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エシカルファッションに取り組みたい人の参考になるTEDトークを紹介します。
タイトルは、How to Engage with Ethical Fashion(いかにエシカルファッションに従事するか)。講演者はデザイナーで、持続可能なファッションをめざして活動している、クララ・ヴルティッチ(Clara Vuletich)さんです。
エシカルファッション(ethical fashion)とは、人や社会、地球にやさしい、持続可能なファッションのことです。
現在の主流である、大量生産、大量消費とは対極にある考え方です。
エシカルファッションの実践、TEDの説明
What do you know about the clothes in your wardrobe? About the clothes that you’re wearing right now? Clara Vuletich works with some of the biggest brands in the world to help them ask the right questions about where the clothes that we wear come from.
あなたのたんすにある服について、何を知っていますか? あなたが、いま着ている服について。
クララ・ヴルティッチは、世界の大きなブランドと働き、私たちが着ている服がどこから来ているのか、適切な質問をできるよう手助けしています。
動画はおよそ18分。英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
持続可能な開発を意識していなかった産業
ファッションと持続可能な社会。この2つは、異質のものです。
ファッションは、セクシーで、くせになり、独占的で、とても動きの早いもの。
持続可能なことは、スローペースで、注意深く、栄えていき、責任が伴います。
ファンション業界は、近年まで、あまり持続可能ではなかったと言っていいでしょう。私たちは、洋服や布地にまみれていました。
増えすぎた服
過去20年に、服のセールスはおどろくほど増えました。みなさんは、みなさんのご両親より、4倍もの服を持っていることをご存知ですか?
UKでは、毎年1万トン以上の服がランドフィル(ゴミの最終処理場、埋立地)に捨てられます。
私たちは、タンスの中にたくさんの服を持っていますが、だからといってより幸せであるとも言えません。
ファストファッションの台頭により、私たちは、服をたくさん買いさえすれば、幸せになれるという幻想を追いかける、受動的な消費者になってしまいました。
劣悪な労働環境
私たちの服を作っている人たちは、ここオーストラリアからずっと遠いところにいて、ひどい労働環境の中で、安い賃金をもらって働いています。
2013年、バングラデシュの衣料品を作る工場、ラナ・プラザで事故があり、1000人以上が亡くなりました。彼らは、アメリカとイギリスのブランドの服を作っていました。
私はデザイナーであり、リサーチャーとして、この業界で10年以上働いています。
たくさんのデザイナー、ブランドマネジャー、サプライヤー、小売業者、消費者と話をしてきました。
みな、ほかの人が悪いと言います。
消費者は、服を作っている人にまともに給料を払っていないメーカーを非難し、メーカーは、服の値段が安いのは、そうしないと売れないからだと言い、
活動家団体は、何よりも利潤を追求しているメーカーのビジネスモデルを非難し、政府は、その様子を見ているだけです。
手縫いのワークショップをした
では、どうやったら、ファッションと持続可能な開発が共存できるのでしょうか?
どうしたら、業界に関係のある人たちが、協力しあって状況を変えることができるでしょうか?
私たちは、いま、新しいタイプのファッション産業に変わろうとしているところです。それは、環境によく、全体がうまく回るものです。
社会や価値、サプライチェーンにいる全員を尊重することを優先するやり方です。
ちょっと前に、私は、この問題を調査し、解決法を見つけるため、世界のサプライチェーンを視察しました。
私の旅は、まず、地元であるロンドン南部のブリクストンから始まりました。
コミュニティセンターで、女性たちに服の修繕方法を教えました。このワークショップで、自分たちの服をもっと大事にしてもらいたいと思って、がんばりました。
縫いものをしながら、私たちは、ファストファッションが、いかに人や環境に悪影響を与えているか、まじめにディスカッションしました。
ワークショップが終わって、家に帰ろうと、ハイストリートを歩いていたら、ワークショップに参加した4人の女性が、ファストファッションの店に入っていくのを見ました。
え、買い物をするの?
