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忙しくて、片付けている時間がない、人の頼みを断らないので、いつも忙しい。そんな人におすすめのTEDトークを紹介します。
タイトルは、How to turn busy into balance (『忙しさ』を『バランス』に変えるには?)。講演者はライフコーチのSara Cameron(サラ・キャメロン)さんです。
忙しさとバランス・TEDの説明
This talk explores being busy: why we become busy, and what we can do to feel less overwhelmed and more balanced.
このトークは、忙しさを掘り下げます。なぜ私たちは忙しくなるのか、忙しさに圧倒されず、もっとバランスの取れた状態にするにはどうしたらいいのか?
動画の長さは12分。字幕はありません。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
忙しいことがデフォルトの現代
3歳のとき、父に、「おなかすいてない? 昼ごはんにする?」と聞かれたとき、私は「サラ、おなかすいてない。サラ、忙しい」と答えました。
実際忙しかったのです。マイリトルポニーで遊ぶこと、ダンスクラス、水泳、科学キャンプ、UNのジュニアライフガード、などなど。
現代は、忙しいことがふつうになっています。「元気?」と聞かれたら、人は、「忙しいよ」と答えます。
皆、極限まで予定でいっぱいにします。自分だけでなく、子どものスケジュールまで。
忙しさは自分の選択
私は、「忙しいのよ」と答えるとき、自分が特別な存在だと感じます。行くべき場所があり、やるべきことがあり、会うべき人がいる。
だから、私たちは、忙しくなります。
忙しくすることは、「自分は重要人物だ、生産的な人間だ」と感じる、簡単な方法だから。
人は、自分がたまたま忙しいかのように話しますが、忙しい状態は自分の選択です。
私たちは、忙しいことを選んでいるし、よくない情報をもとにこう選択しています。
忙しくしても、自分が求めていることは満たされません。友だちや家族とよりつながることはできないし、より幸せにもならないし、生産的にもなりません。
心を満たす方法は、忙しくすることではないのです。
私が忙しかった理由
今年の2月、ボーイフレンドと、2週間、オーストラリアに旅行する計画を立て、楽しみにしていました。
ベッドやリモコンを独り占めすることが楽しみだったのではなく、いろいろな仕事をすることが楽しみだったのです。
2週間には、およそ238時間、起きている時間があります。
その間、私は、ライフコーチのセッションに22時間、セラピーをするのに30時間、小売の仕事を34時間して、サンディエゴカウンティにある、3つの違うスタジオで、50時間、ピラティスのクラス。
238時間のうち、164時間を仕事に費やしました。
セラピーのスーパーバイザーに会って、新しいセラピースタイルについて話したさい、エモーショナル。・ランスフォーメーション・セラピー(感情を変えるセラピー)というミニセラピーをしました。
その人の問題を顕在意識と無意識のレベルで見ていくものです。
スーパーバイザーとこのセッションを20分やったあと、スーパーバイザーが、「あなたは、寂しい気持ちを避けるために、ずいぶんエネルギーを使っているわね」と言ったのです。
思いがけない言葉に、びっくりし、否定しようとしたら、おなかから、胸、のどにかけて何かがこみあげてきました。
スーパーバイザーの次の質問は、「いったい、いつ、そんなに忙しくするのをやめるの?」でした。
この言葉に打ちのめされました。
すべてをあばかれた気がして、涙が流れました。
本当は、人とつながりたいのに、私はスケジュールをいっぱいにして、そうしないようにしていたのです。
忙しすぎて、仕事をするエネルギーもなかったし、自由時間に友だちや家族と過ごす気もなかったのです。
私に必要だったのはバランスです。
バランスを取ることが、私たちの心を満たします。
バランスを取ればよりよい人間、パートナー、親、同僚、コミュニティのメンバーになれます。
忙しくして、心をまひさせる
答はこんなに簡単なのに、なぜ、私たちは、もっとバランスを取らないのでしょうか?
