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不用品を捨てる気にさせてくれるTEDの動画を紹介します。
タイトルは、STUFFED: The Unintended Result of Our Attachment to Personal Belongings(物がいっぱい:所持品への執着の思いがけない結果)
プレゼンターは、マット・パクストン(Matt Paxton)さん。パクストンさんは、Hoarders(ホーダーズ)という番組に出演している、片付けの専門家です。
ホーダーズは、重度に片付けられない人とその家を紹介し、心理カウンセラー、片付けの専門家、清掃業者がタッグを組んで家をきれいにするアメリカのリアリティーショー。
私は見たことはありませんが、人気があり、2009年に始まって、シーズン10まで制作され、いまも続行中です。
およそ20年間、人の家を片付け続けた彼が、誰でもホーディングする気質はある、不用品のせいで自由に暮らせないと語り、片付けるコツを伝授します。
物でいっぱい:TEDの説明
No one has cleaned out more homes than Matt Paxton, star of the television show “HOARDERS.” In this entertaining TEDx talk, Paxton shares what he’s learned about our attachment to personal belongings – and what we can do about it.
テレビ番組『ホーダーズ』の人気者、マット・パクストンほど家を片付けてきた人はいません。
人々の所持品に対する執着から彼が学んだこと、そして、その問題への対処法を、パクストンはユーモアをまじえてシェアします。
収録は2019年の4月、動画の長さは18分40秒。字幕はありません。
☆TEDの說明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
パクストンさんは、冗談をたくさん話していますので、ポイントとなる部分だけ訳出します。
人は幸せになりたくて物を買う
音楽にはたくさんの思い出があります。音楽と同じように、物にも思い出がつまっていて、過去の楽しかった場所に戻してくれます。
私は、ホーダーズというテレビ番組に出て、たくさんの物を見てきました。猫300匹や、ベーブ・ルースのパットのコレクションなんかを。
およそ20年間、人の物を片付ける手伝いをしてきました。その人のオフィスや自宅で、一緒に思い出を見直してきたのです。
そうした経験から私が学んだことは、物があるせいで、私たちは前に進めない、ということです。
私たちは、幸せになりたくて物を買います。物が幸せを運んでくれると思っているのです。しかし、それはヘロインと一緒で、すぐに消えてしまう短期的な喜びです。
ホーダーは悪い人ではない
ホーダーはみなよい人たちです。彼らは、あるとき、大きな不運に見舞われ、物を持つことで、幸せや、自尊心を得ようとします。
痛みをいやすために、たくさん物を買うものの、それは痛みという問題を解消することはなく、たくさん物を持ちすぎた結果、ふつうに暮らすことができなくなるのです。
私のクライアントの多くは、失業、離婚、家を失うなど、希望が持てるものをすべてなくしています。
毛糸を集めている女性がいました。8000もの束を持っていました。
毛糸を使って赤ん坊の毛布を編み、人にあげると、みなが、「まあ、なんていい人なんでしょう。ありがとう」といって、彼女をハグし、愛情を示します。
彼女は、それがうれしくて、さらに毛糸を買いました。毛布を編めば編むほど、みなから愛してもらえると思ったからです。
問題は、集めた毛糸が多すぎて、編むのが追いつかなかったこと。毛糸を集めすぎて、家を失う結果になりました。
シニアが物を捨てない理由
私は、シニアのダウンサイジングを手伝う仕事もしています。祖父母たちにとって、物、とくに食器類は、何十年もの努力の結晶です。
彼らは集めた物を、次の世代に渡すことで、喜びや自尊心を得ています。
私の母と叔母は、誰が食器棚を相続するかで、けんかをしました。孫の世代になると、誰がその食器棚をもらわないといけないのかで、けんかになります。
シニアが集めた物の問題は、それを誰も欲しがらないということ。
私の両親たちが、ダイニングルームにあるものを捨てない理由は、家族との絆という幸せが、ダイニングルームで始まったからです。
ですが、現在は、居間、車の中、休暇で出かけた先で、家族との幸せが生まれます。
シニアのクライアントの多くは、物を持ちすぎて、引っ越しをすることができません。
みなさんの中に、もう成長してしまった子供の物をいまだに持っている人はいますか? 大きくなってしまった子供が家にいたりもするかもしれませんね。
家に物がありすぎて、家が倉庫になってしまうのです。
物を買うために働きすぎるX世代
X世代と呼ばれる世代があります。私もそうですが、この世代の人は、みな、長時間働いて、子供のためにあらゆる物を買おうとします。車、教育、課外活動、おもちゃ、服、本。
先日、子供に携帯電話を与えるために、900ドルも使いました。私の祖父なら、そんなことは絶対しません。そんなことにお金を使った私は、祖父にお仕置きされるでしょう。
私の自尊心は、物をたくさん買うことから生まれます。一生懸命働いて、できるだけたくさんの給料を得ます。そうすれば、物を買えるから。
これは、負のサイクルです。子供の物を買うために、必死に働いて、子供と過ごす時間がなくなり、罪悪感を感じ、さらに物を買って埋め合わせをしようとします。
実は、子供は物を欲しくないのです。口ではそう言いますけどね。でも、先日、こんな絵を見つけたのです。
息子が自分の気持ちを書く日記に書いたものです。彼は、「さみしい」と書いて、「誰か、僕と遊んで」という絵を残しました。
画像
息子は、毎日、私にそう言っていました。
私は、「いま、メールを書いてるからちょっと待って」と答えていました。「仕事しないと、おまえに物を買ってあげられないからね」と自分の行動を正当化することまでしていました。
物のせいで、まともな生活ができなくなっているのです。
では、どうしたらいいのでしょうか?