信じられませんでした。
何時間もかけて、ゆっくりていねいに服を直すやり方教えたのに、彼女たちは、友だちと、お手軽なファッションを楽しもうとしたのですから。
この瞬間、私は気づきました。デザイナーであり、活動家として、この業界のシステムを本当に変えたいなら、行動を変えることを考えるべきだと。
手作りをベースとしたテキスタイルデザイナーでいるより、業界の中心に行くべきだ、世界的に有名なブランドやそのブランドの服を作っている現場に入っていかねばならないと。
持続可能なデザインの研究
幸運なことに、この頃、私は、世界でも大きなファッション企業のひとつと働くチャンスを得ました。
ロンドンのリサーチチームの一員として、ファッションとテキスタイルのデザイナーのために、持続可能でいられる戦略を研究しました。
その戦略には、リサイクルを前提とした服、循環できる服、化学物質の影響の少ない服、製造のとき水を使いすぎない服をデザインする方法や、エシカルな服を作る活動家になる方法が含まれます。
英国とヨーロッパで、こうした戦略を、最初は、デザイナー志望の学生に、次にプロのデザイナーに教えました。
教えるときは、過去のコレクションの服のデザインを使いました。ジーンズやアウターなど、すでに、彼らがデザインしたものです。
こうした服を、より環境によく、社会的インパクトが少ないものに再デザインしてもらいました。
服のライフサイクル
衣料品の環境への影響を考えるには、そのライフサイクルを知らなければなりません。
衣料品のライフサイクルをみると、それぞれの段階での影響が明らかになります。
布地が服になるまで、長いプロセスを経ます。
原材料が繊維になり、服として製造され、船に積まれ輸送され、消費者がそれを着て、洗って、衣料品の寿命が終わり、捨てられるか、中古衣料の市場に出ます。
ライフサイクルをチェックするとき、繊維とデザインによって、影響が異なることを考慮に入れる必要があります。
ポリエステルのドレスとコットンのTシャツでは、かなり異なる影響があります。
例として、コットンをとりあげましょう。
コットンは世界でもよく使われる繊維です。綿の栽培には、たくさんの農薬が必要です。Tシャツを1枚作るのに、500グラムの殺虫剤を使うと言われています。
Tシャツ1枚について、手のひら、1杯です。世界規模でみると、10億枚のTシャツが作られています。
ふつうのコットンの代わりになるものとして、オーガニックコットンがあります。
殺虫剤を使わず栽培する綿ですが、ふつうの綿より、10~20%、値段が高いですし、栽培が追いついていない状況です。
とくにここ5年は、綿の農薬の問題が重要視されるようになったので、需要が供給を上回っています。
オーガニックコットンのTシャツを買って、2~3回着用しようが、何度も着ようが、ゴミ箱に捨てれば、ランドフィルに行き着くものです。
もし、そのTシャツに毒性の強い染料が使われていると、それが、地面にしみこみます。
Tシャツが、生分解するまでに400年かかります。
このように、問題は複雑です。たった一つの解決法はありません。
しかし、こうした問題を解決するデザインをデザイナーに考えさせると、そのデザイナーは、ライフサイクルについて考えることができるようになります。衣料品の一生を考慮するのです。
自分の価値観を見直す必要がある
大企業のデザイナーたちに教えていたとき、人に、そういうことを考えるのを押し付けることはできないと感じました。
持続可能な開発を考えようとすると、人間として、自分と自然との関係や、自分の行動の倫理性を深いレベルで考える必要にせまられます。
私が使っていた戦略は、そこまで深く考えていなかったと思いました。
職場では、たとえ、その企業が、企業責任をとるポリシーを持っていたとしても、従業員の個人的な価値観を仕事に反映することはあまり求められていません。
そこで、カードを使って、デザイナーたちに、彼らにとって、持続可能であるとは、どういうことなのか、まず考えてもらってから、さまざまな戦略を使ってデザインしてもらうことにしました。
こうしたワークショップをヨーロッパでしてから、中国に行きました。
中国の縫製工場での体験
中国は、布地と衣料品の製造の世界的中心地です。
中国で働いている人たちの、労働者としての権利や、劣悪な労働環境といった問題と、その解決法を得たいと思っていましたが、行ってみたら、自分の想像とは違っていました。
中国の縫製工場の労働者の大半は18~25歳の女性で、地方出身者です。工場のとなりにある寮に住んでいます。
彼らは、自分の仕事や、仕事を得られたことに、とても満足していました。だいたい3年~5年工場で働いて、お金をたくさんため田舎の家族のもとに戻ります。
街で、結婚相手に出会うことも期待しています。
ほかにも、いろいろな工場に行きましたが、すべてがそうではなかったものの、大半の工場は大きく、きれいで、従業員は安全な環境のなかで、楽しく働いていました。
そのため、工場では、持続可能性のためのクリエイティブなプロジェクトはできませんでしたが、工場で働く人たちと話す機会がありました。
そこでは、問題について話すのではなく、布地にプリントするごくシンプルな方法をみなに教えました。
手縫いのプロジェクト
世界のサプライチェーンを視察して、ワークショップをする旅が終わり、ロンドンに戻って、私が最後にしたプロジェクトは、手縫いでジャケットを作ることです。
3週間かけてジャケットを作りました。手縫いで小さな布をパッチワークして、布地を3枚重ねてキルティングしました。
ルイーズ・ブルジョワという、フランスのアーチストは、針と糸をつかって手縫いをすることは、修繕の一つの形だと言いました。
手縫いをする人は、何かを直したり、元通りにしているのです。
