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甘いものの食べすぎは体によくないとわかっているものの、なんだかんだと理由をつけて大量摂取を続ける人に見てほしいTEDの動画を紹介します。
タイトルは、This is your brain on sugar (砂糖を摂ると脳の中で何が起きるか)。プレゼンターは、神経科学者のエイミー・ライヒェルト(Amy Reichelt)さんです。
砂糖と脳の関係:TEDの說明
As a neuroscientist, Amy is fascinated with how our brains control our behaviours in our dynamic and changing world. Things we eat, like junk food also affect our brain. Dopamine is released when we eat junk foods, this makes us feel good and crave more, but we risk becoming sugar dependant.
神経科学者として、エイミーは、変化のはげしい社会において、脳がどんなふうに人の行動をコントールするかに強い関心を持っています。
私たちが食べるもの、たとえばジャンクフードは、脳に影響を与えます。
ジャンクフードを食べるとドーパミンが放出され、気分がよくなり、さらに食べたくなります。しかし、砂糖に依存する危険もあります。
収録は2016年の5月。オーストラリアのシドニーで行われたTEDxYouthでの講演です。大人向けのTEDより、内容は簡単です。
動画の長さは10分48秒。英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
★TEDの說明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ジャンクフードを食べると気分がよくなるが
私は、神経科学者で、現代社会で、脳がどのように人の行動をコントロールするかに興味があります。最近は、私たちをとりまく環境だけでなく、体内にとりこむ食物についても研究しています。
誰もがジャンクフードを食べます。私も、今週、ピザを2回食べました。
ジャンクフードがよくないことを、皆、知っていますが、食べ続けます。おいしいし、どこにでもあるし、抵抗するのはむずかしいですね。
オーストラリアの若者の4分の1が肥満です。私は、ジャンクフードの体に対する影響だけでなく、脳への影響も調べています。
こうした食品を食べると、脳の報酬系が活性化され、ドーパミンという化学物質が放出されます。
ドーパミンが出ると気分がよくなります。ジャンクフードを食べ過ぎると、脳は、快の体験で圧倒されますが、うまく順応します。
ドーパミンの受容体がさらに作られるので、前と同じ快感を得るためには、よりたくさんのジャンクフードを食べなければなりません。
脳は、こうした食品を追い求めようとしますが、耐性ができるため、さらに多くのジャンクフードを食べてしまうのです。
こうして人は砂糖中毒になります。
ドーパミンは、ジャンクなものは自分にとっていいものだと覚え込ませます。私たちはドーパミンが大好きだから、それを出すものに意識が向きます。目につくのです。
だから、朝、コーヒーを飲む時、ドーナツを見たら、抵抗できません。「ああ、健康的な食事だ」なんて思うわけです。
ジャンクフードは人の行動を変える
脳には、私たちの衝動をコントロールする部位もあります。前頭前皮質(prefrontal cortex)です。
ここは、人の認知を司っています。行動をコントロールするのです。
この部位は、脳の中でもっとも最後に成熟します。20代になって、ようやく発達が終わるのです。
環境のせいで肥満になってしまう若者は、脳が発達しきっていないから、ジャンクなものに抵抗するのが難しいのです。
私はラット(実験用ネズミ)を使って研究しています。ラットも人と同様にジャンクフードが好きです。
ラットは人と同じ脳の部位と神経系を持っています。だからラットを使って、食べ物が人の行動にどんな影響を与えるか調べることができます。
砂糖を取りすぎるとルールに従えない
私のラボでは、青春期(adolescence 13~16歳あたり)は、ジャンクフードの食べすぎによって、とくに、認知障害が進んでしまうと考えています。
そこで、私は10代のネズミに、砂糖のたくさん入った液体を与えています。砂糖の量でいえば、コカ・コーラの缶1つと同じぐらいの液体です。これを青春期を通じて、与え続けます。
そして、ラットに、脳を使う必要のあるテストを受けませます。認知のコントロール、つまり、決断したり、規則に従う必要のあるテストです。
実験してみたところ、甘い液体を与えられていたラットは、健康な食事をしていたラットに比べて、ルールを守ることができません。
音や視覚的なシグナルにしたがって、レバーを押す実験で、うまくできないのです。
どんどん肥満が増えている社会において、「ドーナツを食べてはいけない」と言われているのに、肥満の人たちはそのルールを守れず、食べ過ぎるのです。
記憶にも悪影響がある
このような食事は、行動のコントロールだけでなく、記憶を司る脳の活動にも影響を与えます。
海馬(hippocampus)に影響します。
ジャンクなものを食べすぎると脳の中に炎症が起きます。これを神経炎症(neuroinflammation)と呼びます。
アレルギーのある食べ物を食べると、発疹ができるのと似ています。
同じことが、脳の記憶を司る場所で起きるのです。
すると、ものごとを学んだり、記憶したりすることがうまくできません。炎症のせいで、ニューロン、つまり脳の中の細胞が、うまく機能しないからです。
