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現代は、簡単に手に入れられるお手軽な満足を追い求めやすい社会です。
こうした満足のことを、英語でインスタント・グラティフィケーションといいます。
いったんインスタント・グラティフィケーションのワナにはまってしまうと、欲望や衝動に突き動かされるストレスの多い生活になり、へたをすると、人生がだめになります。
この記事では、インスタント・グラティフィケーションだけを追い求める日々にピリオドを打つヒントをお伝えします。
インスタント・グラティフィケーションとは?
インスタント・グラティフィケーションは、英語の instant gratification をカタカナ書きにしたものです。instant は「瞬時、その瞬間」、gratification は「満足感や喜び」という意味です。
日本語で該当する言葉を思いつきませんが、インスタントに得られる喜び、即席で簡単に手に入る満足、すぐに手に入る喜びと訳せるでしょうか?
長期的な利益は無視して、いまの痛みや苦痛を避けるために、短期的に楽しいほうを選びこと、またはそうした行動のことです。
たとえば、衝動買いがそうです。この喜びを優先してしまうと、大きな代償を払わなければならないことは、衝動買いが好きな人はよくご存知でしょう。
衝動買いにおけるインスタント・グラティフィケーションはこんなふうに作用します。
いまの痛み:会社で嫌なことがあってむしゃくしゃする
インスタント・グラティフィケーション:仕事帰りに新しい服を衝動買いする
その結果もたらされる長期的な不利益:
◯部屋が服だらけ⇒汚部屋
◯クレジットカードの借金、老後がもうすぐなのに貯金がない。
◯自制心のない自分に対する嫌悪感⇒セルフエスティームの低下⇒何ごとにも自信が持てず、他人軸な生活。
セルフエスティームとは? ⇒セルフエスティーム(自分を愛する気持ち)が高い人の12の特徴
すぐに手に入る満足の例
よくインスタント・グラティフィケーションの例をあげます。
◯各種衝動買い。これについては、上で説明しました。
◯甘いおやつやカロリーだけが高い油っぽいファストフードを食べる。
人が甘いものを好きな理由⇒不用品でいっぱいの部屋から抜け出し、幸せになる方法「文明の発達に人の進化が追いつかない」というところをお読みください。
◯明日仕事なのに夜ふかしして、Netflixでドラマを一気見する。
◯目覚まし時計のスヌーズボタンを押す。何度も押す。
スヌーズボタンは使わないほうがいい話⇒快適な1日を送るためにやるべき朝の3つの習慣(超基本編) 「1.できる範囲で早起きする」の箇所で説明しています。
◯仕事の準備が遅れているのに、友人と居酒屋で飲んで騒ぐ。
◯部屋を片付けるべきなのに、インスタグラムをだらだらと見る。
◯宿題があるのに、YouTubeをダラダラと見る。
◯お金がないのに、クレジットカードを使って分不相応な買い物をする。
このように、とりあえず、いやな気分を忘れるために(逃避するために)、手軽な喜びを手に入れることがインスタント・グラティフィケーションです。
いずれの場合も、長期的にはかえって不利益が生じます。
インスタント・グラティフィケーションの弊害
お手軽な喜びを追求するライフスタイルには以下のような弊害があります。
心の平安が得られない
人間の脳は、欲しいと思ったものがすぐに手に入ると喜びを感じます。これは動物的な部分の脳の反応です。
誰もが、簡単に楽しいめにあうほうがうれしいですし、実際、人間はどんどん楽なほうに流れますね。
ところが、そんなふうに、簡単に手に入るものだけを手に入れて喜んでいると、その時は楽しくても、すぐにむなしい気分になります。
人間は、生きるって何? とか、私は何のためにここにいるの? なんてことも考えるようにもできているので、お手軽な快楽だけをいくら集めても、ストレスがたまり、不幸なのです。
やりたいことを、やりたい瞬間にやって満足感を得ても、人間は心の平安を得ることができません。その瞬間に死んでしまえばいいのですが、人生は明日も明後日も続きます。
先延ばし人間になる
今すぐ得られる喜びを優先して選んでいると、いやなことを後回しするクセがつきます。
先延ばしするわけですね。
先延ばしするとろくなことがありません。いちばん問題なのはよけいなストレスをかかえこんでしまうことです。
食後にお皿を洗うのが嫌だから、とりあえず、家族とテレビを見るほうを選んでしまったら、どうでしょう?
テレビを見ているときも、こころの奥底にある、「まだお皿洗ってないよね?」という罪悪感のせいで、100パーセント、テレビを楽しむことができません。
その後、テレビを見たせいで疲れた頭のまま、どんよりした気持ちで、洗うことになります。「なんで私ばっかり…」なんて被害妄想に陥ることもあります。
今夜のうちに洗うことができなかったら、翌朝、汚れたお皿が重なったシンクを見て、朝からずーんと落ち込むかもしれません。
食後の「ああ、お皿洗うの、めんどくさいな」という気持ちに対して、「いや、どうせあとで洗わなきゃならないし、いまやってしまおう」とほんの少しだけ奮起すれば、こうしたことは起こらないのです。
本当にしたいことができなくなる
インスタント・グラティフィケーションの例を見るとわかるように、こうした行動は、本来は、そこまで自分がしたかったことではありません。
単に、いまの苦痛をしばしの間忘れるために選択した行動です。
どんな行動をするときも、それなりに自分のリソースを使います。時間、お金、体力です。リソースはすべて有限なので、本来はどうでもいいことに使ってしまうと、本当にしたいことに使う分が残らなくなります。
たまのことならいいのですが、いつも、即席の喜びだけを追い求めていると、本当に人生を棒に振ります。
何かを成し遂げたかったら、時間、お金、体力、気力のすべてを長期間に渡って注ぎ込む必要があります。大事なリソースを「いまこの時だけの喜び」に費やしてしまうと、長期的には何も得られないのです。
インスタント・グラティフィケーションのワナから抜けるコツ
スマホやらの普及のせいで、「欲しいものが欲しい時に簡単に手に入ることっていいよね」という風潮になってしまった世の中です。誘惑があふれている世界で、どうしたら、インスタント・グラティフィケーションのワナから抜け出せるでしょうか?
こんな方法があります。
自分の求めがちな「お手軽な満足」の傾向を知り、改善する
まず、インスタント・グラティフィケーションというものがあると知り、自分はどんな喜びにふけることが多いのか、振り返ってみます。
フェイスブックに時間を使いすぎているなあ、とか、100均で無駄遣いしすぎてるかも、など、思い当たることがいくつかあるでしょう。
自覚したら、あとはその行動を改善するだけです。
参考⇒悪い習慣を断ち切る簡単な方法(TED)マインドフルネストレーニングのすすめ。
長期的なゴールを意識する
自分の本当に大事にしたいことや本当に欲しいもの、長期的なゴールを意識すると、短絡的な行動に走ることを防げます。
いま、お手軽に楽しめる行動をすることによって得られるもの(メリット)と逆に失うもの(デメリット)を書き出して、見比べてみてはどうでしょうか?
こちらのプレゼンにあるように⇒今貯金をする決断が、豊かな老後につながる(TED)、自分の未来を何らかの形で可視化できると、よりリアルに長期的なゴールを意識できますね。
問題はチャレンジだと前向きに受け止める
お手軽な喜びだけを追い求めるサイクルにはまっている人は、心が弱っています。
「ちょっといやだな、面倒だな」と思うことに対して、すぐに心が負けるから、楽なほうに逃げてしまうのです。
問題に対して逃げるのではなく、「これは楽しいチャレンジだ、自分を成長させてくれる絶好のチャンスだ」と思うことができれば、やるべきことに、向き合えます。
考え方を変えるだけなので、そんなに難しくありません。
考え方を変えるヒント⇒認知行動療法(CBT)を使って片付けられない思考を手放す方法。
自分を信頼する
ピンチを前にしたとき、「これ、チャンスだ!」と思うためには、「何があっても自分は大丈夫」と、自らを信頼することが必要です。
自分のちからや未来に対して、信頼を持てない人は、小さな自分との約束を、一つずつ果たしていくといいでしょう。
やり方はこちら⇒自分に自信がない?自信を持つことはスキルの1つ(TED)
この記事もおすすめです⇒セルフエスティームを高めて自信を取り戻す10の方法
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今回は、インスタント・グラティフィケーションのワナについてお伝えしました。
安い、早い、簡単、という、さして自分のリソースを注ぎ込まずに何かをする方法を求める人が増えています。
優先順位の低いことに対して、そういう態度で向かうのはいいと思います。ですが、本当に大事なことや意味のあることは、それなりにリソースを注ぎ込まないと達成できません。
「いますぐ、簡単に」と思うのではなく、「あえて少し待ってみる、ちょっと困難でもがんばってみる」という姿勢を持つことが、本当にほしいものを手にするコツだと思います。