物だらけのキッチンカウンター

TEDの動画

ホーダー(病的に物をためこむ人)を人間として扱おう(TED)

物を捨てられない家族や、自分自身をジャッジして、うつうつといている人に見てもらいたTEDトークを紹介します。

タイトルは、Humanizing Hoarding(強迫的ホーディングを人間らしく扱うこと)。プレゼンターは、ゴミ屋敷を片付ける仕事をしている、ジェニファー・ハンズリック(Jennifer Hanzlick)さんです。

邦題は『溜め込み障害への思いやりを持とう』です。

hoarding(ホーディング) とは、病的なまでに物をためこむことをいいます。ホーディングする人をホーダー(hoarder)と呼びます。

物を捨てず、部屋にためこんでいる人が、自分のことを「私、ホーダーなのよ」と言う使い方もします。

その意味で言えば、私の夫もホーダーですが、本当に病気の人は、物がありすぎて、日常生活を送ることが困難です。ホーダーの家を放置すると、火事の危険もあるため、近所迷惑にもなっています。

ハンズリックさんは、物をためこむ人を、ただ単に、きびしくジャッジするのは逆効果であり、一人の人間として扱うべきである、と訴えています。



ホーディングを人間らしく扱うこと:TEDの説明

What do you think of when you see a hoarder? Jennifer will challenge your notions of why hoarding is a widespread disorder and how those living through it need our empathy and care if they are truly to be cured.

ホーダーを見たら、あなたは、どう思いますか? ジェニはーは、なぜホーディングはよく見られる障害なのか、ためこみ障害を本当に治すには、思いやりと世話が必要なのではないか、と語ります。

収録は2016年の9月、長さは11分3秒。日本語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。

TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

ためこむ病気についてはこちらに書いています⇒物をためこむ母親にスッキリ断捨離してもらう方法。実録・親の家を片付ける番外編

ハンズリックさんはゆっくりしゃべっているし、とても聞き取りやすい発音です。





私の仕事はためこみ障害の人の家を片付けること

自分のビジネスを立ち上げたとき、人脈を広げるイベントに行きました。何度も、「あなたは何をしているんですか?」と聞かれました。

「ためこまれたものを片付けるビジネス(hoarding clean-out business)をしています」こう答えていました。

いまは、「ホーディング障害をかかえている人々を助ける仕事をしています。たとえば、ジムのような」。こんなふうに答えます。

ジムに会うために、玄関の前に立ったら、こんなサインが見えました。

「危険」のサイン

[危険:この建物は人が住むには危険です。このビルを使用したり、この標示を取り除くことは犯罪です]

市は、ジムが家に住めるように最後の試みをすることに決め、彼を助けるために私が出向くことになりました。

ポーチで、ジムの隣に座ったら、彼は語り始めました。

「どうしてここまでひどくなったのかわからない。もう何度も片付けようとしたんだ。でも、ちっとも進まない。セラピストの治療を受けていたけれど、やめてしまった。

家の中の様子をセラピストに話すことはできなかった。それに、ここにある物はみんな役に立つんだよ。

壁にそって物を高く積み上げると、断熱効果がある。暖房装置がこわれているけど、修理する人を家の中に入れることはできないんだ」。

「私を中に入れてちょうだい。家の中に入って、片付けるのにどのぐらいお金がかかるか見積もりたいから」。こう私は言いました。

ジムは、「きみだけで入ってくれ。ひどいものを見せることになって申し訳ない」こう答えました。

ホーダー、ジムの家の中

家の中に入り、あちこち見てまわりました。そこにあるのは、私や皆さんが持っているのと同じものです。ただ、すごく量が多いのです。

バスルームに入りました。そこにはクランベリージュースのボトルがいくつか並んでいましたが、私には、それはアップルジュースに見えました。

それから、バケツの中に、口をしめた袋が並べられているのが見えました。

そこでわかったのです。彼の家は、水道もこわれているのだと。そこにあるのは、小便と大便だったのです。

これを見た人は、汚い、吐き気がすると思うかもしれません。ですが、これは工夫のあとでもあります。

ポーチにもどったら、ジムは泣いていました。

「大丈夫よ。一緒に片付けられるわ。そこまでひどくないわ」こう私は言いました。

「そこまでひどくないってどういう意味?」

「私は毎日、こういうことをしているのよ。もっとひどいのを見たこともあるの。あなただけじゃないわ。だから、自分を責めないで」。

私たちは、ジムをジャッジすることを選ぶこともできるし、思いやりをもつことを選ぶこともできます。

国中に蔓延しているホーディング

アメリカ合衆国には、ジムと同じ障害を持つ人が1500万人います。全人口の2~5パーセントです。デンバー-ボールダー地区には、15万人います。

この部屋には、110人いると言えます。

ため込み障害の人は、アルツハイマー病にかかっている人より多いのです。ですが、こうしたことは、私たちにはわかりません。彼らは声をあげず、ドアの後ろに隠れているからです。

ブラインドを下ろし、外に出ることも、他人を家に入れることも恐れています。

ため込み障害は、深刻で複雑な精神障害です。治療はとても難しく、こうなってしまう要因はさまざまです。

遺伝、家族から学んだ行動、脳内で異常な活動が起きているというリサーチ結果もあります。整理したり、計画したり、決断したりすることを司る前頭葉皮質に、問題があるのです。

ため込み障害をもっている人のうち75パーセントは、別の精神障害をわずらっています。たとえば、うつや不安症。彼らは、こんな生活をしたくはないのです。

ですが、ホーディングと聞いたとき、みなさんはどう思いますか?

