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情報があふれ、気忙しい毎日だからこそ、もっとスペース(ネットを使わない時間)を作ろうと伝えるTEDトークを紹介します。
イライラしがちな人におすすめのプレゼンです。
タイトルは、How to make space in a world with too much technology (テクノロジーがありすぎる世界で、いかにスペースを作るか?)
生産性のコーチで、スペースメーカーの Daniel Sih (ダニエル・シー)さんの講演です。
technologyは、技術ですが、このトークでは、デジタル技術(スマホやパソコン、インターネットなど)のことです。
スペースを作る:TEDの説明
How we need space from the online world to think deeply, rest fully, and reconnect with people in our lives, and this requires a new set of productivity skills and practices.
深く思考し、しっかり休み、実生活でかかわりのある人々とつながるために、オンラインの世界で、どうやってスペースを作ればいいのでしょうか? スペースを作るためには、新しい生産性のスキルと練習が必要です。
収録は2023年の2月、長さは16分47秒。自動生成の英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
コンセプトはシンプルだし、シーさんは、ゆっくりしゃべっているので、わかりやすいプレゼンです。
どんなにがんばってもさばききれない情報
人生は忙しく煩雑です。
情報、メール、タスクはどんどん増え、それらをこなすスペースは十分でがありません。
このグラスが私たちの有限のキャパシティや限られた時間、エネルギー、意識を示しているとしたら、中身があふれたグラスこそが、デジタルエイジの人生でしょう。
テキスト、会議、通知、送り迎え、ダンスの練習、NetflixやYouTubeで見るべきものは尽きません。
私自身の人生や、私がコーチをしているリーダーたちの生活を考えると、多くの人は、これ以上の情報を必要とはしていません。
必要なのはチャンス、スペース、思考するスペース、休息、計画、呼吸、好奇心や創造性をもてるスペース、内面世界について考えるスペース、自分が誰で、どこへ向かっているのか振り返るスペーです。
デジタルエイジになって、私たちは、自分で効率よくちゃんと対応できるポイントを越えてしまいました。
このグラスのように、いつも自分でできる以上のことがあるんです。
不安になりますが、これはよいニュースでもあります。
どんなにがんばっても、いつも、自分でこなせる以上のことがあるという事実を受け入れたのですから。
現実を受け入れ、優先順位に従って、グラスにいれるものを選び始めるのです。
重要なのはスペースを作ること
このトークでは、混乱した世界で、スペースを大事にすることをおすすめします。
いつも忙しい理由や、大事なもののためにスペースを作ることをお話しします。
誤解しないでください。私はテクノロジーが大好きです。テクノロジーを使ってよ生産性をあげる方法をコンサルティングしています。
インターネットのおかげで私は、ホバート(オーストラリア連邦タスマニア州の州都)にいながら、ロンドン、パリ、ニューヨークのリーダーたちをトレーニングできています。
しかし、同時に、いつもオンラインでいることに居心地悪さも感じています。この状態が、健康、幸福、人間関係にどんな影響を与えるか?
娘にこんなことを言われたことがあります。
「パパは、テクノロジーがあふれる世界で、スペースを作ることについて本を書いているくせに、いつもパソコンをやっているのね」。
その通りなんです。私は、ネットの世界と健全な関係をもつことに、苦労しています。
それでも、モニターを見てばかり見ていないで、休息をとることが重要だと気づきました。
単なるZoom疲れじゃない疲労があり、気が散っていますから。
何かを変えないと自分自身が失われるような感覚があります。
問題はテクノロジーそのものではありません。何をどれだけテクノロジーで置き換えるかが問題です。
人生は1度だけ。Tiktokで1時間使えば、その時間、べつのことはできません。
自分のグラスをデジタルな活動で埋めすぎているため、ほかのことができないんです。これは問題ですよね。
ネットに時間を費やすとどうなるか?
