ページに広告が含まれる場合があります。
高度に加工された食品を食べる危険性を教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、Here’s Why You’re Addicted to Ultra-Processed Food (超加工食品に中毒になってしまう理由はこれです)。
医者の Chris van Tulleken(クリス・ヴァン・トゥレケン) さんのトークです。
超加工食品はくせになる
収録は2023年、長さは14分44秒。日本語字幕はないので抄訳を参考にしてください。
☆TEDの記事の説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
内容はそんなに難しくありません。
食べ続けてしまう食べ物
食べ物依存は、正式な病名ではありませんが、私達は特定の食べ物に、中毒になっています。
ほかの依存症は、質問をして診断します。
その質問を見てみましょう。
肉体的、社会的、心理的に問題を引き起こすが食べ続けてしまうものはあるか?
それらの食べ物を食べるのをやめようとしたが、失敗したことがあるか?
答えがイエスなら、その食べ物が何か考えてみて。銘柄は何か?
それらを食べるとき、自制できないと感じることがあるか?
それらの食べ物を無性に食べたくなることがあるか?
食べて罪悪感を感じるか?
以上の質問がアルコールに関するもので、答えがすべてイエスなら、私は、重度のアルコール依存だと診断するでしょう。
しかし、食べ物依存には大きな問題が2つあります。
1つは、食べ物は依存性のある分子を含んでいないこと。砂糖に中毒性があると考える人はいますが、大半の人は、器に入れた砂糖をスプーンでガツガツ食べたりしませんよね。
まあ、私の3歳の娘はしますが。
一般的に砂糖には中毒性がありません。しかし、食べ物依存にはもっと大きな問題があります。
依存症の治療には、「禁止」という概念がありますが、食べ物を食べるのをやめることはできなません。
だから、食べ物依存という呼び方には問題があります。
しかし、2009年、ブラジルの科学者たちが、偶然、この問題を解決しました。
超加工食品
彼らは、南部と中央アメリカに、食事に関係するひどい病気が流行っていることに気づきました。
これらの症状は、さまざまな食品が起こしていました。どれも、広く販売されているものです。
この写真は、ネッスルの訪問販売です。冷凍食品、パン、ピザ、お菓子、ポテトチップス、麺類を売っています。パラエティに富んだ食品ですが、1つだけ共通点があります。
どれも、高度に加工されているのです。
ブラジルの研究者チームは、これらの食品を超加工食品と名付けました。
超加工食品には、長い定義がついていますが、簡単に見分ける方法があります。
ふつう、キッチンにはないものが1つでも入っていたら、それは超加工食品です。
たとえば、このサンドイッチは超加工食品です。モノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル類が含まれているからです。これは、パンでよく使われている乳化剤です。
キサンタンガやスモークドウォーターと呼ばれる特殊なものも入っています。
こうした食品はたくさん食べられており、UKでは、私たちが消費するカロリーの60%をしめ、多くの子供の消費するカロリーの80%をしめます。
こうした食品が増えるのと同時に、世界的に、食事が関係する病気が増えています。つまり、今や若いうちの死因は、喫煙ではなく、こうした食品による栄養不良のほうが多いのです。
同時にこうした食品に関する研究もたくさんなされています。というのも、緊急事態ですから。
超加工食品が引き起こす病気
今、UKやUSAの5歳の子どもたちは、ほかの国、たとえば北部ヨーロッパ、東ヨーロッパ、スカンジナビアの5歳の子どもたちに比べて太っており、身長は低いのです。
超加工食品をたくさん摂取することには問題があると、研究からはっきりわかっています。
タバコと同じように、身体全体のシステムに影響を与えます。
不安やうつ、痴呆、摂食障害、あらゆる種類のガン、肝臓病、炎症性腸疾患、代謝疾患、心血管疾患、あらゆることが原因の早期死亡、そして、何より、体重の増加と肥満を引き起こすのです。
でも、食べることをやめるのはできそうにありません。
しかし、理論上は、超加工食品を食べないでいられます。
人間がこうした食品を食べるようになったのは、ここ2,30年のことです。
さて、これらの食品は本当に依存性があるのでしょうか?
