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最終更新日: 2021.11.21

60歳以降は可能性に満ちている「人生の第3幕」ジェーン・フォンダ(TED)

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より充実した人生を生きるインスピレーションを与えてくれるTED動画を紹介しています。今回のテーマは、老後の生活。

女優のジェーン・フォンダ(Jane Fonda)の Life’s third act(人生の第3幕)です。



『人生の第3幕』TEDの説明

Within this generation, an extra 30 years have been added to our life expectancy — and these years aren’t just a footnote. Jane Fonda asks how we can re-imagine this new phase of our lives.

今の世代、平均寿命が30年伸びました。しかしこの30年はおまけではありません。ジェーン・フォンダは、この新しい人生の一時期を、いかに、捉え直すことができるだろうか、と問いかけています。

老後と聞くと、「老後破産」「認知症」「独居老人」といった暗い言葉を思い浮かべる人が多いかもしれません。

これは、従来の「老後は衰退の時期」というイメージに縛られているからです。60歳以降の30年間を、あらゆる可能性に満ちた楽しい時期にすることもできます。

そのコツをジェーン・フォンダが教えてくれます。

動画は11分20秒。日本語字幕です。字幕なし、英語字幕などがいい人はプレーヤーで調節してください。動画のあとに抄訳を書きます。

☆トランスクリプトはこちら⇒Jane Fonda: Life's third act | TED Talk | TED.com
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

長生き革命(longevity revolution)は今世紀、最も革命的なできごと

曽祖父の時代に比べると、私たちは平均34年、長生きしています。これは大人の時期をもう一度過ごすようなもの。

ところが、私たちの文化は、この現象をうまく捉えることができていません。いまだに、老後は「弓なり曲線(arch)」にたとえられます。

生まれてから上昇し、ピークを迎え、あとは衰退する曲線です。

ですが、現代は多くの人が、人生の最後の30年間を新しく捉えています。実は、この時期、人々はより成長していくのです。

この時間をいかに使うべきか?どのようにして幸せに暮らしたらいいのでしょうか?

老後は衰退ではなく、上昇

去年、この問題についてリサーチし、本を書きました。そして、老後の、新しい呼び方を見つけました。「弓なり曲線」ではなく、「階段」(staircase)です。人のスピリットがどんどん上昇していく階段なのです。老後は可能性に満ちています。

運のいい人だけに可能性が残されているわけではありません。50歳以上の人のほとんどが、よりよく感じています。ストレスや不安も減っています。

私自身、現在第3幕の途中ですが、人生でもっとも幸せを感じています。よりパワーを感じています。

「老い」を外から見ていたときは不安でしたが、いったん中に入ってみると、恐れはなくなりました。老いても、自分に変わりはないし、むしろ若いとき以上に自分らしくいられます

ピカサは、こんなふうにいいました。

It takes a long time to become young.” 若くなるには、長い時間がかかるものさ。

もちろん、すべての老後が実り多いものになるとは限りません。運や遺伝の要素があります。3分の1は遺伝です。

でも残りの3分の2は、私たちでコントロールできます。





老いた人が登る階段とは?

この世界は共通の法則のもとに動いています。エントロピーです。エントロピーによれば、この世界のものはすべて、次第に衰え、壊れていきます。

ですが、一つだけ例外があります。それはヒューマンスピリットです。人の気概は、どんどん階段を登りつづけ、完全なもの、真正なもの、知恵へと向かいます。

たとえ、体が衰えても、気持ちは衰えません。

3年前にニューヨーク・タイムズで57歳の元弁護士、ニール・サリンジャーの記事を読みました。

彼は、ライティングのグループに加入した2年後に、ALS(Amyotrophic lateral sclerosis 筋萎縮性側索硬化症 きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)にかかりました。

この病気にかかると、筋肉が動かなくなります。不治の病です。にもかかわらず、彼はこう書いていました。

As my muscles weakened, my writing became stronger. As I slowly lost my speech, I gained my voice. As I diminished, I grew. As I lost so much, I finally started to find myself.

筋肉が衰えるにつれて、私の文章は力強くなった。だんだん話ができなくなるにつれて、私は声を獲得した。私が小さくなるにつれて、私は成長した。多くを失い、ようやく私は自分を見つけ始めた。

彼は第3幕の階段を登ったのです。

ライフレビューをして過去から自由になる

私たちは皆、スピリットを持って生まれます。ところが、人生でいろいろ困難なことに出会ううちに、スピリットを失ってしまいます。

両親がうつ状態で、愛情を与えてくれなかったのかもしれません。未だに過去の痛手から立ち直れないのかもしれません。

私たちは、「終わった」と感じていないのです。第3幕は、こうした未完了のことを終わらせる時期かもしれません。

60歳に近づいたとき、私はこれからどうしようか戸惑いましたが、自分がどこに向かっているのか知るためには、過去を振り返るべきだと気づきました。

そこで、最初の2幕の自分について考えました。自分は誰だったのか、両親は誰だったのか、と。私の親は、人間として、どういう人達であったのか、両親は、彼らの両親にどんな扱いをうけたのか、といったことです。

後に、このようなことをするのは、心理学用語で「ライフレビューをする」と言うのだと知りました。

ライフレビューをすると、自分の人生がより明確になり、新しい意味を持ち始めます。

これまでずっと「自分のせいだ」と思っていたことは、実はそうではなかったと気づくのです。あなたは全然、悪くないのです。

そして、過去の自分や、自分の周囲の人を許すことができます。過去の自分から自由になって、過去の人間関係を修正することができるのです。

人生の質は現実をいかに捉えるかで決まる

本を書いていたとき、ヴィクトール・フランクルの”Man’s Search for Meaning”(夜と霧)という本に出会いました。

ヴィクトール・フランクルは、ナチの強制収容所で5年間過ごしたドイツの精神科医です。(筆子注:厳密にいうと彼はオーストリアの人。1938年ドイツはオーストリアを併合した)。

彼は、本にこう書いています。

Everything you have in life can be taken from you except one thing, your freedom to choose how you will respond to the situation.