若いとき、私は、ピアノを弾いていました。というか、両親に言われてピアノを習っていたんです。
両親は私に1日15分練習するように言いましたが、ときにはその15分が、一生涯のような気分でした。
でもがまんして練習しているうちに、だんだんピアノを弾くのが楽しくなり、うまく音楽を奏でられるようになりました。
これは、神経可塑性(neuroplasticity ニューロプラスティシティ)の一例です。脳は、いつもやっていることに影響を受けて変わっていきます。
ニューロンが成長し、回路が生まれます。
ピアノを練習すれば、音楽を担当する脳の部分が広がって、世界との関わり方が変わります。
運動や語学、芸術もおなじです。インターネットも。
もう20年ピアノを弾いていませんが、インターネットはたくさん練習しています。
オーストラリアの人は1日に平均9.4時間もインターネットを使っていて、会社員はもっと使っています。
毎日、9.4時間、すなわち週に65時間、ピアノを練習したらど私の脳はどうなるでしょう?
食べ過ぎやお金の使いすぎとは違って、インターネットのやりすぎは、目に見える変化がありません。
それは脳内で起こり、物事の見方を変えます。
集中できず、周囲の人に意識やエネルギーを使えないのは、このせいではないでしょうか?
これは、インターネットの使いすぎの症状ではないでしょうか?
あるポイントまでは技術は生産性をあげる
この問題を生産性の観点から見てみましょう。
生産性は、何かをたくさんすることではありません。自分自身、価値を感じていることや目的、なしとげたいことを知り、それにそって暮らしていくことです。
こうするために、人はスペースが必要です。
私がコーチしたリーダーの中で、テクノロジーを使っている人ほど、生産性が低いのです。
技術を使ってたくさんのことをするけれど、それは必ずしも適切なことをしているわけではありません。その理由に興味がわき、技術と生産性、スペースの関係を調べました。
技術が高いほど、生産性が向上すると言います。確かにそういう面はあります。
生産性をあげるためには、技術が必要ですが、技術があればあるほど、生産性がどんどんあがるかというと、そうではありません。
ある地点までは、技術が生産性をあげますが、その点を過ぎると減っていく、収穫逓減(しゅうかくていげん)の法則(Diminishing returns)が起きているとしたら?
これもある意味、正しいです。しかし、この場合、オンラインにいることはポジティブな影響しかないと仮定していますが、この点については証明されていません。
しかしその後は逆に生産性が落ちる
技術と生産性の正しい関係性はこれです。
逆さのU字カーブを描いており、3つのパートに分かれています。
カーブの左側にいるときに、スマホやノートパソコン、アプリを手に入れ、技術を学べば、そうしないときより生産性があがります。
そのうち、技術を投入しても、生産性があがらなくなるポイントに到達します。
その後も、朝起きてすぐにスマホを見て、夜寝る前もスマホを使う生活を続け、いつもオンラインにいると、カーブの右側に落ちていき、デジタルの使いすぎを経験します。
すると集中できなくなり、気が散って、他の人とのつながりも失われます。
幸せになる代わりに、メンタルヘルスが衰えて、不幸になります。
COVIDが起きて、たいていの人が、カーブの右側に落ち、デジタルの使いすぎにより疲弊してしまいました。
新しいスキルが必要
これが人類の新しい状況ですから、新しい思考や解決法が必要です。
意図的にオフラインになってスペースを作らないと、いつもオンラインにいる結果になります。
だから、デジタルエイジで生産的でありたかったら、私たちは、2つのスキル、または習慣が必要です。
ペースをキープする習慣とスペースを作る習慣です。
ペースのキープは、やり続けること。最良の結果が得られるよう技術を使い続けること。
スペースを作るのは、スピードを落として、オフラインになり休息をし、ベストの仕事をしつつ、人生を送るため、生産性の一番高いところにいられるようにすること。
つまり、ペースとスペースが必要で、これは個人の生産性の陰と陽です。
ほっておくとどこまでもスクロールしてしまう時代において、幸せで健康で生産的であるためには、この2つが必要なんです。
スマホを使わない日
ではどこから始めたらいいのか?
