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思い込みを手放し、もっと自由に生きるのに参考になるTEDの動画を紹介します。
デザイナーのデイヴィッド・ケリー(David Kelley)さんの、How to Build Your Creative Confidenceです。直訳は、クリエイティブな自信を作りあげる方法。邦題は、「自分のクリエイティビティに自信を持つ方法」です。
誰でも生まれつきクリエイティブなのに、みんなそのことを忘れてしまっている。クリエイティブであることを思い出し、自分のやりたいことをやってほしい、という話です。
デザイナー向けの話に思うかもしれませんが、ふつうの人にもひじょうに学びのあるプレゼンです。
自分のクリエイティビティに自信を持つ方法のTEDの説明
Is your school or workplace divided into “creatives” versus practical people? Yet surely, David Kelley suggests, creativity is not the domain of only a chosen few. Telling stories from his legendary design career and his own life, he offers ways to build the confidence to create…
学校や職場で、「クリエイティブな人」と「実務的な人」に分かれていますか?
ディヴィッド・ケリーは、創造性は選ばれた少数の人が持っているものではない、といいます。自身の伝説的なデザイナーのキャリアと個人生活の話をおりまぜながら、ケリーは何かを作り上げる自信を持つ方法を提案します。
収録は2014年3月。動画の長さは11分46秒です。日本語字幕です。動画のあとに抄訳を書きます。
※トランスクリプトはこちら⇒David Kelley: How to build your creative confidence | TED Talk | TED.com
※TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
多くの人が子供のときに自信をなくす
自分はクリエイティブなんだという自信をもつ話をします。
オハイオ州のバーバトンで、少学校3年生のときのこと。
親友のブライアンが粘土で馬をつくり始めました。ところが、クラスメートの女子がそれを見て、「すっごい変。馬に全然見えない」と言ったのです。
ブライアンはがっかりして粘土を丸め、元あった場所にもどしました。その後、ブライアンが粘土で何かを作ろうとしたことはありません。
よくあることですよね。この話をするたびに、たくさんの人が「同じ体験をしました」と言いに来ます。
先生や級友の残酷な言葉に、一気にやる気をなくしてしまうのです。自分にはクリエイティビティのかけらもないと思って。子供のときこんな体験をすると、大人になっても考えは変わりません。
皆、他人に批判されることを怖れている
私のデザインのワークショップ中、ちょっと型破りなことをやろうとすると、重役たちは携帯電話を取り出して、部屋を出て行こうとします。
「どうしたんですか?」と聞くと、「私はクリエイティブなタイプじゃないんで」という返事。でも、これは本当ではありません。
やりかけたことを最後までやり通せば、すばらしい物を作り上げ、みなびっくりします。
人々が批判をうけたり、ジャッジされることを怖れているのをずっと見てはがゆく思っていました。批判されるのが怖いから、やろうとしないのです。
恐怖症を直すアルバート・バンデューラ
心理学者のアルバート・バンデューラ氏に出会ったとき、私は大きなブレークスルーを体験しました。
バンデューラ氏はとても著名な心理学者です。
