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いかにテクノロジーが、正しい・間違いの判断を変えるか?(TED)

思い込みが強い人におすすめのTEDを紹介します。

善悪や、正しい・間違いの判断は、技術の進化によって変わるから、相手が自分の意見と違うからといって、徹底的に攻撃し、抹消しようとしてはいけない、という内容です。

タイトルは、How technology changes our sense of right and wrong (いかに技術が正しい・間違っているという判断を変えるか)。

講演者は、未来学者で作家のフアン・エンリケス(Juan Enriquez)さんです。



正しい/間違っているの判断、TEDの説明

What drives society’s understanding of right and wrong?

In this thought-provoking talk, futurist Juan Enriquez offers a historical outlook on what humanity once deemed acceptable — from human sacrifice and public executions to slavery and eating meat — and makes a surprising case that exponential advances in technology leads to more ethical behavior.

社会の善悪の考え方を決めるものは何でしょうか?

この考えさせられるスピーチで、未来学者のフアン・エンリケスは、かつて人が、よしとしていたこと – 人をいけにえにすること、公開処刑、奴隷制、肉食 – を取り上げながら、急激な技術の変化により、人はより倫理的な行動をするようになると伝えます。

収録は2020年の11月。動画の長さは7分半。英語の字幕があります。

時代に合ったプレゼンですね。





善悪に関する新しい視点

分裂が進んでいる時代において、正しいとか間違っているという話をするのはむずかしいものです。

10年前、10ヶ月前、10時間前、10秒前に言ったことをジャッジされ、攻撃の的になることもあります。

あなたが間違っていると思う人たちは、あなたを火あぶりにするかもしれないし、あなたと同意見の人は、あなたの主張が十分ではないから、付き合いをやめようとするかもしれません。

正しい・間違いという判断をするとき、3つのことを考えてほしいのです。

1.時間とともに、善悪が変わるとしたら?

2.技術のせいで、善悪が変わるとしたら?

3.その技術は、急激に変化しているとしたら?

かつて正しいと思われていたこと

人間をいけにえにすることは、昔は普通であたりまえのことでした。

それは、神をなだめる行為です。

そうしないと、雨が降らず、陽が照らなかったのです。

公開処刑も、よくある、合法的なことでした。

パリの街角で、人が首を落とされるのを、子供を連れて見に行ったのです。

代表的な悪である、奴隷制や年季奉公は、何千年にも渡って世界のあちこちで行われてきました。

なぜ、こんなに間違ったことが、こんなに長く続いたのでしょうか?

さらに、なぜ、それをやめたのでしょうか? それも、ほんの数十年の間に。

技術が倫理観を変えた

確かに、廃止を求める人が、命をかけて、働きかけたからでしょう。しかし、廃止論者の行動と平行して、別のことも起こっていたと思います。

エネルギーと産業革命を考えてください。

1バレル(約159リットル)の石油のもたらすエネルギーは、5人~10人の人間の働きに相当します。

石油と機械を使えば、何百万人もの人間の労働に相当するものを、手に入れられます。

人々をしいたげることをやめ、何千年も変わっていなかった平均寿命を2倍にすることが可能になりました。

世界経済は、何千年も横ばい状態でしたが、突然、爆発的に伸び、これまでよりずっと少ない手間で、富、食料、その他の製品を手に入れることが可能になりました。

技術は、私たち人間同士の関わり方を根本的に変えます。

マシンガンが作ったもの

マシンガンという新しい技術は、第一次世界大戦の交戦のやり方を完全に変えました。

兵士は、塹壕(ざんごう)に入るようになりました。

イギリスの塹壕か、ドイツの塹壕に入ります。その間にあるのは、中間地帯(ノーマンズランド)です。

中間地帯にいると、打たれて殺されました。味方の塹壕から出ると、味方に打たれました。脱走兵だからです。

ソーシャルメディアが対立を生む

現代のマシンガンは、狭い範囲を対象とするソーシャルメディアです。

ここでは、お互いを撃ち合っています。

ツイートや写真、非難、コメントなどで、間違ったことを投稿していると思う人を撃ちます。

そこにあるのは、2つの塹壕で、私たちは、こちらの塹壕か、あちらの塹壕のどちらかにいなければならないのです。

そこには、お互いが会って、善悪について議論することができる中間地帯はありません。

アメリカを車で走っていると、芝生に看板があるのを見かけます。

ある看板には、”Black Lives Matter”(ブラック・ライヴズ・マター)、べつの看板には、”We support the police”(私たちは警察を支持する)とあります。

同じ芝生に、この2つの看板の両方があることはめったにありません。

しかし、人々に聞いてみれば、大半の人は、ブラック・ライヴズ・マター運動も、警察も支持しているでしょう。

同性婚に対する考え方

現在の、二極化した時代に、何が正しくて、何が間違っているのか考えるとき、正義と悪は、どんどん変わっていることを理解しなければなりません。

同性婚を例にとりましょう。

1996年、アメリカの人口の3分の2が同性婚に反対でした。

今は、3分の2がが賛成しています。

180度の転換です。

たくさんの抗議運動や、人々がカミングアウトしたこと、エイズの影響があったから、と言えるでしょう。

しかし、変化の要因の大部分は、ソーシャルメディアがもたらしました。

人々が自宅や居間から出て、テレビ、映画、投稿などを通じて、友人、隣人、家族に「私はゲイです」と言える雰囲気になったのです。

その結果、もっとも保守的な場所の意見も変わりました。

法王の意見も。2010年、枢機卿だった現法王は、同性婚にはっきり反対していました。

その後、法王になり、3年後、彼は、「私にジャッジなどできようか?(”Who am I to judge?” 直訳:ジャッジするとしたら、自分は何様なのだ?)という言葉を発し、現在は、同性婚に賛成しています。