物が少なければ少ないほど時間ができる
ことはとてもシンプルです。物が少なければ少ないほど時間ができます(Less Stuff = More Time)。
お金がなければ、問題もない(No money no problems)、と言えます。私の問題の99%のもとはたった1つのことです。
世間にはいろいろな対処法があります。
ときめくものを残すのはうまくいかない
ときめくものを残すという、人気のある方法があります。たくさんの人に、うまくいく方法でしょう。ですが、私や、私のクライアントのホーダーや、シニアには使えません。
みんな、ときめくものだからです。だからこそ、私は買ったのですから。
ミニマリズム?
はじめは、ミニマリズムを毛嫌いしていましたが、いろいろ調べたら、言っていることには共鳴できるようになりました。
ミニマリズムのコアの考え方は、少ない物を持てば、さまざまな体験をする余裕が生まれる、というものです。それは本当です。理論的には。
ですが、たくさんある物を捨てるのは大変です。
一気にやる方法もあります。RV車を買って、カリフォルニアに引っ越し、小さなオーガニックファームを手に入れて、ほかの物は全部捨ててしまうとか。
誰でも、時々、そんな夢を見るでしょう。ですが、これは現実的ではありません。
アメリカ人住んでいる人は、物を買うようにできてます。
では私がいいと思い方法は何か?
使うか、失うか
私は、使うか、失うか(Use it or lose it)というシンプルな考え方をしています。本当にそれを使っているのなら、持っています。
もし使っていないものを持っているとしたら、失っているのと同じことです。毎日、時間、お金、スペース、人間関係、機会を失っています。
物を捨てるコツ
ではどうやって不用品を捨てるか? いくつかコツがあります。
とにかくやり始める
とにかく捨て始めます。
私は体重が増えすぎて困っています。過去5年で50ポンド(約22キロ)体重が増えました。5年かかってここまで太りました。
30年かかってためこんだ物を週末に捨てようとするのは、現実的ではありません。1日10分の片付けなら、現実的です。
毎晩、10分間の片付け(10 minute sweep)を週に5日します。
私も毎晩、10分間、歩くべきですね。
片付けるのは、1フット(約30センチ)x 1フットの場所です。
自分に正直になる
捨てるときは、自分に正直になってください。
これは私のクローゼットの写真です。右側からサイズ28、サイズ30、サイズ32、サイズ34のパンツが並んでいます。サイズ36のパンツも3本持っています。
いま私がはいているジーンズはそのうちの1本です。
30本あるパンツのうち、自分がはけるのは3本だけ。つまりクローゼットにあるパンツの90パーセントは私のサイズではありません。
ジーンズを数本、私は捨てられるか? 昔はトレンディだったジーンズもいまは違います。捨てる時が来ています。
ユーモアを忘れない
さて、私はわざとユーモラスに話しています。ユーモアをもって、片付けをしないと、物を捨てるのはとてもうつうつとした作業になります。
不用品を捨てることが原因で、崩壊してしまった家族を知っています。
皆さんが笑うのは、自分のクローゼットも、私のと似たようなものだからです。
寄付する
不用品は寄付してください。
もし、わたしのトークを見ることができているなら、あなたはほかのたくさんの人々より恵まれています。寄付できるはずです。
長い間、シニアの片付けに携わっていますが、クライアントは皆、それを売ってお金にするより、寄付をするほうを選びます。
40年代~60年代、腕のいい大工として働いていたご主人をもつ奥さんがいました。いっしょにご主人のツール置き場を片付けました。
ご主人のツールは、ふつうのツールではありません。素晴らしいものばかりです。3万ドル(およそ320万円)で買う、というオファーがあり、奥さんの子供はそのオファーに乗り気でした。
しかし、この奥さんは、売るのはいやで、ご主人のもとで、見習いとして働いていた人にあげることにしました。見習いの人は、赤ちゃんが生まれたばかりでお金がありませんでした。
見習いの人もその家族も泣いて喜びました。この贈り物は、彼の人生を変えたのです。それはお金を得るより価値のあることです。
紙ごみ、特に写真の捨て方
最後に紙の話をします。請求書、本、カード、写真。
私は息子が3人いて彼らは、毎日のように、たいしたことのない作品を持ち帰ります。
こういうのをためこむのは、思い出があるからです。
写真を捨てるのは一番むずかしいですね。
人は、親からアルバムを受け継ぎます。私も1984年の旅行の大量のスライドを受け継ぎました。
そういう写真を大事にしなければならないという義務感が人にはあります。
大半の物をダウンサイジングしたシニアの手元に最後まで残るのは写真です。
写真にのっている人を知らなかったら、捨てるべきです。
