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ちっとも片付けが進まない、何かをやろうと始めるのに、すぐに挫折して続けられない、そんな人の参考になるTEDの動画を紹介します。
タイトルは Forget Big Change, Start With A Tiny Habit (大きな変化を起こそうとするな、小さな習慣から始めなさい)です。
プレゼンターはBJ フォグ(BJ Fogg)。彼はスタンフォード大学の先生で、行動科学を研究しています。人の行動を変えるには、どうしたらいいのか考える専門家です。
大変化を求めるな、小さな習慣から始めろ:説明
What if someone told you to floss only one tooth everyday? Or start the new year, not with grand resolutions, but with a simple challengelike ONE pushup a day?
BJ Fogg shows us that the key to lasting change does not lie in planning big, monumental changes, but in thinking really, really small. Chosen by Fortune Magazine as one of “10 New Gurus You Should Know”, Fogg directs the Persuasive Tech Lab at Stanford University.
もし誰かが毎日1本だけフロスをしろと言ったらどうしますか? 新年に、大きな決意をするのではなく、本当に小さなこと、たとえば、1日に1回だけ腕立て伏せをするよう決めなさい、と言ったら?
BJ フォグは、大きく変えるのではなく、小さなことを変えることが、その変化を継続させるコツだと教えてくれます。
雑誌「フォーチュン」で「あなたが知るべき10人の新しい指導者」の一人に選ばれたフォグは、スタンフォード大学で説得技術のラボのディレクターをしています。
独立イベントなので、日本語字幕はありません。動画のあとに抄訳を書きます。フォグ先生の英語はわかりやすく、難しい単語も出てきません。
小さな行動ができたらお祝いしよう
私の仕事は、すべて行動(behavior)に関することです。どうやったら人々の行動に変化を起こせるのか日夜考えています。
さて、今から、行動を変える練習をしましょう。椅子の下にあるものを取り出して、フロスを1本用意してください。
これを使って小さな習慣づけ(tiny habit タイニーハビット)を練習します。
ものすごく小さなことをします。
その小さなことを、これからもずっと続けたいときは、ちゃんとやれたときに、すぐにお祝いするのがコツです。
お祝いといっても、バーに行ったり、クッキーを作ったりするのではありません。
自分で自分に、「私ってすごい」と言うのです。
これを練習しましょう。お祝いの仕方もいろいろあるのですが、一般的なものから練習しましょう。
「私ってすごい!(I’m awesome!)」と言います。
いいですか、一緒にやりますよ。
(聴衆)「私ってすごい!」
別のお祝いをしてみましょう。今度は「ビンゴ~!」です。
(聴衆)「ビンゴ~!」
人によっては、軽く踊ったりもします。踊ってみましょう。
あとでやりますから、覚えておいてくださいね。
行動を変えることを練習する
では、ちょっとわたし自身について話しますね。
わたしは行動に関して、常に考えています。人の行動を見たり、関連の本を読んだり。寝ているときですら考えていますよ。
いま私は行動モデル、行動のチャート、ドミノアクション、モチベーションの波なんかを寝てるときに考えています。
1年前は腕立て伏せは全然できませんでしたが、いまは50~70回ぐらいやってます。こんなことができたのも、行動についてしつこく考え続けたからなんです。
自分の行動を変えるためには、行動を変えることを練習する必要があります。
たとえば、トイレにいったら、2回腕立て伏せする、とか。
トイレを流し、それから腕立て伏せをします。そしてちゃんと腕立て伏せできたら、「私ってすごい!」とお祝いします。
2回、簡単にできるようになったら5回、8回と回数を伸ばしていきます。毎日少しずつ。
行動や、行動を変えることは、人が思うほど複雑ではありません。システマティックです。
ごく単純な方法で、行動を理解することができます。そのうちのいくつかを皆さんにお伝えしますね。
長期的な変化を起こす2つの方法
行動を変えるための方法は15個あります。健康にかかわる行動を変えようとするとき、人は、長期的な変化について語りますね。
この表は、長期的な変化をもたらす5つのパターンを表しています。1つずつ詳しくみていくことはしませんが、長期的な変化を起こす方法は2つしかない、ということを説明したいと思います。