どうやったら日常的にスペースを作れるか?
ある意味、それは簡単です。
スマホの電源を切って、向こうの部屋に置き、ほかのことをすればいいのですから。
でも、ことはそんなに単純ではありません。
現実には、オフラインでいるのは難しいでしょう。
以前、私が、1週間に1日、スマホの電源を切って、しっかり休んでいることをブログに書いたことがあります。すると、「なんのためにそんなことをするんですか?」というコメントをもらいました。
週に1日、スマホを使わないのはおもしろそうだけど、現実にはできないと、みな、思っています。
大事なメッセージやイベントの知らせが来るかもしれないし、外に出たら突然雨が降ってくるかもしれないし。
みな、自分が失ってしまうことに意識を向けているんです。
でも、これはものの見方の違いです。私は、自分が得るものにフォーカスしています。
オフラインにならない限り、私は、ずっとオンラインですから。
オフラインで得られるもの
週に1日、オフラインになれば、もっと平穏な気分になれるし、ホワイトスペースに満ちた日を楽しめます。その日、意味のある活動ができます。
ときには、ベーコンエッグを作り、ときには家族でボードゲームをし、ときには静かに読書します。
マウンテンバイクに乗るのも楽しい。新鮮な空気を吸えば、気分転換ができます。
ガーデニングをしてもいい。小さな事柄に意識を向けるときもあるし、人生の大きなことに興味を持つこともあります。
このようなことをするためには、スペースが必要なんです。
もちろん、スマホをさわらない日に、のがしてしまうことはあるでしょう。でも、得られるもののほうが多いんです。
スクリーン以外の世界から得られる人生の深い息吹を体験できるから。そして、常につながっている状態から開放されます。
スペースを作るアイデア
もし、週に1日休むのが長すぎるとか不都合であるなら、もう少し小さなことから始めてみてはどうでしょうか? 3つ方法を紹介します。
1日の始まりと終わりはスマホを使わない
まず、スマホを寝室以外の場所でチャージして、1日の始まりと終わりに、小さなスペースを作るのはどうでしょう?
1日の始まり方と終わり方はとても重要ですが、多くの人が、スマホを使っています。アラームにしていますからね。
そして、よくないニュースやメールと一緒に、1日を始めてしまうんです。
代わりに静けさやスペースとともに1日を始めるのはどうでしょう?
祈りや瞑想、感謝、これから始まる1日について思いをめぐらすのもいいですね。
そして、1日の終わりは、紙の本を読んだり、日記を書いたり、ベッドで隣にいる人と会話するのもいいですよね。
食卓でスマホを使わない
スマホなしで食事をするというアイデアもあります。
食卓は大事な人たちと会話したり、価値観を共有するのに最適な場所です。
いつも家族で一緒に食事をしている家庭の子どもたちは、宿題をするスキルが高く、成績もよく、感情のコントロールも上手です。これは、人生を変える習慣なんです。
イヤホンをせずに運動する
もう1つ、イヤホンをせずに運動するのはどうですか?
週に何日かは、デバイスを持たずに散歩に行くのです。私はオーディオブックやポッドキャストが大好きですが、いつも他人の考えで自分の心を埋める代わりに、自分自身の考えをめぐらすことにも価値があります。
すでに聞いたことのある情報について考えて、自分の人生に応用します。
あるいは、運動しながら、ただ静かに、周囲の世界に注意を向けます。
スペースを作る練習をする
スペースを作るには練習が必要です。デジタルエイジにおいて、人生の豊かさを体験するために、習慣的にオフラインになるのはスキルなんです。
今週、いつもより少しスペースを作るのはどうですか?
