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骨粗しょう症にならないようにしようシリーズ。今回は、骨の異常の原因になってしまうカドミウムについてお伝えしますね。カドミウムについては以前、森修焼の記事を書いたときに軽くふれましたが、もう少し詳しく書きます。
イタイイタイ病はカドミウム中毒
カドミウムと言えば、イタイイタイ病を思い出す人も多いでしょう。私が子供の頃(1960年代)にテレビのニュースで「イタイイタイ病」という言葉をよく聞きました。
この病気は富山県の神通川(じんつうがわ)流域で発生した慢性のカドミウム中毒です。大正時代から患者はいたそうですが、昭和43年(1968年)に公害病に認定されました。
病気の原因はそばにあった鉱山の排水です。排水にカドミウムが含まれており、これが水田の土壌に堆積しました。そこで稲作をしていた農家の人たちが自分ちで作った米を食べていたら、カドミウム中毒になってしまったのです。
カドミウムは人体には毒で、摂取しすぎると骨がもろくなり、ちょっとの衝撃で骨折してしまいます。身体がとても痛くなり、患者が「痛い、痛い」と訴えるので、この病気の名前がついたそうです。
当時はカドミウムの毒性があまり知られていなかったので、裁判も難航したようです。もちろん発生源には政府が入って、カドミウムが排出しないように対策を打ちました。
現在先進国の人々の体内ではカドミウムが徐々に蓄積されつつあります。今朝、ネットで見たカナダのニュースによると、カナダ人のカドミウムの蓄積量もアメリカやドイツ並みになってきているとありました。
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そもそもカドミウムとは?
カドミウムは金属です。亜鉛の鉱物の中に含まれ、亜鉛を精製するときの副産物として得ることができます。
単体は青みがかった銀白色の柔らかい金属。ナイフで簡単に切ることができます。加工が簡単というわけですね。さびにくいし見た目もきれいです。ただ酸化すると灰色になります。
カドミウムのおもな用途は、さざまな合金の材料、めっきの材料、顔料(赤と黄色)、電池(ニッケル-カドミウム電池)などの工業製品です。触媒としても使われています。
ゴッホやムンクが使っていた絵の具の一部はカドミウム顔料で、
ゴッホの鮮やかな黄色はカドミウムイエローです。ゴッホの「ひまわり」は1888年から1890年にかけて制作された作品ですが、美術館に飾っているあいだに、絵の具が次第に酸化して、色あせてきているそうです。
カドミウムの有毒性
カドミウムは人体に有害です。口から摂取していると腎臓に蓄積して、腎機能が冒され、骨がもろくなります。
腎臓の機能が損なわれると、腎臓は血液中のカルシウムを尿とともに排出します。血液中のカルシウムが足りなくなると、身体が骨からカルシウムを取ってバランスを取ろうとするので、だんだん骨がもろくなるのです。
実際はもっと複雑なメカニズムで骨が損なわれると思いますが、カルシウムの代謝がおかしくなってしまうわけです。
よってカドミウムを摂り過ぎると腎臓の病気になるだけでなく、骨軟化症や、骨粗しょう症になる可能性があるのです。
最近の研究ではカドミウムには発がん性があることもわかっています。特に乳がんのリスクがあがります。ラットの実験で、カドミウムは体内で女性ホルモンのエストロゲンと似た作用をするということが判明しています。
つまり環境ホルモンのような作用をして、生殖機能を狂わせるわけです。
環境ホルモンについて⇒環境ホルモンとは何か、その影響など基礎的なことをわかりやすく解説
さらに脳神経を冒すとも言われています。最近欧米では学習障害(LD:Learning disorders, Learning disabiliries)が問題になっていますが、カドミウムが原因の一つではないかという研究があります。
LDは、べつに知能が遅れているわけでもないのに、なぜか、読んだり、書いたり、話したり、計算したり、推論したりの全部、あるいは一部がうまくできない障害です。
カドミウムのやっかいなところは、身体の中に少しずつたまっていくことです。たとえば同じ金属でも鉄や亜鉛は身体にとってほんのちょっぴりだけ必要な元素。過剰にとれば身体はびっくりして変な反応をしますが、まあ、なじみのある成分と言えます。
しかしカドミウムは鉛と同様、人体にとっては全く必要のない元素なので、体内に入ったら身体はうまく代謝できずとりあえず腎臓にためてしまうわけです。
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どうやってカドミウムが人体に入るか?
