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自分を責めてストレスをかかえている人の参考になる動画を紹介します。
タイトルは、What if There’s Nothing Wrong With You (あなたには何1つ問題がないとしたら?)
講演者は、心理療法士の Susan Henkels(スーザン・ヘンケルス)さんです。
自分には問題はない:TEDの説明
We often design our lives around a long list of all the things we believe are wrong with us. Susan Henkels asks us to consider an alternative vision: What if there’s nothing wrong with you?
私たちは、自分の人生を、自分のよくないところだと本人が思い込んでいる事柄の長いリストを中心に設計するものです。
スーザン・ヘンケルスは、別の見方の検討をすすめます。自分には悪いところなんて何もないとしたら? と考えてみるのです。
収録は2018年の11月。動画の長さは13分27秒。英語ほかいくつかの言葉の字幕がありますが、日本語字幕はまだありません。
ユーモアのあるプレゼンですね。
自分には悪いところがないとしたら?
心理療法士として、45年以上、人のよくないところを聞いてきました。
ある女性が、自分の悪いところをえんえんと数え上げるのを聞いていたとき、ふと思ったんです。
実際は、彼女には何の問題もないとしたらどうだろう?
そう考えれば、彼女は自分の求めているものを手に入れ、したいことができるのではないかしら?
まあ、今のあなたに何の問題もないとは言っていませんよ。もしそうだとしたら、という話です。
そう考えれば、もっと自信や勇気がわいて、ずっとやりたいと思っていたことをやれるんじゃないでしょうか。
私はバンジョーを習っています。これはもう何年も私のバケットリスト(死ぬまでにやりたいことのリスト)に入っていました。
だから、It is what it is(しょうがない、それは、そういうものさ)という言葉を聞くのにいささか飽き飽きしていました。
誰もがそう言っていて、嫌だったんです。
自分ではどうすることもできない、というあきらめがただよっているから。
でも、もし、「そういうものなのだ」が本当にそうだとしたらどうでしょう?
ジャッジや批判、非難はいっさいせずに。
もしあなたが、「それは、そういうものだ」でいっぱいだとしたら。
自分を正当化するために語る話が、すべて他人を悪者にして、自分の正しさを主張するものではありません。
それ以外のものだって手に入るのではないでしょうか?
ある映画監督との会話
毎年開催している映画祭で、ある有名なドキュメンタリーの監督に会うことができました。
私たちはこんな話をしました。
D(監督):「映画を見ていないときは、何をしているんですか?」
S(スーザン)「えーと、本を書いています。タイトルは、『もしあなたに悪いところがなかったら?』です」
D:「私の悪いところを、今すぐ8つは言えますよ」
S:「たとえば?」
D:「私は反抗性障害なんです」
S:「それの何がいけないの?」
D:「えーと、私はいつも両親や先生に逆らっていたんです」。
S:「で、それの何がいけないの?」
D:「校則を守らず、家では言われたことを何もしませんでした」。
S:「それのどこがいけないの?」
D:「えーと、私はいつも機嫌が悪く、両親と言い争いをしていて、友達は全くいなかったし、ひとりでいるのが大好きでした」。
S:「それのどこがいけないの?」
D:「うーん、私は、実は、ひとりでいるのが好きなんです。頭の中で物語を書くことがきるから。映画の脚本を書けるようになったし。考えてみると、反抗性障害のおかげで、いい映画監督になれたのかもしれません。
正しいとか間違っているという診断をするのではなく、そのまま受け入れるのが好きですね」。
翌日、彼は私のところに来てこう言いました。
「何年ぶりかで、夜通しぐっすり眠れました。自分が間違っていると思わず、何をすべきで何をすべきでないかなんて考えずにすみました。自分の悪いところだと思っていたほかの7つの点についても、考え直してみます」。
これはとても楽しい体験でしたよ。
プールにいたとき、隣の女性に聞かれました。
女性:「どんな本を書いているの?」
S:「『もしあなたに悪いところがなかったら?』という本です」
女性:「だとしたら、私たち、あんまりおもしろくないわよね?」
悪いところを言うのにエネルギーを使っている
そして思いました、私たちは、いったいどれほどの時間とエネルギーを、自分の悪い点を話すことに費やしているのだろうか、と。
私たちは、自分のよくないところをあげた長いリストを作って、5歳のときに決心したことをもとに、人生を作り上げているんです。
よくないところについて話すためだけに時間を費やしています。
だから、自分と戦うのをやめて、自分の最大の敵になるのもやめて、本当にやりたいことをやれたらいいと思いませんか?