思考して、休息するスペースです。私がお伝えしたことを試してみるのもいいし、全く違うことをしてみてもいいです。
今ここで、静かな時間をさしあげます。止まって、スペースを持ってください。
〈1分ほど会場が静かになる〉
情報、ノイズがあふれている世界では、誰もがもっとスペースを求めています。
しかし、スペースを作ることは、技術、生産性、オフラインになることに、さほど関係ありません。
それは、人間性の問題で、自分がどんな人生を生きたいのかに関係があります。
人生で一番よかった瞬間
以前、子どもたちに聞いたことがあります。「自分の人生で一番よかった瞬間について話してみて」と。子どもたちの答えはどれも素敵でした。
友人とトランポリンでジャンプしたこと、家族でミニゴルフをしたこと、幼いとき、寝る前に私が子供たちにギターを弾いて聞かせてあげたこと。
どれも、シンプルなことばかりですが、とても人間的です。
皆さんの生きたい人生、これまでの人生で一番良かった瞬間は何ですか?
多くの人にとって、一番よかったときは、生きていると感じられたとき、わくわくし、リアルで誰かとつながったり、スピリチュアルな体験をしたときで、それはオンラインではめったに感じられません。
人生でかかわりのある人々と一緒にいるために、自然とつながるために、リスクをとるために、好奇心をもつために、創造的であるためにはスペースが必要です。
自分自身について考えるために、世界に感動するためにはスペースが必要です。
技術やオンラインの世界の恩恵を受けつつも、少しスペースを作って、オンラインの世界にはない人生を深く体験してください。
///// 抄訳ここまで ////
補足
the law of diminishing returns 収穫逓減(しゅうかくていげn)の法則。一定の土地からの収穫量は、資本や労働が増えれば、ある点までは、増えていくが、その点を超えるとだんだん減少していくこと。
シーさんの著書です。
きょうの時点では、Kindle Unlimitedを利用している人は、読み放題で読めます。
デジタル技術との付き合い方に関するプレゼン
なぜデジタル機器の画面を見て過ごしていると幸せから遠のくのか?(TED)
スマホやYouTubeがクセになってしまう行動様式を知り、悪習慣を改める(TED)
あえて使わない時間を作る
スマホそのものはとても便利なツールで、何も悪いことはありませんが、そこに入っているアプリの使い方によっては、貴重な時間やエネルギーを奪われてしまうことがあります。
私もスマホユーザーですが、手の平サイズで携帯が簡単だから、いつも身に付けていれば、それを使うのが完全にくせになる、というのがよくわかります。
インターネットがあるから、スマホを手にしていれば、遠くにいる人のニュースもすぐにわかるし、テキストや音声、動画でメッセージのやりとりもできます。
人間はどんどん楽なほうに流れるので、スマホを使うのに慣れると、パソコンを立ち上げることすら面倒になるでしょう。
でも便利なものは両刃の剣(もろばのつるぎ)です。
スマホの使いすぎの問題点は、いくつかあって、過去記事にも書いていますが、終始、細切れの情報を消費することに時間を使ってしまうのが、ひじょうにまずいと思います。
去年の秋、日本に帰ったとき、JRによく乗りましたが、多くの乗客がスマホを見ていて、「いったい何をそんなに見ることがあるんだろう」と思ってしまいました。
40年前、私が日本でOLだったときは、皆、電車では、寝ているか、本を読んでいるか、ぼーっとしているか、考え事しているか、ヒューマンウォッチングしているかでした。
今の人は、寸暇を惜しんでたくさん情報を頭に入れていますが、それで人生がすごくよくなったみたいなことはあまりないのでは?
ただ単に、目が疲れたり、余計な心配事が増えたり、ギガの消費が増えて、お金が出ていくだけではないでしょうか。
シーさんが言っているように、人生をよくするためには、脳をぼーっとさせたり、逆に深い思考をしたりすることが必要です。
スマホにお守りをしてもらうのではなく、スマホを使いこなすために、あえて使わない時間を作ってみてください。