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正しい呼吸法を教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、How to breathe(呼吸の仕方)。プレゼンターは、臨床心理士で呼吸のエキスパートのベリサ・ヴラニッチ(Belisa Vranich)さんです。
呼吸法:TEDの説明
Breathing – so essential to life, and yet most of us are doing it wrong! Dr. Belisa Vranich, psychologist and breathing expert, shares some surprising information about breathing and teaches us all how to do it right.
呼吸は生きるのに不可欠ですが、多くの人は、間違ったやり方をしています。
心理学者で呼吸の専門家、ベリサ・ヴラニッチ博士が呼吸に関する驚くべき情報をシェアし、正しくやる方法を教えてくれます。
動画の長さは10分半。英語ほか数カ国語の字幕があります。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
動画後半では実際にタクティカルブレスと呼ばれる呼吸法を皆で練習しているので、訳を読むより、見ながらやったほうがわかりやすいです。
肩で呼吸するのは間違い
深呼吸してください。
まっすぐ座って、肺がいっぱいになるまで大きく吸って、吐き出します。
息を吸っているとき、少し背が高くなったように感じますか?
息を吸うと、上のほうに伸びて、吐くと、もとにもどりますか?
このような呼吸を、私は『縦型の呼吸』と呼んでいます。
このやり方は、解剖学的に不自然な呼吸です。
体に沿った呼吸ではありません。
ところが、10人のうち9人までが、この呼吸をしています。
縦型の呼吸の弊害
この呼吸をしているとどんなことが起きるか?
まず首や肩の筋肉を使いすぎてしまいます。
首や肩の筋肉は、呼吸に使う筋肉ではありません。
小さな動きでも、1日に何千回、1年に何万回、何年も行います。
もし首や肩が痛むなら、車やパソコンのせいにする前に、呼吸のせいではないかと疑ってください。。
次に、この呼吸では、肺の上のほうしか使いません。
肺のなかでもっとも酸素が入り込む場所は、ここです。手を当ててみてください。
縦型の呼吸をしているとき、この部分を使っていませんよね?
だから、浅い呼吸を何回かすることになります。必要な空気を取り込むために、すばやく。
呼吸とストレスの関係
迷走神経 (vagus nerve)は、後頭部から体全体に行き渡っています。
vagus はラテン語で、『さまよう人』という意味です。この神経は体中からシグナルを受け取り、脳にどう感じるべきか伝えています。
縦型の呼吸をしていると、迷走神経は、自動的に体を『戦うか逃げるかモード』にします。周囲で起きていることとは関係なく。
この呼吸とストレスの関係に私は興味を持ちました。
数年前の秋、朝起きたら、あごに鈍い痛みを感じたので、歯医者に行きました。
私は強迫的なタイプA(補足の説明参照)なので、歯ぎしりするだけでなく、歯を粉々にしてしまったのです。
治療をしたあと、自分はうまくストレスをコントロールできていなかったとわかりました。
ストレスが私をコントロールしていたのです。
変わらなければなりません。
呼吸は健康に大きな影響がある
ヨガを習い始めたら、毎回、セッションの最初に呼吸の練習がありました。
ますます呼吸に興味を持ち、手当たりしだい受講し、本や論文を読み、いろいろな呼吸法を学びました。
周囲の人のほとんどが、正しい呼吸をしていなかったのが気がかりでした。
呼吸は、睡眠、腰、消化、記憶、不安、その他、からだの思いもよらない部分、たとえば食道や骨盤底に影響を与えます。
免疫系や副腎、酸性度にも影響します。
呼吸法を教え始めた
その後、私は学んだことを体系化し、呼吸法を教え始めました。
最初のクライアントは、SWATチーム(アメリカの特殊部隊)や、国土安全保障省、DEA(アメリカ麻薬取締局)、国境警備員、軍隊などです。
呼吸が重要なことをみな知っているのです。
古代のヨーガ行者によれば、私たちは、一定の数の呼吸を持ってこの世界に生まれ、それを早く使ってしまえば、早死し、深くゆっくり使えば長生きします。
この言葉が言われた4000年後、フラミンガムの研究から、呼吸の仕方を見れば、どれくらい長生きするか、数値として予測することができるとわかりました。
寿命と健康の度合いがわかるのです。
間違った呼吸をしてしまう理由
「私の呼吸の仕方は間違っているの? どうしてそんなことに?」こう皆さんは思うかもしれません。
すべてが皆さんのせいではありません。
5歳から10歳のあいだのどこかで、下のほうではなく、上のほうでする呼吸に変わります。
そうなってしまう理由はいくつかあります。
まず、学校へ行って、長時間椅子に座るようになること。
座ると姿勢が変わって、呼吸の仕方も変わります。
医者に行くと、ここに聴診器を当てられ、「深く吸って」と言われるので、「ああ、肺はここにあるんだ」と思ってしまいます。
誰かに、おなかを突っつかれ、太っていると言われれば、おなかを引っ込めようとします。そしてそれが何年も続きます。
大人になってからも、おなかをひっこめれば、やせて見えると、おなかを引っ込めるのです。
この姿勢は、恐怖に対する反応で、走って逃げるか、戦う準備、モードです。
腹筋を緊張させれば、体幹が強くなるという神話を信じているせいもあります。
このようなことから、からだの上のほうで、呼吸をするしかなくなるのです。
幼児や動物は正しく呼吸している
ではどうしたらいいのでしょうか?
