紙束

ミニマルな日常

最終更新日: 2020.10.27

昔の原稿を捨てたいけど、思いきれない。そんな時はこう考えよう。

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10年ぐらい前に描いた漫画の原稿とその資料が、押入れの中でかび臭くなっているので、捨てたい。

しかし、なかなか思いきれず、毎回、捨てることを先送りしている。

捨てられるよう、背中を押してほしい。

このお便りにアドバイスします。

メールは引用しないでくれ、とのことなので、内容を箇条書きで紹介しますね。

差出人はTさんです。



古い漫画の原稿

件名:ずっと捨てたいものがあるので、背中を押してください。

メールの主旨:

「野望ガラクタ」プラス「思い出の品」を捨てたいので、背中を押してほしい。

私について:

主婦。育児がきついと感じていたとき、気晴らしのため、それまでやりたかった漫画の投稿をした。採用されなかったが、今となってはいい思い出である。

半年前から、また別のジャンルで投稿を開始した。

捨てたいもの:

・10年ほど前、雑誌に投稿した漫画原稿、2作

・ネタ帳(たぶんもう使わない)

・ネタ帳、資料(もしかしたら今後、使うことがあるかもしれない)

捨てたい理由:

・押入れで場所をふさいでいる。

・積極的に昔のものを見る気にはならないし、見返すにはあまりにつたなく、はずかしい

・古いものを捨てたほうが、よりよい作品が描けるような気もする

捨てない理由:

・いざ捨てようと思うと、「この表情はいいな」「この線はきれいに描けている」「すごく丁寧に描いている」「このアイデア、最高。また使うときがくるかもしれない」と考えて、捨てることがためらわれる。

・自分に自信がない私だが、絵や漫画を描くことは得意で、人に頼まれて描くこともある。自分の描いたものを見るのは、「私、こんなこともできるんだ」という自信の源になっている

現状:

気に入ったものだけデータに残し、あとは捨てるべきだと思っているが決断できない。よいアドバイスを求めている。





Tさん、こんにちは。メールありがとうございます。

メールに書かれていた、「気に入ったものだけデータに残し、あとは捨てる」を、すぐにやればいいと思います。

自分で決めて捨てよう

Tさんは、背中を押してほしいのではなく、ほかの人に、「捨てても大丈夫ですよ」「捨てるのが正解です」と言ってほしいのではあいですか?

つまり、他人に自分のやり方を承認してもらいたい。

そうやって、他人に承認してもらってから、行動するくせがあると、自分に自信がもてません。

本当に自信を持ちたいなら、日々の小さな決断を、自分ですることです。自分で決めて、その結果を引き受ける覚悟をもってください。

こちらのほうが、昔描いた漫画を見ることよりも、自信をもつことに、ずっと効果があると考えます。

自分に自信がない?自信を持つことはスキルの1つ(TED)

それに、背中なら、過去記事や著書で、いやというほど押しています。

「捨てましょう、処分しましょう」と何度書いていることか?

捨てたほうがいい理由も、ちゃんと書いているつもりです。

当ブログ、2740以上記事がありますが、大半は捨てる話です。これだけ物を捨てることばかり書いているブログもめずらしいでしょう。自分でも、「よく飽きないな」と思うほどです。

「このブログを読むと、お母さんに部屋を片付けなさいと怒られている気分になる」とか、「耳が痛い話ばかりで、読むのがきつい」というメールもいただきます。

つまり、私は、もう充分背中を押しています。

「押してもらっていない」「押し方が足りない」と感じるとしたら、Tさんのほうで、強くブレーキをかけているのではないでしょうか。

私なら全捨て

10年前に描いた「愛おしい作品」、私なら全捨てします。

過去にしばられていると、前に進むことができないからです。

いま、実際に別の原稿を描いているのなら、なおさらです。

漫画を描いたことはありませんが、ブログのネタ帳は何冊も作っていて、いつもノートがいっぱいになると、捨てています。

「字が汚くて、読んだところで、何がなんだかわからない」という理由もありますが、ネタ帳に書いて、すぐにネタにできなかったトピックは、もう賞味期限切れだと思うからです。

また同じことや、似たようなことを思いつけば、あらたにネタ帳に書き込みます。

更新しなくなったブログも、さっさと削除します。

子供が幼稚園に入ったときから書いていた日記ブログは残していますが、このブログは、いまでも時々、参照し、昔やっていたことを調べ、新しい記事のヒントにしています。

つまり、更新はしていないけれど、現役で使っています。

Tさんの、「これから使うかもしれないネタ帳や資料」も、押入れから出して、手元において、使ってみてはどうですか?

