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成長したいポイント、うまくやりたいことがあるとき、どうやったら上達できるか教えてくれるTEDのプレゼンを紹介します。
タイトルは、Learning to be awesome at anything you do, including being a leader(どんなこともうまくなるのを学ぶこと、リーダーになることも含む)。
邦題は、『何でも抜群に上手くなるには? リーダーシップにも使えるコツ』
プレゼンターは、組織心理学者のTasha Eurich(ターシャ・ユーリック)さんです。
何でも上手になれる(TEDの説明)
Can we learn to lead, or is leadership something we’re born with? In this thought-provoking talk, Tasha Eurich shares a prescription to be not just awesome at leadership, but anything else you want to improve.
リーダーシップを学べるでしょうか? それともそれは、生まれつきの能力でしょうか。
この考えさせられるトークで、ターシャ・ユーリックは、リーダーシップだけでなく、うまくなりたいことならどんなことでも上達できる方法をシェアします。
収録は2014年の6月。動画の長さは15分50秒。日本語字幕もあります。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
上達させたいと思うことを、上達させるコツ3つの紹介がある、わかりやすい構成のプレゼンです。日本語字幕があるので、ポイントだけ訳しますね。
うまくなりたいことがありますか?
以前、スペイン語を学んだつもりで大失敗したことがあります。
皆さんも、もっと上手にしたいと思っていることがあるでしょう。
ビジネスの経営や、仕事で必要なスキルの習得、ゴルフが上手になりたいとか。
私の場合は、スペイン語の教師を見つけるべきでしたが。
どうしてもうまくなりたいと思っていて、やることリストに書き出しても、他のことで忙しくて、なかなか手につかないことがあります。
あなたが、ビジネスリーダーでも、従業員でも、趣味を楽しむ人でも、アマチュアのホッケープレイヤーでも、いったい、どれだけの時間を、うまくなりたいと思うことを上達させるために費やしていますか?
自分自身の成長を願うとき、時間ができるのを待つわけにはいきませんし、誰かに肩代わりしてもらうこともできません。
自分以外の誰も、本気で自分にエネルギーを注ぎませんからね。
案内役の私が見つけたパターン
私の仕事は、組織のリーダーに、リーダーシップを教えることです。
組織心理学者として、科学的な原則を、人の行動に応用して、リーダーたちが成長することと、その企業が成功するお手伝いをしています。
あるクライアントがこんなふうに言いました。
「リーダーシップは、私の登るべきエベレスト山で、あなたは、それを助けてくれるシェルパね」。
過去12年、シェルパ、つまりコーチをしてきて、あるパターンを見つけました。
劇的に上達するための3つのステップです。
リーダーシップだけでなく、うまくなりたいことなら、どんなことにも使えます。
ボディビルダー、バーテンダー、外科医、脚本家、ヴァイオリニスト、ボランティア。
どんな人でも、うまくなりたい、向上させたいと思うことがある限り、きょうお話しするコツを使えば、上達できますよ。
ステップ1:自分自身を知る
たいていの人は、自分のスキルや能力を過大評価しています。妄想をいたいているのです。
これは、ジャスティン・クルーガーとデイヴィッド・ダニングという研究者が、リサーチをしてわかりました。
ダニング=クルーガー効果と呼ばれるものです。
2人は4つの実験をして、多くの人が、自分の才能を完全に過大評価していることを見つけました。
しかも、もっとも能力の低い人ほど、自分自身の無能さを認識できていないのです。
私たちは、悪人でも、すごく愚かというわけでもありません。
しかし、誰も本当のことをなかなか言わない世界で生きています。
礼儀をわきまえているし、忙しいし、本当のことを言ったり、それに直面するのは恐ろしいものです。
誰かが、あなたについて何かを言おうとしても、あなたは、逃げるだろうし、逃げないまでも、聞きながら、自己弁護をしようとするでしょう。
私は、誰もが言いたがらない本当のことを、リーダーたちに言うために、雇われることがよくあります。
私がコーチングしたスティーブという重役の話を例にして、進めますね。
でも、これから言うステップは、どんなことを上達したいときにも使えますよ。
嫌われ者の上司
スティーブに会ったとき、彼は、リーダーとして、自分はとても優秀だと思っていました。
しかし、彼のチームの面々に会ってみたら、事実はそうではなく、「嫌な上司」として相当嫌われていたのです。
怒鳴りつけるし、部下の能力を疑っているし、プロらしくない態度で大声をあげる困った上司でした。
部下の1人は、スティーブのせいで、血圧の薬を飲むはめになりました。
これ、本当のことです。
私は、彼に本当のことを言う嫌な役回りを引き受けました。
大きな会議室で、「スティーブ、部下は全員、あなたを大嫌いよ」と伝えました。
彼は、心底驚いた様子でした。
「どうしてそんなことが言えるんだ!」と怒鳴りました。
その後、彼はじっと窓の外を見ていました。
スティーブ:「これまで20年、この仕事をしてきたけれど、誰もそんなことは教えてくれなかった」
ターシャ:「大丈夫よ、スティーブ。問題は解決きるし、あなたは、一番、重要な一歩を踏み出したわ」
スティーブ:「え、本当?」
ターシャ:「今、現実を受け入れたでしょ」
皆さんはどうでしょう?