アイスクリームはヘロインのようなもの、というニュース記事を見ることがあります。多くの人は、「それは大げさだ」と思うでしょう。でも、私はこれについて考えてみました。
依存性のあるものの特徴
コカインやアルコールを摂取した人のうち、10%~20%が依存症になります。
データによれば、超加工食品に依存している人は大人の14%ほどです。
子供は12%。しかも、中毒を起こす危険因子は、コカイン、アルコール、タバコ、超加工食品すべて同じです。
つまり、ストレス、貧困、トラウマです。
超加工食品に依存している人々の脳をスキャンして調べると、薬やタバコに依存している時と同じ部分が活性化されます。
だから、たくさん共通点があるんです。
実際に実験に参加した
これについてもっと知るために、私は、ある実験に参加しました。今、ユニバーシィティカレッジロンドンで、私が同僚と一緒にやっているリサーチにおける、はじめての大々的な実験です。
摂取するカロリーのうち80%を超加工食品から取るという実験。これは、英国のティーンエイジャーのふつうの食事です。
こうした食事をした結果何が起こるか調べ、今後の研究の指針にしました。
私は、かなりわくわくしていました。私のように栄養が専門の医者で、メディアで栄養について話している人間が、こうした食品を食べることはないですから。
超加工食品のシリアルを家に持ち帰ったら、娘が飛びつきました。Cocoa Monkey(ココア・モンキー、シリアルの箱に描いてあるキャラクター)を初めて見た娘は、このシリアルを「ミッキーマウスシリアル」と呼びました。
そのときちょっと不安になりました。でも、箱をよく見ると、このシリアルは子供にとって安全でないだけでなく、子どもたちがターゲットの商品でした。
箱にはサルがついていて、さまざまな健康アピールをする数字が並んでいました。
でも、ちょっと変なんですよね。大人1人分のポーションとして30グラム分の栄養価が書いてあるんです。
シリアル30グラムって、これっぽっちです。まあ、このポーションだけ食べていれば、問題はないでしょう。
どんどん食べてしまう
娘とシリアルを食べましたが、娘は一気に、3.5ポーション分食べました。
箱のサルを見ながら、ほぼトランス状態で。
驚くべき体験でした。この食品は、「ちょっと、もうおなかいっぱいなんだけど。もうカロリーは十分とったよ」と身体が示す能力を、すっとばしてしまうように作られた食品なんです。
そして、消費スピードはとても重要です。
一般に、超加工食品はとても柔らかく、エネルギーが密で、塩、砂糖、脂肪がたくさん含まれ、水分はあまりありません。だから、すぐに食べてしまいます。
消費するスピードは、ほかの依存性のあるものにとっても非常に重要な要素です。
早く消費すれば、報酬系を活性化する分子、この場合、脂肪と砂糖が早く脳に届きます。
ニコチンガムとタバコを比べると、同じニコチンの量を含んでいても、タバコのほうが、中毒性が高いです。
というか、ニコチンガムには依存性がないので、タバコの依存を治すために使われます。
消費スピードの速さとエネルギー密度が高いことは、超加工食品も、ほかの依存性のあるものすべてにも共通しているんです。
危険な食品添加物
もう一つ、超加工食品が心配な点があります。それは食品添加物です。
食品添加物の大半は安全ですが、不安症を引き起こす添加物がたくさんあります。
UKでは2000以上あり、USAでは、リストがありませんが、5000ほどでしょう。
あるデータによれば、15000以上の添加物が食品に含まれています。
添加物を使う理由の1つは、お金の節約です。イチゴは高価ですが、少量のエチル、メチル、フェノール、グリコラートは、さしてお金がかからず、過剰な消費につながるでしょう。
こうした食品添加物の組み合わせが、マイクロバイオーム(微生物)を変化させるというエビデンスがどんどん集まっています。
その結果、過剰に食べ、体重が増え、炎症も増えます。
食品添加物は、食べ物の大きな問題の1つですが、依存を引き起こす可能性もあります。
全員でしている人体実験
要するに、私達は、志願していないのに、実験に参加しているんです。
新しい分子や分子の組み合わせが入っている食品を食べ、ずっとその影響が続きます。
その結果、得するのは、一握りの会社を持っている限られた人々だけです。
より依存性の高い食べ物が販売されている
では、どうして食品はこんなふうになってしまったのか?
