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心がささくれだったときに見ると、気持ちをリセットできるTEDの動画を紹介します。
タイトルは、How A Penny Made Me Feel Like A Millionaire(直訳:いかに1ペニーが私を億万長者のように感じさせてくれたか?)。プレゼンターは、タニア・ルナ(Tania Luna)さんです。
邦題は、「1セント硬貨がもたらした幸せ」です。
1ペニーは1セントのことで、100分の1ドル。日本のお金でいえば1円です。
タニアは子供のとき、汚れて、ねばねばする1セント硬貨を拾って、「わ~、私、すっごいお金持ちじゃん」と大興奮した経験があります。
1セント硬貨がもたらした幸せ:TEDの説明
As a young child, Tania Luna left her home in post-Chernobyl Ukraine to take asylum in the US. And one day, on the floor of the New York homeless shelter where she and her family lived, she found a penny. She has never again felt so rich. A meditation on the bittersweet joys of childhood — and how to hold them in mind.
幼いタニア・ルナは、ウクライナでチェルノブイリ原発事故を体験したあと、アメリカの保護施設に移りました。
家族とニューヨークにあるホームレス用シェルターに住んでいたとき、タニアは、床に落ちていた1セント硬貨を見つけました。
このときほど、自分をお金持ちに感じたことはありませんでした。
子供の時の甘酸っぱい喜びを思い出すこと、そして、それを心にとどめておくこと。そんなことを教えてくれる動画です。
収録は2012年の7月。動画の長さは5分28秒。日本語字幕あり。短いのでぜひ見てください。
動画のあとに抄訳を書きます。
☆トランスクリプトはこちら⇒Tania Luna: How a penny made me feel like a millionaire | TED Talk
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
5歳のときの楽しいできごと
5歳の私はとっても誇らしく思っていました。父が、私たちが住んでいたウクライナの小さな町で、最高の屋外トイレを作ったからです。
中に入ると臭かったし、地面に穴があいていたけれど、外側は、真珠のように白いフォーマイカの板で、文字通り、太陽の光を受けてピカピカでした。
とっても自慢に思えたので、友達グループのリーダーになって、近所の家を見て回り、蜘蛛の巣につかまっていたハエをみんな逃してやりました。
1歳のときの悲しくてうれしかったできごと
その4年前、私が1才のとき、チェルノブイリ原発事故のせいで、黒い雨が降りました。
姉の髪はかたまりになって抜け、私自身も9ヶ月入院しました。
誰も面会を許されなかったので、母は、病院の人に賄賂を渡して、看護婦のユニフォームを手に入れ、毎晩私のそばにいてくれました。
6歳のときアメリカに移住する
5年後、思いがけない幸運に恵まれました。チェルノブイリの事故のせいで、私たちは、アメリカの保護施設に住むことになったのです。
私は6歳でした。故郷を離れるのは悲しくありませんでした。アメリカには、珍しくて素敵な物がいっぱいあると思っていましたから。
バナナやチョコレート、バズーカ・バブルガムなんかです。
バズーカ・バブルガムは、1つずつ、マンガのついた包み紙にくるまれています。ウクライナでは1年に1度しか、お目にかかれませんでした。
1つのガムを1週間、かんでいました。
1セント硬貨を拾って大金持ちに?
ニューヨークに来た初日、祖母と私は、これから住むことになる、ホームレス用シェルターの床に、1セント硬貨が落ちているのを見つけました。
私たちは、そこがホームレスシェルターだとは知らなかったのですが。ホテルだと思っていました。ネズミの多いホテルだと。
半分化石のようになった1セント硬貨を見つけたとき、すごいお金持ちが置いていってくれたと思いました。
ふつうの人は、お金を失くしたりしないですから。
錆びて、ねとねとするこの1セントを手の平で握ったら、ものすごいお金持ちになった気がしました。
自分のためだけのバズーカ・バブルガムを買おうと決めました。この瞬間、自分が億万長者のような気がしたのです。
1年後、ゴミの山から、ぬいぐるみがたくさん入った袋を見つけたときも、同じように感じました。生涯かかって手に入れられるぬいぐるみより、もっとたくさんある、と感じたのです。
はじめてピザを食べた
ブルックリンのアパートのドアを叩く人がいたので、開けてみたら、ピザ屋さんでした。このときも、幸福に感じました。
私たちは注文していなかったピザです。
箱を受け取り、生まれてはじめてピザを食べました。デリバリーの人は、戸口に立って、お金を払うように言いましたが、私たちは英語がわかりませんでした。