手縫いというシンプルで意識的な行動をすることによって、リサーチでのさまざまな発見や気付きをまとめ、理解することができました。
心と手を使って、ファッションと持続可能であることを自分なりに理解したのです。
個人の価値観を反映する
よりオーガニックな素材を使ったり、うまく管理されている工場に発注したり、服の修繕方法を教えながら、消費者の行動を変えようとすることはできます。
ですが、結局のところ、持続可能なファッションは価値に関係のあることです。私たちは、何に価値をおくか、自分で決めなければなりません。
企業の一員であるデザイナーが、自分の会社の社会的責任に関するポリシーに即して働くためには、自分自身の価値観についてもよく知っておき、自分にはちからがあることを悟るべきです。
中国の若い工場労働者たちは、自分の文化やこれまでの体験から自分自身の価値観を持っています。
彼らの価値観を推し量ることはできませんが、協力しあって彼らの労働者としての人権やニーズがかなえられるようにしなければなりません。
いま、ここにいるオーストラリアの人たちは、ファッションが大好きで、買い物をする人々です。そのような人は、これから、どんなふうにお金を使い、すでに持っている服をどんなふうに大事にしていくか決めなければなりません。
私たちは、自分が食べるものや着るものを、たくさん外部から調達していますが、今こそ、自分の手元に戻す時です。
サプライチェーンについて明らかにしないメーカーや、ランドフィルに税金をかけない政府を非難することは簡単です。
ですが、私たち自身が責任をもって選択しなければなりません。
消費者がエシカルファッションに取り組む方法
意識的にファッションを楽しむ方法はいくつかあります。
まずは、昔の人みたいに、ごく簡単な手縫いを学ぶこと。手縫いは、自分の価値観について考え、創造性を発揮する、とてもいい方法です。
誰でもできるのに、そうすることを忘れています。
土曜の午後にショッピングに行くのは楽しく、ときには、ショッピングによって気分がよくなり、ハッピーになれるかもしれません。
でも、毎回そうではありませんよね。
自分の中にあるものに意識を向けると、自分が本当にしたいことは、もっと人とつながったり、自然とつながったりすることだとわかります。
オーストラリアには、洋服のメーカーのエシカル度を測るアプリがあります。そういうアプリを用いて、サプライチェーンについて知って、お金の使い方を考えるのもよいでしょう。
さらに、中古の服を買ったり、友だちどうしで交換します。究極的な解決法は、買う服を減らすこと。
シンプルですがラディカルな方法です。
私たちはそんなことは考えもしない消費者になってしまいましたし、すぐそばに安い服がたくさん売られています。
考えてみれば、私がロンドンで、手縫いが世界を変えるかもしれないと思ってワークショップをやったのは正しかったのです。
ファッション好きでなくても、人はみな服を着ます。私たちはみな、より豊かなファッション産業へのシフトにかかわっているし、責任があるのです。
//// 抄訳ここまで ////
単語の説明
Louise Bourgeois ルイーズ・ブルジョワ(1911-2010) パリ出身で、後にあめりかに渡った彫刻家、画家、版画家。
CSR policy Corporate Social responsibility 企業の社会的責任に関するポリシー。
ファッションに関するほかのプレゼンなど
マインドレスからマインドフルへ、ファッションを変えていく(TED)
死ぬほど素敵なファッション(TED)おしゃれで安い服の大きな代償。
服を使い捨ててはいけない。着ているものがあなたの生き方を表している(TED)
エシカルファッションについて⇒エシカルファッションの追求と節約を両立させる方法はある?私は買わない選択をした
ファストファッションとは?⇒ファストファッションとは? その仕組みと問題点を2分で学ぶ
自分の責任として考える
先週、子供の物が増えて困る、という相談メールをいただきました⇒物を増やさないで育児をするコツ。
相談者さんは、タオルや服が増えていく状況に気づき、自分なりに分析し、しかも、それをメールに書いて送ってくれました。すばらしいと思います。
多くの人は、なんとなく違和感を感じても、「ま、いっか、別にものすごく困るわけじゃなし」ですませると思いますから。
相談の回答として、物を増やさない方法をいくつか書きましたが、タオルや子供服、その他の物に対する自分の価値観の洗い出しをして、その価値観にそって行動すると、もっと満足できる生活になると思います。
そこで、今回は、クララ・ヴルティッチさんのプレゼンを紹介しました。
ファストファッションの問題の多くは、企業に責任があると私は思いますが、買う人がいて、ビジネスになるから、服の過剰な供給が止まらないのも事実です。
これから自分は服とどうやってつきあっていくのかじっくり考えて、方向性を決めたら、あとは自信をもって、その道を突き進めばいいと思います。
自分の価値観に沿った暮らしをするには?:心を満たす方法(その2)
そうすれば、お姉さんやご両親にも、「もう服やタオルはいらない!」とはっきりした態度をとることができるでしょう。
ベビー服や子供服は小さいので、裁縫が苦手でも、手縫いを活用できる部分があるかもしれません。
それに子供は、べつに服で着飾らなくても、充分かわいいですから、個人的には、シンプル路線のほうがいいのではないかと思います。
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講演には、衣料品のライフサイクルの話が出てきましたが、ほかの物についても、いつか寿命が来たときのことを考えてみると、無駄な買い物が減ります。
買って終わり、使い終わって終わり、ではなく、循環させることを考えたいですね。