彼は恐怖症に関する研究を長年続けており、私はとても興味をひかれ、会いにいったのです。バンデューラ氏は恐怖を感じている人々を短い時間で治してしまいます。4時間です。
蛇を怖がっている人を蛇のいる部屋につれていく、といいます。最初はみな、すごく拒絶するのですが、バンデューラ氏は、段階的に患者を蛇に慣れさせます。
最初はマジック・ミラー越しに蛇のいる部屋を見ます。その後、いくつかのプロセスを経て、蛇のいる部屋の前のドアに立ちます。
その後さらに、小さなステップを積み重ね、皮の手袋をはめて蛇にさわることができるようになります。
最後には素手でさわれるようになり、これまでずっと悩まされてきた蛇恐怖症が治ります。「蛇ってとてもきれいですね」なんて言って、蛇を持ち上げひざにのせる人もいます。
バンデューラ氏はこのプロセスを「案内された熟練(guided mastery)」と呼びます。
蛇恐怖症が完治した人々は、人生のほかの面でも心配ごとが減ります。以前より粘り強く物ごとに取り組み、失敗しても簡単にくじけません。
彼らは新しい自信を獲得したのです。
バンデューラ氏はこの自信を「自己効力感(self-efficacy)」と呼んでいます。自分は世界を変えられるし、自分は自分の求めているものを手に入れることができる、という気持ちです。
バンデューラ氏に会って、本当にすっきりしました。彼は、30年間、私が見てきたことを文章にし、科学的に実証したのです。
「自分はクリエイティブじゃない」という恐怖を持っている人たちをいざない、小さな成功を積み重ねさせ、次第になじませ、変えていきます。本人たちも驚きます。びっくりするような変化です。
理論派だと思っていた人たちが、段階的にクリエイティブな人に変わっていき、本人も自分はクリエイティブだと思うようになります。d.school(ケリーさんも教えているクラス)でも起きています。
1つの例を紹介しましょう。
MR装置を怖いものから楽しいものに変えた人
ダグ・ディーツという技術者がいます。彼は医療用の画像装置をデザインしています。すばらしい業績をあげていました。
あるとき、彼は大きな問題にぶつかったのです。
自分がデザインしたMRI検査装置を前にして、小さな女の子がすごく怖がって泣いたのです。その病院ではMRI検査をする前に、子供の患者の8割が鎮静剤を必要としていました。
彼はこの事実にショックを受けました。自分のデザインした装置は多くの人の命を救うと誇りに思っていたのに、子供たちが怖がっていると知り、悲しくなってしまったのです。
この頃、彼はスタンフォードのd.schoolでデザイン思考や、共感すること、相互に作用をもたらす試作を学んでいました。
彼はこの知識を使って、MRI装置をまったくデザインしなおし、子供たちが楽しい冒険をできる装置にしました。
部屋の壁や装置に絵を描いて、子供の気持ちがわかるようにオペレーターを再教育しました。子供たちには、船の音がするよ、ゆれるよ、これから海賊の船にのるんだ、と言ったのです。海賊に見つからないように静かにしてなきゃだめだよ、と。
この装置を導入したら、鎮静剤が必要な子供たちは10%に減りました。
麻酔の専門医を呼ばなくてもよくなったので、以前よりずっと多くの患者の検査をできるようになりました。
ある女の子はスキャンを終えたあと、「ママ、また明日もここに来れる?」と母親に聞いたのです。
彼の個人的な変化がデザインにブレイクスルーを起こしたと彼は私に何度も語りました。女の子の話になると目に涙を浮かべていました。
病気になって自分のやりたいことがわかった
ダグの体験は病院で起こりました。私自身、病院にはなじみがあります。数年前首にしこりができて、MRI装置で検査しました。
しこりはガンでした。生存率は40%。
ガンマ線の治療を受ける順番を待っていたとき、いろいろなことを考えました。生き延びられるのか?自分がいなくなったら娘はどうなってしまうのか?
