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買い物依存ぎみの人、自分を嫌いな人、セルフエスティームの低い人に見てほしいTEDの動画を紹介します。子育てに悩んでいる人の参考にもなるかもしれません。
タイトルは Feelings: Handle Them Before They Handle (感情に振り回される前に感情に向き合いなさい)
handle は「扱う」「解決する」という意味ですが、「扱う」とすると、うまく制御するようなニュアンスがあるので、「向き合う」と訳しました。
プレゼンターは Mandy Saligari(マンディ・サリガリ)さん。マンディさんは、依存症専門のセラピストです。
感情に振り回される前に感情に向き合おう
プレゼンは18分。2017年4月にイギリスのギルフォードで行われた独立イベントです。英語字幕はありますが、日本語字幕はありません。
動画のあとに抄訳を書きます。このプレゼンはきっちり原稿を用意したプレゼンという雰囲気ではなく、エピソードを積み重ねたものです。たいへんな熱演です。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
依存症の予防はセルフエスティームにかかっている
私はアディクションセラピストで、自分自身、依存症を克服した経験があります。
現在、依存症の克服、メンタルヘルス、依存症を予防する仕事をしています。
私がもっとも興味があるのが、依存症の予防で、それはたった1つのことにかかっています。セルフエスティームです。
セルフエスティームという言葉はよく知られていますよね。
実際のところ、これは何なのでしょう?
セルフエスティームとは、自分自身についてどう感じているか、その結果、自分をどう扱い、どんな行動をするか、です。
人々に、「私は依存症を克服しました」というと、皆、何に依存していたのか知りたがります。
でも、問題はそこではありません。
重要なのは、なぜ、私が、自分自身の外にあるものをつかって、自分の気持ちを立て直そうとし、その結果、自分を傷つけてしまったのか、ということです。
依存症は、自分の気持ちの持ち方を、ほかのものに委ねて、それが裏目に出ることなのです。
人目を気にして、自分自身であることをやめる人
パーティで、人に仕事を聞かれ、「依存性のセラピストです」というと、たいていの人が自分を守る言動に出ます。
「最近、ちょっと飲みすぎだけど、ふだんは違うんだ。たまたま、今週は大変なことが多くてね」なんて言うわけです。
私たちは、人に見られることに、神経過敏になります。道で何かにつまづいたら、「痛い」と言う前に、「誰かに見られたかも?」と心配します。
人からどう見られているかを気にして、自分自身に対する考えを変えるのは、ごくふつうのことです。
でも、昔の私や、ほかの大勢の人のように、生い立ちや体験のせいで、不安をなくすために、自分以外の誰かになりたい、と強く願う人がいます。「よい子でいよう」とする人が。
自分ではなく、「よい子」になろうとする
たとえば、家族の中に、何らかの理由で、人一倍手のかかる人がいたとしましょう。
兄弟姉妹の1人にそういう人がいて、家族のリソースはすべてこの子供にいきます。誰もが、この子供の心配ばかりします。
そんなとき、「私は大丈夫。別にみんなに何かしてもらわなくてもいいわ。いい子でいよう」と決心するのです。
お手伝いを積極的にやったり、兄弟の世話をしたり、言われる前に宿題をやったり。お母さんにほめられます。
学校でも友だちに親切にするので、ほかの保護者に「ほんとにいい子ね」と言われます。
私がセラピストとして、この子の親の相談にのるのは、この子が高校に入る頃です。
「突然、悪い友だちとつきあうようになった」と親は言います。
セラピストの私は親御さんに聞きます。「なぜ、娘さんは、問題をかかえている友だちと一緒にいるほうが居心地がいいと思うのでしょうか?」と。
この子は、人の世話をするほうを選んでいるのです。自分はかまってもらわなくてもいいと思っています。
世話焼きは、世話の焼ける人を好きになる
この子が大人になったとき、高い確率で、とても手のかかる人を好きになるでしょう。
自分自身に対する感情を、愛という形に変えます。この子は世話をする人が必要なのです。でも、彼女は、何もないところから、人々に与えようとしています。
人に与えるばっかりで、自分が求めることを知らないのですから。子供のときにそう学んでしまったのです。
条件付きの奉仕です。いい子でいれば、皆に好かれる、と思っているわけです。
ここに泣いている人がいるから、世話をする。もし相手が泣き止まなかったら、目的を達成できません。
なぜ、こんな話をしているのか疑問に思うかもしれませんね。
私が言いたいのは、手のかかる人は、いつも、異様なまでに世話をしたがる人(compulsive caretaker コンパルシブ・ケアテイカー)を引き寄せる、ということです。
世話を焼きたがる人は、世話を焼く対象がどうしても必要なのです。
自分のために世話を焼く人が子供を持ったとき起こること
この手の人が、自分の子供を持ったあと、セラピストとして会うことがあります。
小さな子供は親の都合なんて知ったことではありません。一生懸命世話をしても、報われないことがあります。
そんなとき、世話を焼く人は、「どうしてなの? こんなに一生懸命やっているのに。どうしてそんなふうに私を扱うの?」と思ってしまいます。
私はこうアドバイスします。「あなたには何もないからよ。なぜ、条件付きで与えようとしているの?」と。
こうした人々は、うつや不安症になることがあります。自分がもらうことに罪悪感を感じます。
私はこう言います。
受け取る方法を知っているの?
