ページに広告が含まれる場合があります。
人生が思い通りにいかないと感じ、落ち込みがちな人の参考になるTEDの動画を紹介します。
タイトルは、Emotional Mastery: The Gifted Wisdom of Unpleasant Feelings (感情をうまく扱う:いやな気分は天がくれた知恵)
プレゼンターは心理学者のジョーン・ローゼンバーグ(Joan Rosenberg)です。
いやな気分になったとき、その気持ちから逃げず、受け止めるようにすると、もっと豊かな人生になる、という主旨です。
不快な感情は、むしろありがたいものなのです。
感情をうまく扱う:TEDの説明
What often blocks people from feeling capable in life and from having greater success with finances, health or relationships is how they handle unpleasant feelings.
Psychologist Joan Rosenberg unveils the innovative strategy and surprising keys for experiencing the challenging emotions that lie at the heart of confidence, emotional strength, and resilience.
人生において、「自分はできる」という気持ちになれなかったり、経済的な成功、健康、豊かな人間関係から遠ざかってしまうのは、いやな気分の扱い方が間違っているからです。
心理学者のジョーン・ローゼンバーグは、難しい感情を扱う革新的な戦略とそうした感情を体験する驚くべきコツを紹介します。
いやな気分は、自信や心の強さ、元に戻ろうとする力に根ざしています。
動画の長さは15分17秒。英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
最悪の時が仕事につながった
19歳のとき、ミネソタ北部のサマーキャンプで、カウンセラーをしていました。美しい夜、ほかのカウンセラーたちと、ヘイライドをしながら、隣でかわされる会話に耳を傾けていました。
どうやったらその会話に加われるか考えていました。
ガールズキャンプからボーイズキャンプのほうに向かうとき、仲間の1人が私のほうを見て、ひじでつつきながら、「ジョーン、あのね、あなたって退屈な人ね」と言いました。
「え、退屈? え?」
まるで彼女に、ォークで内蔵を突き刺され、るぐる振り回されている気分でした。
こんなふうに、がーんとなぐられたような気がする体験、だれでもあると思います。
このとき、とてもショックでした。このときの体験とさらにほかの経験も重なって、私は、心理学者になろうと思いました。
誰かにセルフエスティームを感じてもらったり、自信を持ってもらうにはどうしたらいいか知りたいと思ったのです。
重要なのは「いやな気分」
35年間、研究を重ね、何時間も人にカウンセリングをし、教えたり、監督したりした中で、たった1つ、私がとても気になっていることがあります。
それは、不愉快な感情(unpleasant feelings)です。
いやな気分をうまく扱えないから、人々は前に進めないのです。
誰も、不愉快な気持ちをどう扱うべきか、教えてくれません。
私は、不愉快な感情の研究に夢中になりました。
8つのいやな気分を体験し、次に進めば、なんだってできます。
どうするかというと…。
選択は1つ、感情は8つ、90秒
ルールはシンプルです。
「選択は1つ、感情は8つ、90秒」(One choice, 8 feelings, 90 seconds)
私の同僚やクライアントは、これは、ローゼンバーグリセットと呼んでいます。
たいていの人は、、自分が幸せになるかどうかは、自分がする大きな選択にかかっていると思っています。
しかし、実際は、大きな選択ではないのです。
実はその瞬間、その瞬間にする、小さな選択で決まります。
その瞬間に感じていることに、注意を向けるかわりに、否定しようとする。これををやめれば、もっと自由になれます。
では、先ほど話したルールをひもといていきましょう。
選択は1つ:今この瞬間に立ち会う
今を生きる(stay present)選択をします。
その瞬間、瞬間に感じていることに意識を向け、つながってください。
自覚するのです。避けるのではなく。
誰かと会話したときのことを思い出してください。
友達やパートナー、配偶者と話をしてがっかりしたとき、どうしましたか?
多くの人がやるように、逃げた? 隠れた? 自分の殻の中に閉じこもった?
わかりやすい方法で気を紛らわせましたか? 食べ物、アルコールや麻薬、セックス、ポルノ、買い物、ソーシャルメディアで。
もっと目立たない方法で気を紛らわしたり、逃げたりしましたか? 身体をこわばらせたり、息を殺したり、ゴクリとつばを飲んだり、いやな気分をなかったことにしようとしたり。
それとも、その瞬間にしっかり立ち会い、自分の気持ちに意識を向けていましたか?
それがベストの選択です。ただし、それはあなたの選択です。
今を生きること。誰でもできます。やる気と、ルールと、決断があれば。
8つの不快な感情とは?
次のステップは、8つのいやな感情を扱うことです。
悲しみ、恥、無力感、怒り、心細さ(ヴァルネラビリティ)、当惑、落胆、いらいら(フラストレーション)。
こうした感情は、悪いもの、ネガティブなものと考えられています。
それは違います。
たんに、不快で居心地が悪いだけです。
これからは、こうした感情を悪いとかネガティブととらえるのはやめましょう。ただ、不快で居心地が悪いだけです。
これは重要な転換です。
なぜいやな気分になりたくないのか?
なぜ、私たちはこういう感情を避けようとするのでしょうか?
恐れているからです。こういう気持ちになると、それはずっと止まらない、強烈すぎて、おじけづいてしまう、コントロールできなくなる、と。
ですが、いやな感情はとても大切です。
この世界で自分はちゃんとできるんだ、という気持ちや、心の強さは、いやな感情を体験し、そこから次に進むことに結びついています。
いちどきに、8つの感情をすべて感じるわけではありません。
1つか2つ、3つというところです。
怒りと落胆を同時に感じることはできます。
8つの感情をきっちり感じて、次に進むことができれば、より自信がつき、心も強くなります。
私たちが嫌っているのは肉体的な感覚
次に進む(move through)とは具体的にはどういうことでしょうか?
