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小売業を営んでいる人、同時に、買い物習慣を見直したい人に役立つTEDトークを紹介します。
タイトルは、How stores track your shopping behavior(店がどのようにあなたのショッピング活動をトラックしているか?)
ビジネスの教授で、顧客インターフェース研究所の創設者兼ディレクターである Ray Burke(レイ・バーク)さんの講演です。
店が調べている顧客の行動
10年前のトークですが、小売店がどのように、買い物客の行動を分析し、よりよい買い物体験を提供するのに活かしていることがわかります。
動画の長さは16分14秒。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの記事の説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
今はもっと技術が進んでいるので、さらに詳細なデータが取られているでしょうね。
はじめての仕事はカメラ店
最初に、私の経歴と、私が買い物客の行動を観察することに興味をもったきっかけをお話しします。
最初の職場はカメラ店で、16歳のとき、セールスパーソンとして雇われました。
私は、写真も人と関わることも好きだったので、これは夢の仕事でした。
でも、この店の店員は、コミッション制で働いていて、とても競争が激しかったんです。
店員は、店に入ってきた客のうち、どの人が、たくさん買ってくれるか、ごく自然に観察していました。
客にはさまざまなタイプの人がいます。
ただ見ているだけの客は、時間をかけてカメラをたくさん見せても、結局近所のディスカウントストアに行きます。
フィルムを買いに来たり、現像しに来たりする客もいます。
でも、大きな買い物をする意図を持ってやってくる客もいます。
結婚式、休暇、バースデーパーティなどのイベントを控えている人たちです。
客の意図を見抜く
あるとき、古いトラックが店の前に止まりました。トラックの荷台はガラクタでいっぱい。
このトラックから、汚い身なりの男性が降りて、店に入ってきました。
ほかの店員は彼を避けましたが、私はこの男性に買う気があると思ったし、実際、彼は即座にいいカメラが置いてある陳列棚に目をやったので、私は彼のそばに行き、話しかけました。
実は、この男性と奥さんの間に、もうすぐ子供が生まれる予定でした。彼はいい写真を撮りたいと思っており、カメラを買うためにずっと貯金していたんです。
結局、この客はいいカメラと道具を買いました。
この体験から、買い物客をしっかり観察することが重要だと学んだんです。
技術を使って買い物客を観察する
今でも、私は買い物客をよく見ています。ただ、もっと洗練されたツールを使って。
たとえば、カスタマーインターフェース研究所では、買い物体験をシミュレーションできるツールを使っています。
実際に店のモデルを組み立て、顧客の目の動きをトラッキングできるツールもあります。
店の外観をバーチャルリアリティで作るツールもあり、大型店舗、スーパー、専門店をシミュレーションしています。
これは、グルメ・フードとワインの店の例です。
研究所のメリットは、さまざまな要素を調整できることですが、ときには実際に店舗に出向いて、客を観察します。
店に盗難防止のためのセキュリティカメラがあるのをご存知ですよね? このカメラからデータを収集しています。
3Dイメージングができるカメラで、客の行動をチェックすることもします。
客の立っている場所だけでなく、どこに手を伸ばし、どこに顔を向け、どんな表情をしているかも測定しているし、このデータを分析するソフトもあります。
ウォール・ストリート・ジャーナルやニューヨーク・タイムズでこうした技術のことを読むことがあるでしょう。
記事には、「政府が私達の行動を監視している」なんていうセンセーショナルなタイトルがついています。つまり、否定的に書かれていますよね。
だから、客の行動の観察に、どうしてそんなにエネルギーを注ぐのか疑問に思うかもしれません。とくに、顧客のプライバシーを守るべきですから。
目的は客の買い物体験の向上
なぜ、客の行動を観察するかというと、そうすることで、客のニーズや欲望、期待を推測できるからです。
買い物を促進するポイント、逆に阻害するポイントがわかります。そうすれば、買い物体験をもっといいものにすることができます。
つまり、ゴールは、買い物体験を最適なものにすることです。
地元のマーシュスーパーマーケットチェーンで行ったリサーチの結果をお見せします。
マーシュは、技術を使うことにかけては、とても革新的です。
40年前、マーシュは小売店では初めて、UPCスキャナーを使いました。
いつも客が何を買うか?