「助けが必要です」と言うことはできる?
自分自身を大事にできている?
自分を大事にできれば、たっぷりあるところから、ほかの人に与えることができるのよ。あなたは、「充分じゃない」というところに立って、人の世話をしているから、つらくなるのよ。
私は、依存になるプロセスや予防にとても興味を持っています。たいてい、不安やうつから始まります。私が特に関心を寄せているのは人間です。
自分自身でいることに満足できず、自分を大事に思えない人には、どんな予防策もうまくいきません。
自分の感情を見つめることが大事
人に、「どんな気持ちでいますか」と聞くと、たいて、「いいです(Fine)」と答えます。
でも、これではどんな気持ちなのかわかりません。そう伝えると、次の返事は、「大丈夫です(OK)」になります。
これでも、いま、どんな感情を持っているのかわかりません。
さらにつっこんで聞くと、たいていみんな、居心地悪さを感じます。でも、ここでしっかり、今自分が感じている感情に気づくべきなのです。
もし、自分が感じていることがわかっていたら、自分自身として責任をもってふるまえるからです。
子供にレッテルを貼ってはいけない
ある先生のセラピーをしていたときのことです。
クラスに、やたらと興奮して注目を引きたがる女の子がいました。先生は、「頼むから、マンディ、静かにしなさい!」と頭ごなしに叱りつけます。
すると、この子は自分を恥じます。
別のとき、この子はまた興奮して、今度は他の子供達を笑わせます。すると先生は、「授業を妨害する子供だ」と決めつけます。
次にこの女の子が興奮したとき、手をデスクや壁に打ち付けます。
「この子は自分の気持ちをうまくコントロールできないんじゃないか」と思いました。興奮する気持ちと、まったく逆のうつうつとした気持ちの両方をです。
この子は、興奮した感情をどう扱うのか、教えてもらう必要があるのです。「難しい子供だ」とレッテルを貼ってはいけません。
子供のわがままにうまく対処する方法
子供は、欲しいものに向かってまっしぐらに飛んでくるミサイルです。
子供が突進してきたとき、親は2通りの反応をします。
1つは、「頼むから、お母さんの邪魔をしないで!」と叱ること。
こういう反応をすると、子供は自分を恥じ、恐怖を感じて、「ママに悪いことしてしまったのかな?」「私のどこが悪いんだろう?」と考えます。
もう1つは、「わかったわ。何でも好きなことしなさい」と簡単に許可をすること。
こういう親が、次に、ノーと言おうとすると、子供はなかなかあきらめません。頼めば、またイエスと言ってもらえると考えています。
すると親は、「まるで悪夢のようだわ。子供がちっとも言うことをきかない」となります。
こういう親にはこうアドバイスします。
「子供ではなく、自分のことを考えてみて。
子供は親のウイークポイントを示しているのよ。洗い物で忙しいとき、子供がやってきて、ママ、ママ、ママ、と言うなら、それは子供が自分の欲しいものを得られるタイミングだからやってくるのよ」と。
忙しいから、「わかったわ、プレイステーションで遊んでなさい。好きにしていいわよ」と言ってしまうのです。
このとき、ちょっと立ち止まって、「私はとてもイライラしているわ。プレッシャーを感じている」と自分の気持ちがわかれば、子供に、「あのね、だめだと言ったでしょ」ときちんと伝えることができるのです。
親が感情に向き合わないと子供に悪影響がある
「ママはノーと言わない」と子供が思っていると、子供はどんどん押してきますが、いったん、ときには「だめだ」と言われることもある、とわかれば、その気持を尊重してくれます。
「もう、あっちへ行って!」と子供に言えば、子どもは、傷つきます。ですが、「なぜ、私はこんなにイライラしているのか」と考えれば、しっかり、「静かにしてね。答えはノーよ」と子供に言うことができるのです。
子供がさらに、ママ、ママ、と言ってきても、「こんなに子供がしつこくなるまで、どうして、あっさり許可ばかりしていたのかしら」と考えることができます。