もし、知っている人の写真なら、20枚だけ残します。ジップロックに20枚だけ入れておきます。それはきっと古い写真でしょう。
この写真を見てください。誰かの祖母です。きれいな人ですね。この人は、祖父以外の誰かとつきあっていました。写真を残したら、こういう物語を子供に伝えます。
子どもたちが見たいのは、きのう、動物園でバッグをかかえていたあなたの写真ではありません。
古い写真から、母親の若い頃の思いがけない話を聞けたりします。写真にはストーリーがあり、大事なのはそのストーリーです。
ストーリーを伝えないから、物をかかえこんでしまうのです。
物があると集中できない
私は、23歳のときからもう20年、起業家です。仕事に疲れた私は、新しいことを見つけました、バランスです。
物がたくさんあると、起業家としての仕事に集中できないとわかりました。
車を買おう、農場を買おう、何かを買おうと探しているときは、仕事をしていないし、家族と時間を過ごすこともしていません。
物を買うために働いて、たくさん買った物たちが、仕事の邪魔をするのです。
お金がなければ問題は起きません。
では、スマホを使うことをやめられるでしょうか? 2度とメールをチェックしないなんてできるでしょうか? 5時すぎたら、電話には出ないとか。
起業家には、そうすることも難しいです。グローバルエコノミーの世の中ですから。
現実的なのは、「使うか、失うか」と考えることです。私は、物理的なスペースも、メンタルスペースも片付けつつあります。
いま、夜は電話を使わないし、早く寝ています。昔は遅くまで起きて仕事をしていました。
朝まで、電話を使わず、メールの返事を遅らせることはできるのです。息子が、「遊ぼうよ」と言ってきたら、答えは、「イエス」であるべきです。
うちでは、息子が、「遊んで」と言ってきたら、必ず1回だけはウノを一緒にするルールがあります。
そうすると、よりバランスがうまれるのです。息子との時間が生まれます。
私が毎月しなくてもいいことは、息子と時間を過ごさない言い訳として、買い物にいってたくさんの物を買うことです。
自分の時間を大事にしてください。
そうすれば、子どもたちとの思い出を作ることができます。息子と楽しく過ごすことが私の時間の使い方であり、それこそが、バランスをとることなのです。
//// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
skein 糸のかせ、糸のたば
Gen X Generation X、 X世代。アメリカにおいて、1960年代初頭/半ばから1975年ごろの生まれ。第13世代。
pass off ごまかす
RV Recreational Vehicle キャンピングカー
パクストンさんの著書(英語)です。
ホーディングに関する別のプレゼンもどうぞ⇒ホーダー(病的に物をためこむ人)を人間として扱おう(TED) ホーダーの定義などがわかります。
自分は大丈夫だと思えれば物はいらない
シリアスなホーダーじゃなくても、ほとんどガラクタみたいなものをためている人はいっぱいいます。
だからこそ、実家の片付けに皆、苦労していますね。
お片付け番組もいまはいろいろあります。
こんまり先生の番組も人気です⇒近藤麻理恵が欧米で人気がある理由。
冷静に考えると、不用品をためこむことは、各種リソース(時間、お金、気力など)の無駄遣いにほかならないのですが、なぜそんなことをしてしまうのか?
社会が豊かになって、そういうリソースの無駄遣いをしても生きられるからでしょうね。物も手軽に買えます。
ですが、とりあえず生きているのと、自分のやりたいことをやって、人の役にも立ちながら生きているのは、雲泥の差があります。
命を輝かせて生きようとしたら、やはり多すぎる物は邪魔になります。
リソースを無駄にしない1つの生き方は、自分のためじゃなくて、他人のためになることをすることだと思います。
毛布を編んで、皆に「愛している」と言われるのがうれしかったおばあさんは、承認されたくて、毛布を編んでいたわけです。
承認とかそんなものはいっさいいらないから、とにかく、毛布を編んであげたい、という善意だけで、編んでいたら、たくさん毛糸を買わなくてすんだでしょう。
承認欲は誰にでもありますが、あまりに他人の承認を求めすぎてしまうと、結局は自分が不幸になります。
承認欲を手放す方法は以前書いていますが⇒強すぎる承認欲求(人にほめられたい気持ち)を手放す方法。、「自分は大丈夫」「自分はたくさん持っている」という、たっぷりあるマインドを持てば、そこまで他人の承認に頼らなくても生きていけます。
たっぷりあるマインドとは? ⇒なぜ私ばかりが(怒)、と思う人は『足りないマインド』を『たっぷりあるマインド』に変えればよい。
たっぷりあるマインドを持てれば、物もそんなに欲しいと思わなくなるし、不用品を処分するとき、「1円でも高く売りたい」と思うこともありません。よって、スムーズに捨てられます。
自分で自分を認めるというシンプルなことが、ホーディングの解決になるんじゃないでしょうか?