変? なまけもの? 汚い? 嘆かわしい?

もしかしたら、自分も同じだと思っているかもしれませんね。

ガレージに車を止めることができないとか。何年も使っていない物をたくさん持っています。いつか使うときが来るかも知れないから捨てないのです。

クローゼットの中に山のように靴を入れている奥さんを、ホーダーだと思っているかもしれません。

ホーディングの4つの特徴

ホーディングであると判断するには、4つの条件があります。

1)極端なまでにたくさんの物をためこんでいる

2)自分の物を捨てることがひじょうに難しい、ときにはゴミですら

3)住居スペースを、それが意図された目的のために使うことができない

ガス台やダイニングテーブルを使うことができなかったり、ソファに座ることができません。

4)その状況が苦痛や損害をもたらしている

この4つの条件に全部あてはまらなければ、あなたはホーダーではありません。ですが、自分がそうでなくても、自分の身にかかわってきます。

ホーディングは、コミュニティの問題です。あなたに影響を与えます。

コミュニティの一員として、税金を払っている人間として、皆さんは、ホーディングを解決にかかわっています。

アメリカ全土の市が、ホーディング障害の症状を治そうとしています。政府は、公的に、ホーダーを、はずかしめています。ドアに標示を貼ったり、強制的に立ち退かせようとしたり、罰金を課したり、刑務所に送り込んだりして。

ホーダー、メアリーの場合

私のクライアントのメアリーの話をします。

ホーディングのインパクト

さまざまな政府機関が、何年もかけてメアリーのケースにかかわっています。メアリーが家に住み続けられるように、片付け会社が呼ばれたのはこれで2回めです。

これはよくあることです。片付けたあと、心の治療をしないと、もとの状態に戻る率は90パーセントです。

片付け会社の人が、きれいに片付けたからといって、ためこむ行動が治るわけではないのです。

メアリーに会ったとき、彼女はグレーのTシャツに、紫色のスエットパンツ姿でした。

玄関のドアをあけたメアリーは、やや挑戦的で、私に家に入ってほしくはない様子でした。しかし、私を家に入れなければならないこともわかっていました。

私たちは、2時間一緒に片付けました。これは長期戦になると思ったので、その日はそれで終わり、次の火曜日にこの続きをしましょう、とメアリーに言いました。

次の火曜日にまたメアリーの家に行きました。メアリーは前の週と同じグレーのTシャツと紫色のスエットパンツを着ていました。

この時は、30分片付けたあと、メアリーの笑顔がもれるようになり、片付けも進み、メアリーは私を信頼するようになりました。

「メアリー、私がシャワーをきれいにして、汚れた服をひとまとめにしたから、次の週までに、シャワーを浴びて、洗濯をするのが宿題よ」

次の火曜日、出向いたら、皆さん、想像つくでしょうが、メアリーは、また同じTシャツに紫色のスエットパンツ姿でした。私は心配になりました。

「メアリー、いったいどうしたの? なぜシャワーを浴びないの?」

「できないわ。やけどして痛いわ。私、炎症があると思うの。でも、医者に行くことがずっとできないでいるの」。

次に、洗濯について聞きました。

メアリーは、「怖いのよ。ランドリールーム(洗濯するエリア)で、男性二人にレイプされたから、そこへ行くのが怖いのよ」。

私たちは、メアリーをジャッジすることを選ぶことができるし、メアリーを思いやることを選ぶこともできます。

メアリーやジムのような人はたくさんいます。人から、批判的に見られ、誤解されている人々が。

なぜ、私が、この仕事にひかれ、実際、することになったその理由がわかりました。

人からジャッジされるのがどういうことなのか、私は知っているのです。恥ずかしい思いをさせられ、自分を恥じて、恐れてしまう状況を。

私の人生を変えた瞬間

19歳のとき、私はよくあるデータの1人でした。

10代で妊娠した未婚の母親。しかも子供は双子。父親は黒人で、テキサスの田舎で一緒に住んでいました。

彼は、虐待をする人でした。

ある夜、まるで映画の1シーンのように、私は逃げることにしました。テキサスから、デンヴァーまで、グレイハウンドバスに乗って。

安全なところへ行きたくて、6ヶ月の赤ん坊2人と、おむつを入れたバッグ1つを持って、500マイル(およそ805キロメートル。東京から広島までが800キロメートルです)の道を走っていたのです。

