考え事をしている女性

TEDの動画

「もう十分」が本当に十分になるときはいつ?(TED)

「十分な状態」に関するTEDトークを紹介します。

もう十分ある、私は十分だ、と思うことができると、ストレスが減りますが、それはいったいいつなのでしょうか? いったい、いつになったら十分なのか?

そんなことを考えてしまう人におすすめのプレゼンです。

タイトルは、When is “enough” really enough? いつ「十分だ」が本当に十分になるのか?

講演者は、ホアン・ミー・フオン(Hoan My Khuong)さん。

フオンさんは、Orangeという芸名で活躍しているベトナムの人気女性シンガーです。

TEDxYouthでのトークで、若者対象ですが、さほど若くない人にも、参考になると思います。



いったいいつ十分になるのか?(TEDの説明)

The road towards passion in general and the path to pursue art-related careers have never been easy, and there is no exception to Orange (Khuong Hoan My). She has undergone various challenges and failures so as to prove herself. And coming to TEDxYouth@NamHa 2021, Orange wants to share her own story, from which the youth are supposed to learn valuable second-hand experience.

情熱を感じられる道、それも芸術関係の道に進むのは、決して簡単ではありません。それはオレンジにとっても同じでした。

彼女は、自分自身を証明するために、たくさんのチャレンジや失敗を経てきました。そして TEDxYouth@NamHa 2021の舞台で、自分の体験を語ります。多くの若者は、彼女の体験から貴重なことを学べるでしょう。

動画の長さは11分50秒。収録は2022年の1月。日本語の字幕もあります。

☆TEDの記事のまとめ⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

オレンジさん、しゃべる声も素敵ですね。





昔はオタクだった

皆さん、こんにちは。オレンジです。私は24歳で歌手です。

きょうは、皆さんと、十分な状態について考えてみたいと思います。

数字とか難しいことは出てきません。お話しするのは私の体験です

2009年、私は読むことと書くことが大好きなオタクでした。

週末になるたびに、新しい本を買ってくれるよう、両親にせがんでいました。大急ぎで宿題を終わらせて、パソコンに向かって、小説の執筆をしていました。

学校、宿題、執筆の日々だったんです。

学年末になって、クラスの女子は全員、男子から告白されましたが、私は何もありませんでした。

「男子って、オタクは嫌いなんだろう、人気者の女の子たちが好きなんだろう」と思いました。

「小説の執筆という趣味で、男子の人気を集められるだろうか、十分、人気者になれるだろうか」なんて考えたりもしました。

その後も書き続けていましたが、だんだんやる気がなくなりました。

歌手になることにした

大人になって、歌を歌えることに気づきました。

そのとき、歌手になるのは有名になる大きなチャンスだと思いました。

歌手になれば人気者になれると思ったんです。

ファンがたくさんできて、皆から尊敬されて。

誤解しないでください。今の私は、音楽が大好きだから歌っています。でも、昔は、歌手になったらに手に入りそうなことに無関心ではいられませんでした。

スポットライト、ファン、パパラッチ、そういう華やかなものです。

だから私は、歌手のキャリアを真剣に追求し、あらゆるチャンスを利用しました。

ネットで見つけたオーディションには全部行きました。

歌手としてデビュー

幸い、2018年に歌手になって、シングル曲がヒットしました。

自分も周りの人もびっくりしましたよ。

そして、私は、執筆という趣味のことはすっかり忘れてしまいました。

執筆への情熱も、作家になる夢もどこかに行ってしまったんです。

小説を保存していたた古いパソコンは、両親が捨ててしまいました。大きくて邪魔だから。

両親は、私が歌手になることに乗り気ではありませんでした。

私と両親は、人生に対する考え方が違うんです。

私は、成功して有名になりたいと思っていました。

成功して有名なればそれで十分だと。でも、両親は、私が安定した生活をすることを願っていました。

でも、私にとって、「安定」は、十分ではないんです。

両親と何度も言い争いになりました。耐えられなくなった私はある日、家を飛び出して一人暮らしを始めました。

実家では、祖母も一緒に住んでいたのですが、祖母が私に聞いたんです。「いったい、いつ帰ってくるの?」と。

私は、「十分だと思えたら。十分達成できたら、帰ってくる」と言いました。

昔はそんなふうでした。

音楽業界での不安

一人ぼっちで、音楽業界に足を踏み入れました。

歌うだけでいいのだと思っていたのですが、最初に聞いたコメントに打ちのめされました。

「ああ、彼女はいいね。いい声してる。ただ、きれいじゃないんだなあ」。

「ああ、この娘、知ってる。まだ新人だしね。長い目で見てあげないとね」

でも、時間がたっても、見栄えの悪さは変わりません。

皆のコメントを、深刻に受け止めてしまいました。当時私は、「どうしたらもっときれいになれるか」「見た目がよくなるか」ということばかり考えていました。

そして、「鼻の整形、どこでしたの?」「目はどこで直してもらったの?」「どこを直したの?」「そのフェイスリフト、どこでやったの?」と皆に聞きました。

毎日、こんな話ばかりしていたんです。

実は、鼻は整形しました。

そのおかげで、私は前よりきれいになったのか? そうかもしれません。

それから、服や見かけにお金をかけて、ひもじい思いでダイエットもして、まあまあきれいになりました。

でも、別の問題が出てきたんです。次は、こんなふうに言われました。

「ああ、彼女はいい声してるね。前よりきれいになったし。でも、なんか面白味がなんだな。個性がない。持ち味がない」

SNSで無理してしゃべる

そこで私は、前よりしゃべるようにしました。

SNSに、おもしろい投稿をするようにしました。まあ、最初は楽しかったんです。

皆も喜んでくれました。私のユーモアを楽しんでくれて、私の馬鹿げたコメントのおかげで、私のことを知った人もいました。

これで十分そろったと言えます。私は、歌が歌えます。そこそこきれいです。おもしろいことも言えます。

そして、私は幸せだったか? 