子供に対して、「どうしてあんたはいつもそうなの?」と思うかわりに。
自分がどう感じているか、その結果、どんな行動をしているのか、考えてほしいのです。そうしないと、子供にうらみを感じ、「なんて私はかわいそうなの」と自分を憐れむことになるのです。
ここにご主人が登場して、「いったいどうしたんだ?」と聞かれます。「何でもないわ」と答えると、「何でもないって、どういうことだ。なんで、またあの子はプレイステーションで遊んでいるんだ?」と言われるでしょう。
するとあなたは、怒りを感じ、ご主人とケンカをし、「どうしていつも私ばっかりこんな目にあうのよ?」と思います。
すると子供の1人が、私がそうだったように、「自分が悪いんだ。問題のある子供なんだ」と思うようになるのです。
自分に問題があると思っていた
実際、私も、「難しい子供だ」と言われて育ちました。そしてそう信じていました。
誰かが自分に近づくと、「難しい子供」である自分に気づいて、拒否されてしまう、と感じていたのです。
だから、誰にも心を開くことができませんでした。
そして、いつも演じていたのです。人々を喜ばせたり、反抗的になったり、誰かのふりをしたり。
自分自身ではない誰かを演じていました。だって、「難しい子供」の私に近づいた人を、私は傷つけるかもしれないのですから。
けれども、突然、不安から逃れるために、ふりをすることより、もっと強力な方法があると気づいたのです。自分の恐怖に向き合えばいいのだ、と。
自分で自分を力づける
知らない人ばかりのパーティに行く時、不安でいっぱいだとしましょう。
何を着たらいいのかしら。知っている人、誰もいないし、何を話せばいいの。私、おもしろくないし。
こんな気持で、恐る恐る部屋に入ります。たぶん、世話焼きの人がやってきて、話しかけてくれるでしょう。
2人で、パーティを楽しんでいるふりをしますが、実際は、お互いに、傷ついたり、孤立しないようにしているだけです。
自分が恐れていることに気づき、「自分の何かが間違っているんだ」という子供の時に感じたおなじみの気持ちになっていたら、私は自分自身を抱いて、こう言うのです。
「あのね、マンディ。あなたが大好きよ。大好きだから、これからもずっと一緒よ。一緒に乗り越えましょう。これはあなたの問題じゃないわ。人がいっぱいいるから、誰かのところに言って話しかけるだけでいいのよ。大したことじゃないわ」と。
すると私は恐怖を感じなくなり、人に話しかけることができるのです。
自分で自分を傷つけてはだめ
依存症を治療するとき、自分を傷つける行動をやめさせなければなりません。
鏡を見て、「なんてこと、シワだらけだわ。うんざりする」なんて考えてはだめです。
鏡の中の自分の顔をじっくり見てほしいのです。シワは自分の人生の地図のようなもの。痛みがあろうと、何だろうと、それはあなた自身です。
鏡の中の自分の親友になってください。自分と友だちになれたら、自分を傷つけることを繰り返したりしません。
2006年に、私は関節リウマチになり1年、寝たきりでした。
歩くことも、動くことも、手を使うこともできませんでした。友だちがやってきて、「12ステッププログラムをやってみない?」と言いました。
これは依存症回復のためのプログラムです。これをやるということは、人の助けを借りるということ。
「私がどんな気持ちでいるのか、あなたにわかるわけがないわ」と腹が立ちましたが、結局やりました。
感謝しながら薬を飲み、痛みを感じている自分というちっぽけな世界の外に目をむけ、小さなステップを1つひとつこなしていく。
いまは、過去10年間飲んだ薬の奇跡を感じています。回復できたことに本当に感謝しているし、「依存症は回復しても、またぶり返す」ということに異議を唱える機会を持てたことにも感謝しています。
依存症の再発は防げる
いったん治っても、また依存症になってしまうとしたら、それは間違ったところを見ているからです。
依存症は、自分の感情をほかのものに委ねること。だから、自分自身をケアすることを学べば、もう再発しないのです。
では、どうしたらいいのでしょうか?
