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何度か聞いている『minimalism 〜30歳からはじめるミニマル・ライフ』という本をご紹介します。
日本語版は副題として「30歳からはじめるミニマル・ライフ」がついています。
この本が日本で最初に出たとき、去年の春頃は、この副題はついてなかったと思います。「30歳」とターゲットをしぼったほうが売れると出版社は思ったのかもしれないですね。
minimalism 〜30歳からはじめるミニマル・ライフ
オリジナル版の正式なタイトルは
Minimalism: Live a Meaningful Life
ミニマリズム:意味のある人生を生きること
筆子はオーディオブックで聞きました。断捨離を心がけているので、選択肢があれば、本は電子書籍かオーディオブックにしています。
全部で3時間21分なので、文字にしたらとても短いと思います。
以前、やはりオーディオブックで聞いた、「フランス人は10着しか服を持たない」も短いと思いましたが、こちらは5時間ありました。
関連⇒『フランス人は10着しか服を持たない』から学んだ節約術
ジョシュアとライアン~2人のミニマリスト
この本の著者はジョシュア・フィールズ・ミルバーンとライアン・ニコデマス。2人はグレード5(小学校5年)、10歳のときからの友だちです。
2人とも、あまり幸福な子供時代を送っておらず、broken family (こわれた家庭) dysfunctional family (機能していない家庭)で育ちました。
いつも貧しく、愛情に飢えていたと思います。そのせいかどうか、2人は「お金さえあれば、幸せになれる」と信じて生きてきました。
2人とも、人一倍働いて、28歳のときには、シックスフィギア、つまり年収が6桁以上の100,000ドルを超えていました。10万ドルは今の換算でおよそ1200万円です。
2人は高校を出ただけなので、医者とかパイロットではありません。仕事がきつかったそうなので、「エンジニアではなかったのか」と筆子は想像しています。
お金はいっぱいありましたが、心の奥底では幸せではなく、昔の筆子のように、物を買うことで「幸せ」を得ようとしていました。
ただし、筆子とは収入が段違いなので、その物のためこみ具合やぜいたく加減はもっとすごいです。
2人は大きな家、車、ぜいたくな休暇、さまざまなガジェットなど、稼ぎ以上にクレジットカードで買っていました。一見アメリカンドリームを生きているかのようでしたが、カードの借金がたくさんあり、心の中はストレスや心配事でいっぱいだったのです。
本を読む限り、「幸せとはこういうものだ」というメディア(広告)の言うことや、周囲の尺度に合わせていたみたいです。
そんな2人がミニマリズムという生き方を知り、30歳になる前に、持ち物をぐーんと減らしてみたら、あら不思議、なんと前より幸せや充実感、生きる歓びを感じられるようになったのです。
30歳のとき会社をやめた2人。その後はミニマリズムという生き方について本を書いたり、サイトで情報を発信したり、講演したりしています。
本はいずれもベストセラー。ジョシュアかライアンのどっちか忘れましたが、もともと作家になりたかった方の人は、長年の夢であるフィクションも出版し、こちらもよく売れました。
ミニマリストになる方法
2人はきのうまで物持ちで、きょういきなりミニマリストになったわけではありません。すでにミニマリストとして世間に出ている人たちと会って話をしたり、その人たちの本やブログを読んだり、自分たちなりに試行錯誤し、1番しっくりくる、ミニマルライフを追求しました。
物を減らす話はこの本にも少しのっていますが、もっと具体的なやり方は、2人が運営するウェブサイトに詳しくのっています。
こちら
The Minimalists
このサイトには、2人が21日でミニマリストになった方法が書かれています。
Our 21-Day Journey Into Minimalism – The Minimalists
さまざまな試みをしていますが、その1つに、荷物をすべて箱につめてしまい、必要になったら、取り出すという実験があります。
詰め込んだもののうち、本当に必要だったのは、20%だけだったとか。
これは、「365日のシンプルライフ」という映画で、フィンランドのペトリがやったのと同じ方法ですね。ペトリは倉庫ですが。
参考⇒映画『365日のシンプルライフ』の感想:「物を捨てる」映画ではなく、大切な物を選ぶ話です
まっとうなミニマリストの本
ミニマリストの本としてはきわめてまっとうな内容で、ミニマリズムについてあまりご存知ない方には、量も少ないし、極端なことも書かれていないので、いい入門書になると思います。
筆子が好きなところは
1.「ミニマリズムは自分にとって意味のある人生を生きるためのツールだから、どこまで減らすか、何を減らすかは、人によって違って当然である」という考え方。
2.自分がより自由になるために、アンカー(anchors)を明らかにして、そのアンカーを1つずつ取り除いていく方法。
アンカーは錨(いかり)のことですが、この場合は、自分が自分らしく、自由に生きるのをはばんでいる重石のようなものです。
たとえば、大きなアンカーは、住宅ローン、自動車ローン、カードで作った借金(リボルビング払いなんて怖いですよね)、中ぐらいのは毎月のケーブルテレビの料金、スポーツジムの料金、小さなものは、持ちすぎてるガラクタ、などなど。
3.実践しなければ意味がないと言っているところ。
この本は読むだけでなく、実践して初めて価値があるものです。著者は、何度か読んで、できるところから実践するように説いています。
4.パッション(自分が本当に打ち込めるもの)を見つける必要があると言ってるところ。
自分が好きでもないことばかりやるのは不幸です。どんな小さなことでも、「自分が本当に好きだ、楽しめることをやる」のは幸せへの近道です。
全体的にボリュームが少ないため、すでにこの手の本を何冊か読んでいる人には「物足りない」とか、「そんなのみんな知ってるし」と思うかもしれません。
しかし彼らはとても真摯だし、かなり本質的なことを言っていると思います。筆子は、本質的なことはシンプルだと思うのです。
読んで、何か1つ実行してみて、初めて内容のよさがわかる本です。
翻訳も出ています。
☆ジョシュアとライアンが作ったドキュメンタリーをこちらで紹介⇒ミニマリズム(Minimalism)というドキュメンタリー映画の感想
最後に~ミニマリストのプレゼンテーション
この本が2010年に出版されてから、彼らは数多くのメディアに登場しています。先週、グラハム・ヒルの記事でも紹介しましたが、TED Talksにも出ていますので、動画を貼っておきますね。
約15分です。
☆日本語字幕がないのでプレゼンの内容の抄訳をこちらに書きました⇒物を持たないと、より豊かに生きられる。ミニマリストの体験(TED)
小道具は段ボール箱という、いかにもミニマリストらしいシンプルな講演です。
プレゼンテーションそのものは『グラハム・ヒルのほうがずっとうまいのですが、この人たちはつい5年ほど前までは、ごくふつうの会社員だったのです。それを考え合わせると、人前に出て15分もしゃべるだけでもすばらしいのではないでしょうか。
数年前までは、ガラクタと借金にさいなまれ不幸だった2人。生活をミニマルにすることで、大きな幸せを得ることができました。