1.環境を変える
1つめは環境を変えることです。
前はこんな環境だったから、こんな行動をしていたのが、別の環境にすると行動も変わります。
これは社会的な環境も含みます。
環境を変えるのは効果的ですが、難しい面もあります。とくに家族や同僚などの社会的環境を変えるのは難しいですね。
そこでもう1つの方法があります。
モチベーションは関係ないですよ。
モチベーションは、一時的な変化を起こすときに使える方法ですが、長期的変化には使えません。
意志の力も同じです。短期的には変えられるけど、定着しません。
2.小さな行動を変える
表を見てください。ブルーパス(BluePath)のところ。
もし、すごく小さなこと、たとえば、腕立て伏せ2回とか、1本の歯にだけフロスをかけるとかすると、何度も繰り返すことができるから習慣になるのです。
もうフロスのかけ方は知っているわけですから、そこは大丈夫です。あなたに足りないのは、自動的にフロスをかけることです。
フロスのかけ方を練習する必要はなくて、自動的にできるように、練習するのです。
私が行っている「説得のブートキャンプ」で、この点について、しつこく研究しました。どんな行動が習慣をもたらすか調べたのです。
この表の細部のお話はしませんが、習慣を作るのにひじょうに効果的でシステマティックな方法を説明します。
望む結果をもたらす行動にフォーカスする
健康になるために、通常、何をするかというと、体重を減らしたり、ストレスマネジメントをしようと思います。
しかし、このように、結果をデザインしてしまうのは、間違ったやり方です。その結果をもたらす行動をデザインすべきなのです。
体重を減らす方法はたくさんあります。ストレスを軽減したり、食べる量を減らしたり。
そのどれもが習慣ですよね。
だから、行動を変えるための15の方法のうち、長期的に健康でいるためには、習慣を変えることが大事なのです。
そのために、小さな習慣(タイニーハビット)を変えることをやってみると、後退しないし、挫折もありません。
私の個人的な体験をシェアしますね。2010年、すごくハイテクな体重計を手に入れました。
この体重計、体重を自動的にツイートするんです。それで、ツイートしてみたんですが、これでわかったことが2つあります。
1つは、ツイートするだけでは体重はさして変わらないということ。2つ目はフォロワーが嫌がるということ。
だから、ツイートするのはやめました。でも、毎日体重を測るのは続けていて、結果的にこんなふうに体重が減ってきたんです。
少しずつ。
小さな習慣の作り方を知ると、行動を変えることができるし、それが人生を変えるのです。
行動を起こすために必要な3つのこと
なぜ小さな習慣が効果的なのか、その理由を説明します。
行動を起こすために必要なことは3つあります。
1.モチベーション
歯をきれいに保ちたいとか、腕立て伏せをして体力をつけたいとか、そういうものです。
2.それをする能力
3.トリガー(きっかけ、コールツーアクション)
トリガーは「いま、腕立て伏せをしろ」「フロスをしろ」と自分に呼びかけるものです。
この3つがそろうと、行動が生まれます。
モチベーションと能力は、トレードオフします。
表のカーブしたラインがトレードオフを示します。このライン上のどこにいても、トリガーがあれば、行動が起きます。
例をあげますね。
私がみなさんに、マラソンをしてくださいと言っても、モチベーションも能力も低いときは大変なのです。
いくらマラソンをしろ、といってもしないでしょう。
逆に、歩いて外に出て、帰ってきてください、30秒ぐらい、と頼めば、簡単なので、そんなにモチベーションがなくてもできます。
何かすごく難しいことをやろうとするときは、高いモチベーションが必要です。モチベーションが必要なときって、難しいことをやるときなんですね。
簡単なことをやるには、さしてモチベーションはいりません。
やる気は出たり出なかったりしますから、これに頼ると習慣付けはできないのです。
前にお見せした行動モデルに戻ると、簡単にできることは、モチベーションがたいしていらないから、すぐにできます。モチベーションがあろうとなかろうとできるわけです。
だから、小さな行動から始めよう、というわけです。
B=MAT という方程式になります。
B 行動 behavior
M モチベーション motivation
A 能力 ability
T トリガー trigger
モチベーションと能力は説明したので、次はトリガーにいきます。
行動のきっかけに最適なもの
きっかけは簡単です。
あるとき、ジムから戻って、シャワーをあびて、身体をふいて、寝室に行き、靴下の入った引き出しを開けました。そのとき思いつきました。「後から!After! アフター」だと。
すでにやっている行動のあとに、新しい小さな行動をつければいいのです。すると、いつもやっていることが、トリガーになります。
こうすれば、付箋に書いて貼ったり、アラームをかけたりしなくてもすみます。
