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汚部屋に住んでいいことなど1つもありませんが、決断疲れしてしまうのは、もしかしたら最大の弊害かもしれません。
決断疲れは心理学の用語。物が多いと意思決定することが多くなり、そのせいでまたいらない物を買って、さらに疲れる、という話です。
決断疲れとは?
人生は選択の連続です。人は毎日の暮しの中で、実にたくさんの意思決定をしています。
人が物ごとを決める精神力(メンタルパワー)とは無限ではありません。
「何かを決める」という行為をすればするほど、脳が疲れて、判断力が鈍り、うまく物ごとを決められなくなります。
これが決断疲れです。
決断疲れに陥ると、決められなくなって、決断することそのものをやめてしまったり、元気なときには考えられないバカな決断をしてしまいます。
朝、起き抜けは元気でも、1日の仕事を終えるころにはくたくたになって、すごく単純なことでもやるのがしんどくなりませんか?
これは精神力も同じなのです。朝は、うまく決められることでも、夕方疲れてくると、どうでもよくなったり、変な判断をしてしまいます。
裁判官やスポーツの審判など、日常的にたくさんのことを決めている人は、朝より、午後のほうが、きびしめの判定になるそうです。
アメリカのあるリサーチによると、裁判官が仮出所を認めるのは圧倒的に朝が多いそうです。公平にしようと思っても、決断疲れが、意志の力を損なってしまうのです。
決断疲れしていると起きること
決断疲れの弊害は、ふだんならしないまずい決断をしてしまうことです。たとえばバカな買い物をしてしまったり、食べるべきではないジャンクフードを食べてしまったり。
また、人々がいさかいやけんかをするのも決断疲れのせいかもしれない、と考えられています。
考えてみると、朝からいきなりガミガミ怒る人っていませんよね?朝一で喧嘩や争いごと、もめごとはあまり起きません。
「朝一番に怒鳴り込んでやる」と思っている場合は別ですが。
いさかいは午後から夜にかけて多いと思います。それは肉体的に疲れているだけでなく、精神が疲れている、それもたくさん意思決定したから疲れているのだ、というわけです。
人がいさかいをするとき、「がまんする」「理性的に対処する」「切れる」の3つから、一番簡単な決断をしているのかもしれませんね。あるいはそもそも考えることを放棄して、本能的に切れているのかもしれません。
決断疲れすると衝動買いも増えます。
買い物をするときは、値段と、その商品が自分にもたらす価値を比べて、価値のほうが高いと判断すれば買います。脳が疲れていると、こういう思考をするのが面倒になり、衝動のままに買ってしまうのです。
衝動買いの理由はストレス、というのが定説でしたが、いやいや、決断疲れもあるのだよ、というわけです。
このように日常的に決断疲れや選択疲れするのがふつうになると、いろいろなことがめんどくさくなり、何もする気がなくなるので要注意です。
物が多すぎると決断疲れする理由
選択肢が多ければ多いほど、私たちはたくさん迷い、たくさんの決断を重ねなければなりません。
たとえば、口紅などのコスメをたくさん持っていたとしましょう。
いろいろな口紅をそろえるのは楽しいかもしれませんが、どれをつけるか、朝迷いますよね。
顔にぬるのは口紅だけではありません。アイシャドウもチークもあります。それぞれの数が増えれば増えるほど、組み合わせも増えてしまい、決断の回数が増えます。
自分はそこまで迷っていないと思うかもしれませんが、1つしかない口紅をさっと手にとってぬるときより、5本あるうちから1本だけを取るときのほうが、脳の仕事は確実に増えています。
朝決めることは口紅の色だけではありません。髪型、洋服、バッグ、靴、アクセサリー、香水、朝ごはんに食べるもの、子供の弁当に詰めるもの、傘を持って行くべきか否か。細かく見ていくと、私たちはすごくたくさんのことを決めているのです。
基本的な行動をするだけでも、多くの意思決定が必要なのに、現代人は、コスメや洋服で迷ったり、SNSをチェックしようかどうか、このメールに返事をしようかどうか、と小さな決断を矢継ぎ早にしなければなりません。
そのため、もっと大事なことを決める力が奪われてしまうのです。
多すぎる選択肢は人生の質をさげます⇒バリー・シュワルツに学ぶ『選択のパラドックス』(TED)~所持品をミニマムにすると生きやすくなる理由とは?