改善したほうがいいことがあったとして、それを知りたいと思いますか?
自分に対する思い違いは、成長するための障害となります。
どんなにつらくても、自分自身に関する真実を学ぶ責任を引き受けなければなりません。
自分の能力を知るには?
どうすれば、本当のことがわかるのでしょうか?
自分を知るとは、自分の立ち位置を知ることです。
そのために、まず、成功を客観的に測定できるものを見てください。
外科医なら、術後の合併症の発生率、庭師なら、どの木が成長して、どの木が枯れてしまったか。
こうした客観的な事実を見たあとに、主観的に成功を測ってみます。
一番簡単なのは、本当のことを言ってくれる人を見つけ、以下の質問をすることです。
・自分がやっていることで、成功につながっていることは?
・障害になっていることは?
・もっとよくするために、どんなふうに行動を変えることができるか?
何よりも大事なのは真実を知ることです。
ステップ2:1つだけ選ぶ
フィードバックを得たら、取り組むことを1つだけ選びます。
たくさんフィードバックを得ると、皆、翌朝、何もかも一度に変えようとします。
集中的にダイエットして体重を落とすようなものです。馬鹿げてますよね。
1つのことで、進歩するほうが、たくさんのことに手を出して、何もできないよりずっといいのです。
スティーブの場合は、怒りを制御することが、一番重要でした。
これができるようになるまで、ほかのことには手出ししないことにしました。
翌月から、彼は、やわらかい口調で話すようにし、言い過ぎないようにし、責めるのではなく、質問をするよう心がけました。
数週間のうちに、スティーブは怒りをコントロールすることができるようになったので、次は聞くスキル、そしてコーチングのスキルと、取り組んでいきました。
いつも、1度に1つずつです。
スティーブは短期間のうちに、自信をもつようになりました。思い違いからくる自信ではなく、本当の自信です。
部下たちも、彼の変化に気づき、彼を「新スティーブ」と呼ぶようになりました。
彼らは、スティーブが、以前のようにふるまうと、「新スティーブならどう言うでしょうか」と、たしなめました。
取り組むことを見つける方法
では、どうやって取り組むべき1つのことを見つけたらいいのでしょうか?
紙の真ん中に線をひき、左側に、向上させたいスキルを書き出します。右側に、そのスキルが上達したら、どれほど自分が素晴らしくなるか、1から10の数字で書いてください。
もっとも数字の大きなスキルから始め、それが終わったら、次に数字の大きなスキルに移ります。
ステップ3:日々、練習する
自分を知り、取り組むべき1つのことを見つけました。ここで止まったら、大きな間違いをおかすことになります。
この状態、私は何度も見ていますが、とても危険ですよ。
私はこれを、「思い違いの成長(delusional development)」と呼んでいます。
何かを上達したいと思うだけで、まるでそうなってしまうと感じることがよくあります。
この時点でやるべきことは、毎日の練習です。
もう何百年も、すごい人は、生まれつき、それが得意なのだ、と考えられてきました。
かつて、科学者たちは、優秀なマラソンランナーは、生まれつき肺や筋肉に違いがあると考えていたのです。
しかし、近年の研究から、このような違いは、先天的なものではないとわかりました。
誰かがすばらしいのは、毎日練習して、そうなるからです。
優秀なマラソンランナーは、それだけ練習を積み上げています。
毎日練習したスティーブ
スティーブの話に戻りましょう。
彼は、毎日、習慣を強化することを学びました。
通勤するとき、その日、何を上達させたいか、練習する計画を立てました。
帰り道では、その日、どれだけできたか振り返り、翌日、どんなことをするか考えました。
こうしたことを考えるのに、彼は週に30分も使っていなかったでしょう。それでも、ものすごく大きな違いが生まれました。
半年もしないうちに、彼のチームは、新しい契約を取り始めたのです。
スティーブは、よりハッピーになり、私を雇った彼の上司は、大喜びでした。
努力して打ち込む
どうでしょう?
ある人達は、生まれつき素晴らしいのでしょうか?