これは、ジャッジすることや、非難すること、批判することを解消する練習です。そして、すでにある姿に置き換えます。
『もしあなたに悪いところがなかったら?』と問いかけてみると、それができるんです。
この部分は少々難しいですね。私はこの考え方にずいぶん早くから気づいていました。
声を失った幼い私
私が4歳で、兄が7歳のとき、父が脳卒中で倒れました。
父はとても支配的でカリスマ性があり、自己本位な人でした。
卒中のため、父は右半身が不随になりました。
筋のとおった話ができなくなりました。卒中による外傷の結果、脳がひどく傷ついてしまったのです。
リハビリを半年して、父は家に戻って来ましたが、以前よりずっと怒ってばかりで、肉体的にも精神的にも、虐待するようになりました。
それまで私は無邪気で幸せで、率直な少女だったのに、この突然のできごとのせいで、完全に心を閉ざしてしまいました。
半年の間、父は、「このクソバカ野郎」(Goddam sonofabitch shit)しか言いませんでした。
今も家族で語り継がれている話があります。
私が6歳のとき、両親が記念日のパーティをしていました。部屋に私が行っても誰も私を見ませんでした。
そこで、私は、誰にも見られずに、みなの、半分入っているシャンパングラスを全部飲んだのです。
そして部屋の真ん中に行って、ぐるぐる回って、「このクソバカ野郎」と言ってから気を失いました。
明らかに私は、誰かに、我が家で起きていることに、注意を向けてほしかったのです。
母は父の世話に追われていて、力になってくれる親がおらず、私は自分の悪いところばかりを、探していました。
朝、鏡を見て、そばかすを数えていました。歯は出っ張っていたし、髪も変。きみょうな姿の子供でした。
見た目が悪く、またののしられ、お仕置きされるのが怖くて、口を開けることができませんでした。
実際、だまっているほうがずっと安全だと感じたので、安全でいるために、声を失ったのです。
TEDトークの依頼をされたとき、私がどんな気持ちだったか、皆さんにも想像できるでしょう。
自分がいかに悪い人間であるかということを許さなければなりません。
では、どうやって、私たちがこれまでしたこと、感じたこと、考えたこと、話したこと、自分にしたことのすべてを許せばいいのでしょうか?
たばこをやめられなかった患者
たばこをやめたい患者がいました。15年、喫煙していてやめることができなかったのです。
彼女はあらゆることを試しました。ニコチンパッチ、ニコチンガム、チャンティックス(禁煙補助薬)、いきなりやめてしまうことなど。
1時間でたばこをやめられるという催眠療法も受けました。
催眠療法を受けてすぐに、彼女は車に戻って、たばこを吸ったと、私に電話してきました。
彼女は、自分にとてもつらくあたっていて、「最悪な習慣」をやめることができない自分にとても怒っていました。自分自身について心を乱していました。
彼女の話をしばらく聞いてから、こう私は言いました。
「もうやめなさい。宿題をだします。家に帰ってたばこを吸いなさい。気が済むまで。
たばこが吸いたいと思ったら火をつけて吸えばいいのよ。ただし、自分に対して、ジャッジは批判は決してしないこと。
ただたばこを吸うのよ。その代わり、自分に対して言っているひどい言葉を全部捨てなさい」。
6日後に彼女は戻ってきて、15年ぶりにたばこをやめたと言いました。
彼女はとても興奮し、自分のことを誇らしく思っていました。これまで自分自身にさんざんひどいことを言っていたことを、完全に許したのです。
では、どうやったら許すことができるのか?
これまでずっと自分に対して意地悪で厳しかったのに?
選べばいい
これは選択なんです。
自分が悪いと思うに至ったすべての考え方を手放すことを選ぶのです。
自分のことを悪く言うかわりに、もっと自分がパワフルになれるほうを選ぶだけなんです。
私は自分が死んだあとも残る何かを残したいと思っています。
心をオープンにして、受け入れて包み込みたいのです。ジャッジメントや非難、批判を解放し、憎しみや不信感という壁を壊すために。
では、どうやってこれを実践すべきか?
朝、私は鏡に向かってこう言います。
「スーザン、きょう1日だけは、自分に悪いところが何もなかったとしたら? 可能性にむかって今日を生きるのよ」。
こうすることを、きょう、皆さんにおすすめします。
最後に、私の本にある引用を紹介します。
“I’m always amazed by how readily people judge the right and wrong of things they know only from the outside. Honestly, it kind of pisses me off.
「人々がいとも簡単に、外見だけを見て、いい悪いを判断することには、本当に驚かされる。率直に言って、ちょっと頭に来る」。
これは、My Fairy Godmother is a Drag Queen(私のゴッドマザーは、ドラッグクイーン)を書いた、David Clawson(デイヴィッド・クローソン)の言葉です。
/////抄訳ここまで
ヘンケルスさんの著書です。
ペーパーバックへのリンクです。キンドル版は、今は購入できない、と出ています。
デイヴィッド・クローソンさんの本です。
自分の最大の敵にならないために
自分にひどいことを言わないことをすすめる他のプレゼンです。
ネガティブなセルフトークを変えて、前向きに行動しよう(TED)
もっと自分を好きになろう。ラディカル・セルフ・ラブのすすめ(TED)。
本当の自分に出会う:セルフエスティームをあげるマニュアル(TED)
完璧であろうとする危険なこだわりがどんどん増えている(TED)
自分をブスだと思うことがなぜ悪いのか? ありのままの自分を認めるために(TED)
他にもあります。
悲観的になりすぎないために
悲観的で自信をなくしている人からよくメールをもらいますが、多くの場合、その状況は自分で作り出しているので、自分で改善できます。
確かに、否定的な親に育てられたり、誰かにひどいことを言わることが多かったりすると、自分が悪いと思いがちですが、大人になった今、誰かにぼろくそに言われることはそんなにないと思います。
ちょっとしたできごとを、拡大解釈して、「否定された」と思っているだけです。
そして、自分で自分を責めます。
これは、自分で自分を病気にしようとがんばっているようなもので、メンタルヘルスによくありませんから、こうしたクセは手放すようにしましょう。
ありのままの自分を受け入れることができるようになると、物にそんなにしがみつかなくなるので、断捨離も進みます。
自分さえ残っていれば、たいていの問題はクリアできますから。
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ヘンケルスさんは、つらい子供時代を送ったのですね。
その体験を克服して、今は、人々のこころの病気を治しているなんて、すばらしいと思います。