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TEDの動画

最終更新日: 2018.10.8

すべてを失ったからこそ得られる喜び(TED)

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挫折や失敗のせいで、暗い人生を送っている人を勇気づけるTEDの動画を紹介します。

タイトルは The Joy of Losing Everything(すべてを失うことの喜び)。プレゼンターは、ピーク・パフォーマンス・スペシャリストのリア・グリマニス(Lia Grimanis)さんです。

ピークパフォーマンススペシャリストは、人々が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、コーチングする人だと思います。

リアさんは、10代のとき、ホームレスで、「人生は終わった」という強い喪失感を感じているときがありました。このとき、彼女はどんなふうに自分を支え、未来を切り開いたのでしょうか?



すべてを失ったあとの喜び:TEDの説明

Peak Performance specialist Lia Grimanis was a homeless teenager. In this talk, Lia shares with us how losing everything can open our eyes to opportunity and joy that we may not have found otherwise. She shows us how, through this new awareness, we can rebuild our lives.

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

ピークパフォーマンススペシャリストのリア・グリマニスはティーンエイジャーのホームレスでした。すべてを失うと、そうでないときには見つけられない機会や喜びに目を向けることができる、と語ります。

この新しい気づきをもとに、人生を立て直す方法をリアは教えてくれます。

動画の長さは10分42秒。字幕はありません。動画のあとに抄訳を書きます。

誰でもホームレスになりうる

ホームレスと聞くと、どんな顔を思い浮かべますか?

「男の人」「長髪で汚い」

そうですね。ショッピングカートを押していたり。

この質問をするたびに、毎回同じ答えがかえってきます。ホームレスの顔は私たちの顔とは似ても似つかない、と。

ホームレスは私たちとは違う人々だ、という答えです。

写真を何枚か見てください。誰がホームレスか見分けがつきますか?

実は、どんな人もホームレスになりうるのです。プロフェッショナルでも、母親でも、仕事があっても、いつその仕事を失うかわかりません。

健康な人も、病気の人も、恵まれた家庭で育った子供も、ホームレスになる可能性があります。

メンタルの病気をかかえている人も、虐待されている人も、薬物依存の人も。

さまざまな都市で行った調査によれば、ホームレスになるもっともよくある理由は失業です。

その次が貧困、そして、家賃を払える住居がないこと。女性の場合、家庭内暴力も理由になります。

つまり、企業の破産が多い時代であるいま、誰でもホームレスになりうるのです。





ふつうの人と路上生活者の違うところ

ホームレスを説明するとき、もっともよく聞く言葉が、「怠惰」です。

私は元ホームレスで、いまはビジネスで成功していると言うと、人々は、それは私の決断がよかったからで、例外だ、と言います。

ですが、これは間違っています。

イギリスのシェフィールド大学が時間の捉え方と路上生活者に関するリサーチをしました。

50人の路上生活者を集めて、インタビューをし、その結果を50人のホームレスではない人のデータと比べました。

その結果のほとんどは、あらかじめ予測できる内容でした。

路上生活者は、うつ状態にあることが多く、過去のネガティブなできごとに意識を向け、現在のことを「運命だから仕方がない」とあきらめる傾向がありました。

つまり、無力さを感じ、希望を失っていたのです。しばしば、その無力さのせいで、うつになったり、過去のできごとをネガティブにとらえていました。

一方、ホームレスじゃないグループは、過去の、よりポジティブなできごとにフォーカスし、現在のことも、あきらめない態度を持っていました。より、自分で人生をコントロールできていると思っていたのです。

ふつうの人も路上生活者も同じところ

ところが、驚くべきことに、未来に関する考え方は、両者ともとても似ていました。

ホームレスの人は、無力さを感じつつつも、未来については前向きでした。目的や向上心を持っていました。

驚きですよね?

うつ状態だったり、困難な状況にあったりしても、どんな人でも、ホームレスであろうとなかろうと、「人生をもっとよくしたい」と望んでいるのです。

難しいのは、現在のできごとに向かう態度です。いま、何かでもがいていたり、困難なできごとのせいで、現実に押しつぶされそうになっていたら、気持ちが負けます。

その場所から身動きできず、前に進むことなんて不可能だと考えてしまうのです。

これは、ホームレスの人も、そうでない人も、変わりません。敗北の筋書きです。

どんな人も、人生のある時点で、挫折を体験しています。まだそういう経験がないなら、この先、出会います。

愛する人を失ったり、失業したり、結婚生活がこわれたり、うつになったり、重病になったり。

そういう時期は誰にでも訪れて、人は打ちのめされます。途方にくれます。

社会福祉があるから、困ったときは相談できます。サポートもあります。

けれども、カウンセリングが終わったり、友人が帰ってしまえば、その後、長い時間、私たちは1人であがかなければなりません。

そのような時期、ひとりぼっちだったときに、人生を立て直すために、私がとった戦略をシェアしますね。

名言を持ち歩いていたけれど

ホームレスだったとき、いつも持ち歩いていた名言があります。

ジュール・ルナール(Jules Renard)の言葉です。

If I had my life to live over again, I would ask that not a thing be changed, but that my eyes be opened wider.