簡単なことです。
鏡を見たら、自分に向かって優しい言葉をかけてください。
もしそれが難しいなら、6歳か7歳のころの自分の写真をバスルームに貼って、その写真に話しかけるのです。
「おはよう」から始めてください。
おびえている自分、味方がほしいと思っている自分と親しくなってください。
さらに、1日の終わりに、感謝していることを書き出します。私がきょうここにいられるのも、人生で出会った大勢の人のおかげです。
私たち1人ひとりが、生きていられるのはとても貴重な贈り物なのです。それがわかれば、知らない人に会ったとき、敵対心ではなく、好奇心をもって、ふれあうことができるのです。
//// 抄訳ここまで ////
単語の説明
defensive 防御的な反応。
自分を守ろうとする態度。人間関係においては、何も攻撃されていないのに、勝手に言い訳したりする様子をさして使われます。
high maintenance ハイ・メンテナンス
人間の場合は、関係を維持するのに、メンテナンスがたくさん必要なこと。常に注目してあげないとむくれたり、やたらと世話をしないとだめな人、ご機嫌を取る必要のある人、お金のかかる人など。
give one’s eyeteeth 直訳は、犬歯を与える
どんなことでもする、代償を払う
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自分の気持ちに向き合うススメ
汚部屋や買い物依存に悩んでいる人からよくメールをいただきますが、みんな、自分のことを嫌っています。
そこで、この動画を紹介しました。
生育環境や数々の不幸なできごとによって、自分を嫌いになってしまったのでしょう。メールには、これまでに起きた不幸なできごとがびっしりと書かれています。
しかし、過去は過去。どんなに嘆いても仕方がないのです。
そんなことに嘆くより、マンディさんが言っているように、自分と友だちになってください。きっとまた、自分を好きになることができます。
結局、自分を好きになるか、嫌いになるかも、自分の気持ちしだいです。
過去は過去として、自分を大事にする方向に持っていってもらいたいです。
さて、自分を大事にする話は過去記事にたくさん書いているので、ここでは繰り返しません。
今回は、自分の気持ちについて、客観的に考えてみることの重要性を強調したいと思います。
数週間前、恋人がいないと寂しくて落ち着かないという人から相談メールをもらいました⇒恋人への執着や依存を手放し自分の人生を生きる7つのヒント
この人は、彼がいないと寂しいからいろいろ考えなくてすむように、ウインドウショッピングに出かけたりする、と書いています。
しかし、実は、そういうときこそ、自分の気持ちに向き合ったほうがいいのです。そうすれば、余計な外出をしなくてすむし、もっと有意義に時間を過ごせます。
全然、例は違いますが、家計の現状について考えたくないから、家計簿もつけず、どんぶり勘定のまま、貯金ができない人もいます。
過去の私です。
この場合も実際の数字に向き合って、「自分の望みを叶えるためには、どうしたらいいのか?」と考えることで、問題を解決できます。少なくともどんぶり勘定のままよりは、ましです。
恐ろしげな現実に、向き合ってみると、意外とそこまで恐ろしくありません。最初はドキッとしますが、最初だけです。
いまの現実を変えるために、小さなことでいいので、できるところからやってみる。そうすると、自分自身でコントロールできることが増えるので、ストレスも減っていきます。
お試しください。