自分は地球に何を残したのか?自分の使命は何だったのか?その頃私はいろいろなことに携わっていました。
いろいろ選択肢はありましたが、結局私は、人々が、自分はクリエイティブなんだという自信をつけるのを手助けしたいと思ったのです。それが私の一番やりたいことでした。もし生きながらえたら、そうしようと思いました。
ごらんのように私は生き延びました。
人が自信を持った時、自分たちにとってとても大事なことに取り組み始めます。IDEO(ケリーさんの会社)やd.schoolで何度も見た光景です。
それまでやっていたことをやめて、全く新しい方向に向います。もっとおもしろいアイデアをどんどん思いつくのです。
TEDはこの世界を変えるアイデアを伝える場です。私にそのアイデアがあるとすれば、この自信を生み出す手助けをすることです。
みなさんも、実践的先駆者(though leader)として私の試みに参加していただけるとうれしいです。
この世界の人々をクリエイティブな人と、クリエイティブじゃない人に分けないでください。誰でも、生まれつきクリエイティブなのです。
自分のアイデアを開花させるべきです。バンデューラ氏のいう、自己効力感を達成して、やりたいことをやるのです。クリエイティブであるという自信を回復し、蛇をさわってほしいのです。
//// 抄訳ここまで ////
補足:アルバート・バンデューラの自己効力感
バンデューラはカナダ生まれの心理学者。1925年生まれ。91歳でまだ健在です。彼は社会的学習理論(モデリング)を提唱し、教育、その他の分野に大きな影響を与えています。
自己効力感(self efficacy)は「自信」と似ていますが、少し違います。始めてやることでも、やる前に、「自分ならできそうだ」と成功する見込みを感じることです。
自己効力感が低い人は、「どうせできっこない」と思っているため、その行動を起こしません。自己効力感はある種の思い込みです。
汚部屋における自己効力感の高め方
汚部屋にはまっている人は、「どうせ私は片付けられない人だから」と思い込んでいることが多いです。人はいつもの自分でいるほうが安心できるので、きょうも物を捨てず、片付けない、きのうと同じ自分でいることを選択してしまいます。
バンデューラが蛇への恐怖をとりのぞくことに使っている方法をまねして、「汚部屋が好きな自分」から「きれいな部屋が好きな自分」になじんでいくと、うまく片付けられそうです。
バンデューラ式の研究室にいけば、専門家がガイドしてくれますが、自分の部屋には自分しかいません。そこで、自分で自分をだんだん新しい自分にならしていってください。
具体的にはこんなことをするといいでしょう。
1.成功体験を重ねる
ほんの小さな場所でいいので掃除をしてみます。また、財布や化粧ポーチなど小さな入れ物の中身を片付け、きれいにします。
こうした小さな成功体験を重ねることで、汚部屋を片付けられる自分になっていきます。
2.疑似体験(他人の成功の追体験)する
元汚部屋だった人が、きれいな部屋にするさまを見たり、聞いたりします。モデリングみたいなものです。モデリングとは真似することです。
当ブログや私の本にも、物を持ちすぎてぐしゃぐしゃの部屋にいた私がミニマリストになった過程を書いているので、よろしければ追体験してください⇒何度も失敗したけど、今も前を見て進んでいます~「ミニマリストへの道」のまとめ(1)
あの人にできるなら、私にだってできるという気になります。
3.誰かに励ましてもらう
家族がいたら、「あなたならきっと片付けられる」と言ってもらいましょう。
誰もいなかったら、自分で自分を励ましてください。
4.気分をあげる
暗い気持ちでいると暗いことを考えるので、明るい気分になる音楽を聞いたり、美しい自然の中を散歩して、気分をあげるようにしてください。
クリエイティビティと断捨離とどんな関係があるの?
このブログのテーマはミニマルライフや断捨離なので、それとクリエイティビティとどんな関係があるんだ、といぶかる人もいるかもしれません。
創造性を発揮しないということは、これまでと同じ状況にはまったまま、全く変化を起こさない、ということです。困ったことや、不都合なことがあっても、「しかたない」と思ってしまうのです。
クリエイティブでない人は、発想が貧困なため、新しい世界の可能性を考えることができません。
汚部屋を脱出するためには、もっと創造的になるべきです。
そのために、
・むやみに人の目を怖れない⇒世間体を気にするから物もストレスも増える。気にしない方法教えます。
・モーニングページを書く⇒モーニングページの書き方、やり方を教えてほしいという質問の回答。
・自分の思い込みを疑う⇒認知行動療法(CBT)を使って片付けられない思考を手放す方法。
この3つをやってみてください。
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日本では人間を文系と理系に分けることがあります。海外ではこういうふうにカテゴリー分けすることはないと思います。少なくとも私は聞いたことがありません。
さらにやたらと血液型を問題にします。わたしはA型だからこうだ、とか、B型だからこうだ、というように。
コミュニケーションのツール、1つのネタとして人間の分類法を話題にするのならいいと思いますが、自分1人でいるときは、あまり自分のことを「私は~系、~型」という枠にはめないほうがいいです。
自分で自分に枠をはめると、クリエイティブになれません。