神経科学者によれば、感情がわきおこるきっかけがあると、脳内で化学物質が分泌され、血管にながれこみ、全身にセンセーションがおきます。
つまり、何かを感じるとき、まず身体で感じるのです。それは気分のいいものではありません。
私たちが避けたいのは、身体で感じる、物理的な感覚のほうです。何かを感じるのを避けたいわけではないのです。
私たちは、あらゆる感情も体験したいと思っています。
みなさんを前に進めなくさせる不愉快な感情はどれですか? そういう感情になったとき、立ち止まって気づいてください。
「二度とこんな気持ちにはなりたくない」と思ったら、その気持ちこそ大事にすべきです。
私にとっては、おなかをなぐられるような、気まずさが苦手です。落胆や心細さも。
感情は、いずれは去っていく
解決策があります。
それは、波に乗ること。
ちょっと前にお話しした、生化学的な反応(biochemical rush)を覚えていますか? これは波にたとえることができます。
身体の中で反応が起きると、それは60秒から90秒続きます。つまり、一時的なことです。
脳で化学物質が分泌され、血管に入り込み全身をかけめぐっても、60秒から90秒で消えます。60~90秒ならがまんできますよね?
海岸を思い浮かべてください。海岸線にそって歩いているとき、大きな波、ふつうの波、小さな波が打ち寄せます。
波はこちらにやってきて、しばらくとどまってから、引いていきます。
感情も同じです。大きな動揺を呼ぶ感情、ふつうの感情、ごく小さな感情がやってきては、ほんの少しとどまって去っていきます。
「いつも去っていく」。ここがポイントです。
波は一つだけではありません。
特定の記憶を思いだすたびに、同じような波が押し寄せます。
深い悲しみ(grif)を感じるとき、さまざまな波が打ち寄せます。怒り、悲しみ、落胆などが混じり合って。
大事な人を亡くしたことがある人は、ご存知ですね。
感情の波は突然、気まぐれにやってくるので、波にのまれそうな気がしますが、必ず、引いていくのです。
感情と向き合うと心が穏やかになる
やるべきことは、その瞬間にしっかり立ち会い体験すること、90秒の波に乗ります。
乗り方は自由です。乗って、災いを流してください。
その瞬間、地に足がついた感じがします。静かになり、安心します。そして、洞察が続きます。
いつも練習をしていると、古い人生体験から自由になることすらできます。
たくさんの人から、うれしい報告が届いています。
人間関係がよくなった、勇気を出して会話できるようになった、やりたいと思っていたことがやれるようになった、と。
本当の自分になるために
もっとも重要なことは、みなが、自分自身でいることに心地よさを感じていることです。
「退屈な人だ」と言われた、私の人生で最低の瞬間の恩恵がこれです。
この瞬間が私を変え、たくさんの人たちの人生を変えました。
次に、居心地の悪い気持ちになったら、それを大事にしてください。本当の自分自身になれる道へとつながっています。
「今」という時を感じて、体験してください。
波に乗ってください。べつに、何年もかかりません。1日もかかりません。
ほんの瞬間のことです。今すぐ始めてください。
//// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
hayride 干し草をつんだ荷車や、トラクターの荷台にのってゆられながら、そのへんの景色を見て楽しむこと。夜間することもあります。
rush いきおいよく流れること
comfortable in one’s own skin ありのままの自分でいることが心地よい
ジョーン・ローゼンバーグさんの本です。
キンドル版です。翻訳はないようです。
感情との付き合い方に関する他のプレゼン
自分の気持ちをそのまま受け入れる勇気のパワーとその素晴らしさ(TED)
不安な心(ヴァルネラビリティ)に秘められたパワー:ブレネー・ブラウン(TED)
心の中にいる自分を妨害するものに気づけ(シャザド・チャミン):TED
感情的な反応から賢明な思考にシフトさせ、最良の決断をうながす方法。
マインドフルネスをお試しください
いま、自分が感じている感情に意識を向けるのは、マインドフルになることにほかなりません。
いやな気分を感じたときだけでなく、(やめたいと思っているのに)買い物をしているときや、(やめたいと思っているのに)だらだらとスマホやSNSを見ているとき、自分の感情に注意を向けてみるとよいです。
子供が話しかけているのに、スマホをじーっと見ているのは、スマホにこころをハイジャックされた状態だと思います。
ハイジャックされない、明け渡さない、逃げない、ごまかさない。そのかわり、自分の感情に注意をむける。
そうすることができると、もっと自由に自分らしい生き方ができる、とジョーンさんは言っています。
不快な気分から逃げたり、ないことにしようとしたりするから、いつまでたっても、自分に向き合えず、うつうつとしてしまうのではないでしょうか?
以前、ご主人が物を散らかすとう相談メールに答えたことがあります⇒すぐに物を散らかす夫に困っています、どうしたらいいでしょうか?
記事で回答したらお返事をいただきました。そのメールに、「気持ちをスッキリさせたくて物を捨てると、嫌な気持ちが出てくるとは思ってもいなかった」という一文がありました。
ほかにも、「物は減ったのに、毎日、こんなことやあんなことがあって不安です、いやです、イライラします、不愉快です、楽しくありません、ネガティブになっています」というメールをたくさんもらいます。
断捨離したって、いやな気分と無縁になりません。
片付けは万能ではありません。
ただ、いやな気持ちとの付き合い方は変わるんじゃないでしょうか?
不愉快な気持ちになったとき、逃げずにじっと向き合ってみてください。