そうでもありません。

まだです。

私は、よいシンガーになりたいわけじゃないのです。トップシンガーになりたい。並外れたシンガーになりたい。

億万長者になりたい。皆に手に入れたいと思われる女性になりたい。

だから、私の人生は戦いでした。

どんなにがんばってもまだ十分じゃない

いつもすごく忙しかったんですが、いつも、まだ十分忙しくないと思っていました。

成功した人間は、仕事をいっぱいしているはずだ。もっと働かなきゃ、もっとスケジュールをびっしりにしなきゃ。

私は、いつも、「もっと、もっと」と思っていました。

いつも、満足できなかったんです。

なぜ、私は、決してハッピーになれないのか?

自分でも不思議でした。

私よりずっと稼ぎが少ないのに、とても幸せそうに見える人がいるのはなぜなんだろう?

そんな時、私の考え方が180度変わるできごとが起きました。

祖母が重い病気にかかり、今すぐ会いに来ないと一生後悔することになると家族から電話がかかってきたのです。

久しぶりに実家に帰った

泣きながら家に向かいました。家に向かう途中、タクシーの窓から外を見ていて、ショックを受けました。

あたりがすっかり様変わりしていたから。

どうして、私はずっと前に気づかなかったのか? いったいどのぐらい、家に帰っていなかったのか?

寝ている祖母に会ったとき、「ごめんね」と言いました。

「ごめんね、おばあちゃん。いい孫じゃなくて。私はまだまだで、家を買ってあげることも、車を買ってあげることもできなくてごめんね。でも、もうすぐそうできるから。だからあと少し待ってて」。

すると祖母は、首を振りながら私を見て、微笑んだのです。

「あまえが元気でいてくれるだけで十分だよ。ほかにも何もいらないよ」。

私は泣きました。母も泣いていました。母は私が知っている一番強い女性なのですが。

母があんなに悲しそうな姿は初めて見ました。その日、初めて私は両親に、胸のうちを打ち明けました。

私のかかえているストレスや重荷、孤独について。

その晩、実家に泊まって、子供のときすごく大事にしていた本を眺めました。

私が最後にハッピーだったときは?

私が満足感を感じた最後の時っていつだったんだろう?

小説を書いていたとき? 何のわだかまりもなく、自由に文章をつづっていたとき?

自分の部屋でひとりで歌を歌っていたとき?

すぐにこわれるものを追いかけるのに必死で、私は人生にある美しいことを失ってしまったのでは?

大人になるとき、何かを追いかけながら、代償を払わなければなりません。

十分であるという状態が本当に十分なのはいつか?

きょうここで皆さんの前で話していますが、この質問の答えを私はまだ見つけていません。

十分なときなんて、永遠に来ないのかもしれません。

私は、明日もまた必死で働かなければなりません。

相変わらず野心的だと思います。

貪欲であることもやめないでしょう。

でも、自分の体験から学んだことが2つあります。

時には休んでゆっくり進む

休息をとること、そして、ゆっくり進むこと。

皆さんに夢や野望をあきらめろと言っているわけではありません。

私たちはまだ若いし、ゴールに向かって、時間やエネルギーを注ぎ込むことは間違っていません。

成功に向かって、努力するのに遅すぎることはありません。

でも、ときには、のんびりとリラックスするのに、早すぎることもないのです。

自分にきびしくしすぎないで。ピアプレッシャーの犠牲にならないで。

ほかの人に、自分にとっての「十分」を決めさせないでください。

何が十分なのかは、自分が決めればいい。

そしてもし疲れたら、休んでください。悲しいときは、誰かに話をして、自分を十分愛してあげてください。

自分を愛しすぎることなんてないですよね。

そして、時には振り返って、ここまで来る途中で、置いてきたものについて考えてください。

中には、気に入らないものがあったとしても、みんな今の自分を作ったものなのだから。

自分がどこから来たのか忘れないでください。忘れてしまったら、十分以上のものになったときが来たとしても、それは、本当の自分ではありませんから。

//// 抄訳ここまで ////

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もっと、もっとと思うことについて

オレンジさんは、1997年生まれなので、17歳でデビューしたんですね。

芸能界において、マイペースで仕事をするのは、難しいと思います。特にオレンジさんのように、社会で働いた経験がなく、かつ野心的な場合は。

でも、彼女は、自分のしていることを、客観的に見ることができるから、つらいことがあっても、すべてを糧にできるでしょうね。

オレンジさんは、キャリアにおいて、常に「もっと、もっと」とがんばってきたけれど、何かについて、「もっと、もっと」と思うことは、人間ならよくあると思います。

もっときれいになりたい、もっとやせたい、もっとお金がほしい、もっといい物がほしい、もっと大きな家に住みたい、もっと友達がほしい、もっと頭がよくなりたい、もっとミニマルな暮らしにしたい、など。

私は、「もっと、もっと」と思っていると、満足できるときなど決してこないと思っています。

「もっと、もっと」と考えているときは、今自分が持っていないものにばかり意識が向いていますから。

オレンジさんのおばあさんは、すでに自分が手にしていた大事なものに目が向いていました。

考え方は人それぞれですが、私は、おばあさんのような生き方のほうがいいんじゃないかと思います。

あなたはどう思いますか?





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