UPCスキャナーはレジ処理の効率化に使われるものですが、このスキャナーから得られる情報は、消費者リサーチにも使えます。
あるレシートを見ると、この人はスライスしたターキー、トマト、桃を買ったことがわかります。
この客は、多くの顧客同様、ロイヤルティカード(Loyalty Card 会員カード/ポイントカード)を使っているので、時期が違うすべての買い物をトラッキングできます。
1週間後、この客は、またターキー、桃、トマトを買っています。
ロイヤルティ(忠誠心)を構築するためには、この客がいつも自分の店で買ってくれることにお礼したいですよね。そんなとき、カードにあるコンタクト情報が役立ちます。
この客には、桃に関する広告や特典情報を含む郵便物を送れば喜ばれるでしょう。クーポンやレシピなど。
実は、皆さんが買うもののうち85%は、毎回同じなんです。
購買者のプロフィールがわかる
個別の商品に対する客の好みだけでなく、ほかのこともわかります。
たとえば、この客はウォールマートでダイエットペプシ、カロリーの低いプロテインバー、ダイエット商品を買っているので、カロリーを気にしているとわかります。
でも、同時に、アイスクリームやチートス(コーンベースのチーズ風味スナック)なんかも買っています。もしかしたら、子供のいる家庭なのかもしれません。
この客のウォールマートでの数日後の買い物を調べてみると、野球カードを買っているので、やはり子供がいるようです。少なくとも1人は。
犬のおやつも買っているので、犬を飼っていることもわかります。
数日後、この客は釣り道具を買ったので、釣りも好きなようです。船に使うオイルも買っているので、ボートを持っています。
このように、買い物の記録を見れば、その世帯の購買者としてのプロフィールがわかります。
店内での行動を分析する
人々の求めているものを知るだけでは不十分です。
皆が、店内でどんなふうに行動しているかも知りたいところです。
そこで店内にいる客に小さなカメラのついた特別なメガネをかけてもらい、彼らが店内を移動しながら、何を見ているのか調べました。
客の行動は速いです。頭の中に買いたいものがあり、その場所に行き、探してつかむ。そして次の目当ての商品のところに行きます。
買い物客は、店内の床から4フィート(約122センチ)のところを水平にざっと見ていきます。
これは客の視線が向いた所を測定したヒートマップです。
客は、セールなど、特別なディスプレイに目を向けます。実際、ふつうの商品よりこのような商品に2~4倍注意を向けています。
一方、トマトやドーナツを買うときは、陳列棚全体を見ています。
商品を速く手に取れるように
客が求めているものを、すぐ探せるようにするために、棚のディスプレイを変えて、何度かシミュレーションしました。
客が目当てのものを見つけるまでの時間を測りました。
たとえば、「フロスティッドチェリオ」という名前のシリアルを見つけるのに、このシリアルの名前しか知らないとき、シリアルの棚から見つけるのに、9.4秒かかります。
一方、箱の外観がわかっているときは、2・5秒で見つけられます。
ゴールデングラハム(シリアル)の場合も、箱の絵を知っているなら、5.7秒で見つけられます。
棚には似たようなパッケージの商品が複数あるので、視覚的に目立っているものはもっと速く見つけることができます。
それぞれの製品に使うスペースを調整すると、商品を見つけやすくなります。
同じ商品を2つ並べておけばより見つけやすいです。並べる商品の数を増やせばもっと速く見つけられます。
棚の中で商品がまっすぐ並んでいるかどうかも、商品の見つけ安さに影響があります。
土曜の午後、すごく店が混んでいるとき、ゴールデングラハムを買いに来た人は、8.2秒でその商品を見つけますが、棚の中を整理してきれいに並べ直せば、5.7秒で見つけられます。
こんなふうに、売り手側がちょっとしたことをするだけで、客はより簡単に商品を見つけることができます。
衣料品店でのケーススタディ
次は衣料品店の例を紹介します。ある店では、フロアの半分をメンズ製品に使っていました。
買い物客のうち男性は30%で、セール商品のうち20%がメンズ製品です。
この店の天井に全景を見渡せるカメラを設置して人々の行動を調べました。
男性は、店内に入ると、まず、新製品がディスプレイされている目立つ場所に行きます。
その後、店内の奥のほうに歩いていきます。ここにはセール品が置いてありますが、ここで何も見つけられないと、お客は店を出ていきます。
この場合、どうやってお客さんを店の真ん中に寄るようにできるでしょうか?