彼は、戸口に出てきた母に、支払いをするように言いました。でも、母は、少ししかお金を持っていませんでした。
バス代を節約するために、母は、片道50ブロックの道(ブロックは場所によって距離が違いますが、4キロちょっと)を、毎日徒歩で往復していました。
隣の人がやってきて、階下に住む移民が自分のピザを食べているのを見て、真っ赤になって怒りました。
このとき、みんな、とまどっていましたが、ピザはおいしかったです。
自分たちがものすごく貧乏だったことに気づいたのは、何年もたってからです。アメリカに来て10周年を祝うために、最初に泊まったホテルを予約しようとしたら、受付の男性が笑ってこう言いました。
「ここは予約できませんよ。ホームレス用のシェルターですから」。
家族全員、びっくりしました。
ホームレスだった夫が宝物にしていたもの
私の夫、ブライアンも、子供のときは、ホームレスでした。11歳のとき、家族が何もかもなくし、彼は、父親とモーテルに住むことになったのです。
そこでは、宿泊代を払うまで、食べ物をすべて没収されたといいます。
ようやく、砂糖がけのシリアルの箱を取り戻したとき、中でゴキブリがはっていました。
ブライアンは、1つだけ大事に持っているものがありました。どこへ行くときも持っていく靴の箱です。
箱の中に、まんがを9冊、スパイダーマンみたいにペイントしたGIジョーの人形を2つ、おもちゃのロボットを5つ入れていました。
この箱は、ブライアンの宝物でした。
箱の中に、自分のヒーローを集めていたから、ブライアンは、ドラッグをやることもなく、ギャングになることなかったのです。
飼い犬も元ホームレス
我が家の家族で、やはり、元ホームレスだったメンバーがいます。
スカーレットです。
昔、スカーレットは、闘犬の「かませ犬」でした。つながれて、ほかの犬たちのいる中に、投げ込まれていました。
ほかの犬は、スカーレットを襲うことで、試合前に、より闘争的になれたのです。
いまは、スカーレットはオーガニック食品を食べ、自分の名前が書いてある整形外科用のベッドに寝ています。
水入れに水を注いでやると、スカーレットは私たちを見上げ、感謝の気持ちをあらわすためにしっぽをふります。
時々、ブライアンと私は、スカーレットをつれて公園に散歩に行きます。
スカーレットは、草の上で転がったりします。私たちはその姿を見て、それからお互いを見て、ありがたい気持ちになるのです。
こんなときは、中産階級となった私たちが感じている日頃の不満や失望感を忘れています。億万長者のような気分になるのです。
//// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
outhouse 屋外トイレ
formica フォーマイカ(化粧材に用いる合成樹脂の板)
prowl 見て回る
round up 寄せ集める
Gobot ロボットのおもちゃ。小さいサイズのは5~8センチ、大きいサイズのは12~15センチ。
bait(in dog fights) かませ犬
闘犬用の犬に噛ませて、自信をつけさせるためにあてがわれる弱い犬。
orthopedic bed 整形外科用ベッド
タニア・ルナさんは、リーダーシップトレーニングやコンサルティングをしています。また、Surprise Industriesというコミュニティを作り、驚き(サプライズ)を大事にする生き方を提唱しています。
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楽しかった思い出を大事にするすすめ
このプレゼンを聞くと、「お金があるかどうかは、あまり幸せに関係ない」とか、「感謝の気持ちを忘れないようにしたい」なんてことを思うかもしれません。
ここでは、子どもの頃の思い出を大事にすることをおすすめします。
昔楽しかったことを思い出すと、とてもあたたかい気分になるし、感謝の気持ちがわいてきます。タニアさんみたいに、ほかの人にシェアすると、ますますうれしい気分になるでしょう。
昔のことを思い出すために必要なのは、たくさんの思い出の品ではありません。
「できるだけたくさんの物を手に入れよう」「できるだけたくさんの物を取っておこう」と欲張るよりも、どんどん手放したほうが、楽しかったこと、よかったことに目を向けるこころの余裕が生まれます。
子供のときに感じたすごく楽しかった気持ち、ありがたかった気持ち、ほかの人に対するやさしい気持ちは、みな心の奥底に眠っています。
大人になると、いろいろなことに忙しくなり、考えるべきことも増え、たいていは、ごみのような思考で頭の中がいっぱいになるので、キラキラしたものが埋もれてしまうのです。
誰でも、光り輝くものを持っているのに、上からゴミをぼんぼん積み重ねています。
人によっては、ずっとゴミまみれのまま一生を終えます。もったいないことです。
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「もっとお金があったほうがいい」「もっといろいろな物を持っていたほうがいい」「思い出の品もたくさんあるほうがいい」という、モア・イズ・ベター的な生き方をしていると、かえって不幸になります。
きりがないからです。
きりがないことって、苦しいですよ。