技術はどんどん変わっている

技術が倫理を変えると考えるとき、この時代、技術は驚くべき速さで変わっていることを考えなければなりません。

正義と悪が変わりつつあるから、「私は自分が正しいとわかっている。あなたが、私に全く同意しないときも、部分的に同意しないときも、私に難くせをつけるときも、あなたはしっかり間違っている」という立場をとったら、議論も寛容も進化も学習も生まれません。

増えていくベジタリアン

ベジタリアンの人は、まだそんなに多くありません。

これまで肉の代わりになる、早く用意できて、質がよく、安価なものがなかったからです。

いまは、合成の肉があり、値段も38万ドル(約4142万円)から、2013年は9ドル(約980円)に下がったので、より多くの人が、ベジタリアンか、準ベジタリアンになるでしょう。

高級レストランの調理場にある、血がしたたる肉の並んだ棚の様子も、10年、20年、30年たつうちに、様変わりするでしょう。

謙虚さ

この二極化した時代に、めったに聞かなくなった2つの言葉をよみがえらせたいと思っています。

謙虚さ(humility)と寛容(forgiveness)です。

過去のできごとや、先祖のしたことを判断するとき、もう少し謙虚になってください。

自分がその時代に教育を受けていたら、その時代に生きていたら、間違ったことをたくさんしてしまったでしょう。

過去の人が正しいというわけではないし、過去の人が間違っていたと、私たちは思わないということでもありません。

善悪の判断は、時間とともに変わるから、謙虚になるべきです。

寛容さ

寛容であることは、この時代、とても重要です。

誰かが間違ったことを言った、10年前に何かをやった、カチンときた、100%正しくない。こんな理由で他人を抹消してしまうことはできません。

コミュニティを作るには、自分とは全くものの見方の違う人と話をし、彼らから学ぶ必要があります。

ノーマンズランドを作るかわりに、意見が違う人がいてもいいスペース、共感をもって対応する場所をつくるべきです。

今は、コミュニティを作るときです。国をばらばらにしているときではありません。

////抄訳ここまで

単語の意味など

exponentially  指数関数的に、急激に

indentured servitude  年季奉公

no man’s land  (敵味方陣地間の)中間地帯(いずれの勢力によっても統治されていない領域)、所有者のいない土地

deserter 脱走兵

narrowcast ナローキャスト。限られた視聴者に対する放送。broadcast をもじった言葉。ここでは形容詞として使われています。

“Who am I to judge?” 2013年にローマ法王が言った言葉。

「ある人がゲイで、神を求める善意の持ち主ならば、私にその人をジャッジできるだろうか? いや、できはしない」という内容です。

当時のニュース。

1分

伝統的な聖書の解釈では、同性愛者は罪人となっています(今はもっといろいろな解釈があります)

civil union 同性婚、事実婚

フアン・エンリケスさんの本です。

ほかにも著書があるし、エンリケスさんは、TEDの講演も、過去にいくつかしています。

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技術の進歩と善悪の判断

技術の進歩が、社会的に見てよいこと、悪いことの判断を変える、というのは、そのとおりですね。

ちょっと前に、専業主婦に関するお便りを紹介しました。

私は専業主婦ですが、外で働かないのはだめなんでしょうか。「なぜ働かないの?」と言われるのがプレッシャーです。

「働かないの?」と言われたくない専業主婦の記事を読んで。

「専業主婦はだめ、働くのはあたりまえでしょ。みな働きながら家事をしているよ」という風潮は、社会構造が変わってから生まれたものです。

技術の進歩が社会構造を変えました。

私が子供の頃は、専業主婦のほうが多く、それよりちょっと前の時代は、主婦が働きに出ると、「あの家はお金がない」とか、「子供のことをほったらかしにするのか」といった、ネガティブなことを言われたと思います。

さらにもっと前の大正時代は、職業婦人などと言われ、このときも、肯定的に見る人もいたけれど、風当たりも強かったようです。

特に、男性が批判的だったそうです。「女性が仕事を始めると自分の仕事を奪われそうだ」と警戒した男性が多かったとのこと。

参考記事⇒オフィスで働く女性の元祖!「職業婦人」の歴史に迫る(前編)|大塚商会

ソーシャルメディアという戦場

ネットのソーシャルメディアがノーマンズランドになっているかどうかは、意見が別れるところだと思いますが、「間違っている(自分とは意見が違う、自分の基準からすると悪いことをしている)」と思う相手を、執拗に攻撃する傾向はあるかもしれませんね。

SNSはあまり見ていないのでよくわかりませんが。

攻撃があるのは、匿名だからでしょうね。

さらに、ネットのソーシャルメディアが生まれてから、まだそんなに時間がたっていないから、賢い使い方(社会や自分のためになる使い方)ができない人が多いのだと思います。

SNSで攻撃されて自殺する人や、攻撃して訴えられたり、逮捕される人、アカウントを剥奪されるケース、その他の「事件」が出尽くして、SNS文化が成熟すると、もっと穏やかで、お互いの成長を育むことができる場所になるかもしれません。

ならないかもしれませんが。

いずれにしろ、思い込みをただし、謙虚さと寛容を意識して暮らすことが、自分のためにも、人類の未来のためにもなるでしょう。





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