ジャンクフードを大量に食べる人は、健康的な食事をしている人に比べて、記憶力を調べるテストでの成績がよくありません。
このリサーチでは、ジャンクなものを食べている人は、肥満ではありません。彼らは、健康的な食事をしている人と、体重は変わりません。
海馬と満腹感の関係
海馬に損傷がある人は、いつもおなかがすいていると感じるというリサーチもあります。これを読んだとき、私は、「たぶん、この人たちは、食べたことを覚えていられないのだろう」と思いました。
海馬は、腸から「満腹になった」というシグナルを受け取るのに、不可欠な部位です。だから、ジャンクなものを食べすぎると、海馬の機能が衰えて、満腹感を得られず、ますます食べて、肥満が進むのです。
脳の機能が衰えると、神経可塑性(neuroplasticity)が損なわれます。つまり、記憶を作るために、ニューロンが活性化してつながることがうまくできなくなるのです。
新しい神経が生まれにくくなる
ニューロンは、生涯を通じて、脳の中で生まれます。特に、海馬の中で。この現象を神経発生(neurogenesis)と呼びます。新しくできたニューロンはとりわけ可塑性があり、簡単に記憶を作るので特に重要です。
げっ歯類(rodent、ネズミ、ウサギ、リスなど)を使った実験から、脂肪分の多い食事をしている人々は、神経発生の量がより少ないとわかっています。
同時に、メンタルヘルスに問題がある人、たとえば、うつの人は、やはり、神経発生の量が少ないのです。
これも、べつの負のサイクルを引き起こします。
ジャンクフードはおいしく、食べればドーパミンが分泌され、気分がよくなります。
だから人は気持ちをいやすために、こうした食品を食べます。しかし、それは同時に、神経発生を減らす行為であり、長期的にみると、気分が落ち込むのです。
大事なのは、体内に何を取り込むか、自分の食べたものが、体と脳にどんな影響を与えるのか、意識的になることです。
若い人にとっては、特にこれは重要です。なぜなら、この時期は、世界のことや、新しい知識や概念を学ぶ大切な時だからです。
ストレスを感じると、「ピザやドーナツを食べて、気分をよくしよう、試験勉強は明日の朝にしよう」と思うかもしれません。しかし、こうすることは、記憶するためには理想的ではありません。
脳にいい影響のある食品
食べ物の影響を調べるリサーチから、よい影響を与えるものもわかっています。
つまり、健康的な食品を食べればいいのです。
果物や野菜はとてもいい食品です。脳の炎症を抑える抗酸化物質(antioxidant)が含まれています。えます。
アヴォカドと脂肪分の多い魚もよい食品です。オメガ3がたくさん入っているので、神経発生を増やすことができます。
また、活動的なライフスタイルもおすすめです。外に出て走り回ることは、余分なカロリーを燃やして、体重を減らすのに効果があるだけでなく、脳における、神経可塑性のメカニズムを、底上げします。
もう2度とジャンクフードを食べてはいけない、とは言いません。みんな、食べます。ですが、こうした食品を、脳がそうするように、報酬(ごほうび)として扱ってください。
ふだんふつうに食べるものとしてではなく。
砂糖や肥満に関係のあるほかのプレゼン
なぜ人はいろいろなものに依存してしまうのか? 依存する原因を知って克服する。
体に悪くないお菓子を製造、販売した少年に学ぶ、世界を変える方法(TED)
子供たちに食育をして肥満と戦おう~ジェイミー・オリヴァーに学ぶ(TED)
安易にドーパミンは出さないほうがいいと思う
もともとドーパミンは、危険や苦労が伴う状況で、何かをやりとげたときに、「よかった、よくがんばったね」という報酬として、出るようにデザインされていると思います。
種の保存に役立つことをしたときに、ほうびとして出るわけです。
ところが、いまは、特に苦労しなくても、人類のためによいことをしなくても、薬物で、脳を刺激してやればドーパミンが出ます。
薬物の原材料は、自然の中にあるものです。ケシの実やコカ(植物)の葉。カフェインの材料は、コーヒー豆や茶葉。
昔は、コカの葉っぱをのんびりかじったり、煎じて飲み、薬や強壮剤にしていたのですが、今は、とことんまで精製して、薬物にしています。
精製された砂糖もこれと同じです。
甘いものを食べると、「カロリーをとってよかった、体のためによいことをしたね」と報酬として出ていたドーパミンが、たんにお菓子をぱくぱく食べただけで、どんどん出てしまい、中毒になるのです。
買い物も同様です。
昔は、新しい物を手にするためには、長い時間と幾多の困難が伴ったでしょう。
ところが、今は、毎日のように、簡単に買い物ができます。お金がなくても、カードをスワイプするだけで。
するとドーパミンが出ますが、出しすぎるので、買い物中毒になるのです。
買い物で気分があがるのはドーパミンのせい。この仕組みを知って無駄遣いを防ぐ。
人をとりこにしてどんどん消費させることにより、利潤を追求する人たちがたくさんいるので、あまりお手軽にドーパミンを出さないほうがいいですよ。
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かなり厳密に甘いものを排除するようになってから、600日以上たちました。
そのきっかけ⇒砂糖断ちをするとどんな効果があるのか? 筆子の場合。
甘いものを控えて久しいのですが、特に記憶力があがったとは思いませんし、頭の中でニューロンがたくさん生まれている実感もありません。
しかし、イライラや気分の落ち込みはないので(たまたま私は運がよく、幸せな環境にいるだけかもしれませんが)、心がざわつくことが多い人は、食生活から改善するといいと思います。
砂糖をやめても失うものなんて何もないですからね。
まあ、人付き合いが悪いとか、変わり者だと言われる場面もあるかもしれませんが、人との会食ではふつうに食べておいて、ふだんはセーブするだけでもずいぶん違います。