そこで、この方程式を自分でやってみて、小さな習慣を積み重ねていきました。それから、友だちにも勧め始め、だんだん大勢の人にお伝えするようになって、結局、これまでに2万以上の小さな習慣のコーチングをしました。
このスプレッドシートにはほかの人の小さな習慣がのっています。
たとえば、
●朝コーヒーを飲んだら、リビングルームにあるものを1つだけ片付ける
●1日の終わりに部屋に入ったら、妻に10秒キスをする
もし、人生の何かを変えたかったら、このフォーマットを使ってみてください。
毎日やっていることのあとに新しく習慣づけたいことをやるのです。
そして、その行動はすごく小さなことにしてください。
小さな種を適切な場所に埋めれば勝手に成長する
では練習してみましょうか。
歯磨きをしたとします。お祝いの練習もしときますか。「私って、すごい!」
(聴衆)「私ってすごい!」
はい。では歯磨きをしたとして、1本の歯だけフロスをかけましょう。
[みんなでフロスをかける]
(聴衆)「私ってすごい!」
これを続ければ、フロスをかけるのは、どんどん簡単になっていき、もっとたくさんフロスをかけられるようになります。
お祝いの仕方はいろいろあるので、自分にあったものを探してみてください。
私はワインカントリーに住んでいるので、土いじりをたくさんしています。
この表現が、私の説明したことをうまく言い表しています。
Plant a tiny seed in the right spot
and it will grow without coaxing
小さな種を適切な場所に埋めれば手をかけなくても成長する
ご自身の生活で何か変えたいことがあったら、小さな行動に細分化して、適切なタイミングでやってみてください。
適切なタイミングとは、すでに自分がやっていることのあとです。
やる気や強い意志の力は必要ありません。小さな種を埋めて、それが自然に成長するのを待つだけです。
////抄訳ここまで////
覚えておくとよさそうな単語の説明
grid 格子状のもの
geek out おたくになる、おたくモードになる、夢中になる、難しい(専門的な)話を熱心にする
bullseye 標的の中心のポイント、肝心要のポイント、図星
trade off トレードオフ;一方を追求すると、他方が犠牲になる、両立しえない関係
coax 何かをするように、説得する、なだめすかす、人から何かを引き出す
習慣を変える参考になるほかのプレゼン
悪い習慣を断ち切る簡単な方法(TED)マインドフルネストレーニングのすすめ。
習慣のループを知れば、どんな習慣も変えることができる(TED)
マット・カッツに学ぶ30日間で人生を変える方法~30日間チャレンジのススメ(TED)
なぜ人は新年に抱負を語るのか、はたしてそれは効果があるのか?(TED-ED)
やる気が出ないのは難しすぎることをやろうとしているから
よく、「片付けなければいけないと思っているけど、片付ける気が起きません」というメールをいただきます。
そのような方たちのために、やる気をあげる方法を過去記事で書いています。たとえば以下のような記事です。
家事がめんどうでやる気が出ない時モチベーションを上げる8つの方法。
一生、汚部屋の住人で終わりたいの? 断捨離のやる気を出す9つの方法
それでもできない人は、フォグ先生の言っている、行動が起きる3つのポイントを見直してみてはどうでしょうか?
1.やる気、2.能力、3.きっかけ、この3つです。
やる気は限りなくゼロに近いので、ここには期待できません。その場合、能力をそんなに要しない行動に取り組めばいいのです。
週末に一気に片付けようとするのではなく、きょう、たった1つだけでいいから、何かを捨てるのです。それもできるだけ捨てるのが簡単なものを。
捨てるのが簡単なものの例⇒考えなくてもすぐに捨てられる7つの物(プチ断捨離その2)
捨てるタイミングは、すでに習慣になっている行動のあとです。朝起きたら、というのでもいいです。毎朝起きていると思うので。
試しに、これを30日間やってみてください。
捨てたあと、お祝いするのも忘れずに。意外とお祝いしない人が多いのです。お祝いしないどころか、「まだまだ、すっごく汚い」とできていないところに、目を向ける人が。
きのうは1つも捨てなかったんですから、1つ捨てたきょうはすごい進歩です。
これは私が適当に書いているのではなく、行動について、日夜考えて、実験もたくさんしている先生の行動モデルです。たぶん効果があると思います。
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習慣づけや行動に関する動画を見ても、たいていの人は、「なるほど、効果ありそう」「いいお話を聞いた」と思うだけ。
実践してみる人はほんの少しです。
だから片付かないんですよね。今年もあと3ヶ月を切りました。大掃除でつらい思いをしないためにも、きょう、何でもいいから1つ、捨ててみてください。