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親の介護がたいへんで、とてもきびしい状況なので前向きになりたくてもなれません、という相談メールをいただきました。今回はこのメールに回答します。
まずメールをシェアします。ロマさんからのメールです。
親の介護で疲れています
件名:理想とかけ離れすぎてイメージできない
私も性格がとてもネガティブなので物を捨てること以外にいろいろな心の問題についての記事がありがたいです。特にセルフコンパッションについての記事は泣きながら読みました。
筆子さんの記事を見ながら実践しているのですが今、現実的にとても困難になっています。
私は43歳で、母親と同居しています。遅い子供だったので母は84歳です。兄弟はいません。
仕事のため一人で暮らしていたのですが母が高齢で私のところへ転がり込むかたちで同居になりました。そして脳梗塞で倒れ入院、退院してから介護生活になりました。
自分で覚悟はして頑張っているのですが現実とかけ離れすぎてポジティブにイメージできなくなってしまいました。もともと一人暮らし用の家で一部屋なのでとても狭く、介護用品を置いてあることや、ときどきトイレなど失敗してしまうときに漂う匂いにネガティブになってしまいます。
母は年金なども払っていなかったので経済的なこともすべて私が負担しています。
せめてもう少しポジティブな考え方になれるようにと筆子さんのブログを読んでいるのですがなかなかなれず恥ずかしいですがメッセージを送ってしまいました。
ロマさん、メールありがとうございます。お母さんの介護、大変ですね。お疲れ様です。お母さんが早く元気になることをお祈りしています。
さて、まず、今何が一番問題なのか、そこを明確にしてください。
メールのタイトルが「理想とかけ離れすぎてイメージできない」なのですが、いったい何をイメージできないのでしょうか?「現実とかけ離れすぎてポジティブにイメージできなくなってしまった」というそのイメージって何ですか?部屋が片付いている状態でしょうか。
自分が前向きかどうかは、周囲の状況なんて関係ありません。
いろいろなできごとがうまくいっているから、ポジティブになるわけではないのです。
状況があまりよくなくても、前向きに考えることはできます。前向きになれば、自分の外で起こっていることに対して関わり方が変わるので、多少は元気に明るく暮らせるのです。
私の記事を読みながら実践していることは何でしょうか?部屋の片付け?それとも前向きになることでしょうか?
ただでさえ狭い部屋に介護用品が増えたとあるから、断捨離ができないのが問題なのかもしれませんね。
お母さんの年金がないから、経済的な問題もありそうです。
何が一番問題になっているのか整理してください。
さて私は「人生相談は送らないでほしい」と常々ブログに書いています。
なぜなら、毎回同じ回答になるからです。今回も同じ答えになるため、毎日ブログを読んでいる人は、「ああ、またか。筆子さん、同じことばかり書かないでください」と思うかもしれません。
ロマさんには、こんなことをおすすめします。
ステップ1:今、自分が不満に思ってること、問題だと思っていることをすべて書き出す。
ステップ2:問題の中から、もっとも解決したいこと(自分のゴール)を決める。
ステップ3:そのゴールに近づくために、今の自分ができることをすべて書き出す。
ステップ4:3で書き出したことを1つずつやっていく。
ステップ5:ときどき、1~4を見直し軌道修正する。
さらに今回は、どん底(と自分には思える)状況でも、ポジティブでいられる方法をいつくか紹介します。
1.理想のハードルをさげる
ロマさんの理想が何であるのかわかりませんが、それが足かせになるなら、ハードルをさげてください。
夢を持って、それに向かって進むのはいいことだと思います。人間は希望を持てないと生きていけません。ですが、夢を持つことが自分を苦しめるなら、そんな夢は捨てたほうがいいです。
その夢を思い描くことで、気持ちが明るくなったり、ほんわかしたり、元気になるなら、持ち続けてください。
尚、夢と現実は違うのがあたりまえなので、「理想と違いすぎる」と落ち込む必要はありません。理想と現実が同じなんてありえません。
理想と現実のギャップに嘆くより、今、自分の目の前にある幸せを感じてください。
2.現実をありのままに受け止める(努力をする)
次に今の現実をありのままに受け止めてください。
「こんなはずじゃなかったのに」と思わないほうがいいです。
高齢の親の介護はすごく大変だと思います。体力的、金銭的に大変なのはもちろんですが、これまで世話をしてくれていた人を自分が世話しなければならないという役割の逆転に、とまどうのではないでしょうか?