時にはそういうこともあるでしょう。ですが、私は、スティーブが見せてくれたように、努力して打ち込むことができれば、どんな人もよくなると信じています。
スティーブの場合は、よりよいリーダーになりました。
リーダーのうち、96%の人は、向上の余地があります。
残りの4%は、ソシオパス(反社会性パーソナリティ障害者)で、人間としてほかの人とつながりを持てない人たちです。
ソシオパスでない限り、よりよいリーダーになれますよ。
毎日練習しないと上達できません。
毎朝、布団から出たら、「今日は、これ(1つだけ)をもっと得意になるぞ」と言ってください。
やる気の出ない日もあれば、わくわくする日もあるでしょう。
でも、毎日、学んで、毎日、少しずつよくなります。
上達したいことが本当に上達したらどうなるか想像してください。
どんな気分でしょうか?
人生はどんなふうによくなっているでしょうか?
スティーブの人生はよくなりました。彼はスーパーマンではなく普通の人です。よくしようと思って努力しました。
自分を知って、1つを選んで、毎日練習。
必要なのはこれだけです。
皆さんが決めるときが来ました。私はシェルパとして道を示すことができますが、進むのは皆さんです。
いいですか。自分に投資できるのは、自分だけです。
//// 抄訳ここまで ////
補足
ダニング=クルーガー効果:
認知バイアスの一種で、能力の低い人ほど自らを過大評価してしまう傾向のこと。 自分の能力をメタ認知できず、全体のなかでの自らの適格性を正しく査定できないことにより生じるもので、米国コーネル大学のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーによって定義されました。
引用元⇒できない人ほど自分の力を過信するダニング=クルーガー効果とは(日本の人事部) – Yahoo!ニュース ☆ページが削除されたのでリンクをはずしました(2022/07/15)
ターシャ・ユーリックさんの本です。
以前、ユーリックさんの別のプレゼンを紹介しています。
仕事や自己成長に関するほかのプレゼン
上手になりたいと思っていることをきっちり上達させる方法(TED)
自分の能力を自分で見限ることの恐ろしさ、できると信じることの素晴らしさ(TED)
なぜ職場で仕事ができないのか?(TED)邪魔な物を排除するとうまくいく
仕事の失敗でいちいち落ち込まない方法。親切で、優しい成功哲学(TED)
時間がないんじゃなくてやる気がないだけ。大事なことに時間を使う方法(TED)
自分を客観的に評価する
先日、ルーティンを盛り込みすぎて疲れてきた人の質問に回答しました。
この方のように、自分のキャパシティを無視して、タスクをいっぱい入れてしまうのは、欲張っているからだ、と長らく私は思っていました。
しかし、ユーリックさんのプレゼンを聞いた今、スケジュールをいっぱいにするのは、そもそも、自分のキャパシティを正しく把握できていないからなのかもしれない、と思っています。
「自分は優秀だし、体力があるし、やればできる人だから、予定をいっぱい入れてもこなせるのだ」
こんな思い違いをしていると、予定やルーティンを増やしてしまいがちです。
私たちは、自分のことや、おのれを取り巻く状況を客観的に見定めるスキルを学校では教わりません(私が子供のときはそうでした。今は違うかもしれませんね)。
小学生のとき、授業で1日の予定表を書かされたことがあります。
いつどのぐらい勉強して、自由時間は、このぐらいで、というのを円グラフにしました。
これがまあ、見事に実現不可能な予定表でしたが、先生は何も言いませんでした。
本当は、休憩時間、ダラダラする時間、ぼーっとする時間、ロスタイム、突発的なことが起きたときに対応する時間も見積もるべきです。
仕事の予定を組むなら、予定どおり終わらないほうが普通なので、時間を多めに取るべきでしょう。
それに、自分のことを知っていれば、「1日に3時間も勉強するわけない」ということもわかります。
ところが、自分はもちろん、先生も親も、「予定を入れれば、ちゃんとできるはずだ」「予定表を書けば、そのとおりできるのだ」という根拠のない妄想を抱いていたと思います。
自分を客観的に見て、知ることは、物事を上達させる最初のステップであり、ここができていないと、次のステップでどんなにがんばっても間違った方向に進みます。
片付けが進まないとか、家事をがんばっているのに空回りしていると思ったら、ステップ1に戻って、自分を知ることをやり直してみるといいでしょう。
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以前の私は、何年も、実現不可能なto-doリストを書いていました。
そのとおりできないことが続いたので、失敗から学び、現在は、週に2回、予定どおりできなかったことや、突発的に入ってきた仕事や用事をキャッチアップする枠をもうけています。
前は、1日、ブログを2記事更新、という予定でした。これだと、週に14記事書くことになりますが、14記事、書けないほうが多いし、書けたとしても、他のことが、できません。
今は、週に11記事が一応の目標で、忙しいときは、「筆子ジャーナル」だけを更新すればいいという前提でスケジュールを組んでいます。
こうしたら、to-do リストに書いたことをまあまあちゃんとやれるようになりました。
休息時間はもちろん、キャッチアップする時間を予定に入れておくのは、おすすめですよ。