実は、バランスを取るのは骨のおれる仕事です。
忙しくしているほうが簡単です。
私たちは、ほとんどすべてに「イエス」と言います。
すべてに「イエス」と言って忙しくしていれば、怠け者や、つきあいの悪い人に見えませんし、居心地悪くなるのを簡単に避けることができます。
恥を感じる気持ちと、ヴァルネラビリティを13年研究しているブレネー・ブラウン博士は、心をまひさせる行動を定義しています。
居心地悪くなるのを避ける行動です。孤独も居心地の悪い感情です。
異様に忙しいのは、ブラウン博士のいう、心をまひさせる行動の1つです。
私にとって、居心地悪い感情は、孤独でしたが、私のクライアントの中には、心配、悲しみ、怒り、恐怖といった感情を避けようとする人がいます。
あまりにも忙しいなら、何かを避けようとしているのかもしれません。
忙しいことから生まれる生活習慣
子どもを迎えに行く、食料品の買い物、掃除、洗濯、仕事の準備、上司に見せるプレゼンの作成、友だちの機嫌を取るなど、スケジュールをいっぱいにすればするほど、人は、不安になります。
そこで、マイクロハビットと呼ばれる、小さなことをやりはじめ、すっかりそれが習慣になります。
忙しいペースで暮らすのを助けてくれる習慣です。
頭をしゃっきりさせるために、コーヒーをたくさん飲んだり、リラックスするためにワインをたくさん飲んだり、車の中で食事をしたり、列を作って並んでいるときに、テキストに返信したり。
こうした小さな習慣の多くは、マルチタスクです。
マルチタスクに関する誤解
マルチタスキングにはおもに3つの誤解があります。
誤解1)マルチタスクは複数の仕事を同時にすること
マルチタスクしていても、実際はマルチタスクしていません。
ほとんどの人は、一度に2つのタスクはできません。
ただ、2つのタスクを、大急ぎで切り替えてやっているのです。
それは、ブレーキをかけつつ、アクセルを踏んで進むようなものです。
同じ距離を進むのに、よりガソリンが必要です。
誤解2)マルチタスキングは時間を節約する
これも違います。
最近、職場を使って行われた研究によると、マルチタスキングをした従業員をもとの状態(ふつうに仕事をできる状態)に戻すには25分かかるそうです。
誤解3)マルチタスクをするとマルチタスクが得意になる
これも違います。
私自身もこれを知ったとき、がっかりしました。筋トレように、マルチタスクを何度もすれば、上手になると思っていましたから。
マルチタスクをすると、より気が散りやすくなります。
脳が、関係のない情報をフィルターすることができず、認知のプロセスが遅くなり、そのうち、認知のコントロールにダメージを与えます。
つまり、マルチタスクを繰り返していると、とても大事なリソースである時間やエネルギーがもれてしまうのです。
集中できなくなり、がまんできなくなり、エネルギーがなくなります。
バランスの取り方
では、どうやってバランスのいい状態にすればいいのでしょうか?
店にバランスが売っているかのように話す人がいますが、バランスはそんなものではありません。
バランスとは練習です。
それは自転車に乗るようなもの。しっかり意識を向けなければなりません。
そうやって前に進み、障害をうまく通り抜け、景色を見て、サイクリングを楽しみます。
日々の暮らしにバランスをもたらしたいときは、バランスを取るとは、どんなことか、どうやって、ホワイトスペース(白いスペース)を生活に取り入れるか、考えなければなりません。
ホワイトスペースとは?
バランスのとれたスケジュールには、仕事、遊び、ホワイトスペースが含まれます。
仕事や遊びについては皆さん、よくご存知でしょう。
子ども、ティーンエイジャー、大人、シニアまで、みなにホワイトスペースが必要です。
ホワイトスペースはデザインの世界から来た言葉です。
ページの空白部分(余白)のことで、これがあるから、ほかの絵や文字と競争せず、よいデザインになります。
スケジュールにあるホワイトスペースとは、それぞれのタスクの間におく少しの時間で、この時間があるから、それぞれの行動が競いあわず、補い合うことができます。
ホワイトスペースがあると、統合が生まれます。UCLAの心理学者である、ダン・シーゲル博士は、人格形成や人間関係における統合の重要性を研究しています。
日常生活で体験することが、時間がたつうちに統合され、それによって、自分という人間が、形作られていきます。
私たち一人ひとりがパズルだとすると、毎日の体験はパズルのピースです。
白いスペースがないと、ピースを全体として完成させることができません。
それぞれの体験はバラバラのままです。
ホワイトスペースのもたらすもの
スケジュールにホワイトスペースを入れましょう。1日の始まりや終わり、ミーティングの間に5分、1時間というように。
同僚とランチをとったり、外に出たり。
ホワイトスペースを作る他の方法としては、瞑想、新しい道を歩く、仕事の合間に外を1~2周走る、夕食後に家族で近所を散歩する、朝、ゆっくりコーヒーを飲む、寝る前に、インターネットではなく、読書をする、などあります。
このようなアクティビティをスケジュールに入れると、気づきが増え、友だちや家族と質のいい時間を過ごすことも増え、もっと人生にバランスが生まれます。
そして、それぞれの活動が統合されていくのです。
このような活動を練習するにつれて、自転車に乗っているときと同じことができるようになります。
前に進み、障害をうまく通り抜け、光景の一部になり、自転車に乗っていることを楽しむのです。
//// 抄訳ここまで ////
単語の説明など
hog 独り占めする
integration 統合、統一
ブレネー・ブラウンの講演⇒不安な心(ヴァルネラビリティ)に秘められたパワー:ブレネー・ブラウン(TED)
時間に関するほかのプレゼン
時間がないんじゃなくてやる気がないだけ。大事なことに時間を使う方法(TED)
なぜあなたはいつも忙しいのか?