またお母さんやお父さんは、子供に世話をされていても、親ですから、いろいろ偉そうなことや、横柄なことを言うかもしれません。そういう横暴な態度につきあうのも疲れそうです。
ですが、年をとって病気になれば、親は子供の世話になるしかないです。もう昔とは世界が違ってしまったのです。昔の親子関係にあったルールみたいなものは、すべて反転しました。介護生活では新しい親子関係を作らないとうまくいきません。
新しい親子関係を創造しているのだ、と考えると多少は前向きになれるでしょう。
ロマさんは、「覚悟はして頑張っている」ということなので、心構えはできていそうですね。
3.足りないもの、できないことにフォーカスしない
これもいつも書いているのですが、今の生活に足りないもの、自分が自由にできないことに意識を向けず、自分が持っているものに目を向けます。
一人暮らしの狭い部屋で病気のお母さんを介護しなければならないのは、確かに大変な状況です。私には大変すぎてできないかもしれません。
ただ、ひどい状況だと思うかもしれませんが、よいところもあります。
メールを読んでこんないいところを見つけました。
・お母さんが脳梗塞で倒れたけど一命はとりとめた。つまりまだ生きていてくれる。
・一人っ子だから、親の介護が原因で兄弟喧嘩をしなくてもすむ。介護方針を自分の裁量で決められる。
・お母さんが高齢出産した子供だから、自分はまだ43歳で若い。つまり体力がある。
・幸い、お母さんを介護できる部屋がある。
・幸い、お母さんと自分の生活費を賄う経済力が自分にある。
・自分の手でお母さんを介護できる。あっという間に親が他界してしまうより幸せだ。なぜなら親孝行する時間があるから。
特に43歳と若いのは大きな強みです。自分が高齢になってから、親の介護をするのはきついです。老夫婦の片側が病気になって、もう片側が介護して、介護疲れで心中してしまうなんて事件もあります。
介護問題で兄弟姉妹、親戚ともめることもよくあります。ロマさんの場合、そんな心配はありません。
どんな状況でも、「ああ、でもこれは不幸中の幸いだったな」と思うできごとを見つけるクセをつけてください。そのために、感謝ノートをつけてみるといいです。感謝するといろいろメリットがあります⇒幸せになる最強の方法、感謝する気持ちがうむ7つの効果。
4.ネガティブなセルフトークをやめる
セルフトークとは、頭の中であれこれ考えている言葉です。できるだけポジティブな言葉、それが無理ならニュートラルな言葉を自分に言ってください。
ネガティブな人は、ふだんの言葉遣いからしてネガティブです。
「私も性格がとてもネガティブなので」と書いていますが、これは「自分はネガティブである」と自分で決めているのです。他の人からも、「あんたって、ほんと暗い」と言われたことがあるのかもしれませんが。
ですが、たとえそう言われたとしても、「ふむ、そういう考え方もあるのか、でも実は私はポジティブなんだな、これが」と、人の意見を採用しなければいいだけの話です。
もしこれから前向きになりたいのなら、わざわざ自分で自分をネガティブだと言わないようにしてください。言えば言うほどネガティブになります。これは本当ですので、気をつけてください。
口癖は自分で自分に呪文をかけているようなものなのです。
ネガティブな言葉を言ってしまったら、脳内でポジティブな言葉に言い換えてください。物は言いようで、どんなに否定的な言葉も肯定的な言葉に言い換えることができます。なぜなら、どんなことにも二面性があるからです。
ロマさんはモーニングページを書いておられるでしょうか?モーニングページについて⇒ネガティブ思考改善にモーニングページがいい~今月の30日間チャレンジ