もし、人生をやり直さなければならなくなったら、何も変えてくれるな、と頼むだろう。ただ、もう少し自分の視野を広げてほしいとは頼みたい。

この名言をいつも、持って歩いていました。いつか、この言葉を信じられる日が来るんじゃないか、と期待して。

けれども、レストランの横を通り過ぎれば、窓から、きれいな格好をして、笑ったり話したりしている人々が見えました。みんな幸せそうで、満ち足りているようでした。

こんな現実は自分には無縁だ、と感じました。

私は十代で、高校をドロップアウトし、すべては終わったと考えていました。文無しなんだと。

敗北感でいっぱいのとき、人の心は自然に、自分が負けた事実を証明するできごとにフォーカスします。

ネガティブなできごとは重要視され、ポジティブなできごとやニュートラルなことは後ろに追いやられるのです。

自分で、「負けた」と感じていたから、気持ちはどんどん落ち込み、ギリギリまで追い詰められました。変わらなければ死んでしまう、というところまで。

私は自分の気持ちを持ち上げる何かを見つける必要がありました。永遠にあきらめてしまう前に。

感謝できることを書き出した

シェルターで暮したあと、政府が助成している宿泊施設に、月125ドル(14222円ぐらい)の家賃を払って住んでいました。

お金の余裕はありませんでしたが、ワイングラスを1つだけ買いました。ものすごく気持ちが落ち込んだとき、このグラスにシャンペンのつもりで水を注ぎました。

「いつだって、お祝いすることはあるのよ」。これを忘れないために。

そして、自分が感謝できることをリストアップしました。

ちゃんと家に住んでいる、安全だ、わずかにブロンドでもある。

ティーンエイジャーだったので、髪の色は重要でした。

ポジティブなことにフォーカスするよう、訓練しました。とても大変でした。全くうまくいかない日もありました。

ですが、こうしたら私の現実は変わったのです。

感謝する効果

カリフォルニア大学デービス校のロバート・エモンスは感謝に関する研究をしています。

毎晩、その日うまくいったことや、感謝できることを書くグループと、その日大変だったこと、うまくいかなかったことを書き出すグループを比べる、という実験をしました。

感謝をしていた人々は、免疫系があがり、血圧が下がり、睡眠の質があがり、痛みも少ない、という結果が出ました。

より幸福を感じ、いきいきとし、ほかの人の役に立ちたいと考え、思いやりをもっていました。

気前がよく、孤独感も少なく、より自分のゴールを達成していました。

ホームレスの人に、感謝リスト(gratitude list)を書くように言ってみてください。簡単ではありません。直感にさからうことですから。

ですが、感謝を書き出すのは効果があるのです。それが、治療や転換への道です。感謝することから始まります。

よいことを見つけるようにした

感謝するとどうなるかお話しましょう。

よいことに目を向けるようにしてから、私の気分はよくなっていきました。ネガティブなできごとがあると知りつつも、その比重が小さくなりました。

そして、ポジティブなできごとのボリュームが大きくなりました。これはくせになります。

もっと前向きなできごとを見たい、と思ったので、外に出て、いろいろ探しました。美しいことや素晴らしいことを。

公園で踊っている子どもたち、差出人不明のラブレター、無料の雪。路地から見える朝日。

あちらこちらで、素晴らしいものを見るようになると、ほかの人に、伝染します。すると、あちらこちらで親切が生まれます。

「ほかの人の人生に魔法をもたらそう」と考えたとき、子供のとき、5セント銅貨が落ちているのを見て、宝物を見つけた気分だったことを思い出しました。

そこで、5セント銅貨をたくさん買って、朝はやく、公園に行き、子供たちが来る前に、あたりにまき散らしました。

その後ベンチに座って、わくわくして待ちました。

子どもたちが親やナニーとやってきました。1人の子がコインを見つけ、ほかの子に見せました。また、別の子が見つけました。みな、大喜び。とてもすてきな光景でした。

ところが、1つのコインを2人が奪い合い、けんかが始まりました。べつのところでもけんかが始まり、私は、3才児のけんかを引き起こしてしまったことに気づきました。

子供たちが、泣きながらケンカをしているところに、親やナニーが割ってはいって、「いったい、誰がこんな余計なことをしたのかしら」と叫びました。

恥ずかしかったです。だから、誰かに親切にするときには、気をつけてくださいね。

よいものに目を向けることが未来へつながる

人生をすばらしくするものや、人生を生きるのに値するもの、自分のよいところ。こんなもの見るようにしたら、私は力強くなりました。自分のこわれた部分を直す気になったのです。