私は恐ろしくて震えていました。人前で涙を見せたくなくて、必死にこらえるその痛みは、まるで誰かが私の首をしめているかのようでした。

赤ん坊は何もわかるはずがないのに、私が感じている恐怖はしっかりわかっていて、泣きやまないのです。

バスの乗客全員が、イライラしていました。赤ん坊の泣き声で眠れないから。ほかの人の迷惑になっていると思うと、ますます、赤ん坊は泣きました。

すると突然、迷彩柄のミリタリーウエアを着た男性がやってきて、「お手伝いしましょうか(Can I help?)」と言ったのです。

彼は私の隣に座り、双子のうちの1人を抱きました。すると、赤ん坊は、すぐに泣きやみ、眠りに落ちました。次に、彼がもう1人の赤ん坊を抱くと、やはりすぐに泣き止み、こちらも眠りました。

彼の名前は覚えていませんが、彼の言った言葉は覚えています。

「とても美しい赤ちゃんたちですね(Your babies are beautiful)。僕は妻に会うために家に帰るところです。妻は黒人です。もし僕たちに赤ん坊ができたら、あなたの赤ちゃんのようにきれいなんでしょうね」。

25年前のこの瞬間を私は忘れません。この瞬間が私の人生を変えました。

ほかの乗客のように、彼は、私をジャッジすることができました。ですが、彼は、思いやるほうを選んだのです。それは選択です。

私たちは、ホーディング障害をジャッジすることもできるし、思いやることもできるのです。

非難や、はずかしめることは、この病気を永遠のものにします。今度、みなさんが誰かをホーダーと呼ぶとき、実際はその人はそうではないのだ、ということを思い出してください。

ガラクタを越えたところを見てください。彼らは知性があり、クリエイティブでユーモアがあり親切です。私たちと同じように、大学の教授、エンジニア、アーチスト、起業家なのです。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

impairment   損傷、悪化、減損

recidivism   常習的犯行/悪行、犯罪や反社会的行為を繰り返す性癖

feisty   元気のいい、威勢のいい、怒りっぽい、興奮した

army fatigue   迷彩柄のミリタリーウエア

コンパッション(思いやり)に関するほかのプレゼン

セルフコンパッション(自分にやさしくする)の実践で人生を変える(TED)

他人を大事にすることは、自分を大事にすること(TED)

不安な心(ヴァルネラビリティ)に秘められたパワー:ブレネー・ブラウン(TED)

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自分を知り、自分を大事にするすすめ(TED)

もっと自分を好きになろう。ラディカル・セルフ・ラブのすすめ(TED)。

自分の気持ちをそのまま受け入れる勇気のパワーとその素晴らしさ(TED)

批判は何も生み出さない

このプレゼンはためこみ障害に対する理解をうながすものですが、大きなテーマは、思いやり(コンパッション compassion)だと思います。

人を批判するのは簡単なことですが、批判しているだけだと、何も生まれません。

すぐにジャッジせずに、思いやりを持てるようになると、建設的な解決策を見出せます。

物を捨てられない人に対してだけでなく、捨てられない自分に対しても、思いやりをもったほうがいいです。

物をためこむ問題が増えてきているのは、一方的に本人が悪いのではなく、社会的要因もあります。

社会全体が豊かになり、しかも物質主義社会であるので、ためこみやすい条件が揃っています。

動画でも語られていましたが、アメリカでは、ためこみ障害になる人は、わりと頭がよくて、高い教育を受けている人が多いのです。だからこそ、大きな家やたくさんの物を買うお金があるのかもしれません。

スペースがあると、人は、どんどん物をためてしまいますから。

それに、いまは物をためるのが簡単な時代です。街には物があふれているし、ネットで簡単に注文できるし、買ったものはすぐに宅急便で家に届きます。

メディアはたくさんの物を買うように、うながしていますしね。

しかも、日常のストレスが多く、ホーディングだけでなく、心の病気は増えています。

ちょっとしたボタンのかけ違いがあると、どんな人もホーダーになってしまいそうです。

だから、心の病気になってしまったとしても、それは自分のせいではないのです。

心の病気のみならず、歯が悪いことにすごくコンプレックスを持っている人からメールをもらったことがあります。病気になったり、歯が悪くなったりするのは、たまたまそうなるだけなので、あまり自分を責めないほうがいいです。

自分で自分を責めると、ますます問題が悪化します。

*****

私の娘が赤ん坊のときは、コリックぎみで、すごくよく泣きました。

当時、他人と家をシェアしていたのですが、シェアメイトのエチオピア(だったと思う)出身の女性が、ガン泣きしている娘を抱くと、ピタリと泣き止むことがよくありました。

とても不思議だったのですが、私が抱くと、私のイライラや疲労感、「早く寝てくれ」といった、ネガティブっぽい波長が、娘に伝わっていたのかもしれません。

その女性は娘のことをすごくかわいがってくれていたから、彼女が抱くと、やさしい気持ちが伝わっていたのでしょう。





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