それができないなら、持っていても仕方がありません。

自分の描いた作品が残っていなくても、描いた体験はスキルとして残ります。

大事なのは、スキルのほうです。

Tさんは、プロの漫画家になるつもりはないでしょうが、読者に読ませる漫画を描くためには、描いて、描いて、描きまくらないとだめですよね?

ものすごく才能があれば別でしょうが、ちょっと絵のうまい人なんていくらでもいます。

量がものをいう世界です。

昔の作品をみて、捨てようかな、どうしようかなと悩んでいる時間があったら、新しい作品を描くほうに使ったほうがいいんじゃないですか?

そうやって、たくさん描いて、いい作品ができ、雑誌に掲載され、大勢の読者が読めば、出版社のほうが、「Tさん、コミックスにまとめてみませんか?」「原画展、やってはどうでしょうか?」「特装版、作りませんか?」と言ってきます。

自宅の押入れに、古い作品を入れておかなくても、誰かが、参照しやすい形にまとめてくれ、街の本屋や図書館に並べてくれます。

10年前の没原稿を見て、「ああ、私がんばって描いたな~」と、思い出にひたっているだけだと、こういう新しい展開は、起きません。

ベクトルが過去に向いていますからね。

取っておいたとして、それが何の役にたつのか?

ちょっと前に「仕事の資料を捨てられない」という質問に答えましたが、この方が、たくさん持っている書類と、Tさんの原稿やネタ帳は同じです。

たくさんある仕事の書類をどうしても捨てられなくて困っています←質問の回答。

自分ががんばった証(あかし)だし、もっていれば、この先、自分の仕事に役立つときも、あるかもしれないと思うもの。

ですが、その没原稿やネタ帳を、今後10年、また持っていたとして、自分の人生に、どんないい影響があるのでしょうか?

これからも、定期的に、押入れから、ひっぱりだし、「捨てたいなあ、でも、ここは、うまく描けてるしね」と考えることを、繰り返すだけです。

同じことを何回も繰り返す。それは、練習ですらありません。

そこに何の進歩もありません。

思い出だけを抽出する

Tさんの没原稿は、野望ガラクタではなく、純粋な思い出の品だと思います。

いま、ほかの作品を描いていて、漫画を描くことをあきらめたわけではないですから。

野望ガラクタとは?⇒なかなか捨てられない「なりたい自分になるために買った物」を断捨離する方法

かさばる思い出の品は、思い出だけを抽出するといいでしょう。

原稿の中から、ワンカットだけスキャンして、デジタルで残してはどうですか? 写真にとってもいいです。

記念品や思い出の品を捨てたほうがいい理由と捨て方のコツ この記事の、「それでも思い出の品を捨てられない時はこんな方法を」のところを読んでください。

中身をしげしげと見ない

本、雑誌、資料、ノート、原稿、手紙など、紙類を捨てるときは、中身をじっくり読まないほうがいいです。

それが何であるのか(保証書、原稿、私信、個人的なメモetc)確認し、捨てても問題ないものだとわかった段階でさっと捨ててください。

中を読み始めると、捨てにくくなります。

本や雑誌は、読めばなんだっておもしろいでしょう。また読むかもしれないと思うかもしれません。

資料を見れば、今後も使うかもしれないと思うでしょう。

ですが、たまたまいま、読み始めたからそう思うだけです。

捨てないと決めたら、またしまいこんで、手にとろうとすらしません。

それから、「捨てにくいもの」イコール「価値があるもの、持っているべきもの」ではありません。

捨てやすいものはガラクタで、捨てにくいものはガラクタじゃないんだ、という考えは間違っています。

自分が前に進もうとするのを、後ろから自分を思いっきりひっぱっているのは、たいてい捨てにくいものです。

******

先日、YouTubeで、木彫り職人を取材した、短いクリップを見ました。

仏壇にほどこされる伝統的な飾りを彫る仕事をしている人です。

この人は、自分が彫ったものは、納品するから残らないけれど、道具は、親から子供に、受け継ぐことができる、と言っていました。

60~70年も前からある先代の使っていた道具は、いまも現役で、とてもよく切れるそうです。

漫画を描いていて、なにか思い出の品を持ちたい、と思うなら、作品ではなく、道具にしてはどうでしょうか?

Gペンは、ペン先を付け替えて使うから、軸をずっと大事にできます。

それでは、あなたも、感想、質問、その他言いたいことなどありましたら、お気軽にメールください。

お待ちしています。





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