毎日、ほんの少しだけ、本当の自分に近づく、というシンプルな目標を作りました。そうやって、生活を立て直していったら、未来が見えてきました。

新しい機会に気づき、それを追い求める力や希望が生まれたのです。

大きな可能性を感じることができ、ふと過去を振り返ったら、自分がずいぶん遠いところまで来たと気づきます。そしてまた、未来に目を向けます。

おなかをすかせた肉食動物がおいしい獲物に狙いを定めるように。

こんなとき、私たちは、喜びの見張り人(joy vigilante)になります。

どんなに困難なこと、がっかりすること、挫折があっても、自ら喜びを見つけ、望む未来に進むことができるのです。

///// 抄訳ここまで ////

単語の意味

rooming house 下宿屋、簡易宿泊所。ワンルームでお風呂とトイレは共用のところが多い。

contre-intuitive 半直感的な

vigilante 自警団、見張り

落ち込んだ人におすすめのほかのプレゼン

いやな気分よ、さようなら(認知行動療法入門):TED

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だまされたつもりで感謝ノートを書いてみるすすめ

先週、久しぶりにものすごくネガティブな相談メールを主婦の方から3通もらいました。

去年、ある失敗をして(本人的には判断を誤った)以来、ずっとそれを後悔して、毎日泣いたり、ぼんやりしたりし、仕事も家事も手につかず、うじうじと悩みを話しているうちに友人は離れ、息子は反抗期、娘も友だちと遊ばなくなった、夫はほとんど家にいない、という内容です。

このまま私はひとりぼっちだと思うととても怖い、とありました。

失ったものが大きすぎて、取り返しがつかない、と感じているそうです。

けれども、その人がした判断ミスは、べつに人命にかかわることではないし、モラルに反することでも、罪に問われることでもありません。

私的には、「どうしてそこまで悩む必要があるのかねえ」と思うできごとです。

ただ、完全にうつ状態に陥っているようで、メールは最初から最後までネガティブなことばかりです。

ポジティブなことやいいことは何一つ書いてありません(だから悩んでいるのでしょうが)。

以前、紹介した、ネガティブな人に典型的な思考がいちいちあてはまる内容です。

こんな発想や⇒今すぐ捨てたい根拠のない思い込み:10の認知のゆがみ、その1

こんな考え方です⇒ポジティブ思考は学習できる。前向きになる4つのポイント教えます。

マイナス思考しかできない人は、視野が狭くなってしまうのです。

自分のことだけでなく、他の人のことを考えてみてはどうですか、と書き、TEDの過去記事へのリンクも貼って、返事を出しても、次のメールも最初から最後まで自分のことばかりです。

今回紹介したプレゼンにあったように、人は、自分が「大失敗した、もうだめだ、人生終わった」と思い込むと、その確信を深める証拠をどんどん見つけていきます。

子供が反抗期になるなんてごくふつうのことだし、日本のお父さんの多くは、仕事をしている時間が長いのでほとんど家にいません。

その人の不幸の原因は、やったことにあるのではなく、それを後悔して、「大きなミスをしてしまった」と思い込んでいるところにあるのです。

この点を説明しましたが、「考え方を変えれば解決するのはわかっているが、それがうまくいかないのです。だから悩んでいるんです」という返事が来ました。

私はうつ状態になったこともないし、大きな喪失感を味わったこともないので、相談者さんの気持ちはわかりません。

けれども、自分で「うまくいかない」と思っていたら、絶対うまくいきません。

「できない」「うまくいかない」という確信を捨てることが必要ではないでしょうか?

そのために、感謝できることを書いてみるのはどうであろうか、と思い、今回、リアさんの動画を紹介しました。

ソーシャルサービスや医者、セラピスト、家族や友人。助けてくれる人はたくさんいます。けれども、結局のところ、自分を救えるのは自分しかいないと思います。

このままそこにとどまるか、前に進むか。すべては自分次第です。

繰り返しますが、「気持ちを切り替えることができません!」という固い信念を持っているからこそ、できないのです。





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