生まれつきプロジェリアと呼ばれる珍しい遺伝性の病気を患っているサム・バーンズは、人生で、ほかの人よりたくさんの障害に向かうことになるとわかっていました。
だからといって彼は幸せを追い求めることをやめませんでした。
この感動的で元気づけてくれるスピーチで、バーンズは、そのようにできた個人的な哲学の3つの原則を紹介します。
収録は2013年の10月。動画の長さは12分44秒。日本語字幕もあります。
☆トランスクリプションはこちら⇒Sam Berns: My philosophy for a happy life | TED Talk
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
見てよかった、と思える講演です。
スネアドラムを叩く夢を叶える
こんにちは。サムです。17歳になったところです。
高校に入る前、高校のマーチングバンドでスネアドラムを叩きたいと思っていました。
どうしても叶えたい夢でした。
でもスネアドラムは、それぞれ、40ポンド(約18キロ)だし、僕は、プロジェリアという病気にかかっています。
体重が、50ポンド(約23キロ)ほどしかないので、ふつうの大きさのスネアドラムを、首にかけて歩くことはできません。
だから、ピットパーカッション(行進はせず、床に置いた太鼓を演奏すること)を担当するよう言われたんです。
ピットパーカッションだって悪くありません。ボンゴやティンパニなど、おもしろい楽器がいっぱいあります。
楽しいんですが、行進はしません。心底、がっかりしました。
でも、ハーフタイムに、マーチングバンドの一員として、スネアドラムを演奏する僕の夢を止めるものなんてありません。
家族やエンジニアと一緒に、軽くて、持ち運びしやすいスネアドラムをデザインしました。
6ポンド(約3キロ)のドラムを作り上げたんです。
プロジェリアとは?
プロジェリアについてもう少し説明します。世界で350人の子供がかかっていて、とても珍しい病気です。
この病気になると、皮膚が硬くなり、体重が増えず、成長が妨げられ、心臓の疾患を起こします。
昨年、母(小児科医)と、母のチームの科学者が、はじめて、プロジェリアの治療に関する研究を発表し、僕も、NPRでインタビューを受けました。
「君のことについて、皆に知ってもらいたいことで、もっとも大事なことはなんですか?」
こう質問されましたが、僕の答えは、単純明快。僕はとても幸せな人生を送っている、ということです。
生きる上で、たくさんの障害があり、その多くは、プロジェリアのせいで起きますが、僕のことをかわいそうだと思ってほしくないんです。
いつも、障害のことを考えているわけではないし、その大部分を克服できますから。
今日は、幸せな人生のための哲学をシェアします。
この哲学には3つのポイントがあります。
これは、フェリス・ビューラーの有名な言葉です。
“Life moves pretty fast. If you don’t stop and look around once in a while, you could miss it.”
「人生は猛スピードで進む。ときどき立ち止まって周りを見ないと、見過ごしてしまう」。
できないことにこだわらない
最初のポイントは、できないことがあってもかまわないこと。というのも、できることもたくさんありますから。
人にこう聞かれることがあります。
「プロジェリアだと大変じゃないですか?」
「プロジェリアのせいで、毎日、どんな困難なことがありますか?」
僕が言いたいのは、たとえ、プロジェリアにかかっていても、大半の時間は、プロジェリアとは全然関係のないことを考えているということです。
困難なことを無視しているわけではあります。
長距離を走れないし、ローラーコースターに乗ることもできないことはわかっています。
しかし、その代わり、自分ができる大好きなことに意識を向けています。ボーイスカウトや音楽、漫画、好きなボストンのスポーツチームなど。
時には、何かをするとき、調整をする必要はありますが、そういうことも、「できること」のカテゴリーに入れたいですね。
最初にお話ししたスネアドラムの演奏もそうです。
数年前に、ハーフタイムのとき、高校のマーチングバンドでスパイダーマンを演奏した動画を見てください。
[ビデオが映し出される]
けっこういいでしょ? マーチングバンドでスネアドラムを演奏する夢を叶えたわけです。
ほかの夢も叶えられると信じています。
できることにフォーカスすれば、みなさんも、夢を叶えられると思いますよ。
一緒にいたい人々といる
2つ目のポイントは、一緒にいたいと感じる素晴らしい人たちと一緒にいることです。
幸い、僕は、素晴らしい家族に恵まれています。家族はずっと僕の人生を支えてくれました。
学校にとても親しい友人がいるのも、すごくラッキーなことです。
みんな冗談好きで、バンドおたくだったりしますが、とても仲がいいんです。必要なときは助け合います。
お互いに、外面ではなく中身を重要視しています。
今、みんな高校2年なので、バンドの下級生の指導をしています。
音楽でつながれるのが、バンドのようなグループのいいところ。とてもいい気分なので、プロジェリアのことは忘れてしまいます。
演奏中はハッピーなので、病気の心配はしません。
これまでドキュメンタリーを作ったり、テレビに出演したりしましたが、僕にとって、もっとも幸せな時間は、人々に囲まれている時です。
皆、僕の人生にとてもポジティブな影響を与えてくれます。僕自身も、周りの人に同じことをしたいと願っています。
家族や友達、周りにいる人々を愛して、自分のいるコミュニティを大事にしてください。
こうした人たちは、日常生活の本当に大事な部分ですから、すごく重要でポジティブな影響を与えてくれます。
前に進み続ける
3つ目のポイントは、前に進み続けることです。ウォルト・ディズニーの言葉で、好きなのがあります。
Around here… we don’t look backwards for very long. We keep moving forward, opening up new doors and doing new things.