いくつか試してみました。
まず、売上のデータを見て、お客さんのニーズ、男性客が実際に買っているもの、店内でさわっているものを調べました。
そして、「スタイルセンター」というコーナーを作りました。
客の様子を調べたところ、手に取った商品を折りたたんで戻そうとするとき、さっとできないと、買い物する気をなくしていることがわかりました。
こうしたデータを利用して、品揃えも価格も変えず、買い物客の頭の中にあるものと、店内で手に取れるものをうまく結びつけました。
ナビゲーションを補助するもの
革新的な小売業者は、今日お話したように、顧客体験を向上させる努力をしています。
小売業者は、客がスムーズに商品を見つけられるようにしなければなりません。
客が目的の商品を見つけることができなければ、その商品は販売されていないのと同じです。
フランスのオーシャンでは、エスカレーターで店舗の入口に上がるまでの時間に読める、色分けしたシンプルな地図を提供しています。
この薬局では、大きな看板を使って、レジの場所がはっきりわかるようにしています。
さらに、商品をしっかり見せなければなりません。商品は目標となるもの。客を店に引き込み、買い物体験を活性化させるものです。
革新的な商品ディスプレイ
ディズニーのある店では、セロファンに包んである小さなフィギュアのセロファンをはずして、プレキシガラスのディスプレイケースに展示しただけで、週40個売れていたのが、900個に伸びました。
消費者に、購入するとき必要な情報を提供する必要もあります。
アボガドを買うとき、私が気にするのは熟しているかどうかだけですが、この店では、その情報を提供しています。
新製品は小売業のライフラインなので、目立たせなければなりません。
こちらはラスベガスのファッションモールですが、モーターで動くランウェイがあり、地面からせり上がるようになっています。
ここで、1日に3回、ファッションショーが開催され、モデルたちはモール内の店舗で販売されている衣料品を着て登場します。
この仕組みにより、売上を最大30%まで向上させることができています。
客の信頼を失わない
買いやすさを向上させることは、関係者全員に利益があります。
メーカーにとっては、自社製品の利点や価値を店内でしっかり伝えることができるし、小売業者は、便利で楽しい買い物体験を提供でき、その体験に満足した客が何度も利用してくれます。
消費者にとっては、探している商品を見つけられるから、買い物体験がよくなります。
今後も、さまざまな技術によって、買い物客に関する詳細で包括的なデータを取得できるでしょう。
企業はこのデータが、消費者と小売店のもので、お互いの相互利益のためだけに使用されるべきだと認識しなければなりません。
消費者のプライバシーを尊重しないと、客の信頼を失い、関係が損なわれます。
客との関係こそが、ビジネスの成功の基盤です。
//// 抄訳終わり ////
買い物に関するほかのプレゼン
ショッピングに関するほかのプレゼンを紹介した過去記事を5つリンクします。
ニューロマーケティングとは?:消費者の決断に関する新しい科学(TED)
我々は本当に自分で決めているのか?ダン・アリエリーに学ぶ、選択のミス(TED)
物を買うのをやめた私の、買わないための戦略とシンプルなルール(TED)
買い物のやり方を意識すると生活がシンプルになる
バークさんの講演は、実際に小売店を経営している人に役立ちますが、シンプルライフを目指している人、特に買い物習慣を変えたい人にも有益です。
1.購買パターンを見直す
データによると、人は、毎週ほぼ同じものを買っています。つまり、買い物にはパターンがあるので、自分のパターンを把握して、必要に応じて変えれば、余計な買い物を減らせます。
2.レシートからデータを取る
動画で強調されている購買データの活用方法は、自分自身にも応用できます。レシートをしっかり確認したり、買い物を記録したりして、「よく買っているもの」や「使わないのに買っているもの」を調べれば、無駄な買い物があぶり出されます。
3.マーケティングに流されない
このトークでは、商品の配置や見た目、プロモーションが購買行動を誘導していると説明しています。この知識を活用して、自分が本当に必要なものと、マーケティングに影響されているものをしっかり区別すれば、不要なものを買うことが減るでしょう。
4.整理整頓は決断力を高める
棚を整えるだけで商品が見つけやすくなるのと同様に、家の中を整理整頓すれば、今、必要なものをすぐに見つけることができます。
レイさんは、「客が見つけられない商品はその店で売っていないのと同じこと」と言っていますが、これは「すぐに見つけられないアイテムは持っていないのと同じこと」と言い換えることができます。
つまり、いくらものをたくさん持っていても、どこに何があるのかわからなかったら、持っている意味がありません。
5.小さなことが大きな効果を生む
トークでは、商品の陳列や折りたたみ方の工夫で売上が大きく変わった例が紹介されています。
私たちの生活でも小さな工夫(例:ものの置き方や日常のルール変更)で、ストレスを減らし、生活をシンプルにすることが可能です。
レイさんのトークから、私はこんなことを学びましたが、あなたはどんなことに気づきましたか?
トークから得た洞察をぜひ日常生活に活かしてください。