リサーチしながら、食品業界に携わる大勢の人と話をし、どんなふうに食品が開発されるかある程度わかりました。
それは、A-Bテストと呼ばれるプロセスです。
ここに中身が少しだけ違うシリアルを2つ持ってきました。乳化剤が少しだけ違います。
このシリアルを人々に食べてもらって、食べるスピードと量を調べました。
Bの箱に入っているシリアルを食べるスピードが早く、量も多かったのですが、このシリアルが、店頭に並んでいます。
翌月、今度はA、C、Dの箱に入っているシリアルでテストしました。
どれも、過剰に消費するようデザインされたものです。食品は、少数のメーカーが作っているからこうなるんです。
タバコ産業と食品産業のつながり
メーカーは、会社の持ち主である、機関投資家、たとえば年金基金やヘッジファンドに、果たすべき責任を負っています。株の値段や配当金を増やすために、できるだけたくさんの商品を売らなければならないのです。
このやり方はタバコ産業に似ていると言う人もいますが、あながち間違っていません。
食品産業は、長い間、タバコ産業でもあったのですから。1980年代に、R.J.レイノルズはナビスコを買収し、フィリップモリスはゼネラルフーズとクラフトを買収し、世界最大の食品会社を設立しました。
こうしたメーカーは、これまで依存性の高いタバコを売るために使ってきた味や販売促進の技術を使って、依存性の高い食品を売っています。
フィリップ・モリスには、ロイヤルティプログラムがあります。このメーカーの商品を消費すれば、マイルを得られ、このマイルでカウボーイのグッズを買うことができます。
子どもたちむけに、クール・エイド・マンというロイヤルティプログラムも作っています。クールエイドを買えば買うほどポイントがたまり、子どもたちは景品を手に入れられます。
企業は、自社の食品に依存性があるとよく知っているのです。
Kraveというシリアルがありますが、どの企業も、依存性に基づいた売り方をしています。
食品産業を規制するために
食品産業を規制するには、タバコ産業を制御する方法を使うべきです。
最初にすべきことは、タバコ産業の制御で成功したように、お金の流れを遮断すること。
食品産業にお金を流すのは、問題だとわかってもらわなければなりません。
医者、科学者、政策立案者が、食品会社と金銭的なつながりを持つのを止めなければなりません。
シリアルの箱にはトラの絵ではなく、警告のサインをつけるべきです。
これは、メキシコのシリアルの箱です。メキシコとチリでは、警告のサインがのっていて、箱にキャラクターはついていません。子どもたちは、保護者に、この食品を買わないでほしいと言っています。
私が両親にタバコを吸うのをやめてと言ったように。
では、皆さんには何ができるでしょうか? この状態にするには、何十年もかかるし、私が生きている間に実現しないでしょう。でも、解決策があります。
食べているものと向き合う
リサーチしている途中、ブラジルの同僚に電話したら、「超加工食品は食品ではなく、食用できる物質を工業的に生産したものよ」と言いました。
この電話のあと、好物を食べようとしたら、食べられなかったんです。同僚は、私の脳の中のスイッチを切り替えました。「やめられない」から「おぞましい」へと。
中毒性のある製品を食べるのを禁じるのではなく、意識的に向き合えば、中毒から嫌悪に気持ちが変わるという研究があります。
だから、超加工食品をこれまでどおり食べてください。どの食品もそうなのだから、そうするしかありません。特に、恵まれない状況にあるときは、そういう食品をたくさん食べることになります。
だから、食べてください。でも、しっかり箱の表示や、原材料を読み、皿にのせて、見て、触って、こう自問してください。
「もし、食べ物が愛と栄養を与えるために作られるものだとしたら、これは食べ物だろうか? それとも、それは、自分の健康を犠牲にして、他人にお金を与えるために設計された工業製品なのか?」