一度、思いっきりネガティブなことをモーニング・ページに書いてください。その後、すべてをポジティブかニュートラルな言い方に変えて書き直します。言い換え練習をするのです。これは頭の体操にもなるのでおすすめです。
なんでもネガティブに考えてしまうのは考え方のクセ、つまり習慣です。何もしないでいると、いつもと同じ考え方をしてしまいます。言い換え練習を続けると、だんだんニュートラルに考えるのが上手になります。
5.自分のケアを忘れない
今、仕事もされていると思います。仕事と介護で疲れているでしょうから、自分の心と身体のケアもちゃんとしてください。
一人っ子だそうですが、親戚に介護を手伝ってくれそうな人はいないのでしょうか。
利用できる介護サービスはできるだけ利用して、たまには介護を休んでください。介護サービスを頼めない状況なら、家事の負担が楽になるように、家政婦さんなど家事代行サービスを頼むと、休めます。
何でも自分1人でやろうとすると破綻するので、人に頼める状況なら積極的に頼んでください。
こういうところにお金を使うのは意味のあることです。
ずっとお母さんの看病で家の外に出られないわけではないですよね?そのあたり状況がよくわかりませんが、あまり介護を頑張りすぎないことが大切だと思います。
継続的に運動をするのも、自分をいたわる1つの方法です。瞑想も試してください。
同じ問題をかかえている人たちのサポートグループに入ったりするのもおすすめです。親しい友だちに話をするだけでも気分が晴れます。
人に話をするときは、できるだけポジティブな考え方をする人を選んでください。
6.起きたことは変わらない、自分の反応を変える
自分でコントロールできないことは放置して、自分が変えられることを自分にとって益があるように変えてください。自分が変えられるは自分の思考と行動だけです。
お母さんがトイレで失敗したときの匂いでネガティブになるそうですが、そういう反応は自分で選んでいます。
起きたことは変わりませんが、それに対する反応を変えることはできます。詳しくはこちらをどうぞ⇒認知行動療法(CBT)を使って片付けられない思考を手放す方法。
トイレの失敗の匂いがただよってきて「あ、くさい。嫌だ」と思うのはごく自然な反応です。これは感情が反応しています。こうした一次反応は変えられないでしょう。ですが、その直後、「では、どうするか」という二次反応は変えられます。
気持ちが落ち込みそれをひきずるのも、「さっさと片付けて次に行こう」とニュートラルな反応をするのも、自分で選ぶことができます。
ほかにも介護している局面で意識すれば自分の反応を変えられることはいろいろあるはずです。これもモーニングページなどに書き出してみてください。
お母さんのやることで、気分が落ち込むことは多々あるでしょう。それをひきずらないでください。外的状況に自分の気持ちを決めさせない、ということを意識するとよいです。こちらの動画をごらんください⇒幸せは自分の心の中にある、幸せをアウトソーシングしてはいけない(TED)
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以上、困難な状況でポジティブでいられる方法を紹介しました。こういう記事を書くと、「筆子さんには他人ごとだからつらい人の気持ちがわからない」というメールが来たりします。それはそうです。私は当人ではありませんので、本当の大変さとかつらさはわかりません。
だから、自分でなんとかするしかありません。その「自分でなんとかするヒント」を書いているわけです。
それと無理にポジティブになろう、と思わなくていいです。それはそれでしんどいです。淡々とやるべきことをし、日常の小さなことに感謝をし、お母さんと2人だけの時間を楽しむ、という方向に持っていくとよいのではないでしょうか?
簡単ではないかもしれませんが、考え方を変えなければ、しんどくなるばかりです。