This is what determines the quality of the life we’ve lived — not whether we’ve been rich or poor, famous or unknown, healthy or suffering.

What determines our quality of life is how we relate to these realities, what kind of meaning we assign them, what kind of attitude we cling to about them, what state of mind we allow them to trigger.

人生のすべてのものは、一つのものをのぞいて、奪われる可能性がある。その一つとは、自分が状況に対して、いかに反応するかを選ぶ自由だ。

これが私たちの人生の質を決める。

金持ちか貧乏か、有名か無名か、健康か病気か、そういうことが決めるのではない。

人生の質を決めるのは、現実に対して、自分をどう関連づけるかだ。現実にどんな意味を見出すのか、現実に対してどんな態度でのぞむのか、現実に対して、どんなふうに反応するかだ。

過去の再定義をして自由になる

第3幕のおもな目的は、過去と自分の関係の修復ではないでしょうか?認知の研究によれば、こうすることで、脳に新しい神経回路ができるそうです。

過去に起こった出来事に、長年、ネガティブに反応していると、そういう神経回路が強化され、ストレスや不満を生み出します。

ですが、過去を振り返り、嫌だと思っていた出来事に対して、新たな見方ができるようになると、神経回路は変化します。

すると、私たちは昔のことに対して、よりポジティブな気持ちを持てるのです。私たちを賢くしてくれるのは、経験することではなく、その経験に対して、どういうふうに考えるか、ということです。

そうすることで、より完全で、知恵のある本物に近づけるのです。

女性は生まれたときは、不足のないものであり、自分自身を生きています。ところが、思春期になると、周囲に溶け込もうとか、人気者にならなければいけない、と考えがちです。

すると、他の人の人生の登場人物になってしまうのです。ですが、第3幕では、原点に戻って、また自分自身になれます。

これは個人的なことにとどまりません。高齢の女性は人口で優勢をしめています。もし私たちが、原点回帰して、自分自身を再定義できたなら、それは若い人のよいお手本になると思います。
—– 抄訳ここまで —–

ジェーン・フォンダ(1937生)について

ジェーン・フォンダは著名なアメリカの女優であり、政治活動家であり、作家、プロデューサー。40代半ばの頃は、エアロビクスのビデオを作ったりと、多彩な活動をしています。

この講演をしたときは74歳です。とても若く見えますね。

彼女は、父親のヘンリー・フォンダと長らくうまくいっていませんでした。ジェーンの母親は、ジェーンが13歳のときに自殺しています。母の自殺のもともとの原因は、父親の浮気です。

母親が亡くなったとき、ジェーンは、父親から、死因は心臓発作と知らされましたが、のちに、真相を知り、それ以後、ジェーンと父親の間には、ずっと確執がありました。

幼いころ、父親は忙しくて不在がちで、ジェーンは不幸な子供時代を送ったようです。

そういう環境で育ったせいか、ジェーン自身、男性とあまり幸せな関係を築くことはできなかったみたいです。3度結婚して3度離婚しています。拒食症にかかったこともあります。

あんなに美しく、聡明な人でも、なかなか心の平安が得られなかったのです。まあ、それでなくても、芸能界はいろいろと大変ですから、ストレスも多かったでしょうね。

若いころはいろいろあったジェーン・フォンダですが、お父さんとは、後に和解し、今も現役で女優業をしています。

2005年、68歳のときに、My Life So Far という自伝を書いています。邦題は、「わが半生」。直訳は、「私の人生、これまでのところ」です。

「まだ、現在進行形なんですよ」という意味が込められていますね。

不足なものは何もない

このプレゼンから学べることはたくさんあります。

病気になって、運動神経を破壊されても、逆に、精神が強くなっていったサリンジャーのことや、ヴィクター・フランクルの言葉から勇気を得る人も多いでしょう。

人生はよくも悪くも自分次第だし、形のあるものはいずれなくなります。ともに、物が捨てられなくて悩んでいる人や、買い物が止まらない人が考えてみる価値のあることです。

ミニマリストの観点から印象に残ったのは、人生の最後の30年間、人は、完全さ、真正さ、知恵に近づいていく、というところです。

ここは英語では、bringing us into wholeness, authenticity and wisdom です。wholeness は「全体、総体、完全であること」。

wholeness は全部そろった状態です。

私たちは、ずっと、自分には足りないものや足りないところがいっぱいある、と思って生きています。

だからこそ自己成長がありますが、足りないものばかりにフォーカスしすぎると、よけいな物を買ったり、金儲けに夢中になったりしてかえって不幸になります。

最後の30年間は、過去にあったいやな出来事を再定義することで、自分には足りないものなんてないよ、と確認していく時期なのかな、と思いました。

だとしたら、物を集めている場合ではないですね。

年をとらなくてもライフレビューはできますが、若いころは、そこまで達観するのは難しいかもしれません。

40歳前の人には、ジェーンの言ってることもあまりピンと来ないでしょうか。いつか60歳に近くなったとき、またこの動画を見てください。





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