もし、食べ続けてしまい、罪悪感を感じたら、こうした食品はすべて、食べ続けるように慎重に設計されていることを思い出してください。
食べてしまうのはあなたのせいではなく、食品のせいなのです。
//// 抄訳ここまで ////
補足
royalty program ロイヤルティプログラム、企業が自社の商品やサービスに愛着を感じてもらい、顧客生産価値(Life Time Value)をあげるためのマーケティングの手法。
トゥレケン先生の著書です。
彼は、ブロードキャスターでもあるので、YouTubeにいくつか動画があります。これはそのうちの1つで、食品の80%を超加工食品にした実験の結果です。
9分12秒。
半月ぐらいで、気分が悪くなっている様子が見て取れます。
1ヶ月で体重が6.5キロ増えただけでなく、脳に新しい神経回路ができていました。怖い結果ですね。
最後に、脳が成長過程にある子どもの場合、どうなってしまうんだろうと言っていましたが、もろに影響を受けると思います。
食品に関するほかのプレゼン
なぜ私たちは健康によくない食べ物を食べるのをやめることができないのか?(TED)
子供たちに食育をして肥満と戦おう~ジェイミー・オリヴァーに学ぶ(TED)
食べるものより、食べ方が重要:ちゃんと栄養を吸収する秘訣(TED)
加工食品を控えるすすめ
ジャンクフードや高度に加工された食品はあまり食べないほうが健康にいいというのは誰でも知っています。
でも、こうした食品をコンスタントに食べていると、脳の神経回路が変化することは、あまり知られていないかもしれません。
ジャンクフードに含まれている大量の脂肪、糖分、塩分が、脳内の報酬系を刺激するので、知らないうちにそれを食べることが癖になります。
食べているときやその直後は幸せですが、多くの場合、そのあと、落ち込みますよね?
「あ~、また食べてしまった」と罪悪感を抱いたり。
「食べる⇒ハッピー⇒落ち込む」というパターンを繰り返すのは、「買う⇒ハッピー⇒落ち込む(ついでに断捨離の手間が発生)」という買い物依存と同じで、かなり自分のリソースを無駄遣いすることだと私は考えています。
感情や思考パターンは、突き詰めて考えれば、脳内で何が起きているかによって決まります。
もし、よけいなストレスをかかえこまず、問題が起きても前向きに解決しながら、ハッピーに暮らしたいなら、ジャンクフードや超加工食品を摂取して、手軽に快楽を感じる方法に頼らないほうがいいと思います。
これを言いたくて、今回、この動画を選びました。
今年になって、悩みの多い人や、やたらネガティブに考える人に、、おすすめの活動を紹介しています。
1.気持ちを書き出す
2.健康にいい生活をする
3.読書する⇒なぜ読書が重要なのか?:リタ・カーター(TED)
この3つをおすすめしていますが、2番の「健康にいい生活」のところで、睡眠に加えて、超加工食品を控えることをしてみてください。
半年、1年と続けていくうちに、もっと気持ちをコントロールできるようになると思います。
私が、砂糖をやめてから、今年で10年目ですが、落ち込むことがあっても、わりにすぐ復活します。
まあ、もともとあまり感情のアップダウンがあるほうではなかったのですが、砂糖や小麦粉、加工食品を控えるようになってから、ストレスが少なくなりました。
よく、「食べたいものも食べないで、長生きするなんてナンセンス」という声を聞きます。
でも、その「食べたいもの」って、自分が心から食べたいわけではなく、食品に含まれているものや、マーケティングなどで、食べたい気にさせられているだけではないでしょうか?
何を食べようと食べまいと、病気になるときにはなるし、死ぬ時は死にます。
しかし、今の生活を充実させたいとき、超加工食品は味方ではありません。