幼児、犬、猫、魚を見てください。皆、体の真ん中で、横隔膜を使って呼吸しています。
間違った呼吸をしてしまうのは、横隔膜のことをよくわかっていないから。
横隔膜は、体を横切る大きな筋肉で、胸部と消化器官を隔てています。
ここに横隔膜があるのは、呼吸を助けるため。
だから、横隔膜ともっと親しくなりましょう。
横隔膜を使う
指を胸骨の上に置いてください。さらに、肋骨をまわってここへ。
肋骨は、バケツの柄のように、胸骨にくっついています。
息を吸うと、肋骨は水平に開きます。息を吐くと、せばまります。
今こそ、呼吸に注意を向けるべきでしょう。
パソコンやスマホのモニターを見ることが多いから、呼吸が浅くなりがちです。
おなかを使って呼吸する
椅子の上にまっすぐ座って呼吸の練習をしましょう。
ロック・アンド・ロールと呼ばれる練習です。
おなかに指を置いて、横隔膜が動くよう、ちょっと大げさに行います。
息を吸って、お腹をひろげ、吐いて、絞ります。おへそが背中に近づきます。
腹筋を使ってください。
吸って、おなかを前に出し、吐いて、締めます。
前に出して、引っ込める。
こうすると、水平に呼吸します。
タクティカルブレス
数を数えながら呼吸します。軍隊で行われているタクティカルブレス(Tactical Breath)です。
4秒、息を吸い、4秒、息を止め、6秒、息を吐き、2秒、息を止めます。
やりましょう。
吸って、2,3,4
止めて、2,3,4
吐きます、2,3,4,5,6
止めて、2
吸って、2,3,4
止めて、2,3,4
吐いて、2,3,4,5,6
止めて、2
吸って、2,3,4
止めて、2,3,4
吐きます、2,3,4,5,6
止めて、2
目を閉じて、2,3,4
止めて、2,3,4
吐いて、2,3,4,5,6
止めて、2
吸って、そのまま呼吸を続けてください。美しい、解剖学的に合った、下のほうでする水平呼吸を。
//// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
pulverize 粉々にする
havoc 大破壊、大混乱
diaphragm 横隔膜
sternum 胸骨
fight-or-flight mode 戦うか逃げるかモード、戦うか逃げるか反応
過去記事で何度も登場していますが、大きな脅威、恐怖、危険を前にしたときの体の反応です。交感神経系が活発になり、脈拍や血圧があがり(心臓がどきどきする)、敵と戦うか、逃げることができる体勢です。
大きな危険がさしせまっていないのに、ストレスや緊張のせいで、このモードになってばかりいると、興奮しっぱなしで、体によくありません。
type A A型行動性格。1950年代にアメリカの医師、フリードマンとローゼンマンが、虚血性心疾患の患者に顕著な行動パターンとして発表したもの。
この2人は心臓病のお医者さんです。
タイプAは、競争心、攻撃性、完璧主義的傾向、承認欲求や出世欲が強く、野心的で仕事熱心な人。
このような人は、ストレスも多いから、病気になりやすいと考えられています。逆のタイプは、タイプBで、のんびり、おっとりマイペースで穏やかに生きるタイプです。
とはいえ、この分類方法に疑問を呈している人もたくさんいます。
科学的な裏付けがあまりないとしても、日常生活で、「あなたはタイプAね」とか、「私はタイプAなの」とよく使います。
タイプA、タイプBの説明(3分)
英語ですが、画像を見ていればだいたいわかります。
■タクティカルブリージングのやり方
プレゼンで行っていたのと同じですが、ヴラニッチさんのおなかの動きを見ながらやるとわかりやすいです。
1分38秒
うまくやれないときは、動画の速度を落として、やってみてください。タクティカルブリージングをするアプリもあります。
もっと詳しく知りたいときは、ヴラニッチさんの本をお読みください。
アクションに関係のあるほかのプレゼン
幸せになれる動きとは? 姿勢や動作が気持ちに与える影響(TED)
『必要なのは10分間の瞑想だけ』~物より心が大切です(TED)
ウォーキング・ミーティングのススメ。健康にいいし仕事もはかどる(TED)
なぜ運動するのを面倒に感じるのか?あるいは断捨離を始められないのか?(TED)
意識して呼吸をするすすめ
誰もがあたりまえのようにしている呼吸は、実は、健康に大きな影響があるのですね。
人は、無意識にいつでも呼吸をしていますが、呼吸は、意識的に制御することもできます。
1日に1回ぐらいは、意識的に呼吸をすると、もっとマインドフルな生活になるでしょう。
呼吸をするとき、特に道具もいらないし、空気さえあれば場所も選びません。
緊張したときや、リラックスしたいときだけでなく、衝動買いしそうになったときも、意識的な呼吸をすると、買い物から気持ちをそらすことができます。
私の体験では、「わあ、あれ欲しいな」と思うのは、そのとき、ほんの数秒だけです。視覚的刺激に対して反応しているだけなので、タクティカルブリージングをして、自分を取り戻してください。