「このあたりでは、長々と後ろを見たりはしない。前に進み続けるんだ。新しい扉を開き、新しいことをするんだ」。
いつも、何かを心待ちにするようにしています。
自分の人生をより豊かにするよう努力しているんです。
大きなことでなくてかまいません。次のコミックスが出ることでも、家族で旅行に行くことでも、友人と遊ぶことでも、次のフットボールの試合を観に行くことでも。
小さなことでも、楽しみにすれば、明るい未来があるんだと思えるので、困難な時期を乗り越えさせてくれます。
前向きな思考
この姿勢には、いつも、前向きな思考でいることも含まれています。
自分をあわれむことに、エネルギーを無駄にしないよう、努力しています。そういうことをすると、パラドックスに陥ってしまうから。幸せや他の感情をシャットアウトしてしまいます。
嫌な気分になることを無視するという意味ではありません。そういう気持ちは、受け入れています。受け入れて、乗り越えるために必要なことをします。
子供のとき、エンジニアになりたいと思っていました。
世界をよりよくできる発明家に。
レゴが大好きだから、そんなふうに思ったのかもしれません。何かを作って表現できる自由が好きなんです。
家族やメンターの影響もあるかもしれません。皆、いつも、自分自身について、よく思わせてくれるから。
現在の希望は変わって、生物学を学びたいと思っています。細胞生物学、遺伝学、生化学など何でも。
この写真は、尊敬している友人で、NIH(アメリカ国立衛生研究所)の所長のフランシス・コリンズと昨年のTEDMEDで話しているところです。
どんな道を選んでも、世界を変えられると信じているし、世界を変えようと努力しているうちに、僕は幸せになるのです。
4年ほど前、HBOが、“Life According to Sam”(サムの人生)というタイトルで僕と家族のドキュメンタリーを撮り始めました。
素晴らしい体験でしたが、それはもう4年前のことです。
誰でもそうであるように、僕の、いろいろなものに対する見方は変わりました。将来の夢が変わったように。より成熟した見方になっているといいのですが。
でも、ずっと変わらないものもあります。僕の考え方や人生に対する哲学は変わりません。
4年前のドキュメンタリーから、その哲学を体現しているシーンをお見せします。
[動画が映し出される]
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今は、遺伝について知識があるから、見方が変わりました。
以前は、それは、自分がやりたいことをするのを邪魔するもので、たくさんの子供を死なせるもの、皆のストレスのもとだと思っていましたが、今は、単に、異常なタンパク質で、細胞の構造を弱めるものだと認識しています。
肩の荷がおりました。プロジェリアを一つのものとして考えなくてすむようになったから。
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なかなかいいでしょ?
勇気を出して前に進む
僕は、何年も前からこう考えていましたが、自分の哲学を実際にテストする必要はなかったんです。昨年の1月までは。
風邪をひき、とても体調が悪くなり、数日間入院したとき、自分を自分たらしめていると感じるすべてのものから、引き離されてしまいました。
でも、必ず治ると信じ、元気になれる日を楽しみにすることが、自分を前に進ませてくれました。
時には、すごく勇気が必要で、そうするのは簡単ではありません。
くじけそうになり、最悪な気分の日もあります。でも、そもそも、勇気をだすことは、簡単なことではないと気づきました。
勇気を出すことが、前に進む鍵だと思います。
だから、自分をかわいそうに思うことに、エネルギーを使いたくないのです。
一緒にいたい人々と時間を過ごし、前に進み続けています。
僕の哲学を使って、皆さんも、たとえどんな障害があっても、幸せな人生を歩んでほしいと願っています。
あ、もう一つアドバイスがあります。
可能な限りパーティに欠席しないこと。
明日の夜、僕の高校でホームカミングダンスがあり、僕も出席します。
////抄訳ここまで////
補足
Ferris Bueller:フェリス・ビューラー、Ferris Bueller’s Day Off(フェリスはある朝突然に)という映画の主人公
junior 3年制高校の2年、4年制高校の3年
supersede (強者が弱者に・よいものが悪いものに)取って代わる
entity 実体
幸せに関する他のプレゼン
心が疲れた人におすすめ。1セント硬貨がもたらした幸せ(TED)
幸せになれる動きとは? 姿勢や動作が気持ちに与える影響(TED)
ほかにもたくさんあります。
幸せの鍵
サムの幸せの哲学は、たっぷりあるマインドそのものです。
たっぷりあるマインドとは?⇒なぜ私ばかりが(怒)、と思う人は『足りないマインド』を『たっぷりあるマインド』に変えればよい。
病気のせいで、彼にはできないことや、嫌な気分にせるものは、うんざりするほどあったはずです。
しかし、できることや、好きなことに意識を向けると、思いのほかたくさんあって、彼は大好きな人たちと一緒に、やりたいことをして、存分に楽しみました。
残念ながら、サムは、このプレゼンをした翌年の1月に亡くなりました。
この病気の人の平均寿命は13歳なので、サムは長生きしたと言えます。
彼が亡くなったことを伝えるニュースクリップです。
2分49秒。
そもそも、この病気にかかる確率はとても低いのですが、サムの両親は偶然にも、2人とも小児科医でした。両親は、サムの病気の解明と治療法を見つけるために、研究財団を作り、リサーチを重ねました。
サムも積極的にメディアに出て、この病気に対する認識を高めました。
もう亡くなってしまいましたが、彼の幸せの哲学は、これからも多くの人の幸せに貢献するでしょう。
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マーチングバンドって楽しそうですね。
私は、幼稚園のとき、鼓笛隊で太鼓をたたいていましたが、それ以降は、人と合奏することはありませんでした。
合唱は授業でやりましたが。
何かを誰かと一緒にやるのは楽しいことなのだ、とCOVID-19の出現で改めて感じました。
ぐずぐず悩まず、できるときに、できることをして楽しんでおくのはとても重要だと思います。