短くてシンプルなプレゼンですが、重要なポイントが語られています。
・「自分はすごいのよ」と思いたいからスケジュールをいっぱいにする
・忙しいのは自分の選択
・居心地の悪い気分になりたくないから、スケジュールをいっぱいにする
・マルチタスクをすると時間とエネルギーを失う
・ホワイトスペースを作らないと、それぞれの行動や体験がバラバラのままでまとまらない⇒自分の人生や自分という人間が形作られない
・うまくバランスを取るには練習が必要
・練習しているうちに、バランスが取れ、もっと人生を楽しめる
こんなことを私は学びました。
確かに、「忙しくしていると、余計なことを考えなくてすむ」というのはあります。
家庭のいざこざ(子どもに関する問題とか)から逃れたいので、忙しい仕事に逃げるお母さんやお父さんがいます。
けれども、逃げていては問題は解決しないし、あとで、もっと大きな問題となって噴出するかもしれません。
無意識のうちに、スケジュールをいっぱい入れている人は、一度、なぜ、自分がそんなにたくさんスケジュールを入れているのか、考えてみるといいいでしょう。
考えたくないことがある、直面したくないことがある、だから、やらなくていいことまでやって、忙しくすごしているのかもしれません。
1日20秒、居心地悪さを体験するチャレンジ
読者のメールを拝見しているうちに、断れなくて、物が増えてしまう人がたくさんいるとわかりました。
先週も、断れない人の相談に回答しました⇒断れない人が、断れるようになる方法。考え方と実際のやり方。
日本では、贈答する機会が多いから、それもあって、もらい物が増えるのでしょう。
特に、義理母、義理の姉妹、会社の先輩、お世話になっている隣人などから、「あげます」「もらって」と言われると断りにくいです。
誰だって、断るよりは、どんなことも、こころよく、「いいですよ」と答えたいでしょう。
断ると、一抹の気まずさがあるので、ノーと言えないのです。
しかし、その気まずさを回避するために、イエスと言い続けていると、どんどん忙しくなり、ますますガラクタが増えます。
一瞬の気まずさを避けたがために、あとで、自分の時間がなくなって苦しくなったり、断捨離が大変になったり、「あの人に押し付けられた」と相手をうらむことになったりします。
断れない人は、1日に1回、20秒ぐらいは、気まずい気分になるチャレンジをしてはどうでしょうか?
言いにくいことを勇気をだして言ってみる。できればやりたくないことを、思い切ってやってみる。
そうすると、居心地の悪い気分になりますが、その感情はせいぜい20秒ぐらいでおさまります。20秒はけっこう長いです。
20秒たったらすぐに気分転換すればいいのです⇒自分ひとりでできる簡単な気分転換の方法、10選。買い物する代わりにどうぞ。
そうやって、あえて居心地悪くなるチャレンジをしているうちに、断れる人になると思います。
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いま、自宅での活動が増えている人が多いです。
日本人はきまじめだから、家にいるあいだに、あれも、これも、とがんばってしまうんじゃないでしょうか?
そんなとき、ホワイトスペースのことを思い出してください。
何もやらない時間、何も生み出していないように見える時間が、自分の人生や、自分という人間を作るのに大きな役割を果たしています。