先に書いたニュースには、たばこの煙が元凶、とありました。確かにこのとおりで、喫煙者の体内には、喫煙しない人に比べて、カドミウムが多く蓄積されているという報告があります。まあ、当然だろうという気がします。
喫煙者だけでなく、間接喫煙でもカドミウムを摂取してしまいます。ほかにも排気ガスや、工業排水に含まれています。
そして、日本のイタイイタイ病のように土壌が汚染されると農作物として人の口に入ります。稲は土壌からカドミウムを吸い上げる性質があるそうです。日本の市場に出回るお米はカドミウム濃度の検査を受けており、大丈夫なはずですが。
しかし、こういう流通ルートにのっていないお米、たとえば自家米などはもしかしたらカドミウムが規定値より入っているかもしれません。
稲のほかには、葉物野菜、根幹野菜(じゃがいも、にんじん、玉ねぎなど)そして稲と同じ穀物にカドミウムが入っている可能性が高いです。健康のために野菜を食べているはずのベジタリアンの体内に意外とカドミウムが蓄積されています。
ニュージーランドのある地域では60年ぐらい前から毎年、リン鉱石から作った化学肥料(リン酸肥料)を空から農地に大量にまいています。この肥料は作物の生育にとても効果的だからです。
しかし、数十年後、そのあたりの野っ原の草を食べて育った羊の体内にカドミウムがたまってしまい2歳半以上の羊は食肉として輸出できなくなりました。そこで今は、この年齢より若い羊を輸出しているそうです。
人の口に入るものはカドミウムの検査をしていると思いますが(野菜は怪しいと思う産地の物でないと、しないかもしれません)、ペットフードはもっと心配です。ペットフードからもカドミウムが検出されています。
子供たちもカドミウムにさらされている
5,6年前に子供むけの銀色のチープなアクセサリーからカドミウムがたくさん検出されて、アメリカで問題になりました。
女の子がお姫様ごっごに使うディズニープリンセスがついたティアラや、ペンダントです。私の娘も小さいときたくさん持っていました。製造元は中国だったので、アメリカ政府はメーカーに警告しました。
顔料はカドミウムの規定値がありますが、おもちゃにはないので完全には規制できていない状況です。
また、やはりその頃、マクドナルドがハッピーセットのおまけにつけていたシュレックの絵のついたグラスの顔料からカドミウムが検出されマクドナルドがあわてて回収するという事件がありました。
カドミウムはけっこう身の回りにあるのですよね。鉛に比べて影が薄く、あまり問題視されてこなかったのですが、今後さらにリサーチが進んで、問題点がたくさん見つかると思います。
大人にとっても有害ですが、子供には本当に有害なので気をつけてあげたいです。
カドミウムをデトックスする方法
カドミウムは体内から排出しにくいのですが、ふだん健康的な生活をして必須ミネラルをしっかり取っておけば、有毒なミネラルは外に出る、と言われています。
そこで亜鉛、セレン、鉄、マグネシム、カルシウム、ビタミンD, ビタミンCなどを摂るといいそうです。こういうものは野菜に含まれていますが、もしその野菜がカドミウム汚染されていたら、全く効果がないわけで洒落にもなりません。
ならばサプリメントがいいのかというと、サプリメントも中身がよくわからないじゃないですか?そこで私はおすすめしません。ちゃんと中身がわかっている優良なサプリならいいのですが。
ビタミンDについては先日も書きましたが、ちゃんと外に出て太陽にあたれば合成できます。
ビタミンDについて⇒骨粗しょう症の予防の7つのポイント。カルシウムよりビタミンDのほうが重要
まあ、なるべく同じものばかり食べず、いろいろな食品を食べてリスク分散したほうがいいでしょう。私は葉物野菜のグリーンスムージーと豆腐とナッツをメインに摂取しているのでこんな食事もやめたほうがいいかもしれません。
全体的に食べ過ぎないのはからだにとっていいいことです。
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カドミウムは空気汚染や土壌汚染から食物連鎖にがっつり入りこんでいます。
無農薬野菜や有機野菜はふつうに育成されている野菜と比べれば、使われている農薬が少ない分、安全なのですが、土壌が汚染されていたら、どうしようもありません。
そして、今の時代、有毒なものからは逃れられません。文明と経済の発展につれて、いろいろなものが汚染されてしまいました。
そこで、自分がわかっている範囲であきらかに有害なもの(たとえばタバコや、添加物てんこ盛りの食品、化学物質でいっぱいの化粧品やシャンプー、ワイヤーブラ)を排除して、全体的に体内汚染をしないように気をつけるしかありません。
その上で、適度に運動をして、ストレスをためず、なるべく栄養がありそうで毒の少なそうな食品を食べて免疫をあげるしかないでしょう。私はこれ以外の解決策を思いつきません。