上の動画でも説明していますが、これまで人は、選択肢があればあるほど自由になれる、つまりいろいろな物があればあるほど幸せになれると思ってきました。
しかし、選択肢がありすぎる今は、大事なことが決められず、かえって不幸になっているのではないでしょうか?
「掃除がめんどくさい」という人は、部屋に物が多すぎるせいもありますが、物が多すぎるゆえに、毎日決断疲れをしていて、掃除というごく単純な家事をすることさえ、おっくうになっているのです。
たまに断捨離しようと思っても、決断疲れをしていると、「捨てる、捨てない」の判断がうまくできず、決めることを放棄して、みんな取っておくことに。
掃除もせず、断捨離もしないので、部屋はさらに汚部屋になります。すると、探しものを含めた決断がさらに増え、ますます心は疲れていきます。
最後には、何のモチベーションもわかず、きわめて受動的な生き方を選んでしまうのです。
決断疲れをふせぐ4つの方法
決断疲れしないためには、さほど大事でない決断をする機会をできるだけ減らすことです。暮しのさまざまな面で、選択肢が多すぎると思うなら、それを減らせばいいのです。
ここでは4つ例をあげます。
1.物の選択肢を減らす
毎朝、100着の服から着ていくものを選んでいるなら、トップス、ボトムスそれぞれを3着にして、いつも3着から選ぶようにしてみてはどうでしょうか?
バッグも10個あるなら2つだけにします。
選択肢が少なければ少ないほど、脳は疲れません。
2.ささいなことは、できるだけ1度で決める
断捨離中、「捨てる、捨てない」の判断は1度にします。OHIOルール(オハイオルール)の適用です。オハイオルールは、Only Handle It Once (1つの案件のは1度だけ扱う)というルール。
断捨離しようと引っ張りだしたものを見て、決断を先延ばしにするな、ということです。引っぱり出したら、今その場で決めてください。先延ばしにすると、意思決定する機会が1つ余分に増えます。
「迷ったら、捨てる」と決めておくと簡単です。
人生には、物を捨てようか残そうかと決めることより、もっと重要な決めごとがたくさんあります。断捨離で「決める力」を枯渇させるべきではありません。
OHIOルールはこちらで詳しく説明しています⇒今すぐ捨てたい。時間を奪う5つの悪しき習慣 「5.後回しにする習慣」のところです。
3.行動の選択肢を減らす
やるべきことや、やりたいことがたくさんあるなら、まずそれを全部リストアップし、その中から優先順位の高い3つのことだけをその日のTo-doリストに書きます。
完了していない仕事があると、それがストレスになり、精神的に疲れるので、自分ができそうにないことはTo-doリストに入れないほうがいいです。
それから、1度にたくさんの仕事に手を出さないことも大切です。
4.ミニマリストになる
最小限の物を持つミニマリストになれば、自分が使う物の選択肢はぐんと少なくなります。
私は、服の数を減らし、毎日同じ物を着るようにしたら、時間はもちろん、生産性もあがりました。
詳しくはこちら⇒着たきりミニマリスト主婦の普段着とよそ行きをご紹介~ワンパターンな服はストレスが少なく、生産性をあげる
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「決断疲れ」の研究は歴史が浅く、これからまだたくさんのリサーチ結果が出てくると思います。今のところ、決断疲れは意思決定の力を弱めてしまう、と見られています。
「自分は意志が弱い」と思うなら、今日から物を捨て始めてください。