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今週のTEDは、子供にジャンクフードをマーケティングするのは間違っている、と主張するアナ・ラッペ(Anna Rappé)さんのプレゼンです。
タイトルは、Marketing Food to Children(子供への食品のマーケティング)です。
子供にジャンクフードを宣伝していいのか?
北米では頻繁にファーストフードを食べるティーンエイジャーが多いです。小さいときから、食品会社のマーケティングのターゲットにされているので、そういう食習慣を身に着けてしまいます。
生涯、ファーストフードをメインに食べていたら、病気になるに決まっていますから、小さい子供にジャンクフードを宣伝するのをやめさせよう、というのがアナの主張です。
アメリカで起こっていることは、規模は小さくても日本でも起こっていると思います。
動画は15分ほど。英語字幕を出すことができます。動画のあとに抄訳を書きます。
※TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
子供はキャラクターが大好き(導入)
私にはアイダという娘がいます。彼女が2歳のとき、ドラというキャラクターに恋をしました。
ドラは冒険好きな女の子。スペイン語までしゃべってかっこいいです。おまけにバンドエイドまで売っています。
アイダはドラがついたバンドエイドを欲しがり、それを貼りたいがために、怪我をしたふりをするほど。
私も、娘を喜ばすために、ドラがついたバンドエイドを探し回りました。
子供向けのマーケティングに大金を使う食品会社
ドラのような、カリスマ性のあるキャラクターが売っているのはバンドエイドだけではありません。
食品会社も子供たちを引き付けるためにキャラクターを使います。
箱にスポンジ・ボブのついた、ポップタルト(pop-tarts 四角いタルトにジャムみたいなのがはさんであるおやつ)、シュレックのついたトゥインキー(Twinkies スポンジ生地にクリームの入ったおやつ)など、見たことがあるでしょう。
ドラも、カップケーキ、クラッカー、アイスキャンデー、アイスクリームのパッケージにのっています。
食品会社は、子供とティーンエイジャーをターゲットにしたマーケティングに、年間20億ドル(2000億円ぐらい)使っています。20億ドルです!
もちろんそれ以上に、キャラクターをマーケティングするのに使っていることでしょう。
ジャンクフードの宣伝のせいで、病気になる子供たちが増えています。
こうしたマーケティングはひじょうに危険である、と言わざるをえません。
子供相手のマーケティングの手法
食品会社は、いったん子供たちに特定の商品を売り込むのに成功すると、それが一生涯続くことがわかっています。
また、子供の関心を買うことができれば、ペスターパワー(pester power おねだりパワー)が生まれます。
保護者が、初めてある商品を買うとき、その75%は子供にねだられたからです。
子供をターゲットにした食品会社の宣伝方法を知れば知るほど、怒りを感じずにはいられません。
平均的な子供は、テレビで毎年4600の食品や飲料のCMを見ます。ほとんどが、脂肪、砂糖、塩分がたくさん含まれているものです。
毎年4600の食べ物のCMを見て、子供たちは、好きなブランドを見つけ、大人は必要以上に食べてしまうのです。
「じゃあ、テレビを見なければいいのよね。子供にテレビを見せなければいいのよ」。そんなふうに考えるかもしれません。ですが、ことはそんなに単純ではありません。
企業のマーケティングはとても巧妙で、親にはコントロールできないところで行われているのです。
企業の巧妙なマーケティングの例
食品会社が学校で使うものや行事のスポンサーになることがあります。
たとえばこれは、オレオクッキーがついた計算ドリルです。
ほかにもM&Mやフルートループス(Fruit Loops’カラフルで甘いお菓子のようなシリアル)のドリルやワークブックが学校で使われています。
今はこうしたメーカーのロゴが、体操服、コミュニティセンター、学校の廊下、卒業アルバムについています。スクールバスにものせようという動きもあります。
さらにジャンクフードの企業が、信用のある公共団体と提携することもあります。数年前、マクドナルどユニセフがコラボレーションしました。
ユニセフとマクドナルドなんて、真逆のコンセプトじゃないですか?
また、コカコーラのように学校の資金集めのプログラムを提供する企業もあります。コーラを買ってポイントを貯めると、学校で使えるものと交換できるのです。
食品会社のやり方で、特に嫌なのは、人種によって差をつけること。アフリカン・アメリカンの子供たちには、白人より、80%よけいに、甘い清涼飲料水をマーケティングしています。
すでに、食べ物のせいで病気になってしまったアフリカン・アメリカンの子供たちがたくさんいます。
食品会社の言い訳とさらに巧妙な宣伝
このようなマーケティングに対して、食品会社は何と言っているのか?
「少しずつ子供に向けたマーケティングは縮小しています」こんなふうに答えています。
でも、本当は宣伝する場所や手法を変えているだけなのです。彼らは頭がいいですからね。
今のティーンエイジャーや子供たちが、いつもどこにいるのかご存知ですよね?
インターネットです。
ティーンエイジャーの73%が、何らかのSNSに参加しています。YouTube、フェイスブック、ツイターなど。
食品会社は、インターネットで子供たち相手に宣伝しています。広告を出したり、懸賞やコンテストを企画したり、割引券を配布したり。
それを子供たちがお互いにシェアします。
今、食品会社が作った子供たちむけのサイトがたくさんあります。
このようなサイトではゲームをしたり、コンテストに応募できます。マクドナルドが未就学児向けに作ったゲームサイトである、Ronald.comというのがあります(筆子注:このサイトはもうありません)。
ここでゲームをしたり、プレゼントをもらうために、個人情報を入力することになっています。誕生日や携帯電話の番号など。このような情報はすべて商品を売るために使われます。
もしあるティーンエイジャーが、マクドナルドのそばを通ると、ビッグマックの宣伝をテキストメッセージで受け取るなんてことが起こるのです。企業は、携帯の番号も、その子供のいる位置も知っているのですから。
このことを、私は、ニューヨーク市の保健局に勤めている友人に伝えました。
彼女は、「もし私たちにそんな情報があれば、子供たちにファーマーズマーケットのお知らせを送ることができるのに。ヘルシーな食べものをプロモーションできるのに」と言いました。
保険局にはそんな情報はないのです。ですが、食品会社は持っています。
ジャンクフード業界は子供たちの命を握っている
ジャンクフードを販売する企業は子供たちの生死に影響を及ぼす力を持っています。これは誇張ではありません。
過去30年に、子供やティーンエイジャーの肥満は3倍になりました。アメリカで生まれる子供の3人に1人が、生涯のうちどこかで糖尿病になっています。アフリカン・アメリカンの子供たちは、2人に1人です。
糖尿病だけでなく、心臓病、高血圧、喘息、そしてがんになる率もあがっているのです。
現在、多くの小児科医が、これまではなかった現象に対応しています。
ずっと清涼飲料水を飲んでいたから、20代なのに義歯を入れることになった人、体重を支えきれないから、レッグ・ブレース(leg braces 脚を支える道具)をつけなければならなくなった若い人。
とても悲しいことです。だって、こんなことは防ごうと思えば防げたはずなのですから。
子供たちを食品会社のマーケティングにさらさない取り組み
私は、事態がどんなにひどいのか伝えるためだけにここに来たわけではありません。こうした事態に対して、私たちができることをお伝えに来ました。
子供たちを危険なマーケティングから守るよう、多くの人が政府や企業にプレッシャーをかけています。
メイン州では、学校におけるジャンクフードの宣伝を禁止する法律が通りました。アメリカで初めてのことです。
LAでは、特定の地域において、これ以上ファーストフードのチェーンを開業するのを停止しています。
子供たちを広告にさらさないキャンペーンのおかげで、小学校の通知表の封筒にのっていたマクドナルドの広告を取ることができました。
これまで学校で行われていた広告を止めるために、多くの人が動いて、法律を通しています。
食べる物がいかに重要か教え、よりヘルシーな物へアクセスできるようにすれば、子供たちはそういう物を食べます。
これまでハンバーガーの中にはさまっている野菜しか食べたことがなかったティーンエイジャーが、農場の仕事を学ぶプログラムに参加したら、サラダが大好きになりました。
このように、私たちはヘルシーな物を食べる子供たちを育てることができます。ですが、今のような環境ではだめなのです。
社会の「ふつう」を変えるのは不可能ではない
この状態を変えるのは簡単ではありません。社会でふつうに行われていることを変えなければならないのですから。
ですが、私たちはこれまで社会の状況を変えたことはあるし、必ずできるはずです。
コーポレート・アカウンタビリティ・インターナショナル(Corporate Accountability International、CAI 儲けることばかり考えてきた企業のやってきたことに対して責任を取らせようとする団体)と協力することで、子供たちの環境から余計な広告を追い出すことができます。
食品会社は、「子供の健康に気を配るのは親の仕事だ」と言います。確かにそうですね。だからこそ、私はそういう企業に言いたいのです「それなら、教育は親に任せなさいよ」と。
子供たちに、何を体内に入れるべきか指示しないでほしいのです。
私は今、2人の娘がいます。ジャンクフード業界にはこう言ってやりたい。「2人とも私の子供です。人の子供に手出しをしないで」と。
—- 抄訳ここまで —–
食品に関するTEDの動画
これまでに紹介した食品に関するTEDの動画です。
子供たちに食育をして肥満と戦おう~ジェイミー・オリヴァーに学ぶ(TED)
体に悪くないお菓子を製造、販売した少年に学ぶ、世界を変える方法(TED)
肉はやめて野菜を食べろ。マーク・ビットマン「我々の食料に関する課題」(TED)
食品ロス(捨ててしまう食べ物)を減らすためにできること(TED)
ジャンクフードは本当に体に悪いです
小学校の通知表の封筒にまで、マックの宣伝がついているなんて、アメリカの食品会社は容赦がないですね。
動画で語っていたことによると、よい成績を取ると、無料のハッピーミールが食べられるクーポン券がついた封筒に通知表を入れてもらえるみたいです。
まるでSFです。
今回紹介した動画や、ジャンクフードが体に悪い話をすると、夫や娘はうさんくさそうな目で人のことを見ます。
「人がおいしく食べてるのに、水を差すな」とういわけです。
娘は1998年生まれなので、ジャンクがジャンクだということを、夫よりはよく知っていますが。
ジャンクフードが好きで、大量消費している人は、自分の意志でそうした食べ物を選んでいるわけではない、ということに気づくべきでしょう。
食品そのものによって、ジャンクなものや甘いものを「おいしい、おいしい」と食べるようにプログラミングされているのです。
その点について、詳しくはこちらをごらんください⇒なぜ人はジャンクフードを食べることをやめられないのか?
アナさんが、ジャンクフードを食べることをやめられなくなる理由や、今回のプレゼンの内容を6分の動画でわかりやすく説明しています。英語がわからなくても、写真や図でだいたい意味が取れます。
私が生まれた頃は、今のように加工食品があふれていなかったので、まだ病気にならずにすんでいます。しかし、そばに加工食品があるのが当たり前の時代に生まれた人は、これからしんどいことになるでしょう。
確かに、ファーストフードは、値段も高くなく、簡単に食べられて便利です。子供も喜びます。しかし、その便利さには大きな代償があるのです。
アナさんのように、いろいろなキャンペーンをすることも、食品会社に子供へのマーケティングをやめさせる1つの手段です。
個人でできることは、ジャンクフードを食べる回数を減らすことです。売れなくなれば、企業は売れるもの(もっとヘルシーなもの)を提供するでしょう。時間がかかりそうですが。
広告のパワーをあなどるな
この動画を紹介したのは、子供たちに加工食品を食べる生活習慣を身に着けてほしくない、という理由からですが、もう1つ、広告のパワーを知ってもらいたいという理由もあります。
テレビで宣伝してるからといって、自分にとっていい物とは限らないのです。
目先の利潤に目がくらんでいる企業は、消費者ではなく、自分たちに利益のあるものを巧妙に宣伝します。多くの人はその宣伝にのってよけいな物を買ってしまうのです。
コマーシャルの中のファーストフードや甘いお菓子はとてもおいしそうです。しかし、CMにはいいことしか出てきません。
企業が宣伝しているのは、食べ物だけではありません。ありとあらゆる物がCMで流れます。
こういうのを見ていると、人が生きるには、ああいう物が必要なんだ、頭を洗うにはシャンプーが必要なんだ、こういう化粧品は女性なら当然持つべきなんだ、と信じてしまいます。
それは強い確信であり、生活習慣です。ちょっと誰かが、「持たない暮らしのほうがいいよ」とか「湯シャンっていいよ」といっても、「そんなのありえない」と反応するのです。
仮に、物は減らしたほうがいいんだ、ということがわかったとしても、「幸せに生きるためにはいろいろな物が必要なんだ」という考え方の癖はなかなか矯正できません。
だから、物を捨てたいと思っているのに、捨てられない人が多いのではないでしょうか?
物を断捨離したい人は、
●テレビを見る時間を減らす
●当たり前だと思っていたことを疑う
この2つをやるといいと思います。その「